どうも、はちごろうです。

 

 

3月に入って結構話題作がちらほらと。

1月2月の感覚で呑気に構えていたら

アカデミー賞の有力候補作が下旬に控えてて、

もうすでに上映作品のやりくりを始めなければいけない状態で。

そんな中、月曜日に「シン・エヴァ」の完結編の公開が決まり、

軽くパニックになっている状態です。

では、映画の話。

 

 

 

「ソウルフル・ワールド」

 

 

 

 

 

 

ディズニー×ピクサーの3DCGアニメ最新作。
不慮の事故に遭い、魂の世界に迷い込んでしまった男が、
生まれることを拒否してその世界に止まり続ける魂とともに
再び元の世界に戻るために奮闘する様を描く。
監督は「インサイド・ヘッド」のピート・ドクター。

あらすじ

NYのセブンティ中学校で非常勤の音楽講師をしているジョー。
彼は音楽好きの父親の影響でジャズピアニストになる夢を持っていたが、
仕立屋を営む母親には「夢を追わずに定職に就け」と言われていた。
そんなある日、学校側から正式に教員として採用通知を受けるが、
それはピアニストとしての夢を諦めることでもあった。
時を同じくして、ジョーはかつての教え子ラモントから連絡を受ける。
彼は現在有名なジャズサックスプレイヤーのドロシアのバンドで
ドラムを担当していたのだが、ピアニストに欠員が出たとのこと。
そこでジョーに白羽の矢を立てたというのだ。
母親に内緒でオーディションを受けた彼は見事合格。
その夜のライブへの出演が決まり、夢見心地でライブハウスから帰宅中のジョーは、
道路工事中でふたの開いていたマンホールの中に落下してしまう。
気がつくと、彼は全身薄青色の二頭身の身体になり、
真っ暗な中、光に向かって動くベルトコンベアの上にいた。
近くにいた似たような青い身体の人に話を訊くと、
ここは現世で亡くなった人が成仏するための場所だという。
ライブに出たいジョーはベルトコンベアを逆行し、そこから落下。
気がつくと彼は薄ぼんやりとした原っぱのような場所にいた。
そこは人間が生まれる前の世界「ユーセミナー」。
そこでは生まれる前の魂たちが様々な性格を与えられ、
地上での様々な職業を体験できる「万物の殿堂」と呼ばれる施設で
「メンター」と呼ばれる歴史上の偉人たちの魂の指導の元、
生きる意味「きらめき」を体得。そうしてそれぞれの個性が完成すれば
地上への入り口「ポータル」に飛び込み、晴れて魂たちは地上への転生を果たすという。
成仏する前の魂の状態になっていたジョーは、
ユーセミナーの管理官ジェリーからメンターに間違えられてしまう。
成仏を避けるためにドイツの児童心理学者ボルゲンソンになりすましたジョーは、
ジェリーから魂番号22番の教育をまかされる。
彼は22番の性格を完成させたらそれを奪って転生しようと目論んでいたが、
22番は何百年も転生することを拒否し、多くのメンターを困らせていた魂だった。
そんなジョーに対し、22番の方が逆に興味を持つ。
ジェリー達は長年転生することを拒否してきた22番に対し、
生前に多くの功績を残してきた優秀なメンターを付けてきたが、
22番はどのメンターも逆にやり込め、諦めさせてきた。
そんな22番は音楽の非常勤講師として冴えない人生を送りながら、
それでも現世に戻りたいというジョーの手助けをしようと考えるのだった。
一方、魂の世界で成仏する魂を数える管理官のテリーは、
通過する魂がひとつ足りないことに気付き、調査を開始するのだった。

 

 

 

「どう生きるか?」はさほど重要じゃなくて



「インサイド・ヘッド」で人間の頭の中をアニメ化したピクサーが
今度は人間の魂の形成過程をアニメ化、と思ったんですが、
今回はそういう最新の脳医学に基づいた話ではないようで。
生前に歴史上の偉人と触れあうなんて科学的根拠はないですしね。
むしろ本作は「生きるとは何か?」という
シンプルかつ哲学的な問いと格闘している感じで。

主人公のジョーは中学校で非常勤の音楽講師をしながら
ジャズピアニストとしての夢を捨てきれずにいるんですが、
そこに学校側からの音楽教師としての正式採用と
有名ミュージシャンのバンドメンバーになるチャンス、
その両方がいっぺんに舞い込むわけです。
母親は当然教師としての安定した就職を半ば強要してくるように望むんだけど、
ジョー本人としてはそれが千載一遇のチャンスだと思ってる。
確かに生活基盤が安定していることは人生において重要なんだけれども、
でもなりたいものになれるチャンスを自ら潰した後悔と引き換えて
お釣りが来るものなのか?たった一度の人生なのに、というね。
非常に難しい選択を迫られるわけです。

一方、ジョーが魂の世界「ユーセミナー」で出会う魂22番。
この子は何人もの「メンター」と呼ばれる偉人たちに説得されても
何年も人間になることを拒否し続けているんですね。
これ、ただ単純に生を受けるのが怖いとかそういう話ではなく、
「どう生きたら『正解』なのか?」ということを
生まれる前から考えさせられすぎた結果だと思うんですよね。
昔は子供が生まれると「末は博士か大臣か」なんて言われましたけど、
これを言ってた当時の親ってそんな真剣に考えてなかったと思うんですよ。
単純に「どんな子に成長するんだろう?楽しみだな」程度のことで。
ただ現在の親ってつい「末は博士か大臣になってもらわないと困る!」って
必要以上の期待を掛けすぎてしまい、
また子供たちはその親の期待する人生を歩まなければと自分の意志を押し殺し、
結果子供の人生を潰してしまうケースが少なくない気がするんですよ。
そりゃあね、何も経験していない段階から100%の正解を出すことなんて不可能だし、
失敗すれば厳しく批判されることがわかっていれば誰も行動しようと思わないですよ。
以前、コラムニストのジェーン・スーさんが
「人生に正解なんてなくて、辿り着いた先を正解にするしかない」
みたいなことをおっしゃってたんですが、まさにその通りで。
つまり22番は「何者かになること」が人の幸せ、人生の義務だと教え込まされ、
その高いハードルに尻込みしすぎてしまったわけです。
でもジョーと出会ったことで、22番はそれが違うんじゃないか?と気付くんですね。
生きる喜びは何も「偉い人になること」だけではない。
例えば旨い飯を食ったときや良い音楽を聴いたとき、
夕焼け空を分けるように浮かぶ飛行機雲や、春の風が頬を撫でる感覚など、
身の回りにいくらでもあるんだってことに気付いていく。
そしてそれは他の誰でもない、自分で経験することが重要だというね。


コロナ禍も手伝って世界の常識が変わっていく中で
どう生きたらいいのか悩んでる人は多いと思うんだけど、
どんな時代になっても「生きる意味」は身の回りに転がってる、
それを大事にしていくことが重要なんだと諭してくれる一本。

ここ数年、ピクサーアニメって子供向けのようで
実際は大人の本音を子供に押しつける作品が少なくなかったですが、
本作は久しぶりに子供たちのために作られた作品だなと感じました。



[2021年1月31日 Disney+]

 

 

 

 

 

※それではピート・ドクター監督の作品を