前に

ブルスカンティーニが歌う

ドメニコ・チマローザ作曲の

《宮廷楽士長》についてふれた際

「アウトラインを知って聴けば

 それだけでも充分楽しめますが

 やっぱり歌詞は知りたい

 ということもあり」

日本人ソリストのCDを

注文したと書きました。

 

それがこちらのCDです。

 

佐藤征一郎《宮廷楽士長》&《奥様女中》

(ライヴノーツ WWCC-7895、2019.4.25)

 

ライヴノーツは制作で

発売はナミ・レコード。

 

ライナーの表紙でもある

ジャケットの右

カラーの肖像画は

ペルゴレージで

左のモノクロの肖像画が

チマローザです。

 

 

カップリングの

《奥様女中》ともども

ライブ録音で

《宮廷楽士長》は

1984年2月21日に

東京文化会館小ホールで開催された

音楽評論家・福原信夫を講師とする

音楽講座内で歌われたものです。

 

《奥様女中》の方は

1984年12月24日に

音楽の友ホールで開催された

クリスマス・チャリティーコンサートで

披露されたものです。

 

 

《宮廷楽士長》は

イタリア語による歌詞に

戸田幸策による日本語訳が

ライナーに載っていました。

 

もともと

《宮廷楽士長》の

日本語訳を手に入れるのが

当初の目的だったわけで

それに加えて

《奥様女中》まで聴けるとは

儲けものだくらいに

思ってました。

 

ところが

収録された演奏を聴いてみたら

驚くまいことか

《奥様女中》の方は

日本語で歌われていました。

 

訳をつけたのは

セルピーナ役の紙谷加寿子。

 

キャプテン・テンペスタが

「ごろつき雷大尉」

と訳されているのは

なかなかの名訳かも。( ̄▽ ̄)

 

 

レチタティーヴォを聴いてて

ちょっと映画の

《暴太郎戦隊ドンブラザーズ

THE MOVIE 新・初恋ヒーロー》

連想したりしました。

 

志田こはく嬢は

『アナ雪』とかではなく

本盤を聴いて勉強した方が

良かったんじゃないの

とか思ったり。( ̄▽ ̄)

 

 

なお

本盤で驚かされたのは

それだけではなく

両演奏とも

ピアノ1台の伴奏で

歌われていることでした。

 

ピアニストは川口耕平。

 

《宮廷楽士長》というのは

ライナー掲載の

佐藤自身の解説によれば

「オーケストラの楽器奏者に

 具体的な演奏音を

 擬音で示しながら、

 面白おかしく

 練習と格闘する作品」(p.5)で

楽士長が擬音で指示した後

実際の楽器が演奏される

という構成なんです。

 

それをピアノで聴かせるというのは

かなり無茶だと思います。

 

ですから

《宮廷楽士長》の

聴き始めとしては

おすすめしかねますが

話のタネとして割り切ってなら

一度は聴いてみても

いいかもしれません。

 

 

一方の《奥様女中》は

言語が違ってもピアノ伴奏でも

まったく違和感がありませんでした。

 

もともと

レチタティーヴォが

チェンバロ伴奏で

処理されていることとも

関係あるのかもしれません。

 

 

時間の都合上

曲の一部分と繰り返しを

カットしているのは

ちょっと残念ですけど

(ですからちょっと短い)

繰り返しがない分

話がさくさく進行して

ざっくりと内容を把握するのに

ちょうどいいかもしれません。

 

ちなみに

最後のデュエットは

〈あなたのせいでこの胸を〉と

〈これからあなたは満ち足りて〉の

両方が歌われています。

 

 

以上2曲の他に

《奥様女中》公演時の

アンコールとして

伝ロッシーニ作曲

〈猫の二重唱〉が

歌われています。

(もちろんピアノ伴奏のみ)

 

本盤のライナーでは

「ロッシーニ作曲」

となってますけど

Wikipedia によれば

実際はイギリスの作曲家

ロバート・ルーカス・ピアソル

(1795〜1856)が

ロッシーニ以外の曲も使い

組み合わせて作ったものだそうです。

 

佐藤征一郎が

演奏前の説明で話している

シュヴァルツコップと

ロス・アンヘレスの演奏というのは

下のものではないかと思います。

 

 

 

写真のどちらが

シュヴァルツコップで

どちらがロス・アンヘレスか

オペラ界隈は疎いため

よく分かりません。(^^;ゞ

 

右の写真は、黒髪ですから

スペイン出身の

ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス

だとすると、左の写真が

エリーザベト・シュヴァルツコップ

でしょうか。

 

 

上の演奏でも

観客の笑い声が入っていて

ウケていることがよく分かりますけど

佐藤・紙谷盤の

《奥様女中》の演奏でも

会場の反応から

ウケていることが分かります。

 

どんな演技が笑いを誘ったのか

見えないのがなんとも残念ですけど

喜劇的なインテルメッツォは

こんなふうにライブ演奏で聴くのが

いいのかもしれませんね。

 

 

なお

ジャケットも兼ねた

ライナー表紙に記載されている

バリトンの櫻井利幸は

ヴェスポーネを演じています。

 

黙役で

聞こえてくるのは

笑い声だけなのに

ジャケットに名前が

載るという。( ̄▽ ̄)

 

全体的に

どんな雰囲気だったのか

舞台写真が載ってないのが

残念ですねえ。