最近、マスコミで報じられることがほとんどなくなってきたAIIB(アジアインフラ投資銀行)ですが、大方の予想どおり中国の独裁色が際立った組織になっています。

 

資本金のうち中国は29.8%と最大の出資国となり、本部は北京市内に置き初代総裁は中国人、中国の議決権は26.06%で拒否権を握るなど、中国色が非常に強くなっています。総裁など執行部の権限が強く、中国の独裁機関となることがほぼ決定しています。

 

創設メンバーとして参加表明したのは57カ国でしたが、フィリピン、デンマーク、クウェート、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイの7カ国は設立協定への署名を見送りました。

 

日本のマスコミやエコノミストの多くはバスに乗り遅れるなと言って、AIIBに参加しろと騒いでいました。AIIBの調達金利はアジア開発銀行(ADB)に比べて1%ほど高く、資金調達力が大きく劣ることが確実です。今年の末に運営開始することを目標としていますが、果たして出発することができるでしょうか。

 

 

4月にNHKの日曜討論という番組で、「中国主導 AIIBをどう見るか」というテーマで討論を行っていました。

 

その時のメンバーの発言を以下のようにまとめてありますので、読んでみてください。

 

榊原英質(青山学院大学客員教授、元大蔵官僚)

・不透明な部分が残っていれば、参加すべきではない

理事会機能なども決まっていないので、そのようなものが決まってから参加するかどうかを決めればよい

・日本や米国が参加しなければ低利で資金調達できない

 

河合正弘(東京大学名誉教授、元アジア開発銀行研究所長)

・国際金融機関は出資比率によって決まるから、日本は出資して欧州各国とともに牽制すべき

・融資基準が不透明だと言われているが、中に入って融資基準などルール作りに参加すべき

 

渡辺利夫(拓殖大学総長)

・不透明なところが非常に多く参加すべきではない

共産党独裁国家が主導権を握るような国際組織が信用できるのか?

・審査基準が甘くなりデフォルトの可能性もある

AIIB設立の中国の狙いは、中国は投資依存の経済のため国内の生産能力が過剰になっており、それを解消するため

 

朱建栄(東洋学園大学教授)

・アジアの膨大なインフラ需用に応えるためにも必要

・理事会の運営やコストが高いなど、既存の国際金融機関の運営にも問題がある

・オーストラリアの要望には一部応えている

・各国とも自国経済の進出のために経済援助を行っており、中国だけを批判するのはおかしい

 

瀬口清之(キャノングローバル戦略研究所研究主幹)

・融資の焦げ付きが起これば困るのは中国だから、融資基準が甘くなるようなことはないのでは

・参加してから日本の要望が通らないなら離脱すればよい、日本が参加して公平な運営がされるようにするべき

・中に入らなければ情報が取れない


 

榊原氏と渡辺氏は参加に反対、河合氏と朱氏と瀬口氏は参加に賛成という意見でした。今になってみると、AIIBに参加しなかったことが正解だったのは明らかです。

 

朱氏は中国人で中国共産党の工作員と言われているような人物ですので、中国の主張を代弁しているだけです。しかし、河合氏と瀬口氏はどう言い訳をするつもりでしょうか。

 

AIIBに参加して要望を出せばいいと言っていましたが、英国やドイツなどの国の要望は通ったのでしょうか。それとも、日本が参加していれば日本の要望が通ったとでも言いたいのでしょうか。

 

瀬口氏は、日本の要望が通らなかったら離脱すればよいと言っていましたが、仮に日本が参加を表明していたら、日本につられて参加した国が出てきた可能性があります。そうなれば、被害に遭う国を増やすことに日本が加担したことになってしまいます。

 

 

また、ギリシャの経済危機の問題を見ていると、中国がAIIBを通じて融資先の国に無理難題を押し付ける可能性があるのではと思ってしまいました。

 

AIIBから融資を受けると金利が高いため、結果として債務不履行となる国が出てくる可能性があります。そうなると、ギリシャを見れば分かりますが貸出先のAIIBから融資先の国に対して、何かしらの要求が出されることが考えられます。

 

つまり、融資先の国は中国の言いなりにならざるを得ないことになってしまいます。中国はまともな国ではありませんので、融資先の国に対してとんでもない要求をする可能性があります。下手をすると、中国の属国のような存在になってしまうことも考えられます。

 

 

話を元に戻しますが、春先にAIIBに参加しろと主張していた人達は、今でもAIIBに参加するべきだと考えているのでしょうか。少なくとも、AIIBに参加しろと言っていた人達が、それは間違いでしたというのを聞いたことはほとんどありません。むしろ平気な顔をして、マスコミに登場して経済に関する話を恥ずかしげもなく言っています。そのような経済評論家や経済学者に騙されないように、注意が必要ですね。



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