ジャン=クリストフ・グランジェ

『ミゼレーレ』(2008)の下巻で

 

J=C・グランジェ『ミゼレーレ』創元推理文庫

 

主役の1人で元刑事の

リオネル・カスダンは

アスンシオン福祉教育協会という

非営利団体が経営するコロニーが

今回の事件に深く関わっている

と確信するに至ります。

 

コロニーは定期的に

敷地外(地元の協会)で

音楽会を催しており

それを知った当日の午後

少年聖歌隊がコンサートを開く

ということを知って

コンサート会場に向かうんですが

その会場で渡されたプログラムは

次のようなものでした。

プログラムによると、四つの合唱作品が演目に上がっている。初めは十四世紀のアカペラ作品『トゥルネーのミサ』の一曲「グロリア」。次は十八世紀の作品で、ピアノの伴奏がついたジョヴァンニ・ペルゴレージの『スターバト・マーテル』。三曲目は――プログラムは年代順に並べてあった――ガブリエル・フォーレの『ラシーヌの雅歌』作品11を歌とピアノ演奏用に編曲したもの。そして最後は、オリヴィエ・メシアンの『神の現存についての三つの小典礼』だった。/こいつは退屈しそうだと思っていると、指揮者が登場して新たな拍手が起こった。(略)合唱が始まると、たちまち性も罪も重苦しさもない世界に連れていかれた。(略)ポリフォニーがホールに響くと、暖かみのある木の内装にもかかわらず、冷たい僧院が目に浮かんだ。厳めしい石造りの丸天井、粗末な毛織の服、生贄の図。生を否定し、さらなる高みを目指すのだ。今、ここにある現実を、陰気なマントで覆ってしまおう。(平岡敦訳、創元推理文庫・下巻 pp.217-218)

この箇所を読んで

さっそく《トゥルネーのミサ》や

フランクの《ソロモンの雅歌》

メシアンの《神の現存についての三つの小典礼》の

音盤を検索して探してみたのは

いうまでもありません。(^^ゞ

 

でも今回のブログは

それらについてではなく

ペルゴレージ《スターバト・マーテル》

ピアノ伴奏版について

書くことにします。

 

 

ペルゴレージの

《スターバト・マーテル》

ピアノ伴奏版というのは

さすがにCD化されてない

と思ったんですけど

もしかしたら YouTube に

アップされてるかも

と思って探して見たら

やっぱりアップされてました。

 

それがこちら。

 

 

合唱はアルメニア・リトル・シンガーズ

Little Singers of Armenia で

指揮はティグラン・ヘケキャン

ピアノ伴奏者は不詳です。

 

録音は2016年に

オランダのマースリヒトにある

アルメニア使徒教会の

聖カラペット教会

行われたようです。

 

第12曲目と

最後のアーメンしか

歌われていないのが

残念ですけど

グランジェの小説に描かれた

コンサートの場面を

彷彿させるものがありますね。

 

 

なお

ピアノ伴奏による

ソプラノとアルトによる二重唱の演奏も

YouTube で見つけました。

 

 

演奏は

ソプラノ:神原かおる

メゾ・ソプラノ:松本やすこ

ピアノ:芦沢真里

指揮:小鉄和広で

東京オペラという団体の

コンテンツのようです。

 

演奏年はアップされた

2020年7月4日でしょうか。

 

コロナ禍のさなかであり

それがこのような

各奏者が遠隔にいながら

ネットを介して同時に演奏する

という試みを生んだものでしょう。

 

 

そして

ピアノ伴奏のみで

歌が入っていない演奏も

ヒットしました。

 

 

 

演奏者は

「こころぴあの♬大人のピアノ再開」

というvlogをアップされている

「こころぴあ」さんでしょうか。

 

Edition Breitkopf とあるのは

ドイツの楽譜専門店

ブライトコプフ社の楽譜を使った

という意味で

ヘルムート・フッケ Helmut Hucke

(1927〜2003)という

ドイツの音楽学者による

リダクションかと思われます。


手元には

それとは異なる人のアレンジによる

ピアノ独奏版があるんですけど

長くなりましたので

それについてはまた

CDが出てきたら。( ̄▽ ̄)

前々回の記事の冒頭で書影をあげた

ジャン=クリストフ・グランジェの小説

『ミゼレーレ』(2008)は

 

J=C・グランジェ『ミゼレーレ』創元推理文庫

 

La marque des anges -Miserere-

というタイトルで映画化され

2013年に公開されています。

 

英題は The Mark of Angels -Miserere-

これはフランス語のタイトルを

そのまま英訳したものですが

邦題は

同じ原作者による2000年公開の映画

《クリムゾン・リバー》にあやかって

だと思いますけど

《クリムゾン・プロジェクト》

とつけられました。

 

劇場公開はされず

洋画専門チャンネルなどで

放映されただけのようですが

『ミゼレーレ』邦訳書の

「訳者あとがき」を読み

DVDが出ていることを知り

買って、観てみました。

 

《クリムゾン・プロジェクト》DVD廉価版

(松竹 DZ-4503、2015.8.5)

 

こちらは廉価版の方で

最初は2014年6月7日に

リリースされました。

(タワーレコード・オンラインの

 商品紹介ページによります)

 

最初にリリースされた盤なら

ライナーがついていたのか

それは知りませんが

本盤にはライナーもなく

スタッフやキャストは

監督と主演の2人以外

まったく分かりません。

 

幸い英語版 Wikipedia に

項目が立てられていましたので

 

 

こちらを見れば

概ね見当はつきましたけど。

 

 

上で「概ね」と書いたのは

自分が今、最も知りたいこと、

アレグリの《ミゼレーレ》が

誰によって演奏されたのか

ということが分からないからです。

 

音楽はマックス・リヒターが担当

ということは分かりますし

配信でしか入手できない

サントラ盤のトラックも

書かれていますけど

アレグリ《ミゼレーレ》の演奏者は

Boys Air Choir(少年合唱団)

とあるだけなので

勘弁してよ、という感じ。

 

 

というわけで

DVDをひと通り観てから

エンディング・テロップに注目したんですが

これがパソコンの画面だからなのか

文字がぼやけてて、ほとんど判別不能。

 

英語ならまだしも

フランス語ですからねえ。

 

 

老眼を駆使して

なんとか判別できたのが

"Les Pastoureaux" de Waterloo

Directies: Philippe Favette

という文字列でした。

 

もっともこの表記は

調べた後に修正したもので

Waterloo は最初 Watelee と

読み取ってましたから。( ̄▽ ̄)

 

それはともかく

フィリップ・ファヴェット指揮

ワーテルローの《レ・パストゥロー》

(羊飼いの少年たち)が絡んでいる

ということが分かりました。

 

劇中に登場する少年は

自分で歌っているというより

明らかに音を当ててるだろ

という感じだったんですけど

それはレ・パストゥローから

選抜されたソリストが

担当したようです。

 

というのも

活動報告めいたPDF文書がヒットして

Les Pastoureaux au cinéma et à la télévision

という項目に

 《ミゼレーレ》を歌う

 若いソリストの声に使われている

というようなことが

書かれていたからです。

 

 

劇中では

主役の1人である元刑事のカスダンが

最初の被害者のアパートに忍び込んで

残されていた《ミゼレーレ》のCDを聴く

という場面があります。

 

また

〈33人の児童聖歌隊のためのミゼレーレ〉

というコンサートが開かれてて

33人の少年少女が歌う

というシーンも出てきます。

 

そこで演奏しているのは誰か

というのが気になってたわけですが

レ・パストゥローだったわけですね。

 

 

アレグリの《ミゼレーレ》は

現代の大人の演奏家の場合は別として

男声のみで歌われるのが基本なので

女子も混ざったコンサート

という映像には違和感があります。

 

女子も入れなくちゃ

現代では絵面的に受け入れられまい

という監督の判断なのか、それとも

脚本家のセンスなのかどうか

よく分かりませんけど。

 

クラシックの

それもマニアででもなければ

あまり気にしないかも

しれませんけどね。

 

 

なお、映画のテロップを見ていると

オックスフォード・カメラータの演奏や

演奏者は読み取れませんでしたけど

ビクターエンタテインメントの

パブリック・ドメインになっている演奏も

使われているみたいでした。

 

オックスフォード・カメラータの演奏が

NAXOS 盤だということは分かりましたけど

ビクターエンタテインメントの方は

演奏者もリリース年も読み取れなくて

音源が特定できず口惜しい限り。

 

まあ、こういう映画の観方は

邪道かもしれませんけど。( ̄▽ ̄)

 

 

あとは

もう1人の主役である

インタポールの捜査官が

第一の現場の教会に現れた時

(始まってから30分後のあたりで)

弾いていたオルガン曲は何か

というのが分かると

嬉しいんですけど。

 

原作では

ドアーズの《ハートに火をつけて》を

弾いていたということになってますが

映画の方は明らかに

クラシック風の曲でした。

 

まさか《ハートに火をつけて》を

クラシック風に弾いたわけでも

ありますまい。( ̄▽ ̄)

 

 

ちなみに

バッハのカンタータ第4番

《キリストは死の縄目につながれたり》から

第3曲目の

〈死に打ち勝てる者絶えてなかりき〉も

劇中で使われています。

 

そちらはカール・リヒター盤だと

老眼を駆使した結果

読み取れましたけど

どういうシーンで使われているのかは

もはや確認する気力がありません(笑)

 

 

ところでちなみに

サントラ盤の演奏者は

Maria Jung となっていて

これはカール・リヒター盤の奏者と

違うんですけど

そこら辺の関係もよく分からず

隔靴掻痒の感が否めません。

 

 

というふうに

内容とは別のところで

ストレス溜まる映画だなあ

というのが

正直なところなのでした。

 

別に

映画そのものの責任じゃあ

ないんですけどね(苦笑)

 

 

トレーラー(予告編)はこちら。

 

 

いちおう

映画自体の感想を書いておくと

(以下、ネタバレはしてないつもりですが

 未見の方はご注意ください)

原作を読んでいましたので

「ここは原作のあの場面かあ」

「あのトリックをこう表現するわけね」

という感じで楽しめました。

 

上下2巻で800頁になろうか

という長編を

100分ほどの尺に

まとめたわけですから

無理も出てくるのは当然かと。

 

 

メイン・トリックは

小説で読むと

不自然だとも思いませんでしたが

ネットにアップされている

感想などを見たら

否定的な人が多いようで

そこは800頁を100分にまとめた弊害

というところでしょうかね。

 

そのトリックのために

手術を施した痕があって

それを映すシーンは

やや興醒めでしたけど。

 

まあ、グランジェのお約束で

ナチズムが絡みますし

DVDのジャケ裏に

「背後に潜む謎の国際秘密結社」

なんて書かれてますから

仮面ライダーのショッカー並みと思えば

いいのかもしれませんけれども

手術のような人間の手が加わる処置は

原作のプロットに対する

無理解を示しているとしかいいようがない

というのが正直なところです。

Evensong for Ash Wednesday(Stereo LP盤)

(英 Argo: ZRG 5365、1964)

 

リリース年は

レコードのレーベル面に

年代が印刷されているのみで

そちらに拠りました。

 

録音年は

どこにも表示されてませんけど

前回ご紹介のCD

《ミゼレーレ》が

1963年3月とありましたから

それと同じでしょう。

 

 

CDも出ているようですが

Amazon や

タワーレコード・オンラインでは

現在、在庫切れのようです。

 

中古で出ていないかなあ

と思って検索していたら

ディスクユニオンで

LPが出ているのを見つけて

思い立って買いに行ったのが

おとといのことでした。

 

 

プレーヤーは故障中なので

いつ聴けるか分からないにも拘らず

買ってしまったわけですが

CDを見つけるまでのつなぎに

という考えもありましたけど

やはり当時出た形態のものは

見ているだけで趣きがあります。

 

古い壺を鑑賞するのと

同じような気分

とでもいいましょうか。

 

壺を愛でる趣味は

持ち合わせておらず

鑑賞能力があるわけでも

ないんですけどね。( ̄▽ ̄)

 

 

Discogs で

本盤のページを見ると

ステレオ盤とモノラル盤が出ており

さらに同じ年に

ステレオ盤のみなのかどうか

分かりませんけど

再リリースされています。

 

よほど人気があった

ということでしょう。

 

今回入手できた盤は

Penguin Stereo Record Guide

Top Recommendation

というシールが貼ってあるので

おそらくは同年の

再リリース盤の方かと思われます。

 

 

値札も貼られていて

£3•99(3ポンド99ペンス)

とあります。

 

こちらのブログによると

 

 

1960年代当時の1ポンドは

1008円だそうですから

当時の日本で買った場合

約4000円ほどになりましょうか。

 

上記ブログの記事は

タイムスタンプが2021年ですが

その時の日本円で換算すると

1ポンド4000〜5000円程度

とのことですので

今買えば1万2000円もします。

 

ですが、今現在買えば

1万2000円するというより

1960年代に買う時の感覚が

今の1万2000円くらいのものを

買おうとする時の感覚に近い

と考えた方がいいんでしょうね。

 

輸入盤レコード

特にヨーロッパのものは

それくらい高かった

ということでしょうか。

 

 

前の記事にも書いた通り

本盤の《ミゼレーレ》は

英語に訳された歌詞です。

 

歌詞は

ジャケ裏に載ってるんですけど

それを見ることができたのが

今回の盤を買って

良かったと思えたことの

ひとつでしょうか。

 

 

トマス・カウスタン(カウストン)

リチャード・ファラント

という馴染みのない作曲家の他

バードやパーセルの曲も

収録されているようですが

当時、行われていた式典そのままなので

従来からの讃美歌や続唱が歌われたり

聖書を読み上げるだけのトラックも

あるようです。

 

どのトラックがそれに当たるのか

手元の辞書を見たり検索したり

タワーレコード・オンラインの

商品ページを見たりして

だいたいは見当をつけましたが

正確なところは聴いてみないと

よく分かりません。(^^ゞ

 

それでも

参考のために、備忘もかねて

以下にあげておくことにしましょうか。

 

ご笑覧いただければ幸いです。

 

●SIDE ONE

01. ファラント:Hide Not Thou Face From Us, O Lord

  おお主よ、我らから御顔を隠すことなく

02. Sentence 聖書からの引用句

03. バード、ウィルコックス編:Preces and Responses

  先唱句と応唱句

04. Psalms 143 讃美歌 第143番《主よ、私の祈りを聞いてください》

05. Psalms 130 讃美歌 第130番《深き淵より、我御身を呼ばわる》

06. First Lesson: Isaiah 57,13-21

  第一日課:イザヤ書 *第一日課は旧約聖書からの朗読

07. Lent Prose: Hear Us, O Lord, Have Mercy Upon Us

  四旬節の続唱[セクエンツィア]:

  おお主よ、我らが祈りを聞き、憐れみたまえ

08. カウスタン、ウィルコックス編:Magnificat

09. Second Lesson: St. Luke 15, 10-32

  第二日課:ルカ伝 *第二日課は新約聖書からの朗読

10. カウスタン、ウィルコックス編:Nunc Dimittis

  今こそ去らせたまわん

 

●SIDE TWO

11. The Apostles' Creed 使徒信条(クレド)

12. バード、ウィルコックス編:The Lesser Litany 小連禱

13. The Lord's Prayer 主の祈り

14. バード、ウィルコックス編:Versicles and Responses

  小詩句と応唱

15. Collects 集禱文

16. パーセル、ウィルコックス編:Anthem: Hear My Prayer, O Lord

  アンセム:主よ、私の祈りを聞いてください

17. Prayers Read by the Dean

  教会執事(あるいは学長か?)による祈りの言葉の朗読

18. アレグリ、ウィルコックス編:Miserere (Psalm 51)

  憐れみたまえ

 

さて

レコード・プレーヤーは

いつ買えるのか。

 

(諸物価高騰の折から

 近々には難しそうですが……)

 

プレーヤーを買う前に

CD盤に出会えるのかどうか。

 

すべて運次第です(遠い目)