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私は死んだ後の世界を両方とも見た。ハンピ旅行③

天国。
かどうかはわからないけど、とにかくあっち側。

小さな頃に両親だかの大人から聞いた怪談の類で、
子どもが親より先に死ぬと、
川辺で石を積み上げてそれを鬼が崩してはまた子どもたちが石を積む。
そんな悲しいお話があったのだけれど、
大きな岩の上に絶妙な角度でまた岩が乗っていて、
それはあたかも自然の力ではなくて人間の力でもなくて、
何もわからないまま死んでしまった子どもたちが、
ただ親を思って積み上げている様に思えてくる。

ちなみに私はこの2日後、ありえないほどの悪夢を見ている。
記憶にある今まで見た夢の中でもダントツにグロテスクなやつ。

もしかしたら、簡単に見てはいけないものや、
気付いてはいけないことに気付いたんじゃないかとかって。
許さないって言ってる。



「これは人間がやったのか」と聞くと、
ガイドに変身したドライバーが「そんなわけないだろ、自然だ」と言い張る。
「嘘つけ、自然にあんなんなるわけないやろ」
「人間にあんなことできるわけねーだろ」の応酬が続いて、
結局やっぱり「人間でも自然でも無いなにか」ってことになった。

BADAVILING temple
LAKSHMI NARASMIHA templeと続く。



別に頼んで無いのに、
シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーの話からちゃんと説明してくれる。

自分がインド英語に慣れたせいもあるんだろうけど、
今まで数行ったインド観光地で聞いたどの説明よりわかりやすい。

あんた英語達者やなぁとあくまでもお世辞で言うと、
彼は何と学校で英語は習っていなくて、
オートで観光客を相手にするうちに覚えたと。
だから書けないし読めない。
だけど過去形やなんかもちゃんと使い分ける。

そこから身の上話になって、5歳で父親が死んでから、
一応学校は行ったけど公立だから英語は教えてもらっていなくて、
13歳からもう働いていて、
バナナ農園、野菜売り、レストランのボーイを経て、ドライバー。
御年24歳。
そして明日25歳になるそう。

「じゃあ今日はパーティーか!」と聞いたところ、
「最近まで誕生日知らなかったんだよねー。
マミーも教えてくれないし、免許取る時に初めて知ったんだー。
それに誕生日パーティーなんかしたことないよ。」だそう。


それはたくましくなるよね。
何かもうちょっとかっこ良く見えてきたよ。
うちの弟と同い年で家族のために休み無しで13歳から働いてるんだもの。
うちのまーくん(弟)なんかさ、
結構な良い会社に入ったのに仕事がゆるすぎて逆にだりいから
マジ公務員なろっかなそしたら一生安泰だしとか言ってるのにさ。
まーくんしっかりしろよ。
お姉ちゃんはパパママに甘えこそすれど支えるだけの後ろ盾が無いんだよ!
あんた長男でしょ!


美しい。

イスラム勢力に破壊されたとか何とかの割には、
きれいなまま残っているものもたくさん。
曲線がたまらない。

続いてZENANA ENCLOSURE、ELEPHANT STABLEへ。


象舎ってこと。


柱、天井、どこを見たって美しい。
カビのにおいがたまらない。
壊れてしまった文明がすぐここに。

小さな村にこれだけ見どころのある遺跡があって、
エレファンタやマハーバリプラムより規模が大きな石窟で、
カジュラホよりもずっと自然の壮大さがあって、
バラナシやコルカタみたいな喧騒が無いからイライラもしなくて、
これはどうやらインドで好きな場所1位が濃厚。

天国。
続く。

私は死んだ後の世界を両方とも見た。ハンピ旅行②

KALYANゲストハウスの入り口。
ヤギが落ちた若い葉を食む。


大都会ムンバイの喧騒とは対照的な田舎の村。
サトウキビとバナナ農園に囲まれて、牛が群れで移動して、
数軒の旅人向けのレストランと、数えるほどの小さなお店があるだけのメインバザール。
ゆるすぎる。
オートリキシャもほとんど通らない。
いかにもインドや世界を一周してますって感じのだめな感じの欧米人と日本人がちらほら。
かく言う私だってきっとそう見えている。
そんなもんだし実際。
一応聖地なのでお酒も肉類も禁止されているとか。

ハンピの街の中心にそびえ立つ大きな寺院。


横目にまずはマトゥンガヒルへ。

これを登る。

ちゃんとした道があるわけではなくて、
ただの岩とたまに階段があってそれを縫っていく。
「どうせ一人じゃわからんだろ」と言いながら、
ドライバーが山頂まで一緒に登ってくれた。
結構な熱射の中サービスでやってくれているならかなりいい奴。

汗だくで20分ほど岩を登って、

登り切ると、
そこはもう完全にいっちゃってた。


ハンピの街と遺跡を一望。
しかもオフシーズンで一番暑い時間帯のため他に誰もいない。

そこにオートリキシャのドライバーと二人きり。




あなたに非があるわけでは無いけれど、
あなたではない人と二人で登りたかったorz

ぐらいの世界が眼下に広がる。

天国ってこんな感じかも知れない、とか思う。
本気で思う。

照りつける太陽と、
鳥の鳴き声と、
風の音と、
先人たちが築いて、別の先人たちが壊した遺跡、
どう考えたって自然の力でも人間の力でもどっちでも無い様な、
そんなので岩の上に危うく乗ったままの、
転げ落ちそうで転げ落ちない岩たち。
そしてあなたではない人と登りたかったと思われているドライバー。



これだから写真や動画で済ませられないんだ。
世界遺産も石窟も、どんなにしんどくても現地に行かないと納得しないのは、
これだから。
写真と実物は残酷なほどに違う。
携帯の中になんて何も残っていない。

あまりの絶景に良い意味で頭は真っ白で、
日本に無理やり置いてきたものとか、
インドでまだ向き合えないこととか、
もう本当どうでもいいや。
ただ圧倒されるばかりで、
静かで、
平和で、
多分死んだらこんなだ。





本当にちょっとあっち側に行けてしまうほどの景色。
絶景。
何も遮らない。


丘を下って、次はガネーシャ寺院へ。


ここは迷わないので一人で進む。
大きなガネーシー。


息を呑む絶景が続く。
暑いのも忘れてただ見とれるばかり。

天国がここにあった。
天国だ。

続く。

私は死んだ後の世界を両方とも見た。ハンピ旅行①

雨季が来る前に行っておきたかった場所があった。
世界遺産、ハンピ。

そこへ行ったことのある日本人がこぞって大絶賛していたから。
ってゆうか石窟が好きだから。
何より石窟が好きだから。

木曜日、仕事を無理やり終わらせて、早退して、
アンデリーイーストの高速バス乗り場へ。

インドのくせして予定の10分前にバスが到着して、
まだ乗り込んでる途中なのに動き出す。

ハンピはその魅力から非常に人気の高い観光地ではあるが、
何せアクセスが悪い。
一番近くで一番栄えているバンガロールでもバスで一晩かかる。
ムンバイからはバスで14時間。
電車だと乗り換えが必要なので、敢えてのバス。
不安しか無い。



ただしインドの寝台バスは完全にフラットなので、
さらにカーテンを閉めれば個室みたいになるので、
日本の高速バスよりよっぽど心地が良い。
最初いくつかのバス乗り場で停まる度に、
水やらサモサやらを売りに来るおっさんやなんかに、ちょっと覗かれて、
「水いらん?」って聞かれるのが億劫なぐらい。

そして運転が荒い。
知ってる。
そんなの知ってた。
インド人の運転が荒いことは知ってた。

しかし乗り物酔いするレベルとは思っていなかった。
気持ち悪いいいいいいいい
おえー
横なっても吐きそう。
あかん死ぬ。

ってなって、私の薬箱に一つだけ入っている酔い止めカプセルにとうとう手を伸ばす。
これは日本から持ってきた貴重なやつで、
よっぽどじゃない限りは飲みたくなかった・・・

って帰りもバスじゃん!どうすんの!
帰りどうすんの!!

で、カプセルの中身を半分だけ出して飲むという荒行を遂げる。
揺れ動く車内で、
カプセルの中身を半分飲んで、半分戻して、
荒い運転とブレーキを踏む度に響く不快な音と、
他の席で大声で話すインド人とに囲まれて、
私が寝付いたのは多分10時間ほどしてからで、
ただただこんな不毛な旅行に出てきた自分を呪う。
10時間、悔恨の念だけでやり過ごす。
何で・・・何でまた旅行来てもうたんや。
しんどい方の旅行に何でまた来てしもたんや・・・
おとなしく週末はスタバで本読んでフォーエバーで買い物しとけばいいものを。
なんでなんほんまに。
石窟って何なん。
見て何になるん。
誰が得すんの。
ってぐるぐる自分を責め続け、嘔吐感と自責によるストレスで体も心もぼろぼろで、
やっとうとうとしていた折に、カーテンを開けられて、
「ホスペットに着いたぞ!」と起こされた。

このホスペットと言う街がハンピへの入り口となる。

もう出るからさっさと降りやがれ!みたいなことを言われて、
慌ててメガネをして荷物を詰め込んで外へ出ると、
早速リキシャワラ達が半分バスに乗り込むかたちで待っていた。

一番積極的な全然尊い感じのしないキリストみたいなおっさんが、
「ハンピか!300でどうだ!」と開口一番言って来て、
相場はすでに確認していたので、
「やだよ、150だ」と返したところで、
「じゃあ200だ!ベストプライスだ!どうだ!」とまだ粘ってくる。

普段ムンバイと言うメーターでオートが走る快適な街で過ごしているので、
このオートの交渉はインドに住んでいてもものすごく苦手。

少し離れたところで何も言ってこない若いお兄ちゃんにこちらから
「150ルピーでハンピ」と言うと即効でOKが出たので乗り込んだ。

全く悟っていない感じのキリストみたいなおっさんがなにやら
その若い運転手に「俺の客だぞ!」と怒っているみたいだけど、
私の方だってはっきり言って、
煩悩しか無い感じのキリストみたいなおっさんよりは若いお兄ちゃんの方が良い。

若いお兄ちゃん。

この後のハンピを運転手兼ガイド兼カメラマンとして2日間行動を共にすることになる。

30分ほど走って、ハンピ。
それはもうあっち側の世界だった。

いっちゃってた。

まずは予約してあった日本人のやっているKALYANゲストハウスへ。
着くなり若いお兄ちゃんが、
日の入りまで800ルピーでオート貸し切りどうや、と営業を掛けてきた。

もともとオートを貸しきって回るつもりだったので、
相場はよくわからなかったけれども、
英語がちゃんと話せることと、
何より自己犠牲が微塵もないキリストみたいな感じではなかったので、
とりあえず一日チャーターすることに。

今ハンピだけでなくインドは真夏でどこもオフシーズン。
観光客の少ない今、みんな営業熱心。

まだ朝の8時なのにゲストハウスのご主人が掃除をしてお部屋を空けてくれた。
小奇麗なさっぱりしたお部屋でした。

なんと1泊350ルピー、700円ほど。

少し休んでから、
地球の歩き方にも載っているマンゴーツリーレストランで朝ごはん。

写真だと全く伝わりませんが、下北沢にあったっておかしくないぐらいの
おしゃれなカフェでした。

そして遺跡と石窟巡りへ。
続く。











6月8日の追伸。
どうか明るいところにいてくれます様に。
忘れてなんかないよ。