皆川達夫の
(音楽之友社 ON BOOKS、1992)で
ヴィヴァルディのグローリアの推薦盤として
トレヴァー・ピノック指揮の盤が
あげられているということは
先に御案内の通りです。
そこでふれられていた
古楽器によるのではない
ロマン的な演奏として
「なかなか聞かせました」と
紹介されていたのが
ミシェル・コルボ指揮
ローザンヌ器楽・声楽アンサンブルの盤です。
残念ながら皆川の本が出たときは
すでに廃盤になっておりまして
代わりに購入したのが
〈スーパー・ツイン 1980〉
というシリーズに入っている
『ヴィヴァルディ宗教作品集』でした。
(ワーナーミュージック・ジャパン
WPCC-5557〜8、1993.10.25)
こちらの盤には
ヴィヴァルディが作曲した
もうひとつのグローリア RV588 が
CD1に収録されています。
CD1には他に
ニシ・ドミヌス RV608
スターバト・マーテル RV621
CD2には
ベアトゥス・ヴィル RV597
ディクシット・ドミヌス RV595
マニフィカート RV610 が
収録されていました。
CD2の方は
ローザンヌ器楽・声楽アンサンブル
あるいは室内管弦楽団というふうに
コルボの手兵で統一されていますけど
CD1の方だと
イギリス・バッハ音楽祭
バロック管弦楽団とその合唱団や
リスボン・グルベンキアン管弦楽団で
コルボが振るという構成になっています。
リスボン・グルベンキアン管弦楽団による
スターバト・マーテルでは
日本人のオペラ歌手(アルト)の
伊原直子がソリストを務めているのが
注目されるところでしょうか。
でも、どうしてここで
日本人が参加しているのか
邦語ライナーには説明されてませんが
伊原がストラスブールの歌劇場の
専属時代だった頃のようですから
まあ、そこらへんの関係かと。
(どこらへんだ? w)
当時を回想した
インタビュー記事がありますので
そちらをご参照ください。
同時収録のニシ・ドミヌスが一般に
「主が家を建てられるのでなければ」
と訳されているのは
ピノック盤を紹介した時に書いた通り。
ベアトゥス・ヴィルは
「幸いなるかな」と訳され
ディクシット・ドミヌスは
「主がわが主に仰せになった」
と訳されています。
日本流通盤ですので
日本語解説と歌詞対訳が付いていましたが
当時はあまり関心が持てず
1回、聴いたくらいでした。(^^ゞ
その後、幾星霜を重ね
ようやく最近になって
皆川達夫が取り上げている盤を
新宿のディスクユニオンで見つけました。
(BMGビクター B15D-39193、1989.11.21)
こちらは
エラート・エスプリ・シリーズの
第2回目のラインナップに加わって
出されたものです。
同時収録曲は
タスキ(オビ)にある通り
キリエ ト短調 RV587 と
クレド ホ短調 RV591 の2曲。
ようやく
コルボのグローリアを
聴けたわけですが
合唱が大編成(?)なため
特に古楽の演奏が耳慣れてしまうと
やたら大振りな感じがされ
個人的には今ひとつという印象。
ソロ・パートは、それこそ
なかなか聴かせなくも
ないのですけれど。
あとひとつ
1曲まるまるに1トラックを当てていて
一度聴き始めると切れ目がなく
楽章ごとに聴けないのが
現在の目からすると
ありえなーい、という感じ。
ここで話は前後しますが
ネグリやキングズ・コンソートの演奏を聴き
ピノックの皆川推薦盤を入手したことで
コルボのグローリアも聴きたい
と思うようになり
ネットで探していたところ
4枚組の全集が出ていることを知りました。
それがこちらの
Vivaldi: Sacred Music. です。
(英 Warner Classics: 2564 67621-8、2011)
こちら
Amazon と
タワーレコードオンラインを
行ったり来たりして
在庫を確認するのに難儀した商品で
結局タワーレコードで注文したのですが
そのあとで Amazon で見つけたりするなど
さんざん振り回された記憶があります。
で、これを発注した後に
上掲の『グローリア・ミサ』を
見つけたのですが
お値段がリーズナブルでしたし
絶対あとで欲しくなると思ったので
買った、という経緯があります。
で、4枚組の方ですが
日本流通盤に収録の9曲以外に
6曲入っていて
実質CD1.5〜2枚分に相当します。
その内の5曲がモテット
というセレクトも珍しい。
直輸入盤なので
日本のCDより価格の設定が低く
超おトク盤といえるでしょう。
個人的な印象ですけど
グローリア RV589 の合唱以外は
さほど違和感なく聴けますし
名演だと思います。
ほとんどが聴き慣れない曲だから
ということもあると思いますし
ロマン的な演奏に耐える「エモさ」が
もともとヴィヴァルディの声楽曲には
備わっているからかも知れません。
とはいえ
「なかなか聞かせました」というのは
グローリア RV589 以外の演奏にこそ
ふさわしい評言ではないかと
個人的には思う次第です。
なお、ライナーは封入されていますが
トラックのタイトルと録音データだけで
曲の解説や歌詞は付いておりません。
普通はラテン語の各国語訳が
付いているものなんですけどね。
詩篇やミサ通常文などに
曲を付けたものなので
キリスト教の国の人には
歌詞はあってもなくても構わない
という判断なんでしょうか。
もっとも、録音データの記載は
たいへんありがたかった。
というのも
日本流通盤の方には録音データが
きちんと示されていないのですね。
〈スーパー・ツイン〉盤なんて
「[録音]1975年〜1978年」
とあるだけなんですから。
ひどくないですかねえ。
それはともかく
4枚組を入手したあと
例によってディスクユニオンで
ボックス仕様の旧規格4枚組を
おっそろしく安い値段で見つけました。
何だよーと思ったのは措くとして(笑)
日本では宗教声楽曲が
一部の大作曲家
あるいは大演奏家の盤を除き
いかに人気がないかということを
よく示しているように思います。
もっとも
おかげで自分のような「にわか」でも
たちどころに全曲を揃えることができ
気軽に楽しめるわけですけど。
ついでながら
皆川達夫の前掲書には
コルボと並んでネグリの盤も
あげられていることを
付け加えておきます。
昔は
コルボの方は意識していましたが
ネグリの方は気にも留めてませんでした。
というのもコルボが
バッハも演奏していたからではないか
と思うんですけど
それが今では逆に
ネグリのボックスがきっかけになって
コルボを揃えるに至ったわけですから
世の中というのは面白いものですね。