バッハのカンタータについては
当ブログを始めた頃に
取り上げたことがあります。
磯山雅が
バッハの真髄はカンタータにあり
と述べていることや
アーノンクールとレオンハルトによる
カンタータ全集の廉価版を見つけ
砂川しげひさの
カンタータ全曲完聴記を読み
奮起して聴き始めたという
経緯について書いてます。
教会カンタータだけでなく
世俗カンタータも全曲聴いた
ということまで書いてますが
その後、すっかりご無沙汰となり。
かなり間をおいて
最初にヴィヴァルディ
次いでペルゴレージやヘンデルの
声楽曲にハマりましたが
バッハの声楽曲について書くのは
モテットなどを除き
すっかりお見限り状態でしたけど
最近、ソプラノ独唱のカンタータに
ハマり始めています。
そのきっかけになったのが
新宿のディスクユニオンで
少し前に購入した
こちらのディスク。
(東京エムプラス PCHR-77459、2022.2.5)
リリース年月日は
タワーレコード・オンラインに
拠りました。
原盤レーベルは Christophorus で
録音は2021年3月8日〜11日に
スイスのビニンゲン聖十字架
カトリック教会で行なわれました。
演奏はソプラノの
ミリアム・フォイアージンガー
(フォイエルジンガーという表記もあり)
および
スイスのバーゼルを拠点とする
古楽器合奏団
バーゼル・カプリコルヌス・コンソート。
アレクサンダー・グリヒトリーク盤を
探していた時に目にとまり
なんだろうと思いつつ
購入したんでした。
フォイアージンガーの
歌唱を聴くのは
バッハに限らず本盤が初めてで
最初に聴いた時はイマイチとか
思ったんですけど
ミヒャエル・マウルによる
原盤のライナーの翻訳(白沢達生訳)を読み
俄然、ソプラノ・カンタータに
親しみを持つようになり
いろんな歌い手の演奏を
聴き比べ始めたのでした。
そうして今では
フォイアージンガー盤に対し
最善ではないけれど
おっとりした歌い方が
なかなかいいのではないか
と思うに至った次第です。
(ちょっと偉そうw)
バッハの時代
女性歌手は教会で歌うことができず
ソプラノのためのカンタータは
ボーイ・ソプラノか
ソプラニスタ(成人男性のソプラノ)
ないしカストラートが歌ったもの
と考えられてきました。
本盤に収録されている
ソプラノ・カンタータの場合
BWV51は高度な技巧が必要とされ
ボーイソプラノが歌ったとは思われない
と思われてきたわけです。
そのため
想定されていた候補は
カストラート歌手だったわけですけど
バッハの周囲に女性ソプラノ歌手が
いないわけでもなく。
たとえば
バッハがケーテン侯に
仕えていた時代に知り合った
二人目の妻アンナ・マグダレーナは
同じくケーテン侯に仕える
宮廷歌手でした。
バッハがライプツィヒに移り
同市のカントール(教会音楽指導者)兼
音楽監督に就任して以降
アンナ・マグダレーナは
内助の功に徹した
というふうに思ってたんですが
今回のCDのライナーを読むと
ときどきバッハと共に連れ立って
近隣の領主国などに赴いていたらしく。
そういった場所で
アンナ・マグダレーナが
バッハの伴奏と指揮によって
カンタータを歌った可能性も
あるかもしれない
と近年では
考えられてるようなんですね。
アンナ・マグダレーナの父親は
やはりケーテン侯の宮廷に
トランペット奏者として
雇われていたので
トランペットが
重要な役割を持つBWV51を
父の伴奏で歌った可能性も
大いに考えられるのだとか。
こうしたことを知って
アンナ・マグダレーナが歌っている
というイメージを抱くことができ
俄然、興味が湧いてきた
というわけです。
BWV82の最終稿は
バス独唱カンタータとして
知られていますけど
初稿はアルト独唱用で
第2稿はソプラノ独唱用に
第3稿は再びアルト用に改訂され
最終的にバス独唱用となりました。
ただし
第2曲のレチタティーヴォと
それを受けての第3曲のアリアは
《アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳》に
ソプラノ独唱用のものが収録されていて
アンナ・マグダレーナによって
家庭内で歌われていたであろう
と推測されています。
かつては
この第2、第3曲のみ
ソプラノ歌手によって歌われ
録音されたものですけど
最近はカンタータ全体の
ソプラノ独唱用のバージョンが
ソプラノ歌手のレパートリーとして定着し
録音もされるようになっています。
以前、当ブログで
ペルゴレージのスターバト・マーテルを
バッハが編曲したバージョンの
収録盤を紹介したことがありますけど
そこではBWV82のソプラノ独唱版が
カップリングになってました。
その時は
BWV82の背景をよく知らず
珍しいのかも、とか
ぼんやりした感想で
お茶を濁しましたが
いろいろ知った
今となってみると
お恥ずかしい限りです。
なお、本盤には
BWV51とBWV82の他に
ボーイ・ソプラノで演奏されたことが
確実視されているBWV84を
収録しているだけでなく
トリオ・ソナタ ト長調 BWV1038 および
オルガン曲の BWV709 と BWV655 の
弦楽合奏版が収録されています。
編曲したのはバッハではなく
本盤でヴァイオリンと
指揮を担当する
ペーテル・バルチ。
演奏者には
フラウト・トラヴェルソ奏者に
日本人の向山朝子が加わっていて
皆川達夫風に申せば
注目されるところですね。
フォイアージンガーは
これもソプラノ独唱用のカンタータ
BWV199も歌っておりまして
そちらも購入済み
かつ聴取済みなので
いつかご案内できたら
と思っています。
ちなみに
アレクサンダー・グリヒトリークの
《ケーテン侯のための葬送音楽》は
いまだに見つかってません。
こちらも
いつか見つけられるといいなあ
と思ってるんですけど
まあ気長に待つことにします。
●修正(同年8月29日、16:00ごろの)
録音年を
2012年と記していたのを
2021年に修正しておきました。
発売が2022年の2月なのに
2012年に録音というのは
新譜の場合はありえませんね。
気づけよ、自分(苦笑)