イギリスのチェンバリスト
トレヴァー・ピノックについては
以前、パッヘルベルのカノン絡みで
またヴィヴァルディのコンチェルト絡みでも
以前ご紹介したことがあります。
ヴィヴァルディのコンチェルトを
55曲収めたボックスを出しているピノックは
ヴィヴァルディの声楽曲の録音も
何曲か残しています。
自分のバロック音楽指南書である
(音楽之友社 ON BOOKS、1992)に
ヴィヴァルディのグローリアの
おすすめ盤としてあげられていたのが
ピノックの演奏でした。
それを頭にとどめて
新譜CD店に行っている内に見つけたのが
こちらの1枚です。
(ポリドール POCA-1086、1994.11.16)
演奏はもちろん
イングリッシュ・コンサートと
その合唱団で
録音は1992年12月。
併録は
アレッサンドロ・スカルラッティ作曲の
主の降誕のための羊飼いのカンタータ
《おお誇り高きベツレヘムの》と
アルカンジェロ・コレルリ作曲
合奏協奏曲 ト短調 作品6の8
《クリスマス・コンチェルト》です。
実はこの盤
皆川達夫が紹介している盤と
同じピノックでも異なる録音なんですが
当時は新譜だと上掲の盤しか
買えなかったんです。
でも、これはこれで
非常に良い録音だったというか
当時はこれしか聴いてませんでしたけど
皆川がいう「生気あふれる」演奏だ
という感じでしたし
「声楽曲の展開の仕方をすみずみまで心得た
颯爽たる、それこそ本当に意気揚々たる
ヴィヴァルディ」だと感じた次第です。
タスキ(オビ)に
「新次元の音/4D デジタル録音」
とか書いてありますけど
(今も昔も、何がどう違うのか
まったく理解してません【 ̄▽ ̄】)
それで録音が良いからというより
ローマの聖マリア・マッジョーレ教会での
ライブ録音だということが
感動的な響きの良さに与ったのでは
というふうに思っています。
スカルラッティやコレルリはともかく
ヴィヴァルディについては
当時、ヘビロテした記憶があります。
ヘビロテしながら
冒頭の合唱のメロディーが
童謡「どじょっこふなっこ」を
彷彿させるとこがあるなあと
思っていたものでした。
それもあって余計
親しみが湧いてきたり。( ̄▽ ̄)
なお、こちらのCDの基になった
クリスマス・コンサートの
ライブ映像も残っており
かつてビデオとLDで出ていたようです。
さっき調べてみたら
日本語字幕が付かない輸入盤で
DVDが出ていることが分かったため
慌てて注文することに。(^^ゞ
届いたら、また感想なぞ
アップできればと思います。
ところで
皆川の本来の推薦盤は
最近になってようやく購入しました。
(ユニバーサル ミュージック
UCCA-3120、2002.6.26)
ユニバーサルは発売元で
販売元は
ビクターエンタテインメントになります。
「アルヒーフ NEW BEST50」の1枚として
再リリースされた廉価盤で
録音自体は1987年2月、
原盤はその翌年リリースされました。
併録は
アレッサンドロ・スカルラッティの
モテトゥス《主は、わが主に言いたまいぬ》
(ディキシット・ドミヌス)のみ。
1992年盤を今、聴くと
響きが、ややおとなしめ
というような気もしますが
皆川達夫が推薦したのは
本来こちらであってみれば
上に引用した評価はこちらにこそ
当てはまるわけです。
でも、やっぱりおススメするとしたら
自分としては1992年盤ですかね。
最初に聴いたというインパクトもありますし。
ピノックにはもう1枚
ヴィヴァルディの
宗教声楽曲の録音があります。
そちらは出た当時
新譜で見たかどうか
記憶にないのですけど
今、Amazon に
日本流通盤の中古が
出品されているので
出ていたことは確か。
ただその盤は
自分的には高価すぎて
ちょっと手が出ないなあ
という感じ。
とか思っていたら
海外で廉価盤が出ていることに
最近、気づきました。
それがこちらの
Vivaldi: Gloria・Stabat Mater・
Nisi Dominus・Salve Regina. です。
(独 Deutsche Grammophon
477 9586、2011.10.1)
リリース年月日は
タワーレコードオンラインに拠ります。
ドイツ・グラモフォン・デュオ・シリーズ
という2枚組の商品のひとつで
その内の1枚は
収録順が変えてありますけど
上掲の1992年盤と同じものです。
1992年版の方が
今となっては入手難なのかも知れず
でもそっちは持ってるしなあ
とか思いつつ
ダブってるにしても
Amazon に出ている中古よりは安い
と思って購入してしまいました。(^^ゞ
1992年盤はCD1で
CD2が今回初めて聴く1枚。
録音は1995年11月で
演奏はもちろん
イングリッシュ・コンサート、
ソリストはカウンターテナーの
マイケル・チャンス。
収録曲は
ニシ・ドミヌス ト短調 RV608
協奏曲 ニ短調 RV128
スターバト・マーテル ヘ短調 RV621
シンフォニア ロ短調 RV169《聖なる墓で》
サルヴェ・レジナ ハ短調 RV616 と
オール・ヴィヴァルディ・プログラムに
なってます。
声楽曲のタイトルは
いずれもラテン語です。
ニシ・ドミヌスは
「主が家を建てられるのでなければ」
というのが一般的な邦題。
スターバト・マーテルは
「母は悲しみにありき」ないし
「悲しみの聖母」と訳されます。
サルヴェ・レジナは
「ごきげんよう、女王」
というような意味になりますが
「めでたし元后」という訳もあったり。
「女王」は聖母と同じで
イエスの母マリアを指します。
いずれも
録音の機会に恵まれており
特にスターバト・マーテルは人気曲。
というのは、いずれも
カウンターテナー独唱用の楽曲として
そのキャリアの人にとっては
重要なレパートリーになっているからです。
ちなみに
ヴィヴァルディのサルヴェ・レジナには
他にヘ長調とト短調もありますけど
短調の曲の録音が
比較的多いようですね。
というわけで
ピノックの3枚(実質的には2枚)を聴けば
ヴィヴァルディの代表的な声楽曲を
押さえられることになるわけです。
その意味で
デュオ・シリーズは
これからヴィヴァルディの
宗教声楽曲を聴いてみようという人で
カウンターテナーの声に拒否感がない人なら
おすすめの1枚かと思います。