本日、足の痛みで

ついに屋内でも

杖をつき始めました。

 

明日、仕事で

出なくちゃならないんだが

大丈夫だろうか……

 

 

それはともかく。

 

 

チマローザのインテルメッツォ

《宮廷楽士長》の録音を探している時

ペルゴレージの知らない作品との

カップリングのCDがヒットしました。

 

それがこちら。

 

ケイテル指揮《宮廷楽士長》&《音楽の先生》

(独 Arte Nova: 74321 72121 2、2000.4.10)

 

リリース年月日は

タワーレコード オンラインに拠ります。

(ただしタワレコでは廃盤扱い)

 

録音は1999年5月16〜19日で

ドイツのリューゲン島にある

プットバス劇場での

おそらく観客を入れてない

ライブ録音だと思われます。

 

 

ブルスカンティーニの歌う

《宮廷楽士長》

マッフェオ・ザーノンによる

編曲版でした。

 

佐藤聖一郎の歌う《宮廷楽士長》

ザーノン編曲版ではないにしても

ピアノ伴奏盤ということで

今回の演奏で初めて

オリジナル版を

聴くことができたことになります。

 

もっとも器楽演奏の

プットバス・フェスティヴァル管弦楽団は

古楽器演奏楽団ではないと

思われるのが

個人的には残念ですけど。

 

 

指揮はヴィルヘルム・ケイテルで

バスはクリスティアン・チェレビエフ。

 

器楽パートのパッセージは

どことなくモーツァルトを

思わせるようなところもありますが

モーツァルトと同時代人ですから

当然といえば当然なのかも。

 

 

併録のペルゴレージ《音楽の先生》

Il maestro di musica は

Wikipedia によれば

ピエトロ・アウレッタ Pietro Auletta

(c.1698-1771)の作

《祈り》L'Orazio を基にした

パスティッチョだと書かれています。

 

パスティッチョというのは

音楽用語の場合

いろんなオペラからアリアを借りてきて

ひとつのオペラを仕上げる

寄せ集め作品のことで

ヘンデルやヴィヴァルディも

パスティッチョ・オペラを

作っていますから

当時の慣習からすれば

当たり前に行なわれていました。

 

ですから

偽作とまではいえないものの

ただし、本当に

ペルゴレージが手掛けたのか

という疑問は残ります。

 

 

永竹由幸の『オペラ名曲百科(上)』

 

永竹由幸『オペラ名曲百科(上)』増補版

(音楽之友社、1980/増補版、1989

 写真は1990年10月20日発行の第2刷)

 

によりますと、初演が1733年で

1740年に《オラツィオ》と題して

相当変更されて上演された後

1749年に《当世気質の女学生》と改題、

さらに1755年に《音楽の先生》と改題の上

パリで上演され

ようやく成功したのだそうです。

 

1740年の上演タイトルが

《オラツィオ》というのは

気になるところで

このときアウレッタによって

パスティッチョとして編曲された

という可能性もなきにしもあらず

と素人考えで思っちゃいますけど

どうなんでしょう。

 

 

今回のディスクのライナーには

 Attributed to Giovanni Battista Pergolesi,

 probably after "L'Orazio" by Pietra Auletta

と書かれていました。

 

ピエトロ Pietro ではなく

ピエトラ Pietra となっていて

Wikipedia も海外盤のライナーも

信用度という点では五十歩百歩なので

いずれが正しいのか判断がつかず

困ったものだなあと。

 

そう思いながら検索してみると

チェコ語版の Wikipedia がヒットして

そちらでは Pietro になってますから

とりあえず、ピエトロが正しい

ということにしておきましょうか。

 

 

それはともかく

《学校の先生》のあらすじを

永竹の前掲書をふまえて

紹介しておきます。

 

音楽の先生ランベルトが

生徒のラウレットに

歌のレッスンをつけているところへ

劇場支配人がスカウトに来て

ラウレットに目をつける。

 

ランベルト先生は

まだまだレッスンが必要だと

認めないのですが

劇場支配人は自分と結婚すれば

プリマドンナになれると誘惑。

 

先生はとんでもないと諭し

ラウレットもそれを

受け入れるものの

うるさい先生に嫌気がさして

劇場支配人にこっそりと

あなたのところに行くと告げる

(ここらへんが《当世気質の女学生》w)

というお話だそうです。

 

 

尺は35分ほどなので

あっという間に聴けます。

 

ちょっと面白いというか

変わっていると思ったのは

レチタティーヴォがない

といっていいのか分かりませんが

ナレーターの語りに

チェンバロなどの伴奏がつかない

という点でした。

 

それだけで

ペルゴレージ作かどうか疑わしい

と素人考えで思っちゃいますけど

《奥様になった女中》が

フランスで上演された際も

やっぱりレチタティーヴォには

チェンバロなどの伴奏がなく

ナレーターの語りだけ

だったようなんですね。

 

したがって

今回の演奏譜が

フランス上演版に基づくなら

レチタティーヴォに

チェンバロ伴奏がなくとも

腑に落ちるわけです。

 

ライナーをさっと見てみても

使用譜については

どこにも書いてないようですが

「このオペラは1752年のパリ公演で

特に注目を集めた」とありますから

やはりパリ上演版に基づく

と考えるべきでしょうか。

 

 

演奏は

ラウレット役(ソプラノ)

カレン・アンティエ・フォーゲル

ランベルト先生役(テノール)

ティモシー・シンプソン

劇場支配人コラジャンニ役(バス)

クリスティアン・チェレビエフで

ナレーターがエツィオ・マリア・ティシ。

 

器楽演奏はもちろん

ヴィルヘルム・ケイテル指揮

プットバス・フェスティヴァル管弦楽団。

 

 

ところで

永竹の前掲書によれば

もう一人の生徒として

メゾ・ソプラノが演じる

ドリーナという役が

あるようなんですけど

なんと! 今回のディスクには

出てきません。

 

ということは

ラウレットとドリーナの二重唱

(出番はそこだけのよう)が

挿入された

別バージョンがある

ということになりますね。

 

これは探さねば!

ということで

うーん、まさか

疑作で沼にハマることになるとは

思わなかった . . . Orz