僕が死ぬ日・・生まれる日 -17ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

「ごめんなさい!あなたが嫌いな訳ではないの!あなたを失う事が怖いのよ!

今のままで友達で居てくれないかな?」


何度もそんな言葉を言われただろう・・


多くの女性と交際をした反面・・多くの女にそんな言葉を言われたような気がする。


恋人と友達の差とはいったい何だろう?


ふと、そんな事をそんな言葉を言われる度に考えた。


友達は大いなる馴れ合いの関係で・・


恋人は大いなる欲望の関係である。


当時の私にとって恋人と友達の差なんて物は至極簡単で・・・


ただ、セックスが出来るか出来ないかだけの違いだったような気がする。


私は今回の同窓会で一つだけ楽しみにしてる事があった。


当時、そんな言葉を言われ振られた一人の佐藤友美と再会出来るかもと言う淡い期待感である。


あれは高校1年の秋だったと思う。


入学当時から私は彼女に片想いをしていた。


髪が長く少しだけつり上がった目元が可愛い・・


そんなつり上がった目のせいか周りの男子には少しだけ性格がきつそうだと敬遠されていた。


席が隣同士でなんとなく話が合った。


何よりも佐藤は美人であった。


そんな佐藤に告白した。そして見事に例の言葉を言われ振られてしまった。


それから少したって同じクラスの佐々木と言うバスケ部の男と佐藤が付き合っていると言う噂を聞いた。


友達と恋人の境界線・・


それは男子がそうなように女子も見た目であったような気がする。


しかし、私はそんな噂を聞いて少しも悔しいとは感じなかった気がする。


仕方が無い・・・


当時の私はよく、そんな言葉を使って現実から逃げていた気がする・・


15分も歩いただろうか・・指定の会場の店に私は木村は無事に到着した。


「南高校1年B組 同窓会様」


何とも間抜けな看板が掲げられていた。


店の中に入ると店員に同窓会に来たと告げるとそのまま二階の宴会場に案内をされた。


宴会場の入り口の前に長テーブルが置かれ二人の男女が座っている。


「坂本ですが・・」


そう私が言うと男の方がなんとも懐かしそうに言った。


「誠か!久しぶりだな!市川だよ!俺!わかるか?」


でっぷりと太った巨漢の男であった。頭も少しだけ薄くなって来ている・・


市川?こいつが・・市川???


私が知っている市川は激痩せのチビでメガネ猿みたいな男であった。


「随分と太っただろ!」


市川はそれがまるで決められた合言葉のように言った。


「実家のラーメン屋を継いでさ!このざまさ!新しい商品を開発する度に5キロずつ太ってさ~

まぁ~その代わりに今じゃ10店舗ほど経営してるんだけどな!」


そう誇らしげな目をしながら市川は私に言った。


私達の年で同窓会などに出て来る人間の殆どは俗に言う「成功者」である。


60や70歳のジジイになれば違うのかもしれないが・・


女は自分がどれだけ良い男を捕まえたかを自慢げに話・・


男は自分がどれだけ成功したかを自慢げに話している・・


何ともくだらない世界である。


「まぁ~楽しんで行ってくれよ!会費は隣で・・」


市川はそう呟くとチラリと横の女を見た。


西川裕子


隣にすまし顔で西川が座っていた。


私が高校の時に半年だけ付き合った女である。


「お久しぶりね!坂本君!」


西川はそう呟くと意味ありげに微笑んだ・・


「今夜は楽しくなりそうね!」


そんな言葉を呟きながら・・

「お前!同窓会に出るんだよな?」


そう木村に言われ恐ろしい情報網だと思った。


「ああ・・よく知ってるな!初めてなんだ!出るの・・

俺も年を取ったらしい・・」


「実は俺も初めてなんだ!なんとなく昔を懐かしむ年でもまだ無いしな!」


「それなら、何で急に出ようなんて思ったんだ?」


「えっ・・あ~唯の気まぐれかな・・」


木村が電話した訳がなんとなく解った。


ただ、心細かっただけのようである。それが証拠に木村は言った。


「当日、良かったら待ち合わせをして一緒に行かないか?」と


その提案は正直、私にとっても願っても無い事であった。


「ああ・・そうだな!そうしょう!処で同窓会ってどんな服装で行けば良いのだろう?

平日だったら仕事帰りとか言ってスーツで良いと思うが、休日だし」


「ああ・・俺もそれを悩んでいた・・なにせ!初めてなもので・・」


話し合いの結果、無難なチノパンにシャツとジャケットを着ていく事に決まった。


「なら、当日、駅の改札で!また、近づいたら連絡をするよ!」


「ああ・・ヨロシク・・」


木村とは学生時代からの親友であった。


何時からだろう?あまり交流が無くなったのは・・・


高校、大学、そして社会人になってもあんなに遊んでいたのに・・


あ~そうだ!あいつが結婚してからだ・・そうだ・・


特にあいつの嫁さんが苦手と言うわけではなかった。


しかし、何となく少しずつあいつとの会話にずれが産まれて来たのだ。


独身者と既婚者と言う大きなずれが・・


別に劣等感があったわけではない。ただ、なんとなく距離を置いた。


それから数週間後、私は新宿の東口の改札の前に立っていた。


どうも都会は苦手である。人の群れが嫌いであった。


「よう!お待たせ!お前・・変わらないな!4年ぶりか?会うの・・」


「ああ・・お前も変わらないな!奥さん!元気か?子供は・・」


「あいつは元気だよ!子供はまだだ・・」


少しだけ聞いてはいけない事を聞いてしまったと後悔した。


私は、木村が子供が授かる事を念願していたことを誰よりも知っていたからだ。


「行こうか!」


そう木村がまるで人込みから逃げるように歌舞伎町に向かい歩き始めた・・

あれは今から1年ぐらい前の4月のある日の事であった。


何時ものように残業を終えて疲れ果てて自宅マンションに深夜に帰宅した。


何時もなら郵便ポストなんか見ないのだけどその日に限って見てしまったのが悪夢の始まりである。


溢れんばかりのダイレクトメールの中に一通の往復はがきを発見する。


南高校1年B組 同窓会のお知らせ・・


そう書かれた往復ハガキだけを取り出すと私は自分の部屋に向った。


時計を見ると深夜の1時を少しだけ過ぎていた。


浴室でシャワーを浴びて寝巻きに着替えると私は簡単なつまみと冷蔵庫から缶ビールを取り出した。


こんな深夜にビールを飲みつまみを食べているのだから最近、何度も決意したダイエットが成功する訳が無かった。


きっと、今の仕事をしてる間は、毎年の健康診断で「メタボ」欄の要注意ランクDから逃れる事は無理かもしれない。


ビールを一缶、勢い良く飲み干すと私はカキピーを摘みながら2本目のビールを取り出した。


テーブルの上に無造作に置かれた先ほどの同窓会の案内状を手に取り見つめる。


そう言えば珍しい・・


引越しを数回繰る返すうちに何時の間にかこの手の案内状は届かなくなっていたのに・・


よくもまぁ~調べるものだな!ある意味、感心をする。


5月5日・・・


開催日にそう明記してあった。


GWの最終日か・・別に長期連休なとど言っても予定がある訳ではない。


例年通りに大量のDVDを借りて来て部屋の中でダラダラと過ごすに違いない。


暇つぶしに行ってみるか?


そのような集まりが苦手な私がなぜにその時、そう思ったのか今でも信じられない。


もしも、この世に悪魔などと言う生き物が本当に存在をしてるのなら・・


きっと、私はそんな悪魔にそそのかされたのかもしれないと真剣に思ってしまう。


次の日の早朝・・


私は出勤途中にあるポストにそのハガキを投函した。


出席させて頂きます!皆さんに会える事を楽しみにしています


そんなどうでも良い言葉を添えて・・


あれは4月の25日頃だったと思う。


私は非常識にも同窓会の事を完全に忘れていた。


念には念を入れ5日の日にカレンダーに赤丸まで付けていたのに付けた意味さえも忘れていた。


その日の夜に私の仕事用の携帯電話が鳴った。


「はい!坂本でございます!」


営業用の爽やかな声で電話に出た私に対して相手は不機嫌そうに言った。


「お前!本当に坂本かよ!」と


私のその相手の声を聞いてその相手が誰であるか直ぐに解った。


「なんだ!木村か!懐かしいな・・お前!よく、俺の番号が解ったな!それも仕事用の・・」


そう不機嫌そうに低い声で言うと木村は安心したように言った。


「よかった!やっぱり坂本だ!」と


私は昔から何時も不機嫌そうな声をしてる。そして顔は何時もつまらなそうな顔をしてるそうだ。


どうも、勘違いをされる損なタイプの人間らしい・・


「お前の会社に電話をしたんだ!山田貿易に勤めている事は知ってたんだけどさ!

一応、ほれ、ライバル会社だろ!俺の会社・・」


私も木村が私の会社のライバルである島田貿易の社員であることは知っていた。


しかし、あえて連絡をする事は避けていた。


いくら、昔からの友人でも島田の人間と一緒に居る所を見られては少しだけバツが悪かったのだ。


「取引会社の名前を出して急用だと言ったら直ぐにお前の携帯番号を教えてくれたよ!」


なんとも抜け目が無い。あまり敵にしたくないタイプの男である。


「それで、用事は?まさか、世間話をするために連絡をして来た訳ではないだろ・・・」


「あ~そうだ・・」


そんな木村の言葉から私の苦しみが始まった。