ヴィヴァルディのカンタータに続き

ヴィヴァルディのモテットについて書こう

と思ってたんですけど

その前にヴィヴァルディのモテットが

どういう背景と流れの中で

現在のような形になったのか

知識の確認と自分の勉強も兼ねて

ちょっと書いてみることにします。

 

 

モテットといえば

バロック音楽ファン

特に自分のような

バッハのファンにとっては

ポリフォニックな宗教合唱曲

というイメージがあります。

 

Wikipedia の解説でも

モテットについて

「ミサ曲以外のポリフォニーによる宗教曲」

と説明されてますが

ヴィヴァルディのモテットは

ポリフォニー様式ではありません。

 

すべて独唱曲であるだけでなく

レチタティーヴォとアリアで構成されており

(アリア - レチタティーヴォ - アリアときて

 最後に「アレルヤ」楽章が加わる形式)

ほとんどカンタータと同じといっても

過言ではありません。

 

どうしてこうなったのか

バッハとこんなに違うのかを

お馴染み、皆川達夫の

『ルネサンス・バロック名曲名盤100』

(1992)の解説などを参照して

素人なりに説明を試みると

次のようなことではなかったかと思います。

 

 

バロック時代に入って(16世紀末に)

イタリアのフィレンツェで

古代ギリシャの音楽劇を復活させよう

というムーヴメントが起きます。

 

それまでの多声楽曲様式

いわゆるポリフォニー様式では

歌詞に即して言葉の抑揚を活かし

感情を十全に歌い上げることが難しいので

楽器伴奏付きの独唱様式の曲を作ろう

という動きが出てきました。

 

そういう動きを起こした

後に〈カメラータ〉と呼ばれる

グループの中にいた一人

ジューリオ・カッチーニが

『新しい音楽』という曲集を

1601年に上梓します。

 

そこで初めて

器楽伴奏付きの独唱という

(モノディ様式と呼ばれる)曲が生まれ

まさに「新しい音楽」として

徐々に受容されていったのでした。

 

 

上の『新しい音楽』と

1614年に上梓された

『新しい音楽と新しい技法』から

抜粋した15曲を収めたCDが

実は手許にありまして

それが以下の1枚です。

 

フィーゲラス他『麗しのアマリッリ』

(BMGビクター BVCD-1804、1992.5.21)

【録音】1983年1月

 

ケースと同じ大きさのオビは

もはやオビとはいえず

かといってタスキともいい難く

カバーオビとでもいいましょうか……。

 

記事名としたCDタイトルは

原盤の背に拠りますけど

邦題となると

『《麗しのアマリッリ》

 カッチーニ:新しい音楽』

というのが妥当なところでしょうか。

 

また、記事名では演奏者を

バーゼル・スコラ・カントルム

としましたが

これも原盤の背に拠ります。

 

バーゼル・スコラ・カントルムというのは

スイスにある音楽大学の名前で

その大学出身者(研究者)による演奏

ということになります。

 

 

こちらの盤は

自分が古楽にハマる

キカッケとなったシリーズ

〈オーセンティック・ベスト50〉の第4巻。

 

今回、何十年ぶりかに

棚から引っぱり出してきて

ライナーを見てみると

解説は、『J・S・バッハ』

(講談社現代新書、1990)その他で

たいへん勉強させてもらった

故・磯山雅だったのでびっくり。

 

 

ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者は

「ホルディ・サバール」と表記されてますが

これは今日、古楽グループのエスペリオンXX

(XX はダブルエックスではなく20を意味します。

のちに XXI すなわち21と改名)を率いる

ジョルディ・サヴァールとして知られる人。

 

ソプラノ独唱の

モンセラート・フィーゲラスは

タワーレコードオンラインの紹介によれば

サヴァール夫人のようです。

(この盤の当時すでに結婚していたか

 どうかまでは分かりませんけど)

 

タワレコの紹介文にある

映画『めぐり逢う朝』(1991)については

以前、当ブログでも紹介しました。

 

こういうふうにつながったりすると

とりあえず買っておいて良かったなあ

と、しみじみと思います。

 

 

皆川達夫の

『ルネサンス・バロック名曲名盤100』には

カッチーニの「アマリリうるわし」

(本盤では「麗しのアマリッリ」)が

取り上げられており

本盤も推薦盤としてあげられています。

 

ただし第1の推薦盤は

ヴィヴァルディのカンタータ盤を紹介した

カウンターテナーのルネ・ヤーコプス

コンラート・ユングヘーネルによる

ハルモニア・ムンディ・フランス盤。

 

ほんとはそちらを

ここでも紹介したかったんですけど

残念ながら未だ入手できていません。

 

 

なお、「アマリリうるわし」は

以前、当ブログでふれたことのある

パリゾッティ編『イタリア古典歌曲集』(1914)の

巻頭に収められています。

 

うーん、つながりますねえ。( ̄▽ ̄)

 

 

閑話休題。

 

久しぶりに本盤を聴いてみますと

ヴィヴァルディの曲に比べれば

素朴きわまりないですけど

これがヴィヴァルディの曲につながるのか

と思えば、感慨もひとしお。

 

フィーゲラスの歌声も

アクの強いものではなく

エマ・カークビーを思わせる

素直で美しいものです。

(皆川達夫は前掲書で

「表情ゆたかな」と評しています)

 

伴奏楽器はサヴァールの

ヴィオラ・ダ・ガンバ以外は

リュート、バロック・ギター、

キタローネ、ハープと

撥弦楽器が使用されていて

イタリア系のヴィヴァルディ演奏で

リュートなどが使われる由縁が

こんなところにもあるのかと思ったり。

 

全体的な印象としては

トルヴァドール、トルヴァール

ミンネゼンガーといった

中世の吟遊詩人を連想させる

といったところでしょうか。

 

 

16世紀後半には

カッチーニの『新しい音楽』と

踵を接するようにして

イタリア風のモテットの登場

ないし完成に与った

もう一人、重要な作曲家が

現われています。

 

長くなりましたので

それについては次回にでも。

 
 
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