僕が死ぬ日・・生まれる日 -21ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

あれから3年、今日子は何時の間にか坂本を心から愛するようになっていた。

昨夜、二人で食事に出かけた。そして何時ものように食事の後にホテルに行った。

激しいセックスをした後に坂本が今日子の長い髪を名残惜しそうになでながら呟いた。

「しばらく会えないかもしれない・・」と

今日子は驚いたようにベットから起き上がると悲しそうな目で坂本に言った。

「それ・・どう言う意味なの??」と

坂本は少しだけ辛そうに・・

「もう、こんな関係はいけないと思う。君の将来もあるし・・」と

何とも常識的な言い訳であると今日子は思った。

非常識な関係を散々、今までして来たのに最後は常識的な言葉で幕を降ろそうと言うのか?何とも男は実に身勝手な生き物である。

「それは別れると言うことですか?」

「えっ・・いや!そうじゃなく!しばらくだね!間を置いて・・その間に君に好きな男が出来たなら仕方が無い!私は潔く身を引くから!そろそろ結婚だって考えないといけない頃だろ!君だって・・」

平手の一発でもお見舞いしてやりたい気持ちを今日子は必死に堪え唇を噛み締めた。

都合の良い女?そうなの私は??

それならば今まで一緒に過ごした3年間はいったいなんだったの?何百回も私を抱きしめながら言ってくれた愛の言葉は嘘だったの??

坂本はそう今日子に言うとタバコを一本吸い吸い終ると、それがまるで何かの合図であるかの静かにベットを出ると部屋を出て行った。

次の日、今日子が会社に行くと何時もと変わらない陽気なおしゃべりの坂本が笑っていた。

一瞬、今日子は彼を睨みつける・・・

昼時間の時も坂本はまるで何事も無かったかのように今日子に接した・・

今日子は我慢できずにトイレに駆け込むとメールで「なう」の画面を出し呟いた・・

「死にたい・・」と

すると直ぐに仲間のヒデさんがなうにコメントくれメールを直接くれた・・

死にたい・・

正直、本当にそう思って居た訳ではない。でも、今の自分の気持ちを素直に文字で表すとそんな言葉以外に見つける事は出来なかった。

ヒデさんからメールが来てやり取りをする前にポンちゃんから書き込みが入る。

「姉さん!どうした?大丈夫か?あと、死にたいなんて軽々しく言うなよ!」

そんな何時もと何となく違う重い感じの書き込みに少しだけ困惑した。

しかし、直ぐにヒデちゃんからメールが来たので今日子はポンのそんな書き込みを完全に忘れてしまったのだ。

なんとなく曖昧な感じで今日子でヒデちゃんのやり取りは終わってしまった。

ヒデちゃんも何時までも今日子の事を気にしてる訳にもいかない。

彼は彼なりに店長と言う激務をこなさねばならなかったからだ。

その日の晩、雪の事が気になって嫁の目を盗んでPCの電源を入れピグの雪の部屋に行って見たが誰も居なかった。

今日子は今日子でその夜はやり切れない想いを胸に一人、飲んでいた・・

次の朝、自分の「なう」の掲示板を見た今日子は驚いた。

ポンから何度も心配の書き込みが入っていてメッセージが10通も来ていた。

「ありがとう!ポンちゃん!元気になったよ!」

今日子はそうポンにメッセージを送ると会社に向った。

私は次の日、旦那を忙しく送り出すとパートに行く準備を始めた。

念入りに化粧をするのは何年ぶりだろう?久々に気合を入れた化粧を自分の顔を鏡で見て

まだまだ、私も女として枯れてないわね!なんて独り言を呟く。

家を出る前に「なう」に書き込みをした。

「今日からパートに行きます!久々の仕事に少しだけドキドキよ(-_-)ポッ」

するとポンとヒデちゃんから直ぐに・・

「頑張れ!」の書き込みが入った・・

本当にこの二人はどんな仕事をしてるのだろう?もしかしてポンちゃんは本当の作家さんなのかもしれないな!

そんな事を思いながら私は久しぶりの仕事に少しだけ緊張しながら向うのであった。

「どうも先日は!店長の石川です!」

そう名刺を差し出しながら彼は言った。三島店 店長 石川秀雄 

それが彼の名前らしい。

「よろしくお願いします!坂本友美と申します!」

私は少し緊張した顔で彼にそう言った。

私のそんな態度に彼は笑いなら「そんなに緊張しないで!仕事は簡単ですから!」と言った。

私の仕事は殆ど、品出しであった。まぁ~3時間の仕事ではこんな内容であろう。

しかし、私は久々の仕事になんとなく嬉しくなりウキウキしながら品物を陳列棚に並べた。

「佐藤さん!楽しそうですね!笑顔・・良いですよ!」

店長がそんな私を見ながら笑顔でそう言った。

なんとなく最初は怖そうな印象を持った彼であったが少し話をすると気さくな感じの人で

少しだけ好感が持てた気がした。

それにても気がかりなのは雪ちゃんの事である。朝、ポンちゃんが何度も「なう」に書き込みをしているのを読んだが雪ちゃんからの返事は書き込まれて居なかった。

「死にたい・・」

そう書かれたメッセージにヒデちゃんが直ぐに反応していた。

「何かあったのか?相談に乗るぞ!」

それからの会話は表示されいなかった。

大方、詳しい話をメッセージで話ているに違いない。

とりあえず私も「大丈夫?」と書き込みをしてみた。

なんとなく二人の会話が気になった。

雪さんはいったい何を悩んでいるのだろう??

なうを全ての人間に表示されてしうまう。本当に深い話は出来ない。

そんな中途半端な機能が余計に私を不安にさせた。

いや・・違うか?なんとなく友達と言う世界が汚されたようで嫌だったのかもしれない。

仲良し5人組で何時まで居たかったのかもしれない。

「雪ちゃん!いったい何があったんだい?」

ヒデちゃんがそんなメールを雪ちゃんに送ったのはなうに独り言を書き込んだ直ぐの事だった。

「あのね!私・・振られてしまったの・・」

ヒデちゃんはそんなメールを見ながら少しだけ悲しげに顔をしかめた。

ヒデちゃんはスーパーの店長をしている丁度、休憩時間だった彼は携帯電話に釘付けになっていた。

「ヒデちゃん!今、大丈夫なの?お仕事中でしよ!なんなら夜にでもピグで・・」

そんな雪ちゃんの言葉にヒデちゃんは

「夜の方がまずいよ!最近は嫁の目が厳しくってね!子供の世話をしないといけない。」

ヒデちゃんには3歳になる娘が一人居る。子煩悩を絵に描いたような優しい父親である。

ピグにも夜はめったに姿を現さない。奥さんが実家に帰省した時を彼はリフレッシュ休暇と自分で命名している。私達と話が出来るのはそんな時ぐらいである。

「恋人が居たのか?」

そんな彼の言葉に雪ちゃんは悲しげに言った。

「そう、でも、奥さんが居る人なのよ!」と

ヒデちゃんの携帯を持つ手が少しだけ小刻みに震えた。

「店長!例の夏物の仕入れの件なのですが!」

不意に部下の一人がそう彼に声をかける。

彼はもの凄い不機嫌そうな顔で部下を睨みつけた。

「す・・すいません!お取り込み中のようで・・」

異様な殺気を感じたのか部下はまるで逃げるようにその場を去って行った。

「奥さんが居る??不倫なのか?」

心なしかヒデちゃんの文字の口調が荒くなる。

「そう・・奥さんと子供が居るの!」

「それで、その男に捨てられたのか?」

「捨てられた訳では無いわ!少し会えないと言われたの!」

「同じような物だろ!そんなの・・・君、今、仕事中じゃないのか?」

「そう!今、トイレでメールしてる!そろそろやばいかも!落ちるね!」

そう書き込みがあった後に雪ちゃんからのメールは来る事は無かった。

ヒデちゃんは少しだけ複雑そうな顔をした。

「店長!今度のパートさん!長続きしてくれますかね??」

不意に副店長の加藤がそうヒデちゃんに話しかける。

「えっ?あ~彼女ね!でも、平日の3時間だけ仕事をさせてくれなんて専業主婦のくせに贅沢だよな!どうせ暇な主婦の暇しのぎだろ!あまり期待しない方が良い!

まぁ~少し様子を見て使えるようならあと2.3時間、働く時間を長くしてもらうよ!」

そんなヒデちゃんの言葉に加藤は薄笑いを浮かべその場を立ち去った。

「何時でも時間が出来たらメールして来いよ!遠慮は要らないから・・」

そうヒデちゃんは雪ちゃんにメールすると席を立ち店に向った。

「佐藤さん!お腹の具合でも悪いの?」

長いトイレタイムから今日子が戻るとそれを待ち受けて居たかのように上司の佐々木がそう今日子に言った。

「えっ・・いや~今朝から少しお腹の具合が・・」

「あら、若いのにね~あまり夜遊びばかりしてはダメよ!」

「ええ・・すいません」

HN雪姉さん、本名は佐藤今日子、とある貿易会社で営業をしている。営業と行っても男性のように外回りに行く訳ではなく電話番やその他の雑用がメインの仕事である。直属の上司に佐々木はもう直ぐ40歳になろうかと噂をされている独身の女である。

しかし、本当の年齢は女子社員の間でもタブーとされていて怖くて誰も確認をした者は居ない。今日子の所属する営業1課は総勢20人。一応、この会社のエリート集団である。

そして全ての女子社員を仕切って居るのがこのおつぼねの佐々木であった。

佐々木に少しだけ嫌味を言われながら今日子は自分のデスクに付いた。

そしてふと視線をある男に向ける。

課長の坂本である。

そう、今日子が今までトイレに閉じこもりながらヒデちゃんに語っていた不倫の相手である。

ここ数日、坂本の態度が急に冷たくなったのを感じていた。入社して5年になる今日子は最初からこの営業1課に配属された。その時、まだ主任であった坂本が今日子の教育係りとして今日子の指導を担当していた。

よくあるパターンでる。会社ではよくあるパターンを絵に描いたように今日子と坂本が深い中になるのにそんなに時間はかからなかった。

「おはよう!」

そうわたしが「なう」で呟くとそんな私を待って居たかのように皆が一斉に現れる。

時間は朝の9時を少しだけ過ぎていた。

ヒデちゃんもポンもベッキーさんも仕事中なはずなのに??

この3人のネットの住人がいった何者なのか?私は何時も知りたくて仕方ない生活をしている。ベッキーさんとポンは毎朝、必ずブログを更新してる。

彼らの小説は結構、人気があり読者も多い。実は私も二人には言ってないが、隠れファンの一人である。

以前、ポンに「あなたは本当に仕事をしてるの?」となうで聞いた事がある。

ポンは「失礼な!(◎`ε´◎ )ブゥーー! 」なんて書きながら呟いた。

「おいらは天才だからこの程度の小説は15分もあれば書けるんだぜ!だから仕事の合間に書いています!読者には秘密ね!一生懸命書いてるって何時も言ってるから!フフフ・・ッ(´_`。)グスン」

ポンの小説の読者は若者が多い。中学生から大学生まで!その殆どが女性である。

それに引き換えベッキーのブログの読者は色々な人間が集まっている。

ある意味、ポンよりベッキーの方が人間臭い小説を書くからなのかも知れない。

ヒデさんは毎日、夜に更新をする。仕事をしてる男性なのによくもそんなに出かけられるものだと関心するぐらい毎週のように遊びに出かけその時の写真がブログを飾っている。

雪さんはめったにブログは更新しない。読み専と言う人種らしい。お気に入りのブログの限定記事やコメントを書くのにはブログを開設してなければいけない。

ある意味、その為だけにブログを開いているような物である。

私はと言うと正直、ブログを更新する事が最近は苦痛になっている。

だって平凡な主婦には正直、ネタが無いのだ!更新するだけのネタが・・

ベッキーに「私にも小説が書けるかな?」と一度、聞いてみたら彼は笑いながら言った。

「ああ・・こんな物は誰にも書ける!」と

しかし、3行書いただけで挫折した。どうやら口で・・いや、文字で言うほど小説を書く事は簡単では無いらしい。そう考えると毎日、更新をしてる二人は作品の内容や評価は別として大した物だと感心をする。

こんなまったく人種が違う5人が一つの「なう」と言う世界で知り合うなんて実に面白いと思う。

私は旦那と話が出来ない欲求を全てなうの独り言にぶつけていたのかも知れない。

別に旦那と話なんかしなくても平気だと思っていた。しかし、専業主婦で毎日、家に居て

習い事も殆ど止めてしまった私は家を出ると言ったら買い物にいく時ぐらいで・・・

下手をすると1日、誰とも話をしない日もあるのだ。

そんな時、私は世界中の中でもしかしたら自分だけしか居ないのでは無いのかと錯覚を起こしそうになる。私だけしかもしかしたら生きていないのでは無いのかと・・

そんな時に私は無意識に「なう」に書き込みをしてしまう。

寂しい・・と

そう書き込むと直ぐに誰かが話しかけてくれるのだ。

「大丈夫?何かあった?」

そんな文字を見つけるとなんとなく安心をした。

私は孤独ではないのだと・・安心をした。

主人は相変わらず自宅に戻るとまるで貝のように口を閉ざす。

いったい彼は何を生きがいに生きているのだろう?ふとそんな思いが私の脳裏に浮かんだ。

「あなた!パートに出ようと思うのだけど・・」

勇気を出してある日の晩に主人にそう言ってみた。

彼は少しだけ顔をしかめながら言った。

「金が足りないのか?ならもう少し残業を増やすけど・・」と

「そうじゃないの!お金は十分に足りているわ!でも外に出たいのよ!

一日、3時間くらいなら家事にも支障は出ないと思うのだけど・・」

いったい彼はなぜにこれほど、私が仕事を始める事に反対をするのだろう。

会話はやはり大切だと思う。そんなにべらべらウザイほど会話は要らないと思うけど・・

やはり最低限の会話は必要だ。

ポンがそんな私の独り言に言った事がある。

「失礼な言い方だけど、旦那さんは不倫経験者なのでは??」と

「何よそれ?」

そう私が書き込むとポンは少しだけ間を置いて話し始める。

「何て言うのかな・・結構、自分にそんな経験がある人間は未来が見えてしまうと言うのかな?自分と同じように君が自分以外の男と・・」

「まぁ~失礼ね!私はそんな女じゃ無いわよ!」

「最初は皆、そう言うのさ!きっと、旦那はそれも知っている・・」

ポンはそう呟くと落ちてしまった。

主人が不倫経験者??なんとも愚かな考えだと思った。

しかし、ポンが言う事も一理ある。経験者だからこそ疑い恐れる理由があるのかも知れない。

黙っていれば大丈夫!旦那に黙って働き出して様子を見て話そうかしら??

そんな考えを持ったのが、そもそもの私の失敗だったのかもしれない。

私は次の日に近くのスーパーにパートの面接に出かけた。

平日の3時間だけ労働と言う私の無理な願いにスーパーの店長は最初、渋い顔をしたが余程、人が足りないのだろうそんな無茶な願いが通り私は採用される事になった。

面接を終えて帰り際に携帯電話を見るとお気に入りなうの書き込み表示が掲示されていた。

雪さんのなうに書き込みがあったようだ。私は雪さんのなうを表示した。