現在、石川県立美術館で開催中の特別展「皇室と石川―麗しき美の煌めき―
」。
今まで、4回に渡りレポートしてきました。
今回で最後のレポートです。
ラストは、王羲之編です。
今回の特別展「皇室と石川―麗しき美の煌めき― 」では、三の丸尚蔵館の所有する"皇室の名宝"と、加賀百万石"前田家が保有する名宝"を、比較しながら展示していました。
今回もそれに倣って、書聖《王羲之(おうぎし)》の書を並べています。
では、レポートします。
・国宝 喪乱帖【後期】
の、2件です。
"王羲之"は、政治家であり書家でもあった人物。とっても字が上手いことで有名です。
中国は東晋時代を中心に活躍し、この時代に"書"が芸術にまで高められました。
楷書・行書・草書を得意としていて、今、日本人が見たり書いてしている漢字のデザインベースとなっていると言ってもいいと思います。←楷行書がね(^_^;)
ただし、今回展示の2件の国宝は、草書で書かれているので、まぁ、現代人の我々にはまったく親しみがありません……というより、読めませんっ!
"書"を楽しめない、凡人の我々はチラ見して通り過ぎるだけ……
それだと勿体ないので、見どころをレポートします(^_^)/
・国宝 喪乱帖 【後期】
元は、奈良時代に中国から伝わり、正倉院に収められていたものです。
原蹟(げんせき)は東普時代(4世紀)に、王羲之が書いた3通の書簡、つまりお手紙です。
実は、王羲之の自筆の"書"は一切残っていません。今残っているのは、それを書き写したもの"のみ"なのです。
どうやって書き写したかというと、「双鉤填墨(そうこうてんぼく)」という技法で書写されています。
"塗り絵"とか"アニメのセル画"をイメージしていただければ、と思います。
原本の書の上に薄い紙を置き、文字の輪郭を写します。その中を墨で埋めて出来上がりです(^_^)
しかし、それだと墨の"かすれ"などが再現できないので、
では、内容を見ていきましょう(^_^)/
先に書いたように、3通のお手紙です。これらを継いで1枚に仕立て、軸装(掛軸形式)にしています。それぞれ書中の文字を取り、
前田育徳会所有の国宝。中国 唐時代(7〜8世紀)の作。
こちらも"王羲之"の書を「双鉤填墨」で写し取ったもの。
「"搨"王義之書(とうおうぎししょ)」の「搨(とう)」が"双鉤填墨"で写し取ったものを表します。
奈良時代に伝わり、東大寺に収められていました。
2枚のお手紙を継ぎ、1つの紙にして、軸装しています。
こちらは、横折れが入ってて、少々状態が悪くなってますね。
前半3行の"1枚目にあたるお手紙"には、深い悲しみが表され、後半6行の2枚目の手紙は、領軍の病気を案じ、手紙を求めている内容だそうです。文中"孔侍中"の文字が見えることから「孔侍中帖」の名が付いています。
こちらにも、紙の中央に縦に3つ「延暦勅定」の朱印が捺されているので、時の天皇桓武帝が御覧なされたものと考えられます。
草書で一文字ずつ書いてるって感じで、やっぱり読めないですね~(^_^;)
過去に「蘭亭序」のレポート
もしているので、そちらも読んでいただければ、"王羲之の世界観"を感じ取って貰えると思います😊
「皇室と石川―麗しき美の煌めき― 」のレポートは、以上になります(^_^)
前田育徳会の国宝は、なかなか公開の機会が少ないので、ぜひ、11/26(日)までにご訪問ください。
なぜなら、石川県立美術館2階の前田育徳会尊經閣文庫分館で、特別陳列 『前田家の至宝 II
』として、
国宝 古今集巻第十九残巻 (高野切)【後半部分】が展示されているからです!
(こちらも、11/26(日)まで)
というわけで、国宝 古今集巻第十九残巻 (高野切)〈後半部分〉のレポートは、追って出します。
その前に、東大寺での国宝 良弁僧正坐像の、特別拝観のレポート
をします。
お楽しみに〜(^_^)/