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第1章 藍の向こうの碧い海へ宣侯 (3)


水薙鳥の翔ぶ碧い海へ
7月12日、今日は一日休養日である。水補給と燃料補給をすれば一日のんびり出来る。明日からのロングクルージングに備え、のんびり休養と決め込む。昨日ちょっと無理をして夜入港した。結果として良かったと思うが、それはかなりのリスクを負っての入港であった、恐れを知らない2人であるとはいえ無事入港できたことは僥倖であったと解釈し、今後は出来るだけ避けるようにすべきだと自分に言い聞かせた。





水薙鳥の翔ぶ碧い海へ


午後から温泉に入りに行こうと言うことでバスを乗り継ぎ、島の最南端にある「安らぎの湯」と言う温泉にに行く。バスで揺られること40分、ようやく到着。切り立った断崖が海までせり出しており、景観はすばらしいが、人を容易に近づけないような荒々しい印象のする場所である。







水薙鳥の翔ぶ碧い海へ 温泉は無色無臭、湯船がヒノキではないが杉の一枚板で浴槽全てが覆われた、とても雰囲気のある温泉であった。我々以外に男性客が一人入っていて、至極のんびりした風情である。しばらくしてその男性が我々に声をかけてきた。我々がヨットでこの島に来た旨を話すと、我々2人の船旅に非常に興味を抱いたようで、どんな船で来たのか見たいということになり、彼の車で船まで送って行ってくれると言うことになった。彼のことについて聞くと、彼もこの島の人ではなく、別荘に滞在しているとのこと、ついでなので、彼がこの島でどんな暮らしをしているのか、彼の棲家も見てほしいということになり、途中彼の家により、お茶でも飲んでそれから船に帰ると言う手筈で話がまとまった。


彼の話と言うかライフスタイルが面白い。彼は東京の新橋で事業を営み、成功を収め今は息子にその事業を譲り、自分は引退し、悠々自適の生活を送っている、自宅は新橋にあり、別荘を八丈島に設け、老後を楽しんでいる。


朝、羽田から飛行機に乗り1時間ばかりのフライトで八丈島に降りたち、気が向くままに滞在し、また飛行機で帰る、そんな別荘ライフを楽しんでいる。この別荘を購入するとき、ここまでの交通手段を車や船でなく飛行機という手段を念頭に入れ選んでいるというのが、私には凄く新鮮に感じられた。


彼の別荘は島の北端、八丈小島がすぐ目の前に見える絶景のロケーションのところにあり、敷地面積もゆったり広く近所ともかなりはなれ閑静なたたずまいをしている。一人でいることが多いらしが、室内はきちっと整理整頓されており、男の隠れ家といった雰囲気がかもし出されている。


奥様は都会育ちで虫や蛇などが大の苦手でここに来るのも年に1~2回程度であるとか、どこかで聞いたような話である、確か藤次郎氏の奥様もそのようだと記憶している。「一人でいても寂しくは無いか」ときいたところ、「何の問題もない、むしろ開放されている」と言った回答が返ってきた。私のような寂しがり屋で人恋しがり屋には考えられない。彼に船まで送ってもらい、途中で燃料補給のためガソリンスタンドによってもらう等いろいろお世話をかけ、明日の出航準備を無事終了する。