中国では6月以降株価の暴落が続いており、中国株式市場の上海総合指数は5千ドルを超えていた状態から、8月には一時3千ドルを切るまでに落ち込んでいます。中国株式市場の暴落が世界へ波及して、世界同時株安を引き起こすとも言われています。

 

マスコミでも、中国経済の悪化が世界中に影響を及ぼすと伝えています。テレビなどでは、各国の対中貿易の割合を示して、中国経済が世界各国に大きな影響を与えると主張していました。

 

まずは、幾つかの国における貿易額に占める中国が占める割合を見てみましょう。

輸出入における中国割合

資料出所:
IMFDirectionOfTradeStatistics

 

日本は輸出・輸入ともに、中国との貿易が占める割合が約2割となっています。オーストラリアは、輸出に占める中国の割合が3割を超えています。韓国は輸出が25.4%、輸入が17.1%で中国との結びつきが大きくなっています。

 

中国経済が失速することにより中国国内の需要が縮小するため、大きな影響が出るのは対中輸出です。中国からの輸入については、基本的に国内の需要に左右されますので、何かしらの影響は出るかもしれませんが小さいものだと思います。

 

中国の景気が後退することによって鉄鉱石など資源関係や穀物など一次産品の相場が下がっています。これらの物は日本が輸入している物ですので、日本の経済にとってはプラスに働きます。

 

あるテレビ局のニュース番組では、貿易総額だけを見せて中国経済の与える影響が大きいように見せかけていましたが、それでは誤った認識を持たせてしまう可能性があります。

 

また、国の経済が成長したかどうかは、貿易額ではなくGDPが増えたかどうかで見ます。ですから、各国の経済に与える影響度合いを測るには、貿易額や輸出・輸入額に占める中国の割合ではなく、各国のGDPに対する輸出・輸入額を見る必要があります。

 

それでは、上記の国の名目GDPに占める対中輸出・輸入額を見てみましょう。

GDPに占める中国貿易

資料出所:
IMFDirectionOfTradeStatistics」、IMF国別名目GDP

 

貿易額に占める対中貿易の割合に比べると、当然各国とも低くなります。日本は、名目GDPに対する対中輸出額の割合は2.7%です。

 

日本や米国のように内需依存型経済の国は、名目GDPにおける対中輸出額の割合は、輸出総額に占める対中輸出額の割合に比べて非常に低くなります。

 

一方で、外需依存型経済の韓国は、輸出総額に占める対中輸出額が25.4%だったのが、名目GDP比では10.3%と、それほど低くなりません。輸出に占める対中依存度が33.7%と高かったオーストラリアは、名目GDP比では5.6%と韓国の約半分となっています。

 

貿易額だけで見ると韓国よりもオーストラリアの方が国内経済に影響を受けるように思ってしまいますが、名目GDPとの対比で見ると韓国の方が大きな影響を受けることが分かります。

 

 

重要なのは対中貿易の割合よりもGDPに占める対中輸出額の割合です。中国のGDPは世界第2位ですので、中国経済が失速すると世界の経済に与える影響は少なくありません。しかし、どのような影響があるのかによって対応策も変わってきます。そのためにも、影響度をしっかりと把握する必要があると思います。


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