池井戸潤の小説は何れも好きで電子書籍、WOWOW、地上波などで見てきた。しいて言うと下町ロケットは地デジよりWOWOWの方がよかった。
勿論どれも現実には起こりにくいことではあるが、現実離れした設定のドラマや放送作家が台本を書いたバラエティー番組などに比べればまだましだ。
で、TBS系列で放送中の「半沢直樹セカンドシーズン」。
メガバンクから子会社の証券会社に出向した半沢直樹が、ネット企業のベンチャーを敵対的買収から守ろうと奔走している。
気になる単語、「敵対的買収」。ドラマではスパイラルとは経営理念を異にする電脳雑伎集団がスパイラルの意図を無視して強引に株式を取得して経営権を握ろうとしている。一般に、被買収企業の意図に反する買収を敵対的買収といい、あたかも買収する側の企業が悪者のように言われることが多い。
本当にそうなのか?
ビジネスの目的は端的にいうと金儲けだ。合法的な手段であればより多くの利益を上げることにしか企業の存在価値はない。企業理念に沿おうが敵対しようが善も悪もない。
株を買うということは会社の所有者としての権利を買うということだが、本来株式会社の株式は誰でも買えるものではない。会社が証券取引所に上場することで不特定多数の人がその株を買い、所有株式数の大小によりオーナーとしての権利を行使できるようになる。一方、上場する会社は株式という紙切れを刷るだけで、それが金に替わり会社の資金にできる。
敵対的買収を批判する被買収企業は、紙切れを会社の資金にしておきながら「自分らとは意見を異にする株主の言い分は聞きたくない」、「株主は経営に口を出すな」と言っている訳だ。金を払っている会社のオーナーに対して「経営に口を出すな」とは傲慢な考え方ではないか。
半沢直樹では電脳雑伎集団や資金を提供する東京中央銀行を悪者のように描いているが、自分勝手なのは間違いなくスパイラルの方だ。
会社を自分らの好きに経営したければ経営権を維持できる過半数の株式を創業者が手放さなければいいだけだ。上場して過半数以上の株式を証券市場で換金し自社の経営資金にした以上、会社は創業者の自由にはならない。
このドラマは前のシーズンと同様、最後の最後に善が悪に勝つ、という分かりやすいベタな展開が受けているのだろう。
だが、勘違いしてはいけない。合法であればビジネスの世界には善も悪もない。
利益を上げるものが有能で、利益を上げられないものが無能、という単純な基準があるだけだ。