日本語好きな人、寄っといで -11ページ目

読者の感想

・『音相理論の深さに感動』

「日本語の音相」と「ネーミングの極意」を息もつかずに読みました。前人未踏という「ことばのイメージ研究」の全貌が私なりに理解でき、音相理論のすばらしさと奥の深さに感動しました。 50年のご研究とか。確かにそれほどかけねば纏められない大研究だと思いましたが、それをお一人で完成されたのも驚きです。 こういう書物こそ、日本語を愛する人の必読の書といえましょう。多くの方に読んでいただくことを蔭ながら祈っています。

(t.tsuchiya)


・『言語科学の欠陥を衝いた本』

久々に手にすることができた名著です。 読み終えての感想は、改めて、現代の言語科学の欠陥面を見たような思いです。そして日本語の美しさ、奥の深さに感動し、友人にも勧めています。ご労作に深く敬意を表します。

(札幌、清己)

表情を作る音相基(シリーズ⑩)

・・・暖かさ、春の風情を作る音
 
  (必要な音相基)
   ・調音種比が低い
   ・総合音価が低い
   ・高勁輝拍が少ない
   ・摩擦音、鼻音、流音が多い


  (例語)
  うららか、春、ほのぼの、のどか、爛漫、菜の花、
  暖か(い)、ホット、暖(だん)、ほかほか、
  ぬくも(る)、団らん


大衆とは何か

 音相理論の中で「大衆」ということばがよく出てきます。


 それは音相が、大衆の平均的な語音感覚で作られることと関係があるからです。
 「大衆とは、生産物の消費者やマス・コミュニケ-ションの受け手として常に受動的な立場をとる無定型、無組織の人々のこと」と言われていますが、社会学や心理学の辞典を見ても、共通の目的をもってある場所に集まる「群集」という語は出ていても「大衆」は語そのものがないのです。


 大衆は、群衆のように集団を作らず、共通の目的ももたないとりとめのないものですが、ことばの音相を究めるうえで大衆という概念を明らかにしておかねばなりません。
 そこで私は次のような、私なりの定義づけを行ないました。

「大衆とは個々別々の関係でしかない人たちが、何らかの事態が生起したとき、意思や感覚を共有できる可能性を持った人々」だと。

 大衆がことばの音について行なう取捨選択ぶりをみていると、そこには驚くほど秀抜な直感力と、客観性の高い評価力があるのがわかります。


 個人が1つ1つのことばに抱くイメージには、一部にその人なりの主観が入りますが、そのような主観部分を取り去ってあとに残ったものが「大衆の平均的感性」というものです。
 初対面の人たちが互いに心の機微を伝え合えるのも、新語や流行語の発生や消滅が狂いのない感覚的な秩序のもとで行われているのも、大衆の平均的感性がそこにあるからにほかならいのです。

Q&A 最近の音相研の動向を知りたい

Q.
 「日本語の音相」を読破しました。私の生涯の研究テーマにしてゆきたいと思っていますが、刻々と変わる研究内容などが知りたいので、機関誌などがありましたらお送りください。 (渋谷MK)


A.
 「ことばのイメージ研究」の基幹となるものは著書「日本語の音相」でほとんど述べてありますが、その後の研究や研究所の動きなどをお知らせするため、機関誌の代わりにこのホーム・ページを立ち上げました。
 ホーム・ページの本文には、最近の研究情報や、著書で詳しく述べなかった部分や、その後の研究などを載せることにしていますが、長文の掲載は不可能なので短いことばに要約してあります。

 また、左側の目次欄の「音相理論のあらまし」以下の欄では理論のアウトラインを述べ、「音相マガジン」欄ではHP開始以後の記事がすべて見られるようになっています。

 このサイトの文章の入れ替えは毎月2回程度おこないますが発行日が不定期なため、新しい発行をその都度お知らせするメールマガジン(無料)もありますのでご利用ください。お申込みは目次欄 へ。

「朝日」と「夕陽」の表情くらべ

 古くから使われていることばには、音相的に美しいことばが多く見られます。
美しいことばとは、その語が持っている意味や雰囲気にふさわしい音を使ったことばを言うのです。



 昇る太陽を意味する「朝日」と、日が沈むときの「夕陽」には、誰もが音の響きに違ったイメージを感じます。「朝日」には庶民的で若さや活力のようなものがああり、「夕陽」には艶やかさとともに「西方浄土」の説話にあるような、もの寂しさを感じます。そのようなイメージの違いを、これらの語がどのように表現しているかを見てみようと、音相分析を試みました。


「朝日」
   庶民的   100.0ポイント
   シンプル感 50.0ポイント
   強さ    50.0ポイント
   活性的   30.0ポイント
   軽快感   27.3ポイント
   (複雑度   0)
「夕陽」
   安定感   68.2ポイント
   鋭さ    50.0ポイント
   充実感   50.0ポイント
   優雅感   45.5ポイント
   非活性的  45.0ポイント
   (複雑度   4)

 

  「朝日」は、「庶民性、シンプル感、活性感、明白さ、軽快感」が上位を占め、複雑度のゼロが若やいだ「朝」のムードを捉えていますが、「夕陽」には「安定感、充実感、優雅さや寂しさ(非活性感)」と、「複雑度の高さ」が加わって、朝日とは全く反対の情緒と奥行きのあることばであるのがわかります。
 日本人の誰もが感じている「朝日」と「夕陽」のイメージの違いを的確な音相で捉えたことばであることがわかるのです。

風呂敷(ふろしき)という語の美しさ

 江戸時代以前から、庶民生活の中でかけがえない必需品だった「風呂敷」が、最近テレビで話題になったり、デパートなどの店先にも見られるようになりました。



 銭湯へ行くとき桶や手拭を包み、脱いだ衣類を包み、帰りはまた桶などを包んで帰ってくる。風呂敷という名はそんなことからついたのだそうですが、そういう「風呂敷」の機能や実体(コンセプト)をこの語の音がどれほど表現しているか、音相分析をしてみました。


 表情解析欄をみてみると上位のところに、

  清らか    87.5ポイント
  現代的    60.0ポイント
  適応性    50.0ポイント
  清潔感    45.5ポイント
  個性的    42.9ポイント
  暖かさ    40.9ポイント
  開放的    40.0ポイント・・・

が並び、情緒欄でも「曖昧さ(融通性、)情緒性、クラシック感」など、風呂敷が持つ機能や情緒をあますところなく捉えているのがわかります。

優雅なことば「朧月夜」(おぼろづきよ)

・・・研究生レポートより


 俳句の歳時記を読んでいたら、「朧月夜」という言葉に出会いました。

「湿気のため月が霞んで見える晩春の情景」と書かれています。

 ホッするようなくつろぎと、どこかに淡い寂しさを感じることばです。


 「朧月夜」・・・音楽の授業で歌った懐かしい歌のタイトルですが、最近ではマライヤ・キャリーの「MOISTYMOON」や、中島美嘉さんの「朧月夜~祈り」などにもでてくるようになりました。


 この語を音相分析してみたら

  静的・非活性的 105ポイント
  高級感・充実感 100ポイント
  信頼感・安定感 95.5ポイント
  高尚な・優雅さ 63.6ポイント

がトップにあり、この語から浮かんだイメージを、音相がそっくり捉えていることがわかります。
 すると1つ、ポイント数ゼロの中に「清らかさ、爽やかさ」があるのに不思議を感じ、先生に伺ってみましたら、
 「清らか、爽やかはカラッとした乾いた空気とつながる概念で、湿気をおびた朧月夜の雰囲気には、ポイント数はゼロの方がよいではないですか」とのご指摘でした。


 私の中に、美しいことばには「清らかさ、爽やかさ」が必ずあるという単純な主観が住み着いているのに気づくとともに、音相理論や分析法の緻密さに改めて感じ入った次第です。
 春が進んで朧月夜の季節がきたら、分析表がとりだしたものをもう一度実感してみたいと思っています。(日紫喜友紀)

表情を作る音相基(シリーズ⑨)

・・・スピード感を作る音は?
 
(必要な音相基)



 無声音が多い
・プラス高勁輝性の語
・促音がある
・子音拍が多い
・長音が多い
・順接構成
・無声化母音が多い
・高勁輝拍が多い


(例語)

特急、緊迫、緊張、疾風、ジェット機、光、ダッシュ、快速、スピード、超~ 、即、すぐ、疾風、突進……

「音相」論のあらましを知りたい方へ

「音相とは何か」。
「ことばのイメージ研究の歴史」
「音相は大衆の感性からうまれた」
「現代人の音相感覚」
「音の良いことばとは」
「この理論はどのいうにしてできたのか」
「音相の語源」
「この理論はどんなところに役立つのか」
「なぜ音相理論が現代人に必要なのか」
「音相分析はどんな方法で行うのか」
「分析表の読み方と、評価の仕方」
「音相分析および、評価の実例」

 ・・・
など音相理論の体系や内容は、「音相論のあらまし」 に詳しくでているのでご覧ください。

音相の悪い語がナゼたくさんあるのか

 先月この欄で、ことばは意味(コンセプト)との関係で音の優れたことばが生き残り、よくない方は死語となって消えてゆく傾向があることと、その選択は大衆によって行われるということを述べました。
だがそれならば、現代語には悪い語などないはずですが、現実には音相的な不良語がたくさん使われているのはなぜでしょうか。


 それは実在することばの中に誰もが良くないと感じながら、次のような事情から、死 語にできないことばがたくさんあるからです。


1、大衆が手をつけられないことばが多いため。
 企業が作るネーミングや学術上、行政上などの必要から作られたことばがこれに当た ります。これらはよくないことばと思っていても大衆が勝手に変更できないことばだ からです。


2、よりよいことばが出現しないため。
 よりよいことばが生まれないため、好きでなくて使わざるをえないことば。


3、意味や文字だけを考えて作ったことばのため。


  音への考慮などなしに、意味や文字だけで作ったことばです。
  それは漢語や外来語のほか、最近多い2つのことばの一部をくっつけただけの短絡語
 (マエ彼、デパ地下、合コン、朝シャン、ミニスカなど)などに多くみられます。
  私の経験から考えて、いま使われていることばの40%ぐらいがこれに該当しているように思うます。