第1章 藍の向こうの碧い海へ宣侯 (5-1)
7月14日、15日、16日、毎日単調な日々が続く。その間周りは全て海、時折訪ねてくるのはカツオ鳥と名前が分からないがカツオ鳥より若干小型のミズナギ(水薙鳥)鳥の一種くらいしかいない。下田周辺ではカモメが主役であるが、この当たりではカモメは一羽も見かけない。彼らを良く見ていると鬼平のヨコをすり抜けて船首方行に飛び抜けて行く、これを盛んに繰り返している。
何故かなと疑問をもって尚も観察し続けていると、思わぬ光景を見た。それは我々の船に驚いたトビ魚が、水中から海面に躍り出て飛翔を始めたその瞬間をカツオ鳥が狙い捕獲している。見ているとトビ魚が滑空している時が一番捕獲しやすそうである。なんてことはない我々はカツオ鳥の漁場で彼らの勢子の役目をしている訳である。それにしても見事である。
カツオ鳥やミズナギ鳥の飛ぶ姿がまた目を見張る。海面より数十センチの高さを滑空飛行していく、それもかなりのスピードで波のうねりにあわせて飛ぶ。カモメはどんなに低く飛んでも海面数メートルの高さまでである、また羽ばたきもしないで滑空だけで、相当の距離を飛行しており、かなりの省エネな飛行で飛行機にこの飛び方が応用できれば一大革命になると思われる。
またカモメとはこんな違いもある。カモメは数十羽が群れを成しているのに対して、カツオ鳥やミズナギ鳥は2~3羽程度の群れで、それも同じエリアを飛ぶのではなく、ちゃんと自分の飛ぶエリアを決め、そこを飛翔している。どこかに飛び去るときも何かの合図をしているのか、群れ全体があっという間に遠ざかってしまう。でもこんなに遠くまで飛来して、夜はどうするのだろうか、海の上で寝るのかな。
荘厳な輝きを放ち 朝日が昇る 一日が始まる
神々しいまでの光 なんとすばらしい光景だ
心が洗われるというのは この瞬間のことを言うのであろう
じりじり照りつける太陽 どちらをむいても
青い空青い海、遠く空と海が交わる 水平線に積乱雲が
取り巻くように連なっている
思わず「太陽と風と旅人」の童話の一説を思い出す
夕日 ゆっくりゆっくり陽が沈んでゆく 幻想的な
空間の中に全てが取り込まれていく 全ての活力が
静止する闇がもうすぐ訪れる
そのほんの僅かな時間のなんと甘味なことよ