バッハが作曲した
ソプラノ独唱用の教会カンタータは
第51番《全地よ、神にむかいて歓呼せよ》
第199番《わが心は血の海に漂う》が
代表的なものですけど
それ以外に
第84番《われはわが幸[さち]に満ち足れり》と
第52番《偽りの世よ、われは汝に頼まじ》
というのがあります。
BWV84 については以前
ディスクを紹介したときに
ちょっとふれました。
ソプラノ独唱用カンタータ集
という企画のディスクの場合
この3曲か、あるいは
BWV84 の代わりに
ソプラノ独唱用に編曲されている
第82番《われは満ち足れり》BWV82a を
カップリングにすることが
増えてきたという印象ですね。
その一方で BWV52 は
近年のディスクだと
カンタータ全集的な企画以外に
録音されないのかなあ
という感じがしてました。
おそらく
BWV52 の最後が
コラールの合唱だからではないか
と思われます。
だったらコラール合唱の楽章を
BWV84 を歌った時の
フォイアージンガーのように
ソプラノのソロで歌えばいい
と考えたりするんですけどね。
いずれにせよ
ソプラノ独唱を意識してから
最近になって集め始めた録音では
聴く機会がありませんでした。
アメリングには
そのBWV52を含んだ
ソプラノ独唱用カンタータを
集めた録音があります。
それが今回ご案内の
CD4です。
録音は1981年5月で
原盤はフィリップスから
リリースされました。
演奏は
テリー・エドワーズ合唱指揮の
ロンドン・ヴォイシズと
レイモンド・レッパード指揮
イギリス室内管弦楽団です。
ロンドン・ヴォイシズは
BWV52 の他
BWV84 の最終楽章でも
コラールを合唱しています。
BWV52 の冒頭は
ブランデンブルグ協奏曲の
第1番第1楽章の異稿が
シンフォニアとして
演奏されますので
知らずに聴くと
びっくりさせられますね。
それだけに
少し大きめの管弦楽団が
必要とされますので
近年のソプラノ独唱盤への
収録が見送られるのは
そのためかもしれません。
先日この曲を歌っている
フォイエルジンガーの映像を
YouTube で観たんですが
そのときは
なんだか落ち着きのない曲だなあ
とか思ったんですけど
アメリングの演奏で聴くと
ちゃんとしてるように
聴こえるのが不思議でした。
本盤には
世俗カンタータの
《悲しみのいかなるかを知らず》
BWV209も
収められています。
以前ご案内の
1966年の録音で
1972年の録音ですから
今回のは実に
3度目の録音となります。
フルートのソロは
ウィリアム・ベネットという人。
モダン・フルートの演奏家なので
自分は馴染みがありませんでしたが
Wikipedia にも立項されており
フランスのフルーティスト
ランパルとモイーズの
お弟子さんだそうです。
(フランスの2人なら自分も
聞いたことあるんですけどw)
BWV209 の最終楽章の
舞曲風の旋律は実に軽快で
少なくともマリナー盤よりは
良いかと思いますね。
本盤の場合
冒頭にシンフォニアが置かれる
BWV52とBWV209を
収録しているためもあって
器楽曲の割合が高いというのも
特徴としてあげられるかと。
演奏は全体に快調ですし
アメリングの声も美しい
(気がするw)。
これは
古楽演奏の影響なのか
それとも
デジタル録音ゆえ
なんでしょうか。
実は
Elly Ameling: Bach Edition に
収められている
20枚のディスクの内
CD4のみ
デジタル録音なのでした。
ジャケの左角に
わざわざデジタル録音であると
表示しているあたり
時代を感じますね。
要は CD4が
20枚の中では
一番最新のディスク
というわけです。
こういうことが分かるから
当時のジャケが復刻されていると
ありがたいんですよね。