僕が死ぬ日・・生まれる日 -16ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

二次会は同窓会の会場から少し離れた大手のカラオケボックスであった。


西川は当たり前のように私に体をぴったりとくっつけながら私の横に座った。


先ほどとは違う何とも艶かしい香水の香を西川から流れる・・


そして、先程よりさらに大きく開かれた胸元からは薄いピンクのブラジャーが見え隠れしていた。


一度、抱いた事がある女・・


そんな思いが自然と私の欲望と言う物に微妙な刺激を与える。


さりげなく西川の手が私の足に触るたびに私の股間は熱くなる・・


この女の狙いは解っていた。ここで理性を失ってはいけない。厄介ごとは御免である。


2時間ほどカラオケを楽しみ2次会もお開きになった。


時間は11時を少しだけ過ぎていた。


佐藤は歌も歌わずにただ、ひたすらお酒を飲んでいるいるようであった。


それはまるで何かを忘れるようにわざと自分を痛めつけているように感じた。


「そろそろ終電だから帰るよ!」


店の外に出ると私は3人にそう告げる。


「なら・・私も・・」


そう言いかけた西川の腕を強引に引っ張りながら木村が言った


「3次会!行こうぜ!西川ちゃん!」


木村のその行動が酔った勢いの無意識な行動なのか?それとも私に気を使った善意の行動なのか?


しかし、別れ際に木村が私の耳元で・・・


「誠!これは貸しだからな!」と呟いた所を見るとどうやら善意の行動らしい・・


「行こうか!」


私は佐藤にそう呟くと新宿の駅に向かい歩き始めた。


「佐藤・・いや!佐々木さんか!佐々木さんの家は?」


「えっ・・佐藤で良いよ!今夜は・・蒲田よ!」


「へぇ~俺は今、糀谷に住んでいるんだ!案外と近くに住んでいたんだな!」


「そう・・坂本君!糀谷に住んでいるの・・」


蒲田と糀谷は京浜急行の沿線で一駅ぐらいしか離れていない。歩いても20分と言うところだろうか?


蒲田に電車が着いたのは12時を少しだけ廻った頃であった。


「タクシーで送ろうか?もう、京急は走ってないから・・家は駅から近いのかい?」


そんな誠の言葉に佐藤は少しだけ沈黙した。


そして意を決したように呟いた。


「良かったら、少し飲んでいかない・・」と


いけない!欲望に負けては・・帰らないといけない・・断れ誠!断るんだ!


誠の心の中の善意がそう呟く・・・


行けば良いんだ!こいつ、何か企んでいるぞ!頂いちゃえよ!お前、この女を抱きたかったのだろ・・


そう誠の心の悪意が呟く・・・


「少しだけなら・・・」


善意は所詮は悪意には勝てないのかも知れない・・


誠と佐藤はゆっくりと歩きながら夜のネオン街に消えて行くのであった・・

どの位の時間が過ぎたのだろう・・


周りの人間と会話をしていくうちに少しずつ、誰なのかがわかって来た。


しかし、結局、佐藤は来ていないようである。


私はなんとなくガッカリしていた。正直、来なければ良かったとさえ思ったくらいだ。


すると閉まっていたドアが静かに開き、一人の女が少しだけ申し訳なさそうな顔をして入って来た。


「ごめん!ごめん!出がけにごたついて・・」


そう言いながら舌をペロッと出し微笑む癖・・


変わってないなお前・・そんな癖も少しだけつり上がった目も・・そして美しい顔立ちも・・


「友美!遅いよ!まったく~~こっちに座りなよ!」


西川がそう急かすように佐藤に言った。


今夜、初めてこの西川と言う女に感謝をした!偉いぞ!お前・・本当に・・


「どうも!佐々木・・いや!旧姓、佐藤です!」


西川が少しだけ意味ありげな微笑を浮かべ誠を見つめた。


「よう!佐藤!久しぶりだな!木村だよ!お前、昔と全然、変わらないな・・

佐々木と結婚したんだろ!」


「あっ!木村君!あなたも変わらないね!そう!もう、8年になるわ!結婚して・・」


「あれ?佐々木って確か、四星だったよな!」


「そうよ!営業!毎晩、遅いの・・やんなっちゃうわ!」


こんな時、木村は本当に凄いと思う。私にはこんな風に自然に佐藤と話をする事が出来ない。


ある意味、これも一種の才能だと思う。


「坂本君!久しぶりね!」


そんな私の態度に痺れを切らしたように佐藤が私のそう話しかけた・・


「よう!久しぶり!元気そうで・・佐々木と結婚したんだ!知らなかった・・」


「そうなの!子供も二人、居るのよ!本当に信じられないわ!自分でも・・」


四星商事・・


ふと、会話の所々に出て来るそんな会社名に聞き覚えがあった。


その名前を何処で聞いたのか思い出せないのだが・・


「佐藤!四星は山田貿易の下請けだからな!坂本によく旦那の事をお願いしておいた方が良いぞ!」


木村がそんな私の歯がゆい気持ちを見透かしたかのように助け舟を出す。


あ~そうか!あの四星か・・佐々木?そんな名前の営業が居たかな?覚えが無い・・


佐々木は頭が良くてスポーツ万能で顔が良くて完璧な男であった。


そんな男だから優秀な営業マンになっているに違いない!


それならば、私と一度や二度くらいは会っていても良さそうな物なのだが・・


「おい!誠!お前も何かしゃべれよ!名刺!名刺!名刺の一枚もやれよ!」


木村はそう急かすように言う!


「ごめん!仕事にプライベートは持ち込みたく無いんだ!だから・・」


「本当につまらない男だよ!だから結婚できないんだぞ!」


そう木村が言うと西川と佐藤は少しだけ驚いたような顔をした。


各々の思惑を胸にした同窓会が終わろうとしていた。


「え~~っ!2次会はカラオケに行きますが!参加する方は・・」


幹事の市川のそんな言葉が聞こえる。


「どうする?友美?参加する?」


そんな西川の言葉にチラットと佐藤は私を見たような気がした。


「行こうぜ!主婦の皆様もたまにはリフレッシュしないとね!なっ!誠!お前も行くだろ!」


「ああ・・行くけど・・」


「まったく!お前はよ~全然、昔と変わらない!優柔不断だよな!よく、営業が勤まるよ!」


「それでは!これにていったんお開きにします!また、来年!お会いしましょう!」


そんな市川の閉会の言葉が聞こえると次々に皆が帰り始める。


どうやら2次会の残ったのはホンの10名程の成功者と呼ばれる男達を数人の女性陣であった。





「会費は1万円ね!」


西川は私にそう言った。私は財布からお金を取り出すと彼女に手渡す。


一瞬、彼女の手が私の手に触れる・・その瞬間、少しだけ遠い昔を思い出す。


西川は私の初体験の女であった。


佐藤に振られて半ばやけになり隣の席にこの女に告白をした。


別に好きでも何とも無かった気がする。ただ、傷ついた心を癒してくれる異性が欲しかった。


西川はあまりにもあっけなく私の申し出にOKを出した。


初めてキスをしたのは告白してから一週間後の初デートの時で・・


初めて体の関係を持ったのは一ヶ月後の一泊二日のグループ旅行の夜であった。


「山田貿易に勤めているんだってね!」


西川のそんな言葉に女の情報網の恐ろしさを感じる・・・


「オイオイ!昔を懐かしむのは後にしてくれよ!とりあえず、後がつかえているんだけど・・」


私の後ろでイラつきながら木村がそう呟く。


「あっ!ごめん!それじゃ・・また、後で・・」


そう言い私は西川から領収書を貰うと会場に入って行った。


会場に入ると20くらいの男女が入り乱れながら雑談をしてる。


周りを見渡す同じクラスだったのだから顔見知りのはずなのにまるで他人のように感じられる。


20年と言う年月の重さを実感した。


そして、ここに居るクラスメートが年老いたように自分も年を取ったのだと実感する。


私はキョロキョロしながら目を皿のようにして佐藤を探した・・


しかし、それらしき女は見つける事が出来なかった。


「おい!いきなり物欲しそうにキョロキョロするなよ!」


そう木村に諭され自分の行動が恥ずかしくなる・・


「そろそろ皆、揃ったようなのでお席に着いてください!」


幹事の市川がそう言うと入り乱れていた男女はそれぞれ自分の好きな席に着席した。


上座には当時の担任らしき老人がひっそりと座っていたが名前も顔も思い出すことが出来なかった。


高校生の記憶などそんなものだと感じる。


「それでは!グラスをお持ちください!久々の再会に乾杯!」


市川がそう叫ぶように乾杯の音頭をとると皆が笑顔でグラスを天井に向かい上げた。


「乾杯!南高校サイコー!」


そんな言葉を呟きながら・・


そして、そんな言葉から私の人生、最悪の夜が始まろうとしていた。


「あいつか米山だろ!あいつは・・加藤!おい!誠!あのハゲは誰だ?記憶が無いぞ!」


木村はまるで推理小説の名探偵のように次々と変わり果てた級友達を当てて行く・・


「なんか!楽しいな!誠!それにしても皆、オッサンやばばぁ~になったもんだ!

実は少しだけいけない期待をして来たのだけど・・これじゃ・・無理だな!」


女達はそれなり着飾ってはいるは、やはり生活臭とでも言うのかそんなオーラが全開である。


とても口説く気にはなれない。


「坂本君!」


そう言いながら西川が木村を押しのけるように間に入って来た。


「山田貿易ってさ~」


そんな言葉から西川は聞きもしないのに自分の旦那の話を始める。


聞いていると西川の旦那は私の会社の取引先に勤めているようである。


「旦那もさ!営業なんだよね!ノルマが大変らしくって・・」


少しだけ豊満な胸をちらつかせながら西川は旦那の苦労を私に向って熱く語った。


この女は何なんだ?俺に何を望んでいる??


この中でサラリーマン部門では私はある程度の成功者だと思う。


とりあえず、一流と呼ばれる商社の本社勤務をしてるからだ。


まるでハイエナのようにそんな匂いを嗅ぎつけ多くの人間が私や木村の周りに集まっていた。


ある意味、同窓会と言うなの商談会みたいなものである。


「名刺!いただけないかしら?」


何度も催促されるようにそう言われた・・・


なんとなくそう言われる度に私の心は冷めて行くのであった。