
(紀伊國屋書店 KKDS-603、2011.1.29)
監督はアラン・コルノー、
脚本はコルノーとパスカル・キニャール、
1991(平成3)年制作のフランス映画です。
バロック古楽ファンとしては
1度は観ておかねばならぬ超有名映画
だとは思ってましたが、
ビデオ版はもとより買う気がなく、
2000年に出たDVDはとっくのとうに廃盤。
おまけに中古ですごい値段になってましたが、
今年になってようやく新盤が出ました。
新盤が今年出た、ということを意識せず、
バッハのガンバ・ソナタを聴いてて
ふと思い立って検索してみたら
タイミング良く出てたんですが(^^;ゞ
フランスのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の
サント=コロンブと
その弟子のマラン・マレとの関係を描いた
いってみれば歴史映画(文芸映画)です。
冒頭いきなり、マレ作曲の
「“聖ジュヌヴィエーヴの丘”教会の鐘」
が流れるので、おおっと思いましたが、
(自分が好きな曲のひとつなのです)
これはリハーサル演奏で、
うたた寝しながら聴いていたマレに
途中で中断されてしまう。
(おまけにロケ現場の都合上
演奏風景自体は映らない。残念【>_<】)
演奏を中断させたマレは
師サント=コロンブのガンバ曲を弾いた後、
おもむろに師の思い出を語り始める、
という外枠を作って物語が始まります。
この映画、フランスで爆発的にヒットし、
この後、ヴィオラ・ダ・ガンバのブームが
起きたそうですが、
緩急の多い筋立てではないので
観通すのにちょっと根性がいるかも(苦笑)
サント=コロンブの許には娘が二人いて、
マレが弟子入りする前は、
父親と娘たちとの交流が描かれ、
マレが弟子入りしてからは、
長女マドレーヌとマレとの恋愛が
物語に絡んできます。
後者はお約束ですね。
お約束だとは思うものの、
どうして最後にああなっちゃうのか
よく分かりません。
女心って……
マドレーヌとマレの恋愛と並行して、
というか、それと対照的に描かれるのが、
サント=コロンブと亡妻との恋愛で、
映画冒頭でサント=コロンブ夫人は死ぬのですが、
サント=コロンブが離れの小屋でガンバを演奏すると
眼前に登場するという展開です。
死んだ後も妻を忘れられない夫が見る幻想で、
音楽の素晴しさゆえ、というか、
演奏する時の心の澄んだ状態がそれを見せるのか、
そこらへんはよく分かりませんが、
若い二人の破綻する恋愛と並行して描くことで
恋愛対位法的なことをやろうとしてるのかな
とも思ったり。
だとすることこれは
恋愛映画でもあるわけで。
ちなみに現代の監督が撮るだけあって
(というのもヘンだけど)
性的な描写は避けられないわけですが、
マドレーヌとマレとのやりとりの中で
2カットほど、こんなの映すかよ、
というシーンがあって、びっくりしました。
普通ならボカシが入ると思うんですけど、
DVDはいっさいボカシなしでしたね。
(それにもびっくり)
あと、印象的だったのは、
自然風景や静物を撮った映像で、
まるで当時の絵画そのままです。
自分はフェルメールを連想しましたが、
よくCDのジャケットに使われている絵画を
彷彿とさせるカットがいくつもありました。
CDのジャケを見慣れている人なら、
ハッとさせられること請け合いかと思います。
演奏はジョルディ・サヴァール指揮
ル・コンセール・デ・ナシオンの面々で、
ライナーを読んで
ピエール・アンタイも加わっていると知りました。
(兄弟のジェローム・アンタイも参加)
でも、クラヴサンの活躍する場面は
ほとんどないんだよね(苦笑)
ジャン=バティスト・リュリの曲を
演奏するシーンで
クラヴサンも確認できるけど、
弦楽器奏者に隠れて、ほとんど見えない。
俯瞰で撮ってないからよく分からないけど、
くちゃっとまとまった感じで、
当時ほんとにこんな編成(配置)だったのかと
びっくりでした。
サント=コロンブがマドレーヌと
ヴィオラ・ダ・ガンバを合奏するシーンは
映像も素晴しいけど、演奏も素晴しい。
役者本人が弾いてるのではなく、
サヴァールが弾いているのの当てぶりでしょうが、
どうやって撮ったのか、知りたいところです。
マドレーヌは、成長してからより、
子ども時代の方が、美少女度が高くて素晴しい。
子ども時代のマドレーヌが
父と練習しているシーンは、
個人的には超ツボでした(^^ゞ
とにかく画面が綺麗な映画でした。
(2カットある性的なシーンを除き。
人によっては美しいと思うのかな? w)
必見とまでいえるかどうか微妙なところですが、
バロック時代の文化風俗に関心があるなら、
1度は観といてもいいかもよん、てことで。