全仏オープンの男子シングルスで、錦織がスペインのフェルナンド・ベルダスコを逆転で破り、2年ぶりの準々決勝進出を決めました。

 

全仏オープンはどんな大会?

 

試合が始まってすぐに、錦織の動きが少しおかしいことに気付きました。足から腰にかけてどこかに痛みを抱えているような感じで、全力でプレーができていない状態でした。

 

勝負云々ではなく、錦織がいつ棄権をするかという感じで見ていました。しかし、第2セットから徐々に体が動くようになっていき、激しいストロークの打ち合いもできるようになりました。

 

試合後には股関節をアイシングしていましたので、股関節に痛みがあったのかもしれません。それでも、第1セットとは逆に第4セットではベルダスコを圧倒して準々決勝進出を決めました。

 

資料出所:全仏オープンホームページ

 

試合を通したウィナーやアンフォーストエラーの数は両選手ともそれほど差はないですが、2セットまでと第3セット以降では非常に対照的で、試合の流れが大きく変わったことが分かります。

 

 

1セットと第2セットでは錦織のウィナーをアンフォーストエラーの数が大きく上回り、第3セットは錦織のウィナーが増えてアンフォーストエラーを上回っています。第4セットではベルダスコのウィナーをアンフォーストエラーが大きく上回っています。

 

1セットは錦織が動けていなかったことと、ベルダスコのトップスピンが強力で錦織がそれに対応できていなかったことで、錦織のアンフォーストエラーが非常に多くなっていました。特にサーブと回転数の多いフォアハンドに、錦織がほとんど対応できていない状態でした。

 

錦織は足の状態が良くないためか、細かいステップがあまりできていなく、低い体勢になってボールを打てていませんでした。そのため、棒立ちのような体勢で打つことが多く、それによってミスが多くなっていました。

 

また、ベルダスコのフォアハンドは強烈なスピンが掛かっていて、ボールがバウンドした後に高く跳ね上がります。弾んでいる時には、錦織の方よりも高く弾んでおり、その対処に錦織は苦しんでいました。

 

2セットの第1ゲームでは、少しベルダスコのボールに慣れてきたのか、ライジングで打ったボールをコントロールできるようになり、いきなりベルダスコのサービスゲームをブレークします。但し、第2ゲームをすぐにブレークバックされて、流れを引き寄せることはできませんでした。

 

それでも第4ゲームで、この試合初めて錦織がサービスゲームをキープをします。但し、ストロークの打ち合いでは、ベルダスコにフォアハンドを打たれると押し込まれる状態になり、どうしても守勢になってしまっていました。

 

ストロークでは、ベルダスコのバックハンド側にボールを集め、できるだけベルダスコにフォアハンドを打たせないようにしていました。ただ、バックハンドばかりに打っていると、ベルダスコにも読まれてしまい、バックハンドでも打ちこまれてしまいます。そこで錦織は、フォアハンド側にもボールを打つことで、ベルダスコの意識がフォアハンドにも向かせることで、ベルダスコにコースを絞らせないようにします。そして、フォアハンドに打つ時にはベルダスコに強打されないように、強く深いボールを錦織は打っていました。

 

この配球によって、ストロークの打ち合いでベルダスコが圧倒的に押し込んでいる状態から、徐々に錦織が主導権を握れるようなポイントも増えていきます。第1セットでは、ベルダスコがベースラインの近くでストロークを打ち、錦織はベースラインから2メートルくらい下げられることが多かったのですが、第2セットでは逆の展開になるポイントが出てくるようになります。

 

6ゲームでは、デュースが5回と長いゲームになり、ベルダスコにブレークポイント握られることもありましたが、錦織が粘ってサービスゲームをキープします。

 

このゲームをブレークされたら、またベルダスコに大きく流れが行くことになりましたので、キープしたことはゲーム全体の中でも非常に大きかったと思います。ストロークの打ち合いでも、錦織が先に仕掛けて主導権を握るポイントが増えていき、錦織のミスが減ってベルダスコのミスが多くなってきて、内容的にも大きな転換点になったような気がします。

 

そして第9ゲームでベルダスコのサービスゲームをブレークします。このゲームの序盤はベルダスコがポイントをリードしていましたが、ベルダスコのミスなどでデュースになり、最後もベルダスコのミスで、このゲームを錦織が取ります。

 

続く第10ゲームを錦織はサービスゲームをキープして、第2セットを取ってセットカウント1-1のタイに持ち込みます。こういったサービスゲームでは取らなければいけないというプレッシャーが掛かるのですが、サーブのフリーポイントが2つあったことが大きかったです。

 

3セットでは、第3ゲームのベルダスコのサービスゲームを先に錦織がブレークしますが、第6ゲームにベルダスコにブレークバックされてしまいます。

 

次の第7ゲームをベルダスコにキープされると、流れがベルダスコの方に傾いてしまうのですが、最初のポイントをベルダスコはダブルフォルトで失います。その後も錦織が先行してベルダスコが追いかける展開になりデュースになります。

 

錦織は何度もブレークポイント迎えますが、ベルダスコも粘って中々ブレークを許しません。しかし、7回のデュースの末に、錦織がこのゲームをブレークすることに成功します。

 

ベルダスコがブレークバックした直後のゲームでしたので、もしベルダスコがこのゲームを取っていたら勢いに乗った可能性があります。そういった意味では、第7ゲームをブレークできたことは錦織が自らの方に流れを引き寄せたということでも非常に大きかったです。

 

ベルダスコにとっては、最初のポイントをダブルフォルトでポイントを先行されたことと、2回あったゲームポイントをダブルフォルトとストロークの凡ミスと自らのミスで失ったのが痛かったと思います。ベルダスコのストロークはトップ選手と比べても遜色ないものがありますが、この辺りのゲーム運びがトップ選手との差だというのを感じました。

 

また、第3セットでは、ストローク戦で激しい打ち合いになるケースが多くありました。どちらかが良いショットを打ってもボールが甘くならず、34本連続で良いショットを打ち続けないとポイントが取れないことが多くなって、レベルが高く見応えのあるストロークの打ち合いが多くありました。

 

3セットを錦織が取ったことでベルダスコは気落ちしたのか、第4セットの第1ゲームでベルダスコはサービスゲームでミスが重なりブレークを許します。

 

2ゲームの錦織のサービスゲームは0-40とピンチを迎えます。しかし、錦織は先に攻めてベルダスコに攻める機会を与えず、5ポイント連取してサービスゲームをキープします。これでベルダスコは精神的に完全にダメージを受けたようで、その後のゲームではミスが増えていき、錦織がこのセットを6-0で取って勝利を収めました。

 

1セットの錦織の様子からは、錦織の体が1試合持つのかが不安でしたが、見事に復活して逆転で準々決勝進出を決めました。三回戦では攻めに出た時のストロークのミスが多かったのですが、同じような調子だったらベルダスコにはストレートで敗れていたでしょう。

 

 

次は第1シードのマレーが相手です。ベルダスコ戦の第3セット以降の調子であれば、マレー相手でも十分勝てると思います。

 

問題は、錦織の体調です。ベルダスコ戦でも、試合の途中で痛みがあるような仕草がありました。股関節に痛みがあるようなら、大会中に完治することはないと思います。あとは、プレーに大きく影響するほど悪化しないことを祈るだけです。

 

 

また、試合はテレビ東京の放送を見ているのですが、見ていて気になることが2つあります。ひとつはブレーが始まっているのにCMが終わらないことです。時には23ポイントも終わっていることがあり、CMによってプレーが見ることができないことが多くありました。テニスではコートチェンジの際に時間制限があるので、それに合わせてCMを流せば、CMによってプレーが見られないということは避けることができます。更に酷い時は、コートチェンジではないゲームとゲームの間にCMが入ることもありました。

 

もうひとつは、画面右上の余計なテロップです。向こう側の選手がエンドラインから大きく下がってストロークを打っていると、テロップと選手が重なってしまうことがあります。常時表示する必要のないものですので、せめてプレー中は消してもらいたいです。

 

 

男子シングルスはトップシード8選手のうち7選手がベスト8に進出しています。仮にマレーに勝ったとしても、準決勝と決勝も厳しい相手になります。

 

但し、ベルダスコ戦の後半のプレーができれば、錦織は優位に試合を進めることができると思います。苦しみながらも勝ち進んでいくことで、錦織も自信が持てるようになってきているようです。故障が酷くならなければ、非常に面白い勝負が見られると思います。

 

 

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