さあ、大きく声出していこう~!『外郎売』4つのこぼれ話 | つながっていこう~オンライン版絵本で支援プロジェクト【公式ブログ】

絵本読みかたラボラトリのたかたかです。
緊急事態宣言が出ている府県もあり、思うように外出できず、
ステイホームが多くなっていることでしょうね。

私もそうなのですが・・・

皆さん!
ついつい、身体も声も、さび付いていませんか?


俳優さんやアナウンサーの活舌練習のテッパンと言えば、
『外郎売』(ういろううり)です。


「拙者親方と申すは、お立ち合いの内に御存知のお方もござりましょうが、お江戸を発って二十里上方、相州小田原、一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへお出でなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、只今は剃髪致して、円斎と名乗りまする・・」

 

ね、どこかで聞いたことはありますか?
一昨年(令和元年)の七月、当時6歳の“かんかん”こと堀越勸玄くんの長ゼリフが話題にもなりました。

私も学生時代の放送部・大学のアナウンス研究会・朗読教室・・・では、必ずと言っていいほど、この外郎売はトレーニングに欠かせないものでした。発音・発声・活舌・表現すべてがここに凝縮されています。
「しゃべりは外郎売に始まり、外郎売に終わる」とプロの現役アナウンサーからお聞きしたこともあります。


「外郎売」は、享保3年(1718年)一月、江戸森田座での『若緑勢曾我』という演目の中のセリフで、二代目市川團十郎によって初演された歌舞伎十八番のひとつ。

外郎(ういろう)という名で売られていた
中国伝来の妙薬「透頂香(とうちんこう)」を、
言葉巧みに客を引き寄せ、売ろうとする口上です。


二代目市川團十郎と初代市川門之助の大磯の虎(鳥居清信)


二百年余りの間、歌舞伎界の成田屋だけでなく、市井でも語り継がれ受け継がれた口上ですから、様々な出典や使途があり、今ではセリフも所々異なるものもありますが、200年以上、ほぼそのまま残る口承文化というのは、稀有なことですよね!

全文は、こちらをご参考に。
◆Wikipedia;外郎売 - Wikipedia
◆「みんなの知識 ちょっと便利帳」のサイトは解説も詳しく種類も豊富。

 【みんなの知識 ちょっと便利帳】外郎売・ういろううりの台詞・本文 - 二代目市川團十郎が演じた台本・新字新仮名遣いでの読み方全文 (benricho.org)


絵本版もあります!
  

  『外郎売』
  編: 齋藤 孝  絵: 長野 ヒデ子
  出版社: ほるぷ出版  発行日: 2009年04月

 


では、さてさて・・・・


【こぼれ話 その壱】
  ”実話”から、うまれた!

二代目市川團十郎が、持病で喉が悪く、役者人生をあきらめかけていたところを、知人に勧められて服用したこの薬がとてもよく効いてすっかり治り、お礼にと自作したものだったそうな!
感謝の恩送りに、200年後の私たちも恩恵を受けているなんて!



【こぼれ話 その弐】
  『東海道中膝栗毛』に、ういろうにまつわる場面あり!

 

江戸時代の旅ブームに火をつけ、大ベストセラーになった十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』には、元祖漫才コンビといえるであろう、ボケ・ツッコミの弥次さん・喜多さんの旅の道中、
小田原の薬屋の「ういろう」に、お菓子のういろうと勘違いしてしまうというクスッと笑える場面が描かれています。

 

”此しゆくのめいぶつういろうみせちかくなりて 
  北 「ヲヤこゝの内は、屋根にでへぶでくまひくまのある内だ」 
  弥二 「これが名物のういろうだ」
  北 「ひとつ買て見よふ。味(うめ)へかの」 
  弥二 「うめへんだんか。頤(あご)がおちらあ」 
  北 「ヲヤ餅かとおもつたら、くすりみせだな」
  弥二 「ハゝゝゝゝ、こうもあろふか」

ういろうを餅かとうまくだまされてこは薬じやと苦いかほする”

(十返舎一九作『東海道中膝栗毛』)

 

 

【こぼれ話 その参】
 セリフにちゃんと意味があった!

口上の中盤にあるこのセリフ。
「アワヤ咽、サタラナ舌に、カ牙げサ歯音。ハマの二つは唇の軽重、開口爽やかに、あかさたな、はまやらわ。おこそとの、ほもよろを。」

さて、これはどんな意味か知っていましたか?

 

中国の音韻学には、五音(ごいん)と呼ばれる声母(頭子音)があります。
分類は唇音・舌音・歯音・牙音・喉音の五つ。

外郎売のこのくだりは、”五音”の事を意味しています。
 

「アワヤ喉」・・・口の奥の方(喉)で調音するア行・ワ行・ヤ行の喉音(こうおん)。

「サタラナ舌」・・・舌と歯茎を用いて発音するサ行・タ行・ラ行・ナ行などの破裂音「舌音」。

「カ牙サ歯音」・・・「カ行」が「牙音(がおん)」。「サ行」が「歯音(しおん)」。

「ハマの二つは唇の軽重」・・・「ハ(ファ)行・マ行」の二つは下唇を用いられる「唇音(しんおん)」。「ハ(ファ)」は軽唇音、「マ」が重唇音であることを示しています。


・・・え!?
「ハ」って、唇が触れることなく発音されるのに、なぜ唇音??
 
それは、ハ行が唇音とされたのは江戸時代まで現在のファ行にあたる音で発音されていたからなんです。

 

 

【こぼれ話 その四】
  「ういろう」といえば・・・

 

この外郎売の口上の「ういろう」とは薬のことですが、
私たちは普段「ういろう」と言えば、蒸した棒状の和菓子を思い出しますよね。
・・・・さて、クイズです。
  薬のういろうと、お菓子のういろう。
  どちらの誕生が早かったのでしょうか?


  ・・・・ 答えはこの記事の最後を見てね!


オンライン絵本会のHP
講談師の神田京子さんの『外郎売』
動画見られます。
やっぱりプロの発声とお口の滑らかさ、表現力は素晴らしいです!
神田京子さんのご厚意で、掲載させていただいています。

外郎売のワークショップ動画もありますので、
たのしく! いっしょに!
 さあ、声を出してみましょう~~♪

【こえをきかせて】のページへGO!

 

声も身体もさび付かせていてはタイヘンタイヘン。。
ステイホームでも、おひとり様でも、
声は大きく、にっこりお目々で、
今日も元気にいきますよ♪ お~❣


今日もちょっぴりボリューミーたかたかだったかな?(笑)
では、またね💛
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【こぼれ話 その四】の答え


 「お薬」が先にできた、でした。


正解で来たかな?(^_-)-☆

室町時代、中国の貴重な薬を調達する外郎家の人たちは、幕府・足利義満の信頼を得て重用され、外国からの客人のおもてなしを頼まれて開発したのがお菓子のういろうとのこと。
甘味として使っていた沖縄の黒糖は、当時はお薬だったそうですよ。


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