以前、ヌリア・リアルが歌う

《バッハ家のアリア集》というCDを

取り上げたことがあります。

 

その際

 のちに《マタイ受難曲》に転用される

 ケーテン侯レーオポルト追悼礼拝用

 カンタータ《子らよ嘆け》BWV244a

 からのアリアも4曲

 収められていたり。

と書きましたが

そのBWV244aを収録したCDを

タワーレコード・オンラインの

カタログで見つけて購入したのが

今回ご案内のディスクです。

 

ピション指揮《バッハ:葬送音楽 BWV224a》

(harmonia mundi: HMC 902211、2015.1.6)

 

演奏は

ラファエル・ピション指揮

アンサンブル・ピグマリオンで

2014年5月に

ヴェルサイユ宮殿内の

王立礼拝堂で行われました。

 

独唱者は

サビーヌ・ドゥヴィエル(ソプラノ)

ダミアン・ギヨン(アルト)

トーマス・ホッブス(テノール)

クリスティアン・イムラー(バス)

 

ちなみに

ドゥヴィエルは

ピションの奥さんです。

 

 

タワーレコード・オンラインの

ヌリア・リアル盤の紹介ページだと

《葬送音楽》BWV.244a となっていたのを

当ブログで《子らよ、嘆け》としたのは

『バッハ事典』(東京書籍、1996)

に拠りますけど、同書には

《マタイ受難曲》初期稿の一部が

転用されていると書かれているだけで

どの曲がどう転用されたのか

よく分かりません。

 

それよりなにより

《子らよ、嘆け》という作品が

ちゃんと存在する

と考えていたのは

当方の認識不足でして。

 

実際は歌詞が残っているだけで

音楽(楽譜)自体は

失われているのでした。

 

今日、BWV244a 収録を

謳っているディスクは

音楽学者によって

再構築されたものを

収録しているということに

今回初めて気づかされた次第です。

 

 

本ディスクについては

以下の2つのブログ記事が詳しいので

 

https://norap.seesaa.net/article/201503article_5.html

 

 

そちらを読んでいただければ

で済ませたいくらいです。(^^;ゞ

 

 

今回の曲は

《マタイ受難曲》からの転用が最も多く

その他

ザクセン選帝侯アウグスト1世の夫人

クリスティアーネ侯妃のための

追悼頌歌 BWV198から3曲

(1曲はレチタティーヴォ)

ロ短調ミサ曲から2曲

カンタータ第105番から1曲

(レチタティーヴォのみ)

それぞれ転用して構成されています。

 

ですから

バッハの曲、少なくとも

《マタイ受難曲》を

聴き馴染んでないと

あまり楽しめないわけですが

《マタイ》を聴いたことがあれば

「あの曲がここで」

という感じで楽しめるわけです。

 

そう書くと

敷居が高く感じられるかもしれませんが

なんといってもバッハですので

何も知らずに聴いても

退屈せずに聴けるかと思います。

 

70分をあっという間に聴かせる

アンサンブル・ピグマリオンの演奏も

見事としかいいようがなく。

 

 

当ブログでは

レア・デザンドレとの共演も記憶に新しい

トーマス・ダンフォードが

テオルボで参加しているのも

どことなく嬉しいですね。

 

ダンフォードがソロで

伴奏を担当していると思しい

アリアも収録されてました。

 

 

第2ヴァイオリンには

日本人の渡邉さとみも参加。

 

どんな漢字を当てるのか

調べるために検索したら

2019年に

鬼籍に入られていたようです。

 

 

この方

ナタリー・シュトゥッツマン指揮

オルフェオ55にも参加していて

当ブログでご案内の

《スターバト・マーテル》の映像にも

その演奏姿を確認できます。

 

その演奏の翌月に

今回のバッハの収録が

あったことになりますね。

 

海外ではそういうことも

可能なんでしょうか。

 

広瀬奈緒さんのブログで

リンクが貼られている

ナタリー・シュトゥッツマン&渡邉さとみ

Erbarme dich(憐れみたまえ)では

ヴァイオリン・ソロを演奏されてますね。

 

同曲は《マタイ受難曲》でも

よく知られている曲のひとつで

ケーテン侯のための葬送音楽だと

第2部の最初のアリア Erhalte mich

(私を受け入れたまえ)に

転用されている曲ですから

こちらでも映像を

貼り付けておきましょう。

 

と思ったんですが

2024年5月11日の

22時30分ごろになっても

「エラーが発生しました。

 時間を置いてからお試しください。」

と赤字で表示され

YouTube 映像が検索できないので

アドレスにリンクを貼っておきます。

 

https://www.youtube.com/watch?v=Jeil9S2exIU

 

最後に

遅ればせながらではありますが

ご冥福を祈ります。

 

 

ところで

上掲のブログのひとつ

〈クラシック音楽の小窓―その後〉に

今回のピションの演奏がアップされた

YouTube の全曲演奏へのリンクが

貼られています。

 

こちらにも

映像を貼ろうと思ったんですが

2024年5月11日の

22時30分ごろになっても

以下同文につき

やはりアドレスに

リンクを貼っておきます。

 

https://www.youtube.com/watch?v=miuGs6GeWjk&t=1s

 

動画ではなく

ダヴィッドの絵画《マラーの死》が

貼られっぱなしなだけですけど

CDがリリースされたのと同年の

約半年後にアップされるとは

なかなかに凄まじい。

 

上にも書いたように

70分はかかる演奏なので

(それでも《マタイ》全曲よりは短い)

興味関心があって

時間に余裕のある時にどうぞ。

 

《マタイ受難曲》のアリア

Erbarme dich の

初期稿から転用された

Erhalte mich は

24分30秒ごろに流れます。

 

歌っているのは

本盤でアルト・パートを担う

カウンターテナーの

ダミアン・ギヨン。

 

オブリガートのヴァイオリンは

コンサート・マスターの

ソフィー・ゲントでしょう。

 

 

最後に蛇足で付け足しておけば

本盤に収録された楽曲は

《アンハルト=ケーテン侯のための》

あるいはさらに詳しく

《アンハルト=ケーテン侯

レーオポルトのための》と

表記されることもあるようです。

 

「アンハルト=ケーテン侯」

と表記されるのは

もともとはアンハルト侯国と

呼ばれていた場所が

18世紀になって小領邦に

分かれていたことに由来する

アンハルト侯国の

小領邦であることを

正確に示そうとした呼び名

だと思われます。

 

ケーテン侯国の領主は

レーオポルトですから

より正確に表記しようとすると

《アンハルト=ケーテン侯

レーオポルトのための》となるわけ。

 

本ブログでは

《アンハルト=ケーテン侯

 レーオポルトのための葬送音楽》だと

タイトルが長くなりすぎるので

一番短い形の

《ケーテン侯のための葬送音楽》

とした次第です。

 

 

バッハは

1717年から1723年まで

ケーテン侯国の宮廷楽長を務めており

ケーテン侯国から

ライプツィヒに移ってからも

アンハルト=ケーテン宮廷楽長

という肩書きを

使い続けていていました。

 

追悼式用の音楽を依頼されたのは

そのためでもあったと思われます。