どうも、はちごろうです。
では、映画の話。
「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」
昨年のサンダンス映画祭で監督賞と審査員特別賞をW受賞したドラマ。
再開発が進むサンフランシスコを舞台に、
子供の頃に過ごした家を守るために奔走する黒人青年の姿を描く。
監督は本作が長編デビュー作となるジョー・タルボット。
あらすじ
サンフランシスコ郊外・フィルモア地区にある一軒家。
黒人青年のビリーは、現在は白人夫婦が住んでいるその家を
夫婦の留守中に勝手に修繕していた。
その家はビリーが幼い頃に住んでいた場所で、
1946年に祖父が一から建てた家だった。
そんなある日、白人夫婦の母親が死去して相続問題が発生。
例の家から引っ越すことになった。
それを知ったビリーは親友のモントとともに不動産屋に行き、
しばらくは売却も取り壊しもないことを確認すると、
伯母の家に預けていた家財道具を運び込んで家を不法占拠し始めるのだった。
思い入れが強いのはいいんだけど・・・
昨年のサンダンス映画祭で好評を博し、
オバマ前大統領もベストムービーに選んだという一作、というんですけどね。
サンフランシスコというと、ゴールデンゲートブリッジとか
どえらい急坂を路面電車が走る程度のイメージで、
ロサンゼルスと区別が付いてないこともしばしばで。
公式HPでサンフランシスコの歴史をざっくり書いてあったんだけど、
元は日系人もよく住んでたんだけど第二次大戦の強制収容でいなくなり、
戦後は黒人が多く住むようになったけど彼らも後に立ち退きを余儀なくされ、
現在は地価高騰で再び立ち退きが横行。
億万長者とホームレスが同居する街になってるんだとか。
そんなの変わっていく街の空気を、地元で生まれ育ったジョー・タルボットと、
主演も務めるジミー・フェイルズが描こうとしてるんですけど、
なんていうのか、正直そんなにハマれなくて。
まずね、作中でサンフランシスコらしさというか、
よそ者が見てもわかりやすいベタな風景があまり出てこないんですよ。
しかも舞台となるのはフィルモア地区という、
ヴィクトリア・ハウスという歴史的な建築様式の住宅が建ち並ぶ街なので、
次第に「これ、サンフランシスコ?」って感じになってきちゃう。
しかも固定カメラで動きの少ない映像が続くんで、
作品の世界観に入り込めないと結構観続けるのがキツくて。
もっといまのサンフランシスコの現状を映さないと、
貧富の格差が拡大する街で生きる登場人物達の姿が
伝わってこないような感じがしたんですね。
それと話もウマいこと説明できてるかというとそんな感じもしなくて。
例えばビリーはいつも親友のモントと一緒にいて、
普段彼の家で一緒に寝泊まりしてるんだけど、
なぜビリーはモントの家で暮らしてるのかの説明もなし。
次にモントの家には目の不自由な老人がいるんだけど、
父親なのか祖父なのかもよくわからない。
で、ビリーがかつて住んでいた家が遺産相続のごたごたで空き家になり、
その後二人がその家で勝手に暮らし始めるんですけど、
直前に不動産屋に行くもんだから正規に買ったのかって途中まで勘違いしてて。
なんかこう、近所の人の立ち話とかで知った方が
逆にわかりやすくない?とか思って。
あとね、主人公が例の家を手に入れようと奔走する基本の話の他に、
登場人物の周囲にいろんな人々が出てくるんですけど、
彼らがその本筋の話にほとんど絡まないので
「この人達、必要?」ってなってきちゃって。
そして何よりここは明らかに失敗してない?って思ったのは、
本作の核となるジミーが育った家の件。
勝手に住み続けていた家がある日突然売りに出されて、
運び込んだ家財道具も全部外に出されちゃうんですね。
そこでジミー達は徹底的に抵抗をしようと心に誓うんだけど、
モントはその過程で不動産屋からその家に関するある事実を知るんですね。
そしてそれをジミーに認めさせようとするシーンに繋がるんだけど、
いわゆる「衝撃の事実」を2度描くことになってるんですよ。
その件はモントがジミーに突きつける場面で一回だけ説明した方が
観客も主人公の気持ちにもっと感情移入できた気がします。
たぶん、監督と主演の二人の地元に対する思いが強すぎて、
逆に説明不足に陥ってしまった感じがしました。
[2020年10月25日 新宿シネマカリテ 1番スクリーン]
※地元民の視点で街を描いた作品というと・・・