僕が死ぬ日・・生まれる日 -18ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

恋のチャンスは突然に・・・


なんて事がよく言われるけれど、そんな話は10代や20代の人間の話であって・・


男も30歳を越えてしまうと恋のチャンスどころか女性と出会うチャンスさえ殆ど有無に近い状態になる。


私の名前は坂本誠と言う、年は今年で35歳。ある貿易会社で営業をしてる。


忙しかったから・・自分がこの年まで結婚が出来なかったのをそんな理由で言い訳をするつもりは無い。


結婚と言う物にあまり興味が無かったのだ。


別に10代や20代の頃には付き合うだけの女なら不自由した記憶は無い。


ただ、一人の女と一生、生きて行く自信が私には無かったのかもしれない。


人間には「モテ期」と言う時期がある事をご存知だろうか?


人間には人生の中か何度か、もの凄く女性に不自由しない時期がある。


大抵の男はそんな時期に適当な相手を見つけ生涯の幸せなんて物を手に入れる。


ただ、結婚や家庭を持つと言う事が本当に幸せなのかと言う疑問は残る。


私から言わせれば、結婚や家庭を持つと言う事はただの自己満足の安心感でしか無いと思うからだ。


世間体を気にする人間の唯の自己満足の安心感・・


そして、運が良いのか悪いのか?その時期に相手を見つけられなかった男は長い一人旅に出る。


そして、あれだけあった、「出会い」と言うチャンスが突然に消えてしまった事に戸惑いを見せ・・


そして、当たり前のように居た女性が突然、消えた事に焦りを感じるのだ。


「別れましょう・・・」


私が最後にそう言われたのは今から、6年前の事だと思う。


多分、あの女が私の「モテ期」の最後の女であったに違い無い。


それが証拠にあの女と別れた途端に全ての出会いと女が消えた・・


そして29歳から6年間、私にはまったくと言って良いほど女性の気配が無い。


でも、出会いが無いのなら無い方が良いのかもしれない。


苦しみを産む出会いなら最初から無い方が良い・・


ただ、これも世の中の何とも不思議なことなのだ・・


「モテ期」の良い時期が過ぎると何とも暗雲が立ち込めたような恋ばかりが訪れるようになるからだ・・


こんな事を偉そうに言っている私もそんな暗雲の中に放り込まれた男の一人である。


この話は私のそんな恋の話である。


しばしのお付き合い・・お願いいたします。

私の石川に対する想いが信頼から愛情に変わるのにそんなに時間はかからなかった。

自然に石川が自分の事も話し出した頃からだったと思う。

奥さんは厳しい人で何時も窮屈な生活をしている。自分の行動、一つ、一つが気に入らないらしい・・自由が欲しい。安らぎが・・・

居場所が無いんだ!子供の為に離婚は出来ない!この子を父親の居ない子供にはしたくないんだ!だから離婚はしない。

居場所・・人は何時も自分の居場所を探している。本当は自分のパートナーが居場所のはずである。家庭と言う世界が本当は自分の一番、安らぐ事が出来る居場所のはずなのに・・

そして、家庭と言う場所に自分の居場所を諦めたときに人は違う場所を探し始める。

石川と話をするようになって一ヶ月後、私は彼と飲みに出かけた。

地元から大分離れた町の飲み屋に・・・

石川の妻と子供が妻の実家に帰省したそんな日の夜であった。

私は何時の間にか彼に抱かれていた。

初めて・・浮気と言うものを私はしてしまった。結婚して初めて旦那以外の男に抱かれた。

セックスが終わった後に石川は言い訳をするように呟いた。

「君を愛している・・」と

その日の夜、私は夜遅く自宅に帰宅した。そんな私に無関心のように旦那は理由を聞く事は無かった。

熱いシャワーを浴びながら私はなぜか泣いていた・・・

その涙の意味が正直、自分でも解らない。

久々に「なう」に書き込みをした。

「消えてしまいたい・・」

そんな私の書き込みにポンちゃんが直ぐに書き込みをくれた。

「どうした?まだいじめは続いているのか??」

「違うの!居場所が・・私の存在する本当の居場所が無いの・・」

きっと、誰にも意味が解らない不明な書き込みであったと思う。

そう、それは私だけしか解らない事であった。

ポンちゃんは優しい言葉を沢山、私にくれた。この人の奥さんは本当に幸せだと思う。

きっと、彼は奥さんの居場所でいるに違いない。

「人間は消える事なんか出来ないんだよ!」

不意にそう書き込んで来たのはベッキーであった。

なんとも珍しい・・

「そうね!人間はそんなに簡単に消える事なんか出来ないよね!」

「ああ・・そうだ!消える事なんか出来ない!なぜならそれが生きると言う事だからさ!」

私はそんなベッキーの書き込みを見ながらまた、泣いていた。

その晩、ヒデちゃんからの書き込みは一度も無かった・・

雪にまんまと成り済ます事に成功した清美は毎日のようにポンにメールを送り続けた。

返ってる返事からポンがドンドン、雪と言う存在に没頭して行く様子が手に取るように解った。

愛すのよ!後戻り出来ないくらいに愛しなさい!

雪が居ないと気が狂ってしまうくらいに愛しなさい!

私があなたを愛したように・・


「良かったら飲みにでも行きませんか?」

そんなメールがポンから来たのはメールを始めて1ヶ月後ぐらいの事であった。


「本当ですか!嬉しい・・私もポンちゃんと会いたいと思っていたの!

でも、私、ブスだから・・あなたがもしも現実の私を見たら嫌われそうで怖い・・」

清美はそんな言葉を薄ら笑いを浮かべながらメールした。


「馬鹿だな!嫌いになんてなる訳がないだろ!僕は君の容姿なんか気にしてなんかいないよ!絶対に・・それに僕は本当に君を・・いや、会った時に話すよ!だから、そんな事は気にするなよ!」


嘘・・嘘ばかりね!あなたの言葉は・・

本当は色白の髪の長い女が好みのくせに・・

女は性格よりも顔と胸だよ!なんて平気で言えるくせに・・

そして心なんて言葉を使いながら平気で女を捨てれる男のくせに・・

約束の日、朝から冷たい雨が降っていた。

もちろん清美は待ち合わせ場所に行くつもりは無かった。

行かなくてももうポンは自分から離れる事は無い!そう確信していたからだ。

付き合っていた頃、何度もそんな辛い想いを経験して来た。

真冬の駅前で2時間も3時間も来ない誠をただ、待ち続けていた・・

それでも愛してるなんて思いは厄介で誠の元から去る勇気が無かった自分・・

誠はそんな自分のその時の気持ちをどの位、理解してくれていたのだろうか?

約束の時間が過ぎ何度も清美の携帯にメールの着信を知らせる音楽が鳴った。

その着信音を聞く度に清美の心は軽くなる・・

苦しいでしょ!待つ事は・・解る?この苦しみ・・

あんたは今までこんな苦しみを多くの女に与えて来たんだよ!

約束の時間を2時間ほど過ぎて誠からのメールは止まった。

その頃合を見て清美はポンにメールを送った・・





「苦しい・・」

そう「なう」に書き込んだのはそんないじめが始まって一週間後の事であった。

「どうした?みいさん・・」

そう最初に書き込みをしてくれたのはヒデちゃんであった。

「パート先でね!いじめにあっているの!」

そんな書き出しから始まり私は今の現状を全て「なう」に書き込んだ。

「酷い話だ!小学生かよ!」

そう書き込んだのはポンちゃんであった。

「その川口って奴も酷いよな!自分を助けてくれた人をいじめてるんだから・・」

そんなポンちゃんの書き込みにヒデちゃんが言った。

「でも、それも悲しい現実なんだよ!うちみたいなスーパーにはよくある話なんだ!

結局は職員も見て見ぬ振りの奴が多い。余計なイザコザを抱えたくないってのもあるけど

社員よりパートの方が力が強いってのもあるんだ!パートに嫌われたら仕事が前に進まない!それイコールさ!管理能力が無い社員って評価になるから・・」

ヒデちゃんの書き込みはスーパーの店長らしい的を得た書き込みであった。

そうなのだ!私の場合も何度も職員は目撃してるのにまるで何事も無かったように気にもとめてくれないのだ。

「それで?みいさん!どうするの?辞めてしまえば・・そんなに生活にも困ってないんでしよ?最悪、働き口なんか幾らでもあるんだから・・」

ポンちゃんはそう言った。

私はそんなポンちゃんの書き込みを見ながら思っていた。

確かに辞めるのは簡単だ!別に生活に困って仕事をしてる訳でもない。

でも!なんとなく辞めたくなかった。だって辞めると言う事は逃げる事になる。

私は別に悪い事をした訳ではない。なのになぜに私が辞めなければいけないのだ!

「辞めたくなんだけど!こんな事ぐらいで・・だって!私!悪くないもん!」

そうだ!私は悪くない!絶対に絶対に悪くない!

「結構、みいさんは気が強いんだね!」

ポンさんがそう書き込みとヒデちゃんも・・

「皆がみいさんの味方だから!負けるなよ!」と言ってくれた・・

結局、その晩はベッキーさんも雪姉さんも姿を現してはくれなかったけど・・

きっと、私を応援してくれるに違いない!だって私達は仲間なのだから・・

次の日、私は仕事場に行く前に「寄り道」に立ち寄った。

カウンターに座ると私が注文をする前に私の目の前に何とも言えない味わいの香を放つ一杯のコーヒーが出された。

「えっ?私、注文してませんけど・・」そんな私の言葉にマスターは微笑みながら言った!

「元気が出る特製ブレンドだ!何があったか知らんが、頑張れよ!」と・・

私は微笑みながら少しだけ瞳に涙を浮かべマスターが入れてくれたコーヒーを口に入れた。

「坂本さん!最近、何かありました?」

そう店長の石川が私に話しかけて来た。

「えっ?いや・・別に・・」

私はそんな言葉で聞かれた内容の返事を誤魔化した。

「そう!なんかね!私の知り合いなんだけど、いじめがあるらしいんだよ!

スーパーのパートをあなたみたいにやり始めたばかりの人なんだけどね!

何でも同僚のパートをかばって逆に自分がいじめられ始めてしまったようで・・

酷い話だよね!うちのスーパーには無いと思うけどね!

何か悩みがあるのなら気軽に相談してください!私が力になれることなら何でもするからね!」

そう言いながら石川は歩き出す。

なんとも同じような話があるものだとふと思った。

「何でも話しなよ!」

なんて言われて彼と二人であって居ようものなら大変な事になる。

私は絶対に店長の女に仕立て上げられるに違いない。

そんな事が解らないほど私は子供では無かった。

こんな時に一番の相談相手であるはずの旦那は相変わらず家に帰って来ると直ぐに引きこもりの状態である。ヒデさんやポンちゃんの奥さんが羨ましくも思いその反面、妬ましくも思えた。

私へのいじめはドンドン、エスカレートして行った。

仕事に来ていると言うよりもいじめられに来ているようなものであった。

そんなある日、携帯番号とメルアドが記載されたメモ用紙を石川に渡された。

感の良い男なのかもしれない。

私は今の現状を隠さずメールした。

その日の夜に私の携帯電話が鳴った。相手は店長の石川であった。

「今!良いですか?」

そう彼に言われ「大丈夫です!」と寝室に向かいながら言った。

「大丈夫ですか?私の管理不届きで申し訳ない!

私が何か手を打って差し上げても良いのですが、そうすると余計にあなたが標的になる可能性があります!どうしますか?」

そう言われ私は彼に介入してもらう事を断った。これはきっと、私、一人の戦いなのだ。

そう自分自身に言い聞かせる。

その晩から私は毎晩のように石川に電話をした。毎日、毎日、旦那に言えない悩みを石川に話した。もしかしたら私は旦那の代わりを探していたのかもしれない。自分を支えてくれる旦那の代わりを・・・