アグネス・ギーベルの歌う
教会カンタータ第51番
《全地よ、神にむかいて歓呼せよ》
BWV51の通奏低音(オルガン)に
グスタフ・レオンハルトが
参加していることを
紹介しました。
実はレオンハルトはもう1回
BWV51の演奏に関わっていて
それが今回ご紹介の
ニコラウス・アーノンクールと共に携わった
《バッハ・カンタータ大全集》に
収録されている録音です。
(Teldec Classic International
4509-91757-2、1994)
こちらは
紙箱入りプラスチック・ケース版
1巻6枚入りの第3巻になります。
こちらの購入については
以前にも書きました。
第3巻には
BWV37からBWV60までの
BWV53を除いた
全23曲を収録。
BWV53がないのは
ゲオルク・メルヒオール・ホフマン
という人による偽作だと
考えられているからです。
BWV51の録音年は
1974年12月9〜10日。
ソプラノ独唱は
オランダ生まれの
トランペットは
アメリカの音楽学者で
ナチュラル・トランペット演奏の
先駆者として知られている
他、通奏低音でオルガンを弾く
(と思われる)レオンハルト率いる
レオンハルト・コンソートの面々ですが
詳しい編成及びメンバーは
不詳です。
上で「思われる」と
カッコで付け足したのは
ライナーのオルガン奏者に
レオンハルトの高弟として知られる
ボブ・ファン・アスペレンの名も
あがっているから。
(中央が解説書)
手元のディスクには
160ページにも及ぶ
解説ライナーがついてますけど
詳しい編成や録音年の記載がなく
後者についてはマルP年度が
記されているだけなのでした。
ですから
録音年については
例によって
拠っています。
(上記リンク先の7番目)
スミザーズのトランペットは
さすがに音楽学者だけあって
長く音が引き延ばされる際の
トリル、というのか
装飾的な音の揺れも
きちんと表現されています。
今となっては当たり前の奏法ですが
アグネス・ギーベルの時の
モーリス・アンドレの演奏は
長く音が引き延ばされるところを
トリルにせず、そのまま
単音を伸ばしてるんですね。
クヴェックシルバーの声は
高音部も無理なく歌われていて
少年のように聞こえるところが
あるような印象を受けます。
ずいぶん久しぶりに
聴き直したわけですけど
現在の演奏と比べると
もうちょっとキビキビしてほしい
と思うところもありますが
レオンハルト・ファンだという
贔屓目を抜きにしても
1970年当時の
古楽勃興期の演奏として
優れたものだと思いました。
本ボックスには
ソプラノ・ソロによる
教会カンタータ第52番
《偽りの世よ、われは汝に頼まじ》BWV52が
5枚目のディスクに入っているので
いい機会でもあり
聴き直してみました。
BWV52の冒頭に
ブランデンブルグ協奏曲の
第1番第1楽章の異稿が
そのまま使用されている
ということは
以前にも書きました。
レオンハルト・コンソートには
ブランデンブルグ協奏曲の
全曲録音のディスクも
ありますので
そのまま第2楽章が
演奏されるかのような
錯覚に陥ったりして
それも、ご愛嬌。( ̄▽ ̄)
独唱は
テルツ少年合唱団のソリスト
ゼッピ・クローンヴィッター。
つまり
ボーイ・ソプラノによる
歌唱となります。
最後のコラール合唱は
テルツ少年合唱団ではなく
ハインツ・ヘニッヒの
合唱指揮によって
ハノーヴァー少年合唱団が
歌っています。
録音年は
1975年1月26〜27日。
こちらの編成については
詳しく載っています。
(上のリンク先の7番目)
ヴァイオリンに
古楽ファンにはお馴染みの
ルシー・ファン・ダールや
シギスヴァルト・クイケンの名があり
チェロにアンナー・ビルスマ
オーボエにブルース・ヘインズの名が
確認できるのは
感慨深いものがありますね。
チェンバロとオルガンの奏者に
レオンハルトとスペレンの名が
併記されているのは
チェンバロがレオンハルト
オルガンがアスペレン
ということでしょうか。
チェンバロとオルガンの
両方が加わることは
以前、貼り付けたことがある
ミリアム・フォイアージンガーが歌う
バッハ財団の映像でも
確認できますし。
最近は
ソプラノ独唱による録音が少なく
最後にコラール合唱があるからか、とか
アメリングの記事の時に書きましたが
コラール合唱があるからというより
冒頭のシンフォニアを演奏するために
メンバーが余計に必要だからかも
と思えてきました。
ナチュラル・ホルンが2人
オーボエが3人必要なわけですが
オーボエ奏者はともかく
ナチュラル・ホルン奏者を
2人も調達するのは
かなり大変そうですからね。
クローンヴィッターの歌は
ボーイ・ソプラノとして
それなりに聞かせますが
アメリングやフォイアージンガーで
すでに聴いていると
少し苦しいかな
と思われるのも仕方がなく。
それでも
バッハがカントール在任時の
初演の雰囲気は
こんなものだったのかなあ
というふうに思って聴けば
そこそこ楽しめるかと。
バッハが指揮した初演時は
もっと厳しい質だったろうと
思われるだけに。( ̄▽ ̄)
ところで本CDには
ディスクを保護するための
スポンジ生地のクッションが
敷かれていました。
ところが
このスポンジ生地
触わるとすぐに
ポロポロと崩れるくらい
経年劣化しておりまして。
こういう経験は
ウィレム・メンゲルベルク指揮
《マタイ受難曲》のCDを
久しぶりに聴こうとした時に
経験しておりましたから
今さら驚きはしませんけど
なんだか切ないですね。
CDを保護するために
スポンジが入っていること自体
隔世の感があるかもしれず
それにも切ないものを
感じたり(遠い目)