自分が

バロック音楽のCDを

探す時の指針とすることが多い

皆川達夫『ルネサンス・バロック

名曲名盤100』(音楽之友社、1992)は

そもそも1977年に刊行された

『バロック名曲名盤100』の

改訂版にあたります。

 

ヘンリー・パーセルの歌劇

《ディドーとエネアス》の推薦盤が

『ルネサンス・バロック名曲名盤100』だと

トレヴァー・ピノック指揮盤であることは

以前にもご案内の通りです。

 

ところが

元版の『バロック名曲名盤100』では

というか1988刊の第14刷だと

アンドルー・パロット指揮

タヴァナー合奏団による

LPレコードでした。

 

そのCD化されたものが

今回ご案内のこちらの盤です。

 

《ディドーとエネアス》パロット旧録音盤

(英Chandos: CHAN-0521、1991)

 

実をいえば

こちらの録音の存在を知ったのは

『古楽CD100ガイド』

(国書刊行会、1996)で

《ディドーとエネアス》の項目を

読んでいた時のことです。

 

執筆は那須輝彦ですが

那須はそこで

次のように書いています。

多少可憐にすぎるきらいはあるが、パロット盤では若いエマ・カークビーの歌うダイドーを聴くことができる。(p.144)

おお、カークビーが歌っているのか

聴いてみたい!

と思っていたら、先月

四谷のオフィスからの帰りに

新宿のディスクユニオンで

見かけたのでした。

 

しかも、最初に見た時は

まだ那須の記事を読んでおらず

帰宅してからたまたま

『古楽CD100ガイド』を繙き

おお、カークビーが! と思い

次に寄った時に慌てて買った

という経緯になります。( ̄▽ ̄)

 

皆川が紹介しているのを知ったのは

さらにその後、つい最近のことですが

皆川はカークビーについて

一言もふれていないのでした。

 

 

ちなみに

『バロック名曲名盤100』初版では

コリン・デイヴィス指揮盤が

あげられています。

 

1970年録音のディヴィス盤は

もちろん古楽器ではなく

モダン楽器による演奏です。

 

初版が出てから

14刷が出るまでの間にいつ

パロット盤がリリースされたのか

調べ切れておりませんが

14刷の段階ですでに

「廃盤」と付記されておりました。

 

 

それは宿題ということにして

前置きが長くなりましたが

パロット盤の演奏者と録音年は

以下の通りです。

 

【ソリスト】

ディドー:エマ・カークビー(S)

ベリンダ:ジュディス・ネルソン(S)

第2の女(侍女):ジュディス・リース(S)

エネアス:デイヴィッド・トーマス(B)

女魔法使い:ジャンティナ・ノールマン(MS)

第1の魔女:エミリー・ヴァン・エヴェラ(S)

第2の魔女:レイチェル・ベヴァン(S)

精霊:テッサ・ボナー(S)

第1の水夫:レイチェル・ベヴァン(S)

  *

アンドリュー・パロット指揮

タヴァナー合唱団&プレイヤーズ

 

【録音】1981年1月3〜5日

    ロンドン、ロスリン・ヒル教会

 

エネアス役以外は全て女性

というのは

パーセルの友人の

舞踊家が経営する

女子寄宿学校で初演された

という従来の説に

拠ったものでしょう。

 

最初、古いパソコンの

外付けCDドライブを通して

ワイヤレスイヤホンで聴いた時は

音が小さすぎて全く楽しめず

ひどい録音だと思ったものでしたが

改めて普段使いのパソコンで

ワイヤレスイヤホンを使わずに聴き

ようやく楽しめた次第です。

 

 

那須輝彦が

「可憐にすぎるきらいはある」

と書いたのは

ディドーがカルタゴの女王で

それなりの貫禄があるはずだから

と考えているからでしょうか。

 

確かに

YouTube などで

いろいろな公演の映像を観ると

ちょっと差し障りがあるいい方ですけど

少し薹の立った演者であることが

多いようです。

 

以前、当ブログでご案内の

フィリップ・ピエルロ指揮版も

こういってはなんですが

ちょっと薹の立った感じでした。

 

ですが、まあ

女子寄宿学校版だと思えば

むしろ若手が演じた方が

当時の雰囲気に近いかも知れず。

 

などと考えて聴けば

エマ・カークビーなわけですし

愉しめるのではないか

と思う次第です。

 

 

なお、本盤のトラックは

各幕と第2幕の2つの場に合わせて

4つしかありません。

 

これは凄まじいですね。( ̄▽ ̄)

 

 

あと、第2幕第1場の最後で

落雷のような効果音が鳴り響きます。

 

狩を楽しんでいる

ディドーたちの娯しみを邪魔する

魔女たちの悪戯の演出かと

思われますけど

そういう劇場的な効果を入れるのは

初演が宮廷だからやれたものだという

近年の説に沿ってのことだとばかり

思っていたので

ちょっと意外でした。

 

もっとも

その近年というのがいつか

にも、よるわけですけど。

 

 

ところで

パロットは本盤から13年後に

《ディドーとエネアス》を

再録音しています。

 

そちらのCDも

たまたま買ってましたので

次にご紹介したいと思っています。

 

旧録音については

ひとまず、ここまで。