水薙鳥の翔ぶ碧い海へ -25ページ目

第1章 藍の向こうの碧い海へ宣侯 (4-2)

水薙鳥の翔ぶ碧い海へ

  水薙鳥の翔ぶ碧い海へ


水薙鳥の翔ぶ碧い海へ   水薙鳥の翔ぶ碧い海へ


第二幕の幕開けである。夜空一面にちりばめられた星、数え切れないほどの星。遠くに近くに、これほど遠近感が分かる星空は今まで見たことがない。天空を横切り長く緒を引いて消えていく、いくつもの流れ星、それは我々だけに特別与えられた自然の一大ページェントである。セール越しに見る星は船が波に揺れるとあたかも無数の妖精が踊っているかのごとく船のゆれにあわせ舞い始める、観客は私と藤次郎氏、全くもって贅沢な話である。



月が水平線から昇る、こんな光景もまだ見たことがない。太陽が昇るのと同じように月も昇る、太陽は光の中に昇るが月は暗闇の中に昇る。情景はかなり違うが、船乗りにとって月が昇るのは太陽が昇るのと同じようにうれしい。



真っ暗闇の中にはどんな魔物が潜んでいるか不安に駆られるが、月が昇るとあたり一面月の光芒が走り、遍く見通すことが出来、勇気と安心感の両方が湧き上がってくるものである。月は大海原という舞台に立つ主役である。



主役が登場したことにより、舞台はいっそう華やかになる、今日の舞台は夜空に漂う雲を草や木に見立て、沢山の星の妖精たちと歌い戯れているようである。それは夜が白むまで続けられる。



                 水平線から星たちが顔を出す
                 それは夜の始まり
                 天空の星の群れが 私の存在を薄明く照らす


                 船首に切り裂かれた波頭
                 砕け散る白い波しぶき
                 白い航跡が長く緒を引き夜の海に消えていく


                 芒洋と広がる群青の海原
                 それはまさしく私の人生そのもの
                 時の移ろいがゆっくり ゆっくり 静かに進む


                 空と海が交わった 向こうに何が待っているのか
                 それは誰もわからない             
                 勇気を奮って導を手繰っていこう      
                 明日に向かって

             

                 白い光芒が夜のしじまを少しずつ 塗り替えていく
                 朝の訪れだ
                 水平線にひとつ またひとつ 星が沈んでいく
                 それは昼の始まり


                                 生まれて初めて作った詩のようなもの、

                                 私でさえこんな雰囲気にさせてしまうような

                                 美しい夜である