以前、シギスヴァルト・クイケン指揮

《奥様女中》のDVDを紹介した際

第2幕エンディングのデュエット

「あなたは今、幸せなの?

 Contento tu sarai?」の代わりに

《フラミーニオ》で歌われるデュエット

「あなたのために私の胸に

 Per te ho io nel core」が

使われる演出のものもあった、という

音楽学者・佐々木勉の解説を紹介しました。

 

そのDVDを入手する前に読んだ

パール・ネーメト指揮《奥様女中》

CDのライナーでは

Judit Péteri が

次のように書いていることも

先にご案内の通りです。

 

(1) 1752年の初版譜のエンディングは

 「あなたのために私の胸に」だが

 1754年のフランス語版だと

 「あなたは今、幸せなの?」

 になっている。

 

(2) 1750年以前に成立した

 と推定される最古の筆写譜では

 エンディングが

 「あなたは今、幸せなの?」である。

 

(3) その最古の筆写譜には

 前半部分は散失

 と注意書きされている。

 

(4) これらをふまえ

 本盤(ネーメト盤)では

 「あなたのために私の胸に」

 に続けて

 「あなたは今、幸せなの?」

 が演奏されている。

 

 

ネーメト盤の時点(1987)では

「あなたのために私の胸に」

の作曲者は不詳だったわけですけど

クイケン盤の時点(2001)になると

ペルゴレージの作曲であることが

すでに判明していたわけです。

 

というわけで

これは聴いてみなければなるまい

と思い立ったということは

以前にも書いた通りです。

 

Amazon で検索してみて

出品されているのを見つけた

中古の直輸入盤がこちら。

 

《フラミーニオ》2枚仕様盤

(独 Warner Fonit: 3984 29179-2、1999)

 

もともとはイタリアの

Nuova Fonit Cetra から

リリースされたものらしく

同社がワーナーの傘下に入って

Warner Fonit というレーベルで

出るようになったものかと。

 

ジャケ裏を見ると

Made in Germany

と記載されていますので

レーベル名の前に

「独」とつけておきました。

 

 

演奏は

マルチェロ・パンニ指揮

ナポリ・サン・カルロ劇場管弦楽団で

録音は1983年12月12日、

イェージ Jesi にある

ペルゴレージ劇場での

ライブ録音です。

 

イェージは

ペルゴレージの出身地で

もともと同地にあった

別の名前の劇場を

生誕170周年に合わせて

改名したもののようですね。

 

 

タイトルになっている

フラミーニオというのは

人名です。

 

原盤ライナーのあらすじを

DeepLで翻訳してみたところ

以下のような感じでした。

 

かつて

未亡人ジュスティーナに

求婚したことがあった

フラミーニオは

(どういう経緯があったのか

 分かりませんけど)

ジュスティーナとは結ばれず

時が過ぎた(ようです)。

 

そして(事情は不明ながら)

未亡人ジュスティーナの求婚者

ポリドーロの秘書として

ジュリオという名前で

ジュスティーナの前に現われ

ジュスティーナは

フラミーニオに似ているジュリオに

恋心を抱いてしまう。

 

また、ポリドーロの妹アガタも

フラミーニオこと

ジュリオに恋してしまう。

 

……という展開のようなんですが

この複雑な恋のもつれがどうなるのか

あらすじには書いてありませんでした。

 

 

そうした複雑な恋模様の一方で

ジュスティーナの小間使いチェッカと

ポリドーロの召使バスティアーノとの

シンプルな恋愛が進行していて

そのバスティアーノとチェッカによる

恋の成就のデュエットが

「あなたのために私の胸に

 Per te ho io nel core」

ということのようです。

 

本盤で聴いてみたところ

テンポは遅いですけど

確かに《奥様になった女中》の

最終デュエットのひとつとして

歌われていた曲でした。

 

 

本盤は1984年に

3枚組仕様でリリースされており

その日本流通盤が

ANFコーポレーションから

出ておりました。

 

このANF盤については

皆川達夫が著した

『ルネサンス・バロック名曲名盤100』

《奥様になった女中》の項目で

以下のように書かれています。

 

 この作曲家のオペラでは珍しい《フラミーニオ》の三枚組の全曲盤(ANF ANF〇三四〇廃盤)があります。指揮のパンニ以下、本場のナポリの音楽家たちによる演奏で、なかなか聞かせます。ストラヴィンスキーが《プルチネッラ》として編曲しているのがこのオペラです。(p.153)

 

ここで皆川が言及している

ANF盤が入手できれば

アリアの歌詞対訳も付いているし

詳しいストーリーが

簡単に分かるわけですけど

いまだに見たことがありません。

 

3枚組仕様の輸入盤は

先日、新宿のディスクユニオンで

見かけましたけど

2枚組仕様で持っているのに

邦盤ならともかく輸入盤を

改めて買おうという気にはなれず。

 

でも今回の2枚組盤、

例によってというか

パソコンの外付け再生機では

データを読み取ってくれず

しょうがないので MONODEAL の

ポータブルプレーヤーで聴いたのでした。

(輸入盤あるある、とはいえ. . . Orz)

 

3枚組仕様盤なら

外付け再生機でも

問題なく聴けたんでしょうか……。

 

 

実をいえば

ANFコーポレーションは

『オペラ名曲百科』の著者・永竹由幸が

同書の初版刊行後の1989年に

社長に就任している

会社だったりします。

 

ですが残念ながら

社長就任の同年に出た

上巻の増補版には

《フラミーニオ》について

言及されていません。

 

 

《フラミーニオ》は

近年になって

確か日本語字幕つきの

DVDとBlu-rayが出ていますが

DVDの方は品切れの模様。

 

やっぱり Blu-ray 再生機を

ポータブルでもいいから

(むしろポータブルの方が

個人的には使い勝手がいいですけど)

買うべきかどうか

悩んでいる最中です。

 

 

ちなみに

ストラヴィンスキーの

バレエ音楽《プルチネッラ》は

簡単に入手できます。

 

ところが、これはこれで

《フラミーニオ》を基にしたと

単純にはいえないようでして

こちらについては

またそのうちに

取り上げられれば

と思っています。