どうも、はちごろうです。

 

 

 

昨日はゴールデングローブ賞が発表になりましたね。

作品賞はドラマ部門が大本命の「ノマドランド」、

ミュージカル・コメディ部門は以前紹介した「続・ボラット」で。

とはいえ、昨年韓国映画の「パラサイト」を選んだように、

アカデミー賞は独自の選考基準を模索してるというか、

他の映画賞とはまた違った力学が働く気運が高まってる感じなので、

何がノミネートされるか、予想が難しい感じがします。

では、映画の話。

 

 

 

「ザ・ファイブ・ブラッズ」

 

 

 



「ブラッククランズマン」のスパイク・リー監督の最新作。
ベトナム戦争時代、山奥の戦地に隠した金塊を回収するため、
再びベトナムに戻った黒人帰還兵達の姿を描く。
出演はデルロイ・リンドー、チャドウィック・ボーズマン、ジャン・レノ。

あらすじ

ベトナム戦争時代、多くの若い黒人達が白人達に先駆けて徴兵されていった。
それに対し、マーティン・ルーサー・キング牧師やマルコムXなど、
黒人活動家らは非難の声を上げたが、彼らは次々に暗殺されていった。

ベトナム帰還兵のポール、オーティス、エディ、メルヴィンの4人は、
かつて共に戦った隊長ノーマンの遺骨を探すという名目で、
国防総省の許可を取って再びベトナムに向かった。
4人は当時を懐かしみながら観光気分でベトナム到着の夜を楽しんでいた。
そんな中、オーティスは当時恋仲だったベトナム人の元娼婦ティエンの元へ。
実は4人には遺骨回収とは別に、国にも秘密の重要な目的があった。
当時、5人は森林地帯に墜落した軍の輸送機の積み荷を回収する任務に当たった。
中身は現地の村人に協力金として渡す予定だった箱いっぱいの金塊。
ところが墜落現場近くを張っていたベトコン達の襲撃を受けてヘリは墜落。
生き残った5人は銃撃戦の末、一旦は敵を追い払った後、金塊の入った箱を確認。
ノーマンはこれらを隠し、軍には積み荷はもうなかったと嘘の報告をし、
戦争終結後に時期が来たら再びこの国に戻ってこの金塊を回収、
建国以来蔑ろにされてきた同胞達のために使おうと約束する。
しかし再びベトコンたちが戻って戦闘となり、ノーマンは命を落としてしまった。
彼らは当初の計画通りに金塊をノーマンの遺体と、墜落した輸送機近くに隠して帰国。
そして約半世紀ぶりにその金塊を回収しに来たのだった。
4人はティエンの紹介で現地のフランス人ビジネスマン、デローシュと接触。
取り分でもめたものの、どうにか金塊を現金化する算段を付ける。
そんな中、ホテルで準備中のポールの元に息子のデヴィッドが現れる。
彼はこのところ不審な様子だった父親を心配し、
メールを盗み見て計画を知ったことで計画に加えろと要求する。
そして4人は、デヴィッドと共に再びジャングルへと戻っていくのだった。



リー監督が暴く「黒人と戦争」



監督はNYの巨匠スパイク・リー。
リー監督に関しては前作「ブラッククランズマン」の感想をときにも振れましたが、
NYを拠点に、黒人差別問題を中心とした社会派の黒人監督で。
長年高い評価を受けているものの大々的に知名度が上がることはなく、
前作「ブラッククランズマン」でやっとオスカー脚本賞を獲ったわけですが。


さて、今回はベトナム戦争中に手に入れた金塊を取り戻すため、
数十年ぶりにジャングルに戻る年老いた黒人帰還兵達の物語で。
改めて考えてみると、ベトナム戦争を扱ったアメリカ映画って
たいてい主人公は白人で、黒人兵士は出てきても脇役扱い。
中心的な役割を与えられてる作品ってあまり記憶にない。
でも実際には白人だけでなく多くの黒人が徴兵、
しかも白人達に先んじてベトナムへ送られていったことが
本作では冒頭から説明されていくんですね。
当時、いま以上に白人達が実権を握っていた米国社会で、
自分たちマジョリティよりも先にマイノリティから戦地に送る、
汚れ仕事を押しつけることを平気でやっていたわけですよ。
そして黒人達は社会の中で受け入れられるために、
白人達の考えを薄々わかっていながら戦地に行ったわけです。
でも彼らの願いを白人達は汲み取らず、
都合よく彼らの能力を利用してきたわけで。

で、実は今年の賞レースを賑わしてる黒人映画って
「黒人達の才能や能力を白人達が搾取する」話が多いんですよ。
それこそ以前感想をアップした「マ・レイニーのブラックボトム」もそうだし、
近いうちに感想をアップする予定の作品もそんな感じで。
そしてそれはおそらく現在でも続いていることなんだろうなと。

閑話休題。
そんな白人達に搾取されてきた黒人達が一発逆転のチャンスをものにするため、
再びベトナムに戻って米国政府の金塊を強奪しようという、
ある種の壮大かつ痛快な復讐劇が始まるんですけどね。
でも彼ら4人はそれぞれに過去、そして現在に至るまで
社会の中で何かしらの搾取をされ続けてて、
その苦悩もまた描かれていくわけですよ。
特に一応の主人公となるポール。
彼は黒人でありながらトランプ支持者なんですね。
普段から「MAGA(Make America Great Again)」のロゴが入った
赤い帽子をこれ見よがしにかぶってるような。
どんなにトランプに忠誠を誓っても黒人のポールには見返りがない。
でもこれ以上社会の中で存在感を失わないよう、
存在を認めてもらおうとしてトランプを支持する矛盾というか、
切なさが描かれていくんですね。これが何ともやりきれなくて。


ただ、監督のスパイク・リーには悪いクセがあるというか、
個人的に合わない演出があるんですね。
それは自分が訴えたいテーマを作中で声高に主張しすぎること。
黒人達の受けてきた差別の歴史や、いまの社会に対する怒りを、
登場人物にカメラ目線で言わせるような演出をするわけですよ。
なんていうか、架空の物語を見ているはずなのに
急に監督本人の主張がかなり強めに放り込まれるので、
そこで話の流れがちょっと途切れちゃうというか。
前作の「ブラッククランズマン」はそのクセを最後まで温存したというか、
我慢した結果、物語が壊れることなく観続けることが出来たのですが、
今回は全編にわたってちりばめられているので
何度も小言を言われてるみたいでした。

メッセージを伝えることに対してさりげなさとか全然なし。
とにかく声高に主張する。しかもそうしないと気が済まない感じ。
そもそもの演出力が確かなんだからそのまま見せれば十分伝わるのに、
ついついアピールしすぎちゃうから主張がくどく見えちゃう。
もしかしたら私はスパイク・リー作品、苦手かもしれません。



[2021年1月24日 Netflix]

 

 

 

 

※従来、ベトナム戦争といえばこれらの作品でしたね。