不良哀歌
我々が中学から高校にかけての時代は、とにかく不良漫画や映画が以上に多かった。
小学高学年の頃の「○○先生」シリーズから始まった。
中学の頃は、漫画の連載で「ビーバップハイスクール」と「湘南爆走族」が2大不良バイブルだった。
仲間達もそれぞれどちらかにはまり、更にそれらに出てくる登場人物に自分をあてはめてた。
「ビーバップハイスクール」に被れた者は、先ず学生服と髪型から入る。
主人公二人のどちらかを選ぶ。
ひろし派は、短ランにボンタンの制服を着て、髪型はパーマのリーゼント。
トオル派は、中ランにボンタンの制服、髪型に関しては几帳面な者は、ストレートの髪を整髪料で整えるが不器用な者は、アイパーと言うコテでリーゼントの形にくせをつけて貰い、毎朝自分で軽くブラシで整えるのもだった。
しかし、いずれもポマードは必要不可欠である。
ポマードは昼過ぎになると、誇りが付着し光沢が無くなっていた。
そこで、ジェルの登場!
雨や湿気が無い限り、夕方帰宅するまで、光沢と髪の乱れは心配なかった。
「湘南爆走族」に被れた者は、とにかくバイクを先に手に入れる。
しかし原作では、中型バイクなのだが実際は原付バイクを改造して走ってた。
リーダー役の江口はスーパーリーゼントと言う髪形。
バイクではヘルメットが必須。
ヘルメットを被るとセットした髪がペチャンコになるので気を使う。
半ヘルのベルトをアゴに固定し、ヘルメット本体を後頭部に固定し乱れを止めてた。
どちらに成り切るにも苦労は絶えない・・・
何故友人達がこれに拘るかには理由があった。
通ってた高校は、工業高校で、共学校にも関わらず女子生徒が一人も居ない・・・
正確には一人も来ない、評判の悪い学校だった。
結果、男子校となる。
他校の女子にも持てない。と、言うより相手にされない・・・・
目すら合わしてくれない・・・・
そこの理由も後日ここに書くとして、とにかくモテナイ者の集まり。
だから必死にルックスだけは、気を使ってた。
涙ぐましい少年時代を送ってきた。
制服のポケットには、ブラシとエチケットブラシ、毛抜きはほとんど所持していた。
毛抜きは、いつでもどこでも眉毛や額の剃り込みの為である。
エチケットブラシは、制服の汚れ落しと、裏側の鏡もついてるからだ。
神経質さと清潔感だけは他校生よりは徹底してたと思う。
全て、モテる為だけに・・・・
続く
田舎町
今から20数年前、まさに青春?真っ盛り時代だった。
今とは違い、コンビにもファミレスも無かった。
町の商店は午後7時には閉店するし、地元のストアーも午後8時には閉店する。
ガソリンスタンドは一番遅くまでの営業で9時までだった。
夜になると街明かりと言えば、街灯と自販機と点滅信号のみ・・・。
メインストリートには人影等無い。
若者達は、深夜まで広い駐車場に集まる。
当時は、国道268号線沿いの「寿屋」前にたむろってた。
律儀に各自の車を横並びに止め、さながら中古車展示場みたいに整列していた。
深夜、日も変わる頃に誰かしら、
「腹減らん?」
と、言い出す。
しかし何も無い・・・。
この時間に何か食べるものと言えば、隣町 出水市郊外の「ジョイフル」、隣県最初の町 水俣市の24時間営業の「うどん屋」、それとやはり隣県の宮崎県えびの市から熊本県人吉市に繋がるループ橋沿いにある「そば茶屋」くらいだった。
出水市と水俣市なら約50分で到着する。
えびのなら1時間強の距離。
悩む・・・・
諦めて帰って、布団の中で空腹で眠れない時を過ごすのか?
向かって、満腹感に浸り睡魔との闘いに挑むのか・・・
いずれのルートに行ったら、必ずと言って良い程地元民と遭遇する。
先輩連中と会うと、
「おー!お前達も来てたの?馬鹿じゃない?深夜わざわざこんな場所まで・・・」
と、言われる。
それはお前らも一緒じゃん。深夜にまでなって偉そうにすんな!先輩ズラするなら我々後輩達の勘定まで面倒見てから言え!
と、口には出来ないが、心の中では大声で叫ぶ!![]()
「うどん屋」では決まって、肉うどんにいなりを注文してた。
食べ終わると、出水市周りで帰る。
「ジョイフル」では、ハンバーグが定番。
ここは地元の深夜族の溜まり場になってる。
時には駐車場で喧嘩の現場を目撃してた。
意外にガラが悪い・・・
「そば茶屋」では、やはり肉うどんといなりだったが、注文の品が来るまで客席中央にセルフ式のおでんコーナーが有り、2品位皿に取って食べてた。
帰りは、ループ橋を通り、人吉市を経由し地元に帰る。
が、パターン化していた。
夏になると街郊外の散策にも出かけた。
「曽木の滝公園」「十曽公園」が主・・・
夏になると深夜近くに県内外の見慣れない車が来てる。
いずれもほとんどと言って良い確立でカー○ッ○スで車が揺れている。
退屈な我々仲間は見学に行く。
公園入り口より手前に車を止め、徒歩で公園内に入る。
履物は手で持って、足音がしないように裸足で向かう。
視界に入らない場所でしばし待機!
一台、二台と車が入って来る。
車が停車し、約30分位がBEST!
夢中になってる車内の男女は外は気にならないらしい・・・
あちこちに無造作に停めてある車の覗きのハシゴ・・・
行為は意外に早く終わる傾向があるようだ。
終了がわかるのは、いきなりエンジンが掛かり、助手席の窓が少し開く。
同時にティッシュの丸めた物がポイ捨てされる。
いつもの光景だ。
覗くだけでは無かった。
車の揺れが激しいのには、全員でその車を囲み揺らして妨害していた。
やっかみ以外何者でもない・・・
これだけでは惨めだと思った友人Hの行動にはびっくりさせられた!
行為が終わり、例の如く窓から丸めた物がポイ捨てされた瞬間
「コラァ~!何処にゴミを投げ捨てるのか?俺らの地元を汚すな!拾ってちゃんとゴミ箱に捨てて来い!」
と、一喝。
当然だが同じ車を二度と見ることは無かった・・・
お陰で周辺地域では、
大口は行くな!タチ悪いぞ!
と、囁かれてたらしい。
時には、カップルの男性が怒って車から勢い良く出てくる事もあった。
すかさず友人Hは、
「喧嘩するのか?するんだったら、普通にやりあったって面白くない。何ならお前の彼女を賭けてしようか?」
と、理不尽な要求をする。
一度だけだが、承諾した熊本ナンバーの奴がいた。
勝負は、5分でついて、男は車の脇に倒れこんで動けない。
Hが助手席のドアを開けようとすると中からロックして開けられない。
一緒に居た友人Sが、
「運転席が開いてるぞ!」
と、言った瞬間慌てた女がいきなり車から飛び出し、走って逃げた。
Hは追いかける。
目の色が変わってた。
「誰か~!助けてください!キャー!」
と、叫びながら全力で走る。
何せ田舎の更に外れの場所。
民家どころか、車も通らない・・・
逃げる影と、追いかける影を見失った。
倒れた男性を起こし、運転席に座らせ介抱する。
Sが、
「可哀想だから、ちょっと探して止めてくるよ」
と、言い残し去った。
Hも女を見失いこちらに歩いて息を切らせながら帰ってきてた。
「お前の女何処に行ったかわからんぞ!後は自分で探せよ」
と、運転席の男に告げた。
「はい。わかりました。探してみます。今後街を汚しません。すみませんでした!」
と言って、彼女を探しにいった。
時間は朝方4時過ぎた。
「今日の仕事は又寝不足や~。早く帰ろう」
と、Hが言う。
すかさず、Sが
「お前があんな事をせんければもっと早よう帰れたのに。」
「でも楽しい光景が見れて良かったやろ?」
と、自分勝手なH。
「楽しい夜やった!」
と、一同。
田舎の娯楽は無いとは言え、お許しを・・・・。
変わり者の友人T 第2章
先輩、同級生、後輩からは相変わらず読めない男。
只ひとりとして「悪い人間」とは言わない。
成人式
県外に就職や進学で出てる者が、必ず里帰りする。
過疎の田舎は、成人の祝いを正月休み中に行う。
大口市は毎年1月3日にある。
年末にこぞって帰省する。
帰省する者の情報は、地元に残る者に聞けばわかる。
年末も押し迫った頃、夕方に地元の某所に数人が集まる。
帰省組みも地元組みも一緒!
徐々に人数が増えてくる。
8名位で今夜の予定を話し合ってた。
結局、今晩は天文館での飲み会に決定した。
理由は、地元組みの連中が、安くて、楽しいとの理由。
このまま乗り合わせで出発するかどうするかを話し合ってた時、奴の車が見えた!
「今のTじゃなかった?」「声掛けなくて良いかな?」「Tは酒飲めないからきっと行かないだろう」
と、話してたら。
突然タイヤを響かせながら我々の方にUターンしてきた。
我々集団の真ん中に突っ込んできて、無造作に停車した。
運転席に座るTは自慢のレイバンのサングラスをゆっくり外し、タバコに火を付け下車した。
いきなり自分の車のボンネットに乗り上げあぐら座りし、
「よう!何の悪い事の相談してんの?俺にもちょっとかませろや」
と、言い出す。
「その前に、車にそんなに座って大丈夫か?」
と、聞くと、
「このボコボコの感じが良いのよね~。ワイルド感がたまらない!」
彼独特の持論を展開した。
彼の車は、昭和50年代のグロリアセダン。
こだわりは、汚れてボコボコの外観とベンチシートの内装が自慢だった。
スラム街を走る、アメ車をイメージしてらしい・・・。
「今日、みんなで天文館に飲みに行こうと計画してたけど、どうせお前は飲まないから誘っても行かないって言うかも知れないと話してたとこだった。」
すかさずTは、
「う~ん・・・。飲み会ね~。行こうじゃないか!」
一同その返事にびっくりした。
「今日は飲むんだよ。大丈夫か?」
と、心配のつもりで聞くと、
「お前は俺の親か?飲みに行って必ずしも飲まないといけない決まりなんて聞いた事無い。とにかく今日はお前らに付き合ってやるかぁ!」
と、テンションが一人だけ浮いてた。
「何時に出るの?俺もこのままの格好じゃ行けないから、着替えて来るんで30分待ってくれんか?」
と、言ってワイルドに急発信して去って行った。
暫くすると、奴がやってきた。
車から降りたTを見て一同口が塞がらなかった・・・
なんと!いつもの定番のレイバンにグレーのスーツ。黒いワイシャツに黒のロングのレザーコート。
しかも、同じく黒の革の手袋・・・・
「・・・・おい・・・お前何処に行く気?居酒屋行って、その後お勧めの店なんだけど・・・。しかもそんなコート何処に売ってあんの?」
Tは、
「お前らみたいな田舎もんに見られない為にこれくらいしないといけないじゃん。年末の繁華街はどんな危険が待ってるかわからないから・・・」
と、持論がここでも繰り広げられた。
およそ2時間で到着。
各自好きな物を注文した。
Tが何を注文したか気になって覗くと、唐揚げにウーロン茶。
ほとんどが酔っ払い2次会へ向かうが、予定の店が満員だったので急遽ディスコに決まった。
入場料を払いフリードリンクの注文をする。
遠回しにTに対し、
「せっかくだからたまには酒飲めよ~」
と、あおった。
「俺は、カクテルを頂くから・・・。今日の俺のいでたち合ったのを飲むわ!」
と、一番奥のテーブル席を陣取ってた。
ドリンクのカウンターに行き、オレンジ色の飲み物を持ってきた。
「お前!ここでオレンジジュースなんか飲むなよ~!」
と、言うと、
「タバコのおかげでビタミン不足だからこの際先ずはビタミン補給するよ」
と、Tは言う。
別な友人が、
「あいつ、カクテルの種類知らないから結局名前で選んだらあんなジュースみたいな物が出てきたみたい。思わずTはそれを見た瞬間動きが止まって、我に戻ったとき店員に ごくろう! って言ってた」
と、暴露。
Tが名前で注文したのはスクリュー・ドライバーだった・・・・
オレンジジュースみたいな飲み物とは想像してなかった。
私に見られた時点で思わず言った、ビタミン補給の説明だった。
弊店間近になり、店内はフィナーレで盛り上がってた。
二階席から一階フロアーを眺めてたら、センター付近がおかしいのに気付く。
酔っ払ったTが滅茶苦茶な踊りで・・・・
あの黒のロングコートをなびかせ、周囲の迷惑も顧みず踊っている。
Tの半径2メートル以内には人は寄り付かない・・・
私から見たら、他の客は、その怪しそうな感じから避難してる様にしか見えなかった・・・
一同は、店を出る。
しらけムードのT以外の友人達・・・
完全にテンションが最高に達してるT。
「お前ら、何でこんな楽しい事俺に教えなかったの?ん?これからは毎回誘えよ!」
と、地元組みに絡む。
当然、返事をする者は居なかった。
彼は今も個性有るオーラを漂わせている。
家庭を持った今でも変わらない・・・
長所なのか、短所なのか・・・・