チャーリー(1992)を観る

 

チャールズ・チャプリンの自伝的映画
ステージ上で歌えなくなった母親の姿を舞台袖で見て
代役で歌い大うけする幼少の頃のデビューから
アカデミー特別賞を貰いにアメリカへ"再上陸"するまでを
架空の伝記作家との対話形式を取りながら丁寧に描かれる

 

ロンドンから一花咲かすためにアメリカへ来て
マック・セネットの下で頭角を現わし
行き詰まりつつも放浪者のスタイルを確立して
独立し自分のスタジオを持ちプロデューサーに
干渉されることなく映画作りを始める

 

彼は製作、監督、主演から音楽に至るまで
全て自分で行うことに拘った
作曲は楽譜は書けないがハミングを
プロに書き留めてもらって作曲していた
唯一の例外が殺人狂時代(1947)で
以前にオーソン・ウエルズから
脚本化する前のアイデアを聞いていたので
トラブルを避けるため5000ドル支払い
原案オーソン・ウエルズとクレジットした

 

盲目の女性が、放浪者チャーリーを金持ちと間違って思い込ませることを
観客に納得してもらうため苦労する街の灯
自分と同じ歳、似たような容姿のヒットラーを
”笑いものにしてやらなければならない”と鬼気迫りながら作った
独裁者の製作エピソードが坦坦と描かれる

 

フーヴァーFBI長官の個人的感情から眼の敵にされ
旅に出るため船で港を出た途端に国外通報命令が出される
愛するアメリカからの冷たい仕打ち
失意のうちスイスに移り住むことになる

 

映画界の宝物であったチャップリンを
守ることができなかったハリウッドは
アカデミー特別名誉賞を送ることで
彼に贖罪しようとした

 

彼は追放された国から差し伸ばされた手を
受け入れるかどうか迷う
国に対する疑心感と予想される大衆の反応
血液検査結果を無視され敗訴した認知訴訟の時と
同じようにバッシングの嵐が待ち構えていないか

 

映画は授賞式会場へ入る
彼の逆光のシルエットで終わる

 

彼を待っていたのはいつまでも終わらない
スタンディングオベーションだった
映画はその場面を何故か排除している
アメリカでは彼の再上陸の大歓迎は
有名な話かもしれないが、他の国ではどうか
きちっと伝えるべきではないか

 

原題の"Chaplin"もやさしい響きの邦題"チャーリー"からすると
冷たく突き放した感がある
世界一のチャプリンファンだった映画評論家淀川長治は
アカデミー賞授賞式でオスカーを
「複雑なな思いを隠し"Thank you"
 とシンプルに言って受け取った」と生前語っていたが
実際の映像では
"I can only say thank you."
と純粋に喜んでいるように思える
画面からうかがわれるのは
満面の笑みの奥の隠し切れない喜びだ

 

I love Chaplin

 

写真は、L.A.のLA BREA通りにあった
彼のスタジオ跡地の建物玄関
4年前に前を通って撮ったもの

 

マイレージ・マイライフ(2009)を観る
ジョージ・クルーニー扮する主人公の仕事は
企業からの依頼でリストラ対象者に
解雇を告げ穏便に辞めてもらうこと

 

リストラ宣告を外部委託する企業があることも驚きだが
それを生業(なりわい)とする企業の存在も驚きだ
(需給バランスから言えば当然だが)

 

リストラを告げられた人の反応は
怒り出す人、落ち込む人など千差万別
彼は「これはあなたが再生するいい機会だ」
そしてあらかじめ眼を通していた履歴書から
「今が昔からやりたかった夢を実現するタイミングだ」
と大学での専攻、趣味嗜好へ話題をそらし
首を切る企業が訴えられることを防ぐ

 

彼の生きがいは航空会社のマイルを貯めること
もう少しで夢である史上7人目の1千万マイル(16億キロ)に到達する
アメリカの各都市への出張リストラ宣告は
マイルを貯めるにはうってつけの仕事
そこへコーネル大出身の女性新入社員が
リストラ宣告もインターネット回線テレビ電話を使い
出張を減らして経費を削減すべきという案を
提案し会社もその方向へ傾き始める

 

主人公がたまに帰る家は
小さな部屋一つで家具も最低限あるのみ
当然家族もいないし結婚するつもりも無い
そんなとき自分と同じように旅をするのが仕事の
魅力的な女性に出逢い意気投合する
趣味やライフスタイルもぴったりだ

 

このあたりから映画の様子が変わる
それまでは主人公の生き方に
共感するような態度だった映画自身が
主人公に対してシニカルになっていく

 

低予算でビッグネームは皆リストラされた結果か
ジョージ・クルーニー以外の出演者は
なじみの無い役者ばかり
原題は"Up in the Air"
空の上でとかの意味なので
内容からすると邦題のほうがしっくりくる
昔"Somebody Up There Likes Me"
"空の上の誰かが俺らのこと好きみたいだ"
という素敵なタイトル映画があった
「傷だらけの栄光」(1956)だ
ポール・ニューマン主演で
スティーブ・マックイーンがチョイ役で出ていた

 

例によって朝方観ていて
起きてきたカミさんが
「あっこの人素敵 こんな風になって」
とジョージ・クルーニーを見て言った

 

「成れるもんなら成りたいワイ!
 でも、もし成ったら ここには居ないぞ」
(後半部分は言えませんでした)


 

***

 

2011/5/8(日) 午前 5:15

1泊2日のはずのTokyo tourは
何故か3泊4日になってしまった
その間長女次女の部屋をbaseに過す

 

GWは子供が実家に帰省するのが普通だが
親が子供の棲家に寄生してしまった
おまけに長女に就職祝いだといって
”いきつけ”の鮨屋で奢ってもらってしまった

 

3日間毎朝5時半に起床し
自転車で町を探索し
朝食を摂って棲家に帰るパターン

 

3日間別の新聞を買ってみた
2日朝日、3日読売、4日毎日
GW期間中で各紙通常ボリュームでは
なかったが読み比べると
圧倒的に毎日新聞のクオリティーの高さが光った
正確を期すならば同じ日に読み比べなければ
比較できないが
個人のオピニオンなのでご勘弁

 

3面のオバマ大統領、クリントン国務長官らが
強襲作戦のライブを見守る写真ともに掲載された
「はしゃぐ米国に違和感」(北米総局長 海保真人)で
「ビンラディン容疑者掃討は、 (中略) 9・11以来この10年間で
 米国が前例なく体験した国内外での低迷と失墜を
 埋め合わせるかのような、不満のはけ口ともなっている」
と言っている
法治国家であるはずのアメリカが
刑事訴追という司法手続き抜きで
丸腰の容疑者を射殺したことは
正に不満のはけ口の対象だったことの証明だ
と僕のモヤモヤをスッキリさせてくれた

 

同じく3面の水説:韓国が狙っている(潮田道夫)では
「震災後の日本の部品・素材企業の 地位を韓国が狙っており
 対抗策として政府主導で 核心技術の海外流出を防止するため
 日本企業同士が「生産委託」で 共同防衛すべきだ」と説く
これもスッキリ案

 

その他「希望新聞」として2面を使い
被災者向けのサポート情報、市町村別仮設住宅の着工状況
行方不明者相談ダイアルを初めとする電話番号案内が大変充実している

 

そして僕がなるほど膝叩したのは
シリーズ対談:大震災のあとで 西部邁×苅部直
中で 西部は「菅政権がだらしないと批判するのは
 民主党政権を選んだ自分たちの判断に
 自信を持てないことの裏返しでしょう」と論破している

 

僕は毎日新聞の大ファンになったけど
僕は折込チラシフリークで毎週末のうんざりする程の
折込チラシを1枚づつ見るのが楽しみなので
これからもずっと中日新聞です

 

あっ写真は岡本太郎記念館での
太郎さんとの1.5ショット
108回目は煩悩満載になった


 

***

 

2011/5/6(金) 午後 10:31