「皇室と石川―麗しき美の煌めき―」絵画編① | 死ぬまでにすべての国宝を肉眼で見る

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2023年12月現在の国宝の総数1,137件。そのうち、美術工芸品906件。これをすべて肉眼で見ようという計画です。関西中心の情報をお届けします。

万葉集編 


刀剣編 


と来て、今回は絵画編①です。

人気の、伊藤若冲ですよ。

今回レポートする国宝の絵画は、2件です。

・国宝 動植綵絵 伊藤若冲筆
群鶏図
薔薇小禽図
・国宝 春日権現験記絵より
巻八【現在は後半部分】

残念ながら、いずれも11/7(火)から後期展示に切り替わってますので、今から展覧会に行く人は、予習として見てください(^_^;)


では、個別にレポートします(^_^)/





・国宝 動植綵絵 伊藤若冲筆
群鶏図
薔薇小禽図

三の丸尚蔵館所有の国宝。江戸時代 宝暦11年(1761年)の作。

伊藤若冲は有名な画家ですが、この動植綵絵が、唯一の国宝指定作になります。(ちなみに絵画部門で個人最多の国宝指定を誇るのは"雪舟"で、一人で8件も指定されています)

この動植綵絵は、10年もの間に描いたシリーズで、全30幅あります。
その中から前期で2幅、後期で2幅の、計4幅が展示されます。
最高の絵師が描く作品は、200年を経ても色鮮やかです。

では、1点ずつ見ていきましょう(^_^)/



群鶏図
Wikipedia より
若冲といえば、鶏!
ポスターでも、メインビジュアル張ってます!
13羽の雄鶏を、細密に美しく描いています。
↑この羽のボロッとなった感じ、見て!細かいですね~
どのニワトリにもピントが合っていて、ポージングも決まってます。
比較的時代が新しい事もあって、キレイに残ってますね。



薔薇小禽図
Wikipedia より
白とピンクの薔薇🌹の中に、小鳥が1羽描かれています。どうして薔薇とわかるか?というと、
↑このトゲでわかりますね。




・国宝 春日権現験記絵より
巻八【現在は後半部分】

三の丸尚蔵館所有の国宝。鎌倉時代 延慶2年(1309年)の作。

宮廷絵師 高階隆兼(たかしなたかかね)が、最高級の画材と最高のテクニックで描いた、絢爛絵巻です(^o^)
"絹本(けんぽん)"といって、"紙"ではなく"絹地"に描かれています。そして、大判です。縦の長さが、通常の絵巻物より2割程大きく作られています。
更に、当時最高級の絵の具を使っているので、700年以上経過しても、色鮮やかに残っています。

藤原氏の氏寺だった興福寺に伝わったもので、春日明神の霊験譚を、当時宮廷絵師であった高階隆兼が描いています。
皇室へは、五摂家のひとつ鷹司家より献納されました。

全20巻の内の、巻第八を展示しています。前期で前半部分を、後期で後半部分に巻き替えての展示です。

例によって、オリジナルの写真が無いので、東博所有の模写本を使ってレポートしていきます。

《清凉寺のお話し》
奈良から京都に引っ越した、尼さんがいました。「春日詣でが、できなくなった😢」と、嘆いていたところ、夢に春日明神が現れ『我は嵯峨釈迦堂にあり!』とおっしゃられました。
そのお告げを聞き、尼は嵯峨釈迦堂(清凉寺)へお参りした……というお話し。
描かれているのは、清凉寺の本堂です。
↑奥、中央が件の尼さんでしょう。お供をそこそこ引き連れているので、位は高そうです。
↑輿を担いできた小僧でしょうか?腕をポリポリ掻いてます。
春日権現験記絵は、春日明神の霊験譚だけでなく、市中の人々の日常も描いているので、隅々まで見ると楽しいです(^o^)


《唯識論によって、難を逃れるお話し》
大舎人入道(おおとねりのにゅうどう)という男がいました。その年は疫病が蔓延っていましたが、入道は病気にかかりませんでした。

さらにある日、乱暴者の武士たちが、入道の家に押し入ろうとしたところ、先陣の武士が「この家には"唯識論"がある!」と押し入ることをやめました。……という夢を見たと、入道の使用人は話すのです。
↑まず、画面右が疫病が蔓延った話しです。
↑赤鬼👹が家に取り憑いて、屋根から逆さに、家を覗いてます。
当時、疫病は鬼が引き起こしていると、考えられていたことがわかりますね。
夫は嘔吐し、妻は心配そうに背中をさすっています。使用人が水を差し出していますね。痩せ細った犬は、ゲロを食べたそう(^_^;)
↑この家には、小屋がくっついていて、そこにも病人が寝ています。しんどそう……
↑画面左は、入道の屋敷に押し入ろうとする、乱暴者の武士団です。
↑先頭のリーダー的なヤツが、膝まづいています。この家に"唯識論"があることに感づき、畏れ入っているんです。
↑犬の口から、線が出てます。犬の鳴き声を表しています。マンガ的な表現ですね。

入道の養子だった興福寺の僧 範雅は、使用人からその話を聞いたので、入道の屋敷を家中探してみました。
すると何という事でしょう。客間の棚の奥から唯識論が出てきたのです。これには、誰もが驚きました。
↑画面右は、使用人の夢の話し。乱暴者の武士たちがいますね。
↑画面左が、範雅が"唯識論"を見つけた話し。同じ画面の中で、夢の話しと現実の話しを同時に描いています。"異時同図法"です。
↑夢の話しのはずなのに、客間の棚の中から"唯識論"が出てきて、範雅が「ほら!これ見てよ!」と驚いています。


《興福寺の僧 増利のお話し》
興福寺で学ぶ僧 増利は「"顕教"と"密教"どちらが真実なんだろう?」と悩んでいました。
そこで増利は、春日明神にお伺いを立てることにしました。
現れた春日明神は『貴きかな密教、深きかな顕教』とお答えになられました。増利は、真に仏の教えは様々なのだと得心したのでした。
↑右の柱の陰にいるのが増利で、黒い束帯姿が春日明神です。
↑お堂の中を見ると、密教形式で"修法"を行っているようです。右端に十二天屏風、中央に種子曼荼羅、左に真言八(七)祖像が見えます。


次回は、絵画編②。
このまま、春日権現験記絵 第八の後半部分を見ていきます(^_^)/