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今回の話手:潔癖症さん(仮名)


も〜、嫌だ!あ〜、嫌だ!オレはもうこれ以上は我慢できない!

 

嫌だ、嫌だ、嫌だ!

 

嫌なんだよ!

 

なんなんだ!あの女は!なんであんなに無頓着なんだよ!汚いんだよ!バイ菌を持ち込むな!オレの部屋を汚染するな!

 

なんであんな女なんかと付き合ったんだよ、オレ!別れる。別れたいんだよ!

 

そもそも、向こうからオレに声を掛けてきたんだぞ。電車の中で!

 

「あら、お耳に何か付いてますわよ」なんて言って!Air pods proだよ!見て分からなかったのかよ!きょとんとした顔しやがって!可愛いんだよ!

 

「そんなんで音楽が聴けるんですね。私、うどんかと思いました」

 

冗談言ってるのかと思ったら、あの女、マジ顔なんだよ!「貸して下さる?」とか言ってオレの耳からAir pods抜きやがって、自分の耳に入れてんの!

 

「あら、ほんとう。音楽が聴こえるわ」なんてにっこり笑いくさりやがって!死ぬほど可愛かったわ!

 

そのあと、あいつ、どうしたと思う?

 

オレの!オレのだよ!オレのAir pods  proを付けたまま、電車を降りやがったんだよ。正気じゃねえだろ?

 

追いかけて返してもらおうとしたら、あの女なんて言いくさったと思う?

 

「あら、返して欲しいの? なら、ディナーに誘いなさいよ」

 

なんて宣いやがったんだよ!一も二もなく速攻で誘ったよ。なんならAir pods proをあげても良いくらいだったよ。返してもらったけど。

 

偉そうに上から目線で言いやがって。そこがも〜う堪らないんだよ。も〜好き好き好き!って感じ。

 

ぜってぇ、ゲットしてやるって思って、ちょっと高いレストランに無理して連れて行ってやったんだよ。

 

そしたらあいつよ、まったく喜ばねえの。無表情で口も利かないの!ただ黙々と食べてるだけ。

 

最後に一言だけ「ふぅ〜、美味しかったわ」だと。上品にナプキンで口を拭きやがって!色っぽいんだよ!カーッ、可愛い!

 

流石のオレも頭に来てよ。可愛いからって許されるもんじゃないんだよ!こいつ、メシを集っただけかと思って、無言で会計済ませて、帰ろうとしたんだよ。

 

ところが、あの女、帰り際になって「あら、女を夕飯に誘っておいて、自宅に招きもしないなんて、一体どう言う了見かしら?」とか吐かしやがって!

 

なんなんだよ!もうっ!もうっ!もうっ!そういうところが堪らないんだよ!あの時はオレも舞い上ったよ。頭の中真っ白!チューしたくて、チューしたくて。クーッ、可愛い。

 

帰り道、手なんか繋いじゃって。もう頭の中はエロモード。いやぁ、幸せだったね、あの時のオレ。

 

ところが、そんな天国は長くは続かねえのよ。

 

あの女を部屋に上げようとした時、あの女は靴を脱いだその足を拭かずに部屋に入ったんだよ!汚いだろ!廊下にバイ菌が付くんだよ!ばっちいんだよ!足くらい拭けよ!

 

注意しようと思ったら、「あら、ここのお家はスリッパもありませんの?」なんて非難がましく言ってきて、オレが悪いみたいじゃん。とりあえず、謝ったけど。

 

次は手洗いだよ。外から帰って来たら、手を洗うだろ。あの女が手を洗う素振りを見せなかったら、注意してやろうと狙ってたんだが、自分から手を洗いに行きやがった。クソッ。

 

ああ、手の洗い方もチェックさせてもらったぜ!あの女のボロがでやがったよ!なんなんだよ!あの生ぬるい手洗いは!なんで、タワシを使わないんだよ!何回も言ってるけど、汚いんだよ!バイ菌が付いてるんだよ!

 

ぐうの音も出ないくらいあの女を叩きのめしてやろうとしたら、「あら、このお家、手を拭くタオルもないんですのね」なんて失笑しやがって!オレ、何にも言えなかったよ。

 

「もう、男の人ってこれだから困りますわ」とか笑顔で言いながら、手に付いた水を払って、オレに滴をかけてきやがるの!ダァー!繰り返すけど、汚いんだよ!バイ菌を飛ばすな!でも、あの女のだから許したぜ。あと、機嫌損ねたら大変だから謝った。

 

少し酒でも飲んでイチャイチャして気分盛り上げようかななんて思ってたんだけど、あの女いきなり「あら、もう二人きりですのに抱きしめてくださらないの」なんて吐かしてくんだよ!

 

なんだよ!オレの事、そんなに好きなのかよ!カーッ、我慢ならんだろ!こんなこと言われたら、抱きしめるだろ、そりゃ!それが男だろ!

 

つい、我を忘れてギュッと抱きしめたら、冷静な声で「鼻息がかかって、煩わしいの。落ち着いてくださらない」だと!

 

なんだよ!落ち着けるわけないだろ。問答無用で押し倒したさ!

 

そしたら今度は「あら、いけません。私、まだシャワーで体を清めてませんわ」だと。

 

オレもそれで少し正気に戻ったぜ。ふっ、汚いバイ菌のついた体でコトに及ぶとこだったよ。やべえ、やべえ。オレとしたことが。

 

今回はあの女の言うことももっともだったから聞いてやったよ。しょうがねえな。

 

一緒に入ろうかって誘ったらさ、「良いわよ。でもバスルームでは触れないでくださいね」だって。

 

どんなプレイだよ!お預けだぜ。おまえ、我慢できるかよ!オレはまあ強靭な神経の持ち主だからな。自制したぜ。

 

こう、もうさっ、胸なんかプルンとしてんの!最高だろ!可愛いだろ!堪らないだろ!

 

シャワーの間、オレはそれに耐えたぜ!

 

だけどオレは許せなかったんだよ。あの女の不潔さに!

 

なんなんだよ!なんなんだよ!あの体の洗い方は!体に手で石鹸の泡を塗るだけなんて、ハッ! 考えられない。そんなんで汚れが落ちるわけねぇだろ!それじゃあ、洗ってねえのと一緒なんだよ!

 

顔だってちょちょいと泡をのせただけだぜ!

 

バカにしてるのか?

 

ダァー!そんな顔にキスしたくねえ!バイ菌だらけだあ!

 

そんな事悶々と考えながらあの女を見ていたら「まあ、いやらしい。そんなにまじまじと見つめないでください」だと。

 

ダァー!ちが〜う!オレは断じてそんなにいやらしい目で見ていたわけではな〜い!

 

軽蔑の目で見てたんだよ、オレは!あ〜、汚い、汚い。オレがタワシでゴシゴシ洗ってやりてぇ!

 

あの女は馬鹿な勘違いをしたまま「しょうがないわ。仕方ないからキスだけさせてあげる」なんて、超上から目線で言ってきやがった。

 

ちっが〜う!もう一度言わせてもらう。オレは断じてそんないやらしい目で見ていたわけではない!怒鳴りつけて、裸のまま部屋から追い出してやろうかと思ったが、仕方がないからキスだけさせてもらった。

 

この焦らしのテクがも〜堪らんだろ。めちゃくちゃ可愛いだろ。

 

もう〜、そのあとは夢中でさせてもらっただぜ!最高だった!マジで!忘れられねえ!やべえくらい好き。

 

好き好き好き。何度でも言っちゃう。大好き。


何度も言っても足らない!ちょー大好き!

 

でもオレはあの女の不潔さに耐えられないんだよ!だから、これきりにしようってあの女に言ったさ。

 

そしたらさ、なんて答えたと思う?

 

「あら、そうですか。わかりました」

だと?

 

信じられるか?違うだろ、そこは!そんなにあっさりしちゃいけないだろ。一晩だろうとそうじゃなかろうと、やっちゃったんだから、愛情が湧くだろ!

 

ひとまず理由を聞いてくれよ!別れたくないって泣いてくれよ!そしたら、オレがあの女の不潔さを指摘して、「あなたのために私の不潔さを直します」とあの女が反省する流れになるのが普通だろ!

 

そんな簡単に別れることを認めるなよ!悲しくなるだろ!

 

「冗談だよ。うっそー」って誤魔化して別れ話は一旦保留にしといたけどさ。

 

あの女、オレがせっかく冗談だと笑ってやったのに「あら、嘘はいけませんわ。今日は私お泊まりしますから、罰として夜は床で寝てください。朝食も頼みますわ」って、どう言う事だよ!

 

泊まってくれるのかよ!なんだよ、そのご褒美!も〜う、好き。

 

まあ、嘘付いたのは事実だから、その日は床で寝てやったよ。早起きして、朝メシも作ってやったぜ!ついでに、カフェオレも作ってやった。

 

これ以上、あの女の思い通りに動かされるのはゴメンだぜ!ビシッと男らしくキメて、あの女の不潔さを直してやる!

 

綺麗好きにならなきゃ、マジで別れてやる!本気だぜ!

 

ホント、あの女、可愛い。マジ好き。


堪らない。

 

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