先日、安倍首相が消費税率10%への引き上げを再延期することを表明しました。財務省やマスコミは、日本の消費税率は欧州など外国に比べて低いので、税率を引き上げて税収を増やすべきだと主張しています。

 

しかし、消費税率を引き上げても結果として税収は減ってしまいますので(詳しくは「消費税増税しても税収は増えない」 参照)、消費税率を上げることの目的がそもそも達成できません。

 

そして、外国は日本よりも高い消費税率なのだから、日本も同様に税率を上げろというのは非常に乱暴な主張です。また、外国を見習えという時には米国を例に挙げることが多いのですが、何故か消費税については米国のことがあまり出てきません。

 

それは、米国には消費税がなく、同じ間接税の小売売上税の税率も日本の8%より低い州がほとんどだからです(詳しくは「米国には消費税(付加価値税)がない」 参照)。

 

米国のほとんどの州の小売売上税の税率が、日本の消費税率8%よりも低いことが知られたら、多くの人が消費税率を引き上げることに疑問を持ってしまいます。

 

 

また、日本や欧州など多くの国で導入されている消費税(付加価値税)と、米国が取り入れている小売売上税には、大きな違いがあります。消費税は、製造、卸、小売といった取り引きの各段階ごとに各事業者の売上に多段階に課税します。それに対して、米国が導入している小売売上税は、小売段階だけで課税される単段階の税です。

 

税率が8%の場合に、製造業者から最終消費者までの課税のイメージを示したのが下の図です。

 

【消費税】
消費税流れ

注)卸売業者は小売業者から受け取った税12円から製造業者に払った税8円を差し引いた4円を納税し、小売業者は最終消費者から受け取った税16円から卸売業者に払った税12円を差し引いた4円を納税します。



【売上税】
売上税流れ


消費税の場合は、製造業者から最終消費者まで商品を購入するたびに税金が課されます。それに対して売上税の場合は、最終消費者が購入した時だけ税金が課されます。売上税は、再販する目的で商品を仕入れる場合には売上税を納める必要はありません。

 

米国の卸売業者や小売業者は、再販目的で商品を仕入れるために、税務局から再販許可証を取得することになっています。

 

多段階課税の消費税に比べて、単段階課税の売上税は免税や軽減税率を適用しやすくなります。例えば、生鮮食品は免税で、加工食品は通常の税が適用されるケースを考えてみます。

 

消費税の場合は、小売業者が生鮮食品を仕入れて、それをそのまま販売すれば免税で、加工して販売すれば課税されるとなると、製造業者(農家)や卸売業者に納めた消費税をどう扱うのかというのが問題になります。

 

一方で、売上税の場合は小売業者に納入されるまでは課税されていませんので、小売業者が販売した加工食品だけに課税すれば済みます。

 

米国の小売売上税は、食品・電力・ガスなどは多くの州で免税になっています。また、農業機械や工業用機械なども免税になっている州が多く、企業が設備投資をするときには負担が軽減されるケースがあります。こういったことから、新たな事業を始めたり起業したりする企業の負担が少なくなり、それが新事業や起業を後押しすることになります。


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