デルタ株に立ち向かうための「包括的強化パッケージ」
埼玉県に発令されている緊急事態宣言が9月12日まで延長されました。デルタ株による急激な感染拡大により、医療体制の負荷は極めて大きくなっています。
埼玉県では、「攻める ~積極的介入~」「守る ~体制の強化~」「連携する ~市町村との協調~」「お願いする ~県民・事業者の皆様へ~」という4つの柱からなる「包括的強化パッケージ」を強力に推進しています。
「攻める」を構成するワクチン接種ではワクチン確保が課題でしたが、第13~15クール(9月13日の週から10月4日の週まで)のファイザー社ワクチンの埼玉県への配分は全国最多の確保となりました。
高齢者割合が高い自治体の接種率が高い一方で、感染が拡大地域にワクチンが来ないという状況を一変させました。接種の主体である市町村を積極的に支援してまいります。
ワクチン接種の効果は高く、高齢者の重症化や死亡率の低減は顕著です。県が運営する接種会場として全国で最初に開設されたセンターも東西南北の4か所に増設され、エッセンシャルワーカーを対象に接種を行っています。
2つ目の柱「守る ~体制の強化~」の項目の一つは医療体制です。現在の厳しい状況に対応するため、3つのシナリオに基づき、医療体制強化の具体を決定・推進しています。
シナリオ1は、現在の感染状況で進めるべきものを考えました。シナリオ2は、来週半ば(26日頃)の状況として移動平均の新規陽性者数2,000人程度を想定、シナリオ3では、新規陽性者数3,000人程度を想定しています。医療機関への負担等は陽性者や重症者の増加のペースによって変わりますが、8月末にシナリオ3に達する想定で準備を進めています。
まず、急増する自宅療養者への支援体制強化として2点です。
1つ目は、自宅療養の中等症患者が増加することを想定し、自宅療養者にオンライン診療などを行っている協力医療機関を増加させて健康観察・診療の強化を行います。
2つ目は、急激に容態が悪化した自宅療養者の入院受入れ先が決まるまでの間、酸素吸入を行う酸素ステーションの設置を進めます。
次に、ひっ迫する入院病床への対応として3点です。
1つ目は、退院基準を満たす前に症状が軽快した入院患者を宿泊療養施設へ移し、入院期間の短縮を図るべく、移送体制を強化させます。
2つ目は、県内病院に在庫配置による適時投与が認められた抗体カクテル療法を推進することで、一人でも多くの患者の重症化防止を図ります。
これまで国は抗体カクテル療法薬の在庫を持つことを認めず、重症化を予防しようにも現実には使用するためのハードルが高い状況でした。
埼玉県では私自ら菅総理に直談判して、拠点となる医療機関での在庫確保と施療を認めさせ、抗体カクテル療法推進に向けて風穴を開けました。この成果に基づき、すでに多くの方に抗体カクテル療法が施され始め、これは全国にも急速に拡大しています。
3つ目は、シナリオ2以降の医療機関の状況を見ながらの実施になりますが、入院病床の不足に備え、予定手術の延期など、一般医療の制限を行うための準備を進めています。
最後に、宿泊療養施設の強化として2点です。
1つ目として、酸素吸入が必要な療養患者をホテルで受け入れ、医師による施療をホテルで行えるようにします。
2つ目として、ホテルの一部を特措法に基づき臨時の医療施設に指定し、抗体カクテル療法を実施できるようにしていきます。
埼玉県では従来より医師会や看護協会などと密接な協力を行ってきましたが、これらの取り組みの実現にも、関係機関の協力を得ています。
医療従事者をはじめ関係者の皆様は、不眠不休で頑張っていただいています。悲惨な患者の状況を見ると、自分が外に出て万が一でも感染してはならないと、気晴らしのための外出も避ける看護師の方々にもお会いしました。
早期の感染抑制が必要ですが、ワクチン接種の拡大によりトンネルの向こうの明かりが見えつつあり、デルタ株の感染力を抑えなければなりません。
このため、埼玉県ではあらゆることを実行するとの信念に基づき、例えば、私をはじめとする幹部職員が企業や現場を訪問して、職場での感染拡大防止を直接訴えています。
このような対策の一環として包括的強化パッケージの4番目「お願いする」がこれまでよりも重要になっています。
デルタ株の感染力により、これまで進めてきたターゲットを絞った戦術的対応から、緊急事態宣言による県民や事業者の皆様の協力をより強くお願いするアプローチを取らざるを得なくなっています。
県民の皆様には、外出せず、家の中でゆっくりと過ごしていただきたいと思います。
万が一、ご自身が感染すれば、そこからさらに感染する次の方は、その方のご家族や愛する方です。
飲食店で感染するのはその飲食店を訪れる方やそこで働く方で、訪れた方のご家族や愛する方が次の感染先になります。
皆様ご自身と皆様の愛する人を守り、多くの救える命を救うための御協力をお願いします。