ヒト・モノ・アソビ... 人生を楽しく快適にしてくれる素敵なものたち

ヒト・モノ・アソビ... 人生を楽しく快適にしてくれる素敵なものたち

サイクルと山遊びのオキドキライフスタイルから発信

◆道を楽しむ
マウンテンバイクが大好きです。変化に富んだ路面や地形を、多段の変速機や強力なブレーキ、そしてサスペンションの恩恵を受けてスリリングで面白おかしく、ドキドキはらはらしながら走ります。競技にも参加して、海外のレースや、アフリカでのラリーにまで参加していました。その「楽しさ」は変わらないままながら、しかし年齢とともに少しづつ「変化」してきました。もはや人とスピードを比べてどうこうではないことに気付いていましたので競技は「卒業」していましたが、山道の「面白い」と思う要素が何か?を考えていくと単にスピードが出て気持ちイイイ、困難をクリアできた満足感だけではなさそうだと。山道の「楽しい」と思う要素を冷静に観るようにしていくと、自分自身の好みが見えてきました。走っていて気持ちいい、楽しい、と感じる道には「無理」や「不自然さ」がないことに気付きました。それらは意図的に「走りやすいように」作られたものではなく、むしろもっと古くから例えば集落と集落を合理的に往来することを目的に山の中に作られた道。山の上の神社へお参りするための道。流通や人流のために輸送車両のなかった時代から人々が行き来した道。これらの道々には無理な勾配も少なく、無駄に何度も川や谷を渡ることもなく、そして災害などの影響を受けにくい自然に沿った道であることが多く、その結果「水が流れるように」「ボールがころがるように」気持ちよくマウンテンバイクを走らせることができるようです。これらの多くの道は車がなかった時代のものであり山の中そのまま取り残された結果「トレイル」として保全や再活用されるものになっています。最近ではマウンテンバイクではこんな道ばかりを(探して)走ることばかりになっています。
ロードバイクは、マウンテンバイク競技をしていた時から「トレーニングの一環」として乗ってきました。草レースや走行イベントなどにも参加してきましたが、あくまで身体能力向上目的の要素が強く、あるいは目的地や~一周を目指したものでしかありませんでした。ところがこちらも年齢とともに「変化」してきました。人とスピードを競うためでもなく「~一周行ってきました」と他人に報告するためでもなく、マウンテンバイクと同様に「楽しく」「気持ちよく」という道を求めて走るようになりました。しかも、もちろん舗装路ではあるのですがマウンテンバイクの場合と同様に「無理」や「不自然さ」のない道がその対象です。古くから流通に利用されていた街道がそのまま拡幅されて舗装された道もありますが、現代的な合理性から作りつけられた道もあります。空中を飛び越える「橋」や地中を貫く「トンネル」などはラクですが面白さはありません。急こう配を避けるために延々と山腹に作られたワインディングの道が楽しく感じられたり、昔の人の往来を想像しながら辿る道に面白さを感じたり。しかし中には車道として拡幅整備はされたものの舗装まではしていない、舗装したものの、新しい道の運用によって利用が無くなり旧道と呼ばれる苔の生えるほどの、あるいはクルマの通行ができない崩落などによって放置されたような、そんな道もが「楽しい」と思える対象となってきました。ロードバイクでは競技や人とスピードを競うことは無くなりましたが、気持ちの良い下りカーブをキュンキュンすっ飛び、長く果てしない峠を登って越え、旧街道の趣きを感じながら集落を抜け、山や谷や海の地形を楽しむことができる「ロードバイク」は今、一番欲しい乗り物です。

◆キャノンデール「SLATE(スレイト)」の出現
2016年5月、キャノンデールジャパンの展示会前の情報に「わけわからんバイクが出るんですよ」と。 まだ「グラベルバイク」というカテゴリが明確でなかった頃だと思います。カタログに「NEW OAD」と表現されたそのバイクはマウンテンバイクの27.5インチのリムに42mm幅のスリック(ヤスリ目)タイヤ、スローピングしたアルミフレームに同社オリジナルのフロントサスペンション「レフティ」を装備。ドライブトレインは52x36に11S、当然ながらディスクブレーキ。詳しく観察するとリアにはフェンダー?ラック?のマウントもあります。「650Bということはツーリング車か?」と思いましたが、ジオメトリーを見ると… チェンステイ長405mm、BBドロップ70㎜、ヘッドアングル71°、トレイル値69mm、つまり「完全なロードバイク」です。42mm幅のタイヤを405㎜のリアに収めたことにもビックリですが、「42㎜のタイヤ幅を実現するためにホイール径を27.5にしたロードバク」というのが本来の狙いのようです。ロードバイク(レーサー)の運動性能はそのままに、走れる路面の幅をひろげた、ということなのでしょう。フロントサスペンションは積極的に荒れた路面にというよりも快適性を狙ったショートストロークのようです。コンセプト映像では高速で走るロード、ワインディングでのコーナー、ダート、シングルトラック、対応性の広いロードバイクであることが表現されています。 https://www.youtube.com/watch?v=ROsE7dT6PgQ&t=189s
メディアなどでは「キャノンデール版グラベルバイク」のように紹介されたりしますが本当のところは違ったはずです。しかし、このコンセプトは多くには浸透せず、市場では「グラベルバイク」が大勢となっていき、スレイトはわずか4年で販売終了となります。残念なことにグラベルバイクとしてカテゴライズされた結果、その視点で比較されると商品力は弱かったのでしょう。 元々コンセプトが異なるので当然ですが。

 


◆SLATEコンセプトの650ロードバイク
スレイトの出現によって「これだ!」と衝撃を受け、早速同種のロードバイクができないかとディスクロード「CAAD12」に27.5ホイールを組み込んで試してみることにしました。しかし残念ながら700c用に設計されたCAAD12ではフロントもリアも650x38Bのタイヤが精いっぱいというところです。走らせてみますと元がロードバイクなのですから走行性能はロードのまま、です。デメットは?重量増による登坂能力の低下、重量増加による加減速時の運動負荷の増加、などでしょうか。ロードバイク仲間と一緒に走れる速度ではなくなるのかもしれません。しかしメリットも大きいのです。太目のタイヤによって下りのコーナーが超絶に「楽しい」ものになりました。タイヤ空気圧を下げることができるので、路面グリップが良くなり、快適性も向上します。パンクしにくい安心感から荒れた路面の道にも積極的に突っ込んでいくことができ、低圧タイヤはサイドカットのリスクも大幅に低減されます。濡れた路面、雨、雪、泥、砂、岩、石、枝、そして舗装路面の割れや亀裂などにも圧倒的な安心感です。心配された速度低下や負荷の増加でしたが、700Cロードに乗った仲間と大きく遅れることなく楽しく同行できています。フロントサスペンションはありませんが、むしろこれでいいのかもしれません。どこでも楽しめる新しいロードバイク「650アドベンチャーロード」とでも呼ぶべきでしょうか。

【65ロードに関する過去記事】
https://ameblo.jp/okidokilife/entry-12295813789.html
https://ameblo.jp/okidokilife/entry-12309151969.html 




◆「グラベルバイク」との違い
「グラベルバイクに650ホイールを装着すればいいだけじゃない?」いいえ、それでは肝心なところが全く違うのです。新しく出現した「グラベルバイク」の定義もまだ様々で定まったものではありません。グラベルバイクやグラベルロードなど呼び方もメーカーによって拘ったり、逆に曖昧だったり。広義には「グラベル(ダート)を走れるロード(ドロップハンドル装着の)バイク」ということのようです。中にはグラベル競技をターゲットにした「グラベルレーサーも出てきています。
650アドベンチャ-ロードの狙いは「650のホイールが装着されていること」ではなく「ロードバイクに外径はほぼそのまでま幅太のタイヤが装着されていること」であって650ホイールはそのための「手段」でしかありません。幅広タイヤを装着してホイール外径が変わって大きくなってしまうとフレームの寸法(ジオメトリー)が変わってしまってロードバイク本来の運動性能を失ってしまいます。特に重要なのが「リアセンター」「チェンステイ長」と呼ばれるクランク軸からリア車軸までの距離です。一般的にはこの寸法が短いとロードバイクらしい、瞬発性やキビキビとした旋回性能になるといわれています。マウンテンバイクなどではフロント荷重のコントロール性が変わる重要な要素になります。700Cのロードバイクでは405~410㎜くらいの間で設計されることが多く、メーカーブランドを問わず大きく違うことのない数値です。中には420㎜以上にまで伸ばして「快適性」「安定性」を目指したコンフォートロードやクロスバイクなどがあります。そして700Cホイールに45㎜以上の太いタイヤを装着した「グラベルバイク」ではこの寸法を小さくすることができず、多くのブランドのグラベルバイクではこのチェンステイ長が425mm以上とクロスバイク並みの寸法になってしまいます。高品位なカーボンを使用して軽量のバイクに出来上がっていますが、運動性能を決定づけるジオメトリーが街乗り主体のクロスバイクと同じ程度、ということになってしまうのです。これでは悪路の走破性は高くなりますが、ロードバイク本来のキュインキュインと加速、コーナリングしてくれる楽しさからは遠ざかってしまいかねません。競技用のグラベルレーサーの中にはフロントをシングルに割り切ることで短いチェンステイ長を実現しているモデルも少数で存在しますがあくまでフロントダブルの守備範囲の広さも「アドベンチャー」には必要なのです。

◆「ロードバイク(レーサー)」との違い
これまでロードサイクリングにはロードバイクが使われることが一般的でした。ヒルクライム、ロングライド、練習会… 舗装路を軽快に、負担を少なく走るという目的で選ばれてきた軽量を追求したバイクですが、本来はロードレーサーという競技用途車です。競技ですので速く走ることを目的に軽量で高効率で走行することを目的に設計されています。「軽いし、速いし、そしてカッコいいからいいじゃない」という理由で広く「流用」されてきたのでしょう。しかし、根底にあるのは「(人よりも)速く走ること」です。さらに競技性能を追求していく中で「空力」も追及していくと快適性が損なわれたり、内蔵工作によって整備性が低下していく傾向もあります。そして一番のサイクリンングに適さない点は、「速さ」を追求するためにホイールの転がり抵抗と空気抵抗を抑えるために「高圧で細いタイヤ」が採用されていることです。これによって軽い(小さい)転がり抵抗で平地を走行することができ、また軽量なため、加速時や登坂時に負荷を減らして「速く」走ることができるのです。しかし、この細いタイヤはレースなどの速さを求める際には有効ですが、快適性を大きく損ない、コーナー時のグリップ力(摩擦)を低下させます。さらに少ないエアボリュームはパンクのリスクを高めてしまい、またホイール自体の強度も小さくなるため綺麗で円滑な舗装路以外では安心感の少ない状況となってしまいます。競技においてはこれらの「デメリット」よりも「速さ」や「勝敗」を優先して少々リスクや快適性の低い「細いタイヤ」が選択されています。
650アドベンチャーロードではロードバイク(レーサー)ジオメトリーのまま、タイヤ外径はほぼそのままにタイヤ太さだけを大きくしています。このことでホイールやフレームの重量が増え、空力性能もロードレーサーに及ばないものになっています。しかしそれと引き換えに得られるもの、快適性やタイヤのグリップ力、パンクリスクの低減、強度や耐久性はむしろ我々の好むサイクリングに必要な要素は高められています。
そして【重要ポイント】は「ヒルクライムが好きだ」という方も多くいると思いますが、しかしサイクリングの醍醐味は苦労して登った長い道のりを気持ちよく快適に下ってくることにも大きな割合であると思います。限界スピードを高めて高速で下る必要はありませんが、ロードバイクの運動性能のままタイヤが太くなって安全マージンが増えて安全に快適に下りカーブを楽しんで走ることができる、ことが650アドベンチャーロードの最大の目的であり、魅力なのだと思います。ダートも走れるは当然ながら舗装路を速く安全に走ることができる、という要素がとても重要な点なのです。
単純に同一条件で比べることは難しいですが、六甲山や乗鞍スカイラインの下りを「ロードバイク」と「650アドベンチャーロード」で乗り較べた場合、体感的には650ロードの方が速く、緊張感の負担も無く、そして「超楽しかった」という印象です。軽々と?登り切った乗鞍の下りを恐る恐る下るのと、どうせ登りは大変なのですからせめて下りを存分に気持ちよく走りたい、というのと比べて選ぶのはどちらでしょうか、ということです。

◆グラベルバイク」「ロードバイク」でなければならないのか
どこでも走れる夢のバイク!というように媒体やネットで紹介をされてきたグラベルバイクですが、ではこの「日本」でグラベルバイク本来の性能が必要とされるケースがどの程度あるのでしょうか。グラベルバイクが他のバイクに比べて有利なのは固く整ったダートの道路です。舗装路面も走れますが、ロードバイクの方が圧倒的にエネルギを抑えながらより速く長い距離をこなすことができます。一方、シングルトラック(トレイル)や荒れた林道、廃道なども走ることはできてもその楽しさやリスクの低さはマウンテンバイクなどのほうがはるかに上回るでしょう。実はヨーロッパにはおよびませんが、日本の道路の「舗装率」は81%以上と比較的高く、アメリカの67%やロシアの72%などの先進国より高く、そういう意味ではグラベルバイクで楽しく走れる道、グラベルバイクでこそ楽しく走れる道を見つけることはなかなか困難です。そして運よくそうした未舗装路が見つかったとしてもそこへたどり着くためにはその何倍もの舗装路を延々と走って行って帰ってくる必要があるのが現実です。これまでに多くの「グラベルバイクを手に入れた」方を見て来ていますが、多くの方が「舗装路主体のタイヤ」に交換して多目的ロードバイクに変身(変装?)させて使っている実情のようです。
一方、「舗装路(ロード)を走るのだから」速く軽快に走れるロードバイク(レーサー)なのですが、必ずしも(レースの様に)速く走れる路面ばかりでもなく、速く走る必要性もなく、むしろ引き換えに我慢する部分やリスクが増えるのであればその高性能なロードバイクでなければならないのか?と考える必要があります。以前は競技用であるがゆえに21Cや23Cといった細いタイヤが主流だったものが、昨今では25Cが標準に、中には28Cや32Cを装着してサイクリングに使用している傾向を見るとこちらも本来の性能と実用途の隔たりに苦心が見られる気がしています。

「ロードも走れる(と言われている)グラベルバイク」
「ロード(のみを)速く走れるロードバイク」
「グラベル(ダート)も走れる快適なロードバイク(アドベンチャーロード)」

のどれを選ぶことの方が楽しい時間を多く過ごすことができるか、は見えてくるような気がします。


◆「夢のバイク]の実現
650Bx42が装着できる(ショートチェンステイの)ロードバイク、はマスプロ完成車ではなかなか見つけるのが困難です(無いわけではありません) 製作自由度の高いクロモリフレームでも「650Bx42が装着できるフロントダブルのフレーム」「フラットマウントディスクブレーキ」という内容を引き受けくれるビルダーさんはそうそう居ません。加えてフロントフォークはカーボンの市販品が多く採用されますが「650B用の」という短いブレードの「スルーアクスルxフラットマウント」の希望に沿ったものを見つけ出すのも絶望的です。仮に700C用のフォークで流用できそうなものが見つかってもそれが「ロードらしいハンドリング」を実現できる寸法のフォークでしょうか?フレームとの相性はどうでしょうか?

そこで藁にも縋る思いで、ほぼ絶望的な展望のままここしか頼めるところはないと思われる「東洋フレーム」さんへ相談することにしました。 自分たちの考える楽しさが「グラベルバイク」ではない」こと、スレイトのようなコンセプトのロードバイクが欲しくて夢に思い描いていること、650Bx42のホイールが装着できるフレームのリアセンターを408mmあたりまで詰めて製作できないか、を打診してみました。
石垣さんの反応は「そうやねん。700Cのグラベル、違うんちゃうかなと思てん。これやろ?」とそこにはもう650x42のグラベルバイク?が置いてありました。テスト中、なのだそうです。なあんだ、やっぱり同じようなことを一足先に考えていた様です。これ、チェンステいくつですか?「420」それを410㎜でできませんか?「ええーっ ダブルで?」はい。「ウーン、415では?」410で。「ちょっと考えさせて」
「フォークは?」それも問題です。「クロモリで良ければウチで作ろうか?」お願いします。昨年お願いしたディスクランドナーでクロモリ12㎜スルー/フラットマウントのフォーク(1")の依頼実績があるので無理ではないはずです。ただし、肩下長さとオフセットをキチキチにしてほしいんです。ロードらしいハンドリングになるような。「フォークはなんとでもなるから」という言葉を聞き安心して戻りました。夕方には連絡があり、どうやら図面で検証していただいたようで「リアセンター410mmでイケるよ」と♪ 
こんなやり取りをしたのが1年以上前。その後、この考えのフレームで製作を依頼したいという方が現れ、実製作になったわけです。
記念すべき最初の製作ロットは2名の方のご依頼がありスタートしました。同じようなサイズとはいえ、細かく希望や仕様が異なるため、同じように見えて、やはり別々の2台。こちらには具体的な試行錯誤は知る方法がありませんがおそらく想像以上の苦労があったはずです。 製作依頼をしてから1年ちょっと、「塗装が上がったよ」の連絡があってようやく、夢の「650アドベンチャーロード」が完成しました。絶対に実現なんてできないだろう、と半ばあきらめていただけに、それが東洋フレームの製作で実現するなんて感無量です。

東洋フレームの石垣さん、渋谷さん、ほんとうに感謝です!



 



【基本仕様】
モデル:650アドベンチャーロード (東洋フレーム製@大阪)
フレーム:TOYO LOGIC 熱処理クロモリチューブ(KAISEI) TIG
フォーク:TOYO LOGIC 熱処理クロモリチューブ(KAISEI) 12㎜スルーアクスル 
シフトタイプ:オーダー  
ブレーキタイプ:フラットマウントディスク
アクスル:100x12(F)142x12(R)スルーアクスル
ヘッド規格:ZS44mm (上下)
BB規格:JIS 68㎜
フロント最大歯数:50/34T(ダブル)、40T(シングル)
サイズ:オーダー
カラー:オーダー(単色)
*基本仕様以外についてはオプションとして指定が可能です。

価格:280,000円(特注フォーク含む 基本仕様 税別)
目安納期:3~6か月(*納期を保証するものではありません)
 
















 

自転車に「不具合」を感じた時には既に修理が必要な状態かもしれませんし、最悪の場合、乗り手に重大な危険をもたらすことになるかもしれません。そうした、あらかじめ予見しうる不具合発見の為の点検を無料にて実施させていただくことにしました。 オキドキライフスタイルでご購入いただいた製品については既に実施していることですが、重大な問題はむしろ他店で購入されたものや中古などで譲り受けたものに多くみられるようですので、この「あんぜん点検(R)」はどこで購入、または入手された自転車でも無料にて行わせていただきます。どうぞお気軽にお申し付けください。
この「あんぜん点検(R)」は何度でも受けていただいても無料です。 万が一不具合が見つかった場合には状態についてなるべく詳しく説明させていただきます。状態に応じて、お客様自身で対処していただいても、どちらかのショップへご相談されても結構です。 オキドキライフスタイルへご用命いただく際には責任を持って整備、修理、調整を行わせていただきます。 修理調整作業を行う際には、実費工賃が発生する場合があります。 

「あんぜん点検(R)」チェック項目
□ハンドル、ステムの緩み
□ヘッドベアリングのガタ、調整具合
□前輪、後輪ハブのガタ クイックの締め具合
□タイヤ空気圧 タイヤ表面の劣化や摩耗
□ホイールの振れ
□ブレーキの効き、取り付け不具合
□ペダル、クランクのガタ、取り付け不具合
□変速機の取り付け、作動状態
□サドルの緩み、ガタ
□フレームの亀裂や損傷

ただし、対象はスポーツバイク、ツーリング車に限定させていただきます。

 

おや?と思う件がありましたのでユーザーの方のことが不安になって考えてみました。

オキドキライフスタイルは、主に「自転車の整備業」としてやっていますが、製品メーカーの「サービスセンター」も務めさせていただく中で、いろいろな販売店、整備店などからの情報が耳に入ってくることがあります。丁寧なユーザー目線の作業をされているなあと感心させられるケースも多くありますが、中にはその逆に「え?お客さん、ダイジョウブ?」というケースもあります。サービスセンターとして依頼される作業は「専門的な部分はお任せしますね」という作業であったり「手に負えないからなんとかしろ」的なことであったり。もちろん製品に不具合や非がある場合にはユーザーにご迷惑をかけてしまっているという責任感で誠心誠意の作業で臨ませていただいています。ところが中には製品に非がないのに「ちゃんとやってるのに工具や製品が壊れちゃってー」とクレームに近い?ものも聞きます。結果的に製品が使えなくなった、損傷を受けたということで作業を依頼してこられることがあります。
そうした場合、全てではありませんが中には「正しい方法で作業をされていなかった」ということがあたりします。

メーカー側は販売店やユーザー個人が作業をする場合のヒントとして公式な「整備手順」の動画を公開していることがあります。内容は構造の解説、必要な工具類、具体的な作業手順、注意点などが詳細に紹介されています。ところが「工具も壊れて分解ができませんでした」というこれまでにあった報告(作業依頼)の実際の作業の様子を聞くと、これらの動画で推奨しているのと別の方法で行って残念な結果になっているようです。「一流の工具を使って」なのかもしれませんが、工具の良し悪しではなく「なぜこの方法で作業するか」それによってどういう力が働いてしまうのか、などを考えていただけなかったようです。

同じ「失敗」をしていただきたくないという思いで具体的に説明します。
OEM製品を含むDT SWISS製のホイール、ハブには「リングナット」と呼ばれるナット(正しくはオネジですのでボルトですが)が組み込まれています。リングナットはスプロケットから入力された踏力をハブ(ホイール)に伝達する主要な個所に締め込まれています。重要な伝達を担っており、踏力の全てを受け止めています。踏力は締め付ける方向に作用するため、使用過程のリングナットはかなり高い締め付け力で固定されてしまうことになります。ベアリング交換などでこのリングナットを取外す(緩める)際は非常に大きな力が必要になる場合が多く、作業を困難にする場合があります。リングナットを緩める(締める)にはそれにかみ合う専用の工具「リングナットツール」を使用します。動画では「リングナットツールを上向きバイスにしっかりと固定し、そこへホイールのリングナットがかあみ合うようにホイールを上からかぶせて力強く回して緩める」という旨の説明が行われています。言葉は英語ですが、動画を見れば説明の必要もないほどわかりやすく表現されています。実際、大きな力が必要な時はありますがこの方法で全て問題なくリングナットを緩めることができます。
ところが「工具が壊れた」という報告のケースで作業の様子を確認しますと、「ホイールをしっかりと保持しておき、リングナットツールに『モンキーレンチ』をかけてパイプなどでエクステして力をかけた」ということのようです。しっかりと固定して十分な長さに力点を伸ばせば発生する力の「大きさ」は同等かそれ以上も可能でしょう。しかし力の「種類」が違うのです。その結果、緩まない、工具が壊れた、製品が損傷した、が起こっているようです。


力の「種類」とは?
残念ながら作業をされた方は「偶力」という力のことを知らなかったのでしょうか。動画で説明がされていた「バイスに固定して」という方法は偶力によって緩めることを説明いしています。「偶力」を調べてみますと「同じ大きさで、平行かつ反対向きの2つ(一対)の力 回転を生じる」とあります。わかりやすいのは自動車のハンドルを手で回す状態でしょうか。例えば左右の手が時計の3時と9時の位置にあり、右にハンドルを回そうと思えば3時の右手は下方向へ、9時の用左手は上方向へ力を働かせて「回す」と思います。片手でもハンドルを回すことはできますが、その際は「偶力」ではありません。偶力によって何が大きく違うのか、ですがこれは「回転させる以外の力が作用しない」ことです。偶力の合力はゼロであるといわれますが、同じ大きさの反対向きのベクトルですから合計すればプラスマイナスゼロなのです。ハンドルの例でいうとハンドル軸に回転力(トルク)は生じていますがそれ以外の曲げ、せん断、などの力は作用していません。一方片手でハンドルを回す際にはトルクと同時に軸に対する曲げモーメントが作用しています。これがバイスに固定してリムを回すのとリムを保持してレンチで回すのとの違いです。感覚的な理解を深めるために別の例を。軸や穴にネジを切削するための工具として「タップ」と「ダイス」があります。軸中心に対して正確にネジを切るためには軸(穴)に対して半径方向の力は禁物で回転の力だけが必要です。タップハンドルやダイスハンドルには片棒ではなく両棒のハンドルが備わっています。試しに片ハンドルだけを回してネジを切ってみようとすればそれが適切でないことが実感できます。またよく使う工具に「六角棒レンチ」があります。多くの場合でL字型に曲がった形状のものが使われます。狭い場所や早回し、そして持ち替えて強い締め付けもできるように長さの比率を変えて曲げていることで便利に使うことができます。ただし、これを規定以上の高いトルクで使用する場合、条件が悪ければ六角穴を潰して(ナメて)しまったりが起こることもあります。オキの場合はL字も多用しますが、T字のレンチも頻繁に使用します。早回しに有利ということに加えてやはり「偶力で締め付け(緩め)ができる」+「軸圧を掛けながら回せる」がその理由です。特に差し込み穴が浅い「ヘクスローブ(トルクス)」には有効です。

リングナットの話に戻ります。
リングナットツールをモンキーレンチなどで回そうとした場合、偶力ではなく「(回転)トルク」と「曲げ力」が作用します。曲げ力は固く締まったリングナットを緩める力には作用せず、ハブアクスルを曲げたり、リングナットツールをこじったりするように作用します。リングナットが強く締まっていればいるほどそれは大きな力になって作用します。 ・・・結果的に緩まずに工具が壊れる、ということになるのです。
こうした大きな違いがあることを理解したうえで「それでもモンキーレンチで作業するのだ」というのであればそれも仕方がありませんが、どちらもと違わないだろうと早計な判断で、身近にその工具しかなかったから、で作業をした結果に「緩まない」「製品がダメージを受ける」「工具が壊れる」のは製品や工具の落ち度ではなく、作業者の責任です。 限られた経験と設備のなかで自己責任で作業するユーザーの失敗なら仕方がありませんが、まがりなりにも本業として作業する立場であればこうした簡単な物理くらいは学んで知っておくべきですし、それも面倒であればせめてメーカーの動画の通りの作業をしていただきたいと願うわけです。中には「ユーザーの使い方」「製品の設計」のせいにして保身に回る作業者がいたとしたら、ユーザーにとっては悲運でしかありません。作業がスムーズに済まずに使用できない期間が長くなることも気の毒ですし、もしかしたら交換を要する部品代をユーザーが負担させられることになってしまっていたらたまりません。

そういった悲運な思いをユーザーの方々に感じていただきたくないという思いで今回の投稿をさせていただきました。


 

フェイスブックのとあるグループへの投稿で取り上げられていましたので、改めて考察してみます。

優れた国産メーカーの製品が手軽に手に入る我々日本人にとっては「カンパニョーロを選ぶ理由」はそれほどなく、カンパニョーロ製品を所有する人は一定数に限られているのが現状だと思います。そんな馴染みの薄い「憧れの」製品であるカンパニョーロですが、ホイールに関してはフルクラムブランドの製品を含めて、たとえ「シマノフルコンポ」で仕上げていてもホイールだけはカンパニョーロ/フルクラムを使用している方が少なくない現状のようです。
ところが、「完成ホイール(完組ホイール)」はメインテナンスフリーだと思っている方が多いのでしょうか、販売店ですらカンパニョーロ/フルクラムのホイールメインテナンスについてはあまり詳しく知られていないのではと感じています。
DT SWISSやMAVICのようにカートリッジベアリングを採用していないカンパニョーロ、シマノのハブについてハブベアリングは定期的なメインテナンス(分解洗浄給脂調整)が推奨されています。さらにカンパニョーロの場合、ハブラチェットについても定期的なメインテナンスが「強く」推奨されています。その重要な内容の一つが今回取り上げる「ラチェットスプリング」です。

カンパニョーロ製ハブのラチェット構造はハブシェルに「内歯」が設けられ、フリーボティに付けられたラチェットティース(爪)がこの内歯に掛かることで駆動力を伝えています。輪っか状のラチェットスプリングはこれらの爪を「立ち上がらせる」機能を担っていますがこのスプリング、定期的に交換をしなければあるとき突然折れてしまうことがあり、そうなってしまうと駆動力をホイールにつたえることができずに「走行不能」となってしまいます。メーカーではこのスプリングを「1年で交換」を推奨としています。

使用や修理作業の現場肌感覚では、確かに突然の走行不能事案は起こっていますし、無難に定期的に交換して置いた方が良い、ということも実感しています。ただし、全ての製品で、というよりもすべてのユーザーでそのリスクが同じ頻度でありえるか、というと正直「ユーザーによる」というのが感じている点です。では何がスプリング破損につながる要因となっているのかを検証してみようと思います。

まず、外部からの影響をほとんど受けないこんなスプリングがなぜ数年で折れてしまうことが起こってしまうのでしょうか。なにも知らない知ったかフリの方であれば「ああ、疲労破壊っていうんだよ」とかなんとかいうのでしょうか。ハブ内でのスプリングの動きはラチェット爪の動きに合わせて高速で曲げ伸ばしの変形が繰り返されます。しかし、その変形領域は弾性変形のほんのわずかな領域であって破断のきっかけになる塑性変形域からは程遠いレベルにあります。この高速の変形そものが破断や疲労破壊の原因であるとは考えにくいものです。ではなぜ?
破断した検体が手元にあればその検証も容易になったのでしょうがあいにく手元にありません。が、代わりにあまり使用状況が良かったとは言えない使用済みのハブがありましたのでこれを観察して考察してみることにします。これにはラチェットスプリングの破断も起こっておらず一応正常に機能している状態のようです。早速分解して観察していきましょう。

まず3つのラチェットティースは内歯とのかみ合い部分に結構な摩耗が見られます。そこそこな距離を使用されてきたのと同時に十分なメインテナンス(給脂)が定期的に行われてきたのか、については少し疑わしい個体なのかもしれません。ラチェットティースとラチェットスプリングをとり外してみましょう。スプリングを掃除して観察するもこれといったダメージはなさそうです。ところが注意深く観察していくと… スプリングの内側にかすかな傷のようなものが見られます。画像では確認しづらいかもですが肉眼で見つけることができます。これが破断のきっかけになっている可能性が高いですが、ではなぜこんな傷がついているのでしょうか? スプリングをフリーボディの収まるべく位置にあてがってみますと、フリーボディの該当の位置に特徴的な形状が見つかりました。ラチェットティースの収まるフリーボディのティースハウジング(外周)は本来は滑らかな円滑表面のハズですが、このハブ個体のそこには何かをたたきつけたような「荒れ」が何か所か見られました。アルミ地がささくれたような指に引っかかるバリのようなものができています。コレがスプリングに擦り傷をつけていたのかもしれません。現時点ではかすかな傷ですが、このまま使用を続けて行けば擦り傷は切り傷ぐらいにまで成長し、いずれは破断のきっかけになるのではないでしょうか。 おそらくそうなのだろうと考えられます。 ではこのフリーボディの「荒れ」の原因は?この部分に近接するのはハブシェルのラチェット内歯です。通常これらが接触することはないはずですが、かなり接近した位置にあることは確かです。接触したのでしょうか?仮定してみます。もし強大なスプロケットトルクでアルミ製のハブシャフトがたわむことがあったとしたら、もしフリーボディベアリングに摩耗ガタが発生してきていれば、もしハブベアリングの玉当たり調整が万全ではなくフリーボディが首を振ってしまうような状況にあったとしたら、これらのいずれでもフリボディハウジングと内歯が接触する可能性は十分にあります。そしてこの個体に関してはフリーボディに何かが接触してできたと考えられる表面の荒れが実際に観察されています。 どうやらこれらの状況や条件が不幸にして重なってラチェットスプリングが破断することになると考えることができそうです。

スプング破断発生のメカニズムがほボ推定できたことで、今後の発生リスク低減についても考察が進みます。まず、メーカー推奨の通り、スプリングは消耗品として定期的に点検、予防交換をすることは必要でしょう。そのうえで、フリーボディの損傷(荒れ)が原因となるのであればこれも同じく消耗品として交換することも状態を観察した上で必要になるかもしれません。あるいは「荒れ」が軽微であればスプリングの損傷原因になりそうな箇所をヤスリなどを使って滑らかに整えておくことでリスクは低減できそうです。さらにフリーボディベアリングに摩耗やガタがないかを確認して必要であれば交換。加えてハブベアリングの玉当たり調整を正確精密に行うことなどを徹底すればスプリングの破断リスクを限りなく低減することができるのではないか、というのが今回の考察の結論となります。

なお、余談的裏ワザになりますが、出先でこのラチェットスプリングが折れてしまった場合、ほとんどのサイクルショップでも店頭に在庫している可能性が極めて低い部品ですので修復、走行再開が困難です。たったこれだけのスプリングで走行が全く不能になるのです。そこで、もし仮に分解、交換のための「工具」だけは確保準備できたという前提で、何とか最小限の公道復帰のアイデアです。 
スプリングの代わりに「輪ゴム」を使う方法です。耐久性については、不確かな動きで高トルクに対しては、大きな期待は禁物ですが、「応急処置」としてなんとかそーっと自走できることを実践済みです。スプリング交換などをして その構造を把握している方であれば容易にこの方法は実践していただけるはずです。もしもの時のために頭の片隅に留めておいていただければ、という裏ワザです。

こんな構成になっています。(スプロケッットが外されていれば)17mmスパナと5mmヘックスレンチだけでアクセスが可能です。

 

トh当た酢

重要な役割をラチェットスプリング。赤丸のところにキズのようなものが?

 

フリーボディの外筒にひどい「荒れ」が見られます

 

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そのまま使用するのであればスプリングが引っかかったり損傷しないようになめらかにしておくことも必要です

 

交換するのであれば必要となる部品群

 

裏技実験のために準備した「輪ゴム」

 

長距離は無理でも漕いで進む、が何とかできるようになります♪

輪ゴムでもなんとかラチェットティースを立たせることができました。
 


スポーツサイクルの空走時のホイールの転がりや伝達駆動力の効率を左右する要素にリアホイールの「ラチェット(フリー)機構」があります。ラチェット(フリー)はペダルを漕がない「空走時」にスプロケットを空転させてホイールだけを軽快に回転させるための機構で、同時に駆動の際の力を無駄なくスプロケットからホイールに伝える駆動伝達の大きな役割を担っています。ホイール/ハブを製造するメーカー各社はこのリアホイールに備わった「ラチェット(フリー)」機構に独自性を持たせ、ホイールの機能/性能として特徴づけています。多くのメーカーがラチェット機構をすべてのモデルで共通して採用する傾向ですが、DT SWISSでは用途やグレードに応じて複数の構造を使い分け、コストに応じた最適機能の組み合わせを提案した商品構成を実現しています。例えばDT SWISSでは伝達トルクが数倍に及ぶ「E-bike」用のラチェット構造を準備していたり、価格帯に応じてラチェット機構も分けて(グレイディング)作り分け、それぞれの価格帯で高いコストパフォーマンスを実現しています。


この「グレイディング」の構成を活用して、手持ちのホイールを「アップグレード」することができる、ことも「DT SWISS」の大きなメリットと言えます。DT SWISSのラチェット構造は大別して「EXP」「スターラチェット」「3ポール」に分けられます。さらに細かく性能を向上機構を持っていますが、大別はこの3つです。中でも「3ポール」はカンパニョーロに代表される、多くのホイールメーカーに採用される構造ですが、DT SWISSでの位置づけは「普及価格帯」向けとなります。そこでこの3ポールを「スターラチェット化」する「アップグレード」が用意されています。スターラチェットと区別するため「ラチェットLN」と呼ばれていますが構成部品の基幹はスターラチェットそのもので、信頼性も発展性もスターラチェットへと性能向上できるというわけです。


今回の作業はキャノンデール社のオリジナルホイール「HollowGram」です。このホイールにはDT SWISSのハブが採用されています。高性能のカーボンリム、スポーク、ハブ本体に較べると「3ポール」のラチェット機構だけが残念な部分です。これをラチェットLNに「アップグレード」してみることにします。
作業はシンプルです。3ポール用のフリーボディを取り除き、ハブシェルに組(ネジ)込まれたリングナットを取り除きます。ラチェットLNの構成部品はスターラチェットそのもので、リングナットx2、スプリングx2、スプラインリング、ベアリングワッシャーで構成されていて、3ポールのリングナットを取り除いた箇所にこれらを順序に沿って組緩めるみ込んでいきます。必要なものは3ポールのリングナットを緩めて取り除くオラブルための専よう用工具、そしてスターラチェット用のリングナットをねじ込むための専用工具が必要になります。ところで今回はラチェットの歯数に「36T」を選ぶことにします。ラチェットリングは18T、(24T)、36T、54Tなどがあり、多いほど良いというものではありませんが、伝達トルク、遊び角、耐久性などから最適なものにします。スターラチェットにアップグレードすることで、用途や性能に応じて手軽に変更できる、もこのアップグレードのメリットの一つです。


乗り手の強大な踏力によってキツく締まったリングナットを緩めることは本当に大変でしたが、無事に作業が終わりました。さらにスターラチェット化することのメリットは「メインテナンス性の向上」です。「3ポール」構造でもスプロケットをつけたまま、工具なしで、ラチェット機構のメインテナンスは可能ですが、小さな爪やスプリングで構成されている3ポールと比較すると圧倒的に容易でトラブル発生の原因も排除できる点です。

そしてこのアップグレードはキャノンデール製「HOLLOWGRAM」ホイールの全てに対して実施可能であり、その他DT SWISS製の3ポールラチェット構造を採用するホイールにも対応しています。

これで、このホイールはさらに「無敵」になりました♪ 


作業するのはこんなホイール 「HOLLOWGRAM」キャノンデール製ですがハブはDT SWISSです


3ポールも工具不要でアクセスできますが・・・

必要な工具はコレ
・3ポールリングナットツール x1
・スターラチェットルングナットツール x1

 


ツールをバイスにセット

aiスで
そこにホイールをセットして満身の力をかけて緩めます モンキーレンチでは無理でしょう 工具が壊れる可能性がありますので必ずバイスで

a 
外した「3ポール」用の構成パーツ
これから組み込む「スターラチェット」用の構成パーツ
これだけ数がちがいます


順序通りに組んでいきます 組み立ても工具不要♪
 


ハイ、出来上がり♪

ラチェット機構のメインテナンスはスプロケットを組んだまま、「工具不要」でカンタンOKです♪

 

キャノンデール製ロードバイク 「SLATE」「CAAD12」「シナプス・アロイ」などアルミフレームを採用し、BB30を装備したバイクで使用に伴う摩耗によって費用のかさむ事案になるケースが報告されています。 ボトムブラケットの下部に「ケーブルガイド」と呼ばれる樹脂製のパーツが取り付けられています。バイクの使用の年月に伴ってこのケーブルガイドがシフトケーブルによって摩耗し、変速性能を著しく悪化、さらに進行した場合はクランクスピンドルにケーブルが接触してスピンドルに損傷を与える場合があります。そうなると最悪の場合、大きな力でペダルを踏み込んだ際にスピンドルが折れて転倒、ケガをする可能性があります。

正しく組み立て、調整が行われていても、「摩耗」によるものなので使用環境や使用状況、変速操作の頻度などによっても発生する/発生しない状況が異なります。使用者が日ごろから変速状態の変化などに気をつけておいて少しでも変化があった際には速やかに点検を依頼してその原因を調べる必要があります。これはなあかなか容易なことではありません。わずかな変化に気付く必要がありますし、その原因が「ケーブルガイドかも?」というところに気付く必要があるからです。

 

 一方、メーカー側は損傷を受けたスピンドルの無償交換を行っていません。摩耗によってその結果起きる問題は保証の対象になっていないからですが、もし仮に変速の異変に気付かずにそのまま使用し続け、ケーブルがスピンドルを切断してしまったような場合、スピンドルの交換、そのためのクラク脱着、変速ケーブルの取り外し、変速調整などの大きな費用が発生します。

幸い、このケーブルガイドは後継の製品が継続して販売されています。形状は同様ながら、シフトケーブルの力を受けて支え、ケーブルガイドの偏摩耗や変形を防いでケーブルのクランクスピンドルとの接触も回避する形状・構造になっています。摩耗が進行しているかどうかを心配しながらまめに点検して使用を続けるよりも、潔くこれらの新しいケーブルガイドに交換してしまってメカトラブルのリスクを遠ざけてしまった方が賢明です。いわば問題が起こる前の「予備整備」ということになりますが、その効果の大きなケースかと思います。

そこで、ある日突然の大きな出費を抑えるため、この予防整備を特別な条件で実施させていただくとに致しました。交換部品となります「ケーブルガイド」の部品費用だけはご負担をお願いいたします。そして以下の交換作業工賃を「無料」にて実施させていただきます。
・B30クランク、スピンドルの取り外し、組み付け
・前変速機、後変速機のケーブル取り外し、再取り付け
・変速調整
・ケーブルガイドの交換
*作業の際に再使用の不可能が確認された部品(ケーブルなど)や摩耗などで交換が必要な部品が判明した場合は必要な部品の代金やその交換工賃が発生する場合があります。

今回の交換作業「無料」とさせていただくのは、オキドキライフスタイルで該当の「完成車」「フレーム」をご購入いただいた方に限らせていただきます。他店でのご購入分については購入店でご相談ください。小店にご用命いただく際は上記の作業工賃をご負担いただけましたら作業を承ります。

このタイプのケーブルガイドを使用中の場合はご注意ください
 


後継の該当部品
 


両端に金属の爪が確認できれば「交換済み」もしくは後期の製品です。そのまま安心してお使いください

 








 

ここ2~3年でマスプロメーカー車にも「マレット仕様」が採用されるなど一般的になってきました。マレット仕様とは前後で異径のホイールを装着したマウンテンバイクのことです。具体的にはフロントに700C(29インチ)、リアに650B(27.5インチ)などを採用したフロント大径の車両です。26インチも含めて考えれば組み合わせとして、29x26も、27.5x26なども「マレット仕様」といえるでしょう。

特殊な用途を除き、これまでは「前後同一サイズ」が一般的だった自転車においては目新しい試みですが、「前後で車輪の径が違う」はフォーミュラーカーのような競技車、農用トラクター、荷役フォークリフト、輸送トラックなど4輪でも、あるいはオフロード系のオートバイなどでもむしろ一般的な手法です。これらはいずれの乗り物でも前輪と後輪でその役割が異なることから、太さ(幅)を含め外径、ホイール径もそれぞれの目的に適したサイズが選ばれているという当たり前の仕様です。むしろ、前後の車輪で役割が明確に異なり、さらにシビアな効率を求めるスポーツ自転車で頑なに「前後同一径」が守られてきたことの方が不自然だったのかもしれません。しかも多くの場合でタイヤパターンも太さ(幅)すらも同一に揃えられ、ただ「漫然」となのか何かの目的や合理性があってなのか。つまり、前後でサイズの異なる「マレット」は前後輪の役割がはっきりと異なる乗り物「自転車」に採用されるのはむしろ当然の成り行きだったのです。

では、マレットに、前後で異なるホイールを装着することのメリットは何か?について考えてみます。
荷重を受けて転がる、という車輪の役目で考えるとタイヤは「大きければ大きいほど」転がり抵抗が小さくでき、丈夫で、速く走ることができます。一方で大きくなることで、空気抵抗が増え、重量が増え、と駆動するためのエネルギーが増えることが起こります。外径を大きく保ったまま、重量や投影面積を少なくしようとした結果、「幅の小さい(細い)大径のタイヤ」これがマウンテンバイクよりも高速で走るためのロードバイクのタイヤの形です。しかし、低圧にしてグリップを稼ぎ、そのためにエアボリュームが必要なマウンテンバイクでは細くすることには限界があり、その結果が従来の「26インチ」だったはずです。空気抵抗は考慮する必要のないマウンテンバイクですが、フレームやホイール素材の改良、軽量化によって大径化による重量増が大きなデメリットでなくなって来たことでマウンテンバイクの「29インチ化」が進みます。29インチの大径化によって転がり抵抗が減って走破性が向上したマウンテンバイクは高速性能も向上して「良いことづくめ」となります。ポジション面を除いては… ポジション?正しくは「ディメンジョン」でしょうか。つまり幾何学的な問題。前輪に関してはフレームサイズによって変わりますが、後輪の位置と駆動装置の位置関係については走行性能や操作性に大きな影響を与えます。乗車状態の自転車において「乗り手」の荷重(体重)がどの配分で後輪に作用しているかは推進力、トラクション、旋回性、対障害物に対して非常に大きく影響します、特にマウンテンバイクの場合は。小さくなって太いタイヤで大径化されたリアホイールをフレームに納めるためにはチェーンステイ(リアセンター)つまり、乗り手の体重を受け止めるBB軸と後軸の距離を十分にとる必要があります。ところが、このBB~後軸の距離は後輪への荷重コントロール、旋回性、そしてフロント荷重のコントロールのために大きな影響を与え、それらの向上のためにはできれば「短い」方が良いのですが、この点で29インチ化がマイナスに働いてしまいます。そこでチェーンステイを短く保つために(せめて)後輪だけでも小さめのホイールを、というフレーム設計が「マレット」の基本的な設計の狙いです。外径が小さくなってしまった縦長の接地面積を横方向に稼ぐために太いタイヤを装着するのもそのためです。
つまり、マレット仕様の目的はコントロール性、旋回性を担う短いリアセンターのディメンジョンを維持しつつ、走破性、操舵性を向上し、転がり抵抗を低減する大径のフロントホイールを装着するための、方法というわけです。スピードを優先するクロスカントリーレーサーよりも、操作性を優先するフリーライド/エンデューロ車両に多く採用されているのもそのためです。


ところで「マレット」という呼び方はなぜなのでしょうか?
マレット、と聞いて辞書を調べるとmullet(ボラ)あるいはmallet(木槌)が出てきて???です。正しい綴りはmulletのようです。実「はマレット・ヘアー」という髪型があるそうで、魚のボラが小さい頭のわりに尾ひれが大きめのことから、全体はショートヘアーでありながら襟足だけが長い髪型を指すようです。ん?でも尻尾がデカイ、なら逆じゃやない?と不思議に思ってジテンシャと英語に詳しいジャーナリスト、コイチロ・ナカムラ氏に訊いてみます。やはり髪型の「マレット(ヘアー)」からだそうで、前後が逆なので「tellum(テルム)」と呼ぶことにしたのだそうです。しかしテルムは浸透しなかったそうで元の「マレット」が意味が逆のまま定着した、のだそうです。へー♪ 日本語であれば「逆マレット」が正式名でしょうか。


閑話休題
さて、ネットを検索すると「マレット」に関する記述も見つかります。「その効果はどれほどか?」「良いのか?」「違和感は?」などなど・・・ 効果、については上記の狙いで設計されたものですので、恩恵や感じる度合いは個人差はありながらも何かの違い(効果)はあるでしょう・・・ 
ところが関心の中心は現行あるいは所有車両を「マレット化」した場合でしょうか。前後共に29インチ、27.5や26インチで設計された車両を後から「前後異径ホイール」にした場合の影響です。良くなった?悪くなった?変わらない?ではないでしょうか。それらの内で気になったのは「的外れ」な記述も見受けられることです。「(前後)29インチ車両を『マレット』にして小回りが利くようになった」とか「低重心化して安定した」とかw ウーン・・・・

元々29インチホイールで設計されていたフレームに(リアだけを)小径の27.5ホイールを装着してもリアセンターのディメンジョンは変わらないのですから乗り手の前後位置、車両としての旋回性能(半径)などは変化せず、「小回り」にはならないかと思います。車輪の重量減による漕ぎだしや加速の「軽さ」は向上する部分はあるかもですが、上記のようにマレットとして設計されたフレームのような効果は残念ながら限定的です。むしろ前後輪で高さの差が生じたことによるヘッド角(キャスター)の変化は旋回性よりも直進性に働く方向ですので鋭い方であれば「小回りが利かなくなった?」と感じる傾向のはずです。低重心云々に関しては、前後に100㎜を越えるサスペンショントラベルがある車体において2~3㎝の高さ変化がどれだけ感じ取れるか?そして影響に現れるか、です。ですので前後同径車を「マレット化」してメリットが現れるケースは、
・前後27.5インチだった車両のフロントを29インチ化して走破性と転がり抵抗減を狙った
・前後29インチだった車両のリアを27.5インチ化して標準よりも「太い」タイヤを装着できるようにしてエアボリュームや接地面積を横方向に伸ばすことを狙った ギヤ比の向上を狙った、ブレーキ力の向上を狙った、などでしょうか。
どうやら、27.5インチ車両を29インチにマレット仕様にする方が効果は大きい、ということがいえそうです。

次に、前後同径車をマレット化したことによる姿勢変化がハンドリングにどう影響するか、を考えていきます。前輪を大径化、後輪を小径化、いずれの場合も姿勢が変化して「前上がり(後下がり)」になります。上記の「小回りが~」の項で述べた様に大回りになる傾向ですがどの程度でしょうか。
操舵性については「トレイル値」で考えていきます。
トレイルとは車輪半径、キャスター角、オフセットの3要素によって決まる操舵特性を表す指標です。乗り物の直進性や旋回性を幾何学的に数値で示したものです。その乗り物の用途や特性に応じて設計時に検討、決定されます。競技用のロードレーサーの場合、50~60㎜ほどで設計されることが多いですが、競技性の低いロングライドモデルなどでは70㎜ほど、シクロクロスモデルなどオフロードモデルも70㎜前後、数値が大きくなるほど「安定志向」、小さいほど「反応性が高い」となります。マウンテンバイクではクロスカントリーモデルで70㎜前後、トレイルモデル80mm、フリーライドモデルは100㎜を越えるような数値になります。

このトレイルを求める数式は

T=R/tanΘーF/sinΘ
T:トレイル R:タイヤ外半径 F:オフセット Θ:ヘッド角



で求めることができます。良心的な量産メーカーであればカタログに「トレイ(ー)ル量」という諸元で載せています。(表記のないものも多いです。バイクの旋回特性を知る、推測する上で重要な数値ですので表示すべきだと思いますし、目的を持って設計していることを示すものです)式からわかるように、タイヤ半径Rが大きくなればトレイルは増加(安定)します。ヘッドアングルが小さくなればやはりトレイルは増加します。マレット化することで車体が前上がりになってヘッドアングルΘが小さいく(寝る)ので「直進性」が強調されます。これが「マレット化して必ずしも小回りが利くようになるわけではない」の理由です。フロントホイールを大径化した際には半径Rが増加するのでトレイルが大きくなり「直進」寄りになります。
リア側の29インチ→27.5インチでどの程度の数値が変わるか、ですがリム径だけで考えると700CのETRTOが622㎜、650Bでは584㎜(いずれも直径)ですから高さの変化は19mm。これが高さの変化。装着するタイヤが小経化で太くするのであればこの差はさらに小さくなります。仮に高さの差が20mmとしてホイールベースが約1000ⅿⅿだったとするとヘッドアングルに生じる変化は約1(=ArcTan(20/1000))°。トレイル値での差はおよそ+6mmほどです。その程度です。
フロントタイヤを27.5から29に変更してタイヤ外径が変わることによる半径Rの差で変化するトレイル値も+7㎜程度で、合計13㎜。マウンテンバイクカテゴリーの中でも4~50mmの許容があることを考えれば大した変化ではありません。何よりも150mmほどあるサスペンションのトラベルによる姿勢変化(ヘッドアングル変化)が走行中に変化し続けることを考えればトレイル値ののこの程度の変化が全く問題にならないものだとわかります。
つまり、マレット化による旋回性の変化はほとんど影響しない、ということの様です。タイヤの選択を目的として、走破性や転がり抵抗軽減などの目的のためにマレット化をすることにはほとんどデメリットはない、と結論できそうです。その代わり、旋回性の向上などは期待できないこと、特に29フレームに27.5ホイールを組み込んでも旋回性に目立った向上はないということが証明できそうです。

今回は「トレイル値」を視点に「マレット化」によるメリットやデメリットについて説明をしてきましたが、実は「マレット」という名称で呼ぶようになるかなり前の時点で、27.5インチホイールが出現してきた時から26インチのマウンテンバイクにフロント27.5インチを装着して長く使用してきています。そこで感じているのは、まさにこれまでに述べた通りで、多少のメリットは感じられるものの、デメリットを感じる部分はほとんどなく、現在のこの状態でかなりの満足を感じているという現状です。欲を言えば当初からこの設計で造られたものが良いのは当然ながら、独自の視点で早くからマレット仕様にしておいてよかったという思いです。同時にオートバイ、特にオフロードオートバイはとっくにそんなことに気付いて遥か以前から標準な仕様として採用していることに改めて納得をした次第です。
結論としては「前後異径の「マレット」は多少の効果は期待できることは事実ながら、それによって「発生する不具合も多少でしかない」ということがいえそうです。27.5インチ車はフロントを29インチ化するのはいいかもしれません。

 

 

 














 

 

ご縁があって神戸市内の歴史ある印刷屋さんと親戚関係になりました。
神戸で100年以上続く老舗の印刷所で、ふと見ると倉庫に1台の自転車が佇んでいました。「時々は使うんだけど、さすがにもう古いから・・・」というその自転車はいわゆる「実用車」と呼ばれる初期のころの自転車、ロッドブレーキに26吋のBEタイヤを装着した骨太の業務車両です。 ただ、幾か所か残念な部分も見られ、長い年月に幾多の変遷もあったことが見られました。

 

神戸は1868年(慶応3年)に対外自由貿易港として開港しました。それに伴う様々な混乱は歴史にいろいろと記録されていますが、大坂でも大和でもない兵庫の「神戸村」が国際的な都市になったのはこのことによるものです。貿易に伴う経済の発展とともに、神戸も大きく発展しました。対外的な公用文書をはじめ、証明書や許可証など公書の需要がかつてないほどになったことに応じて「角丸印刷所」がはじめられたそうです。そしてその後も長くにわたり貿易、通関などの主要都市神戸の印刷所として繁栄をしてきたそうです。創業1900年(明治33)年、今年で123年を迎えるといことになります。

おそらく50年ほど使われてきたであろうこの自転車は、基本部分はしっかりとした造りのままでありながら、各部にふさわしくない対症整備も行われてきたようです。すでに何年も前の時点で「もう部品がない」「整備技術がない」などの理由で施されたであろう場当たり的な整備作業の跡が見られます。それら以外には整備不足や自然消耗による機能低下も見られます。さらにこれは仕方がないことですが経年的な劣化や損傷も見られます。すでに「印刷所」としての業務使用は大幅に減ってこの個体をさらに大切に長く使うという意義がないためやむを得ない状況でしょう。
しかし、印刷所の長い歴史やその半分近くの長い年月をこの印刷所で業務に使われていた車両、という歴史を考えた際にこのままお手上げになったらおしまい、ということは非常に残念に感じられます。すでに現時点で部品の調達が不可能かもしれませんが、できる限り「当時」の機能・性能、そして役割を取り戻すための自転車の整備をさせていただくことにしました。


まず、多くの自転車がそうであるように「壊れるまでは整備しない」が50年という年月だったとすれば年数に伴う機能低下は避けられないものでしょう。幸い「運搬業」ではなく、主業務に伴う配達や納品といった軽微な使用だったようですから年数のわりには損傷、消耗は少ないはずです。そして壊れた箇所を修理された場合も、入手可能な部品や技術でおこなわざるを得なかった、ことによる不適合な部品が装着されているようです。



整備の必要箇所を挙げていきます。
・フレーム自体には塗装の損傷を除いて問題はなさそうです。ただし、ヘッドベアリング、BBベアリングは状態を見て整備をすべきでしょう。
・ホイール。こちらもベアリングの整備が必要でしょう。リムの錆はあるものの変形や問題はなさそうです。装着されたBEタイヤの摩耗はすぐに交換しなければという状態でもなさそうです。 しかし、スポークの錆はかなり酷いものです。
・ハンドル回り。この車種の大きな特徴となっているロッドブレーキですが、すでに部品供給がなくなっている状況の中でどれだけ十分な機能状態にまで整備しきれるか、でしょう。
・チェーン、スプロケット、クランクは開けてみて見ないことには何ともいえません。
・サドル。機能的にはスポンジサドルでも良いのですが、可能であれば長持ちする上に身体に合っていくオリジナルな「革」が良いでしょう。あれば、ですが。
・ペダル 安直なプラスチック製、が装着されてしまっています  
・ブレーキシュー。消耗していてそれが原因で効きが悪くなっています。ロッド類は修正/整備して使用できるでしょうか。
・ベル、ライト、反射器  機能はしていますが・・・
・泥除け 衝突などによる損傷も見られますし、不適正なスタンドの取り付けによって変形してしまっているようです。
・両の立スタンド 簡易な物に代わってしまっていますが、寸法的に適合していません。それによってアルミの泥除けが変形してしまっています。
・必要性から取り付けられたいる「鍵」ですが、タイヤ太さや泥除けを含めた径に対応しておらず、泥除けを変形させてしまって、しかも十分に機能していません。





美観再生(世間でいうレストア)でなければ基本的には機能的な整備(分解・給脂・調整)と不適合部品の交換だけで満足のいく状態にはできそうです。ただ、サドルが懸案事項です。入手できる英国メーカー製の金額は躊躇するものです。かといって国内メーカーはとっくに製造を終了しています。
消耗品の手配もできるだろう、と安易に判断して作業に取り掛かります。何はともあれ、フレームからすべての部を取り外していきます。50年分の埃、脂、汚れの堆積が出てきますが、無事にフレーム単体にまでできました。絶望的な錆や損傷は見られず、これをきれいに掃除して、再び取り外した部品を組み戻していきます。ベアリング類はチェックして再利用できそうであれば洗浄して戻してゆきます。ブレーキパーツやハンドル回りなど機能部品とはいえ、正しく作動するためにも徹底的に磨いてめっきを艶出しておきます。ロッドは丁寧に曲がりなどを修正すれば問題なさそうです。ところがブレーキシューはメーカーが製造終了しているようで見つけることができません。取引のある問屋さんでもないようです。これには困ったので意を決して地元の老舗自転車店へお願いしてあみたところ、数日後に「あったよ♪」とどうにかして見つけてくださいました。さすがにそういったネットワークには感謝するばかりです。スタンド、ですが現時点で装着されていものはフレーム(チェンステイ幅)に合っていないものを無理に削って装着されているもので、これは交換を要します。幸いインダストリーがかろうじて?まだ製造・供給をされている様ですので実用車用を手配します。セーフ♪リンエイ製の鉄箱も製造終了ですがこれは軽く色を塗ってカッティングシートで看板文字を入れておきます。ライト、ダイナモは最新機能(LED)で外観それっぽい、が入手できます。入手できるだろう、と安心していたBEタイヤですが発注して届いたものはすっかり中国製のものに変わってしまっていました。トレッドパターンも肉厚も別物でがっかりです。しかも「耳」の部分が異常に大掛かりな構造でこれをリム内にきれいに収めるには通常のBEタイヤでもてこずるのにさらに困難なものになってしまっています。この点を見ても実用車の将来はかなり厳しそうです。そして、問題のサドルです。実はこれも大陸性のノーブランドの雰囲気商品は比較的安価で手に入ります。しかし乗り手にとっては大切な部分でもあり、造りのノウハウで大きく影響される箇所ですので安直に手をだせません。中古も含めて探してみた結果、カシマ製の比較的使用の少ないものが適価で見つかりました。しかし、届いてみてから重要なレール部品が一部欠品していたのです。ああ、イチから探しなおしか?と思いましたが製造のカシマサドルのHPに旧革サドルのベースパーツのみの供給があることを見つけ、これを求めて万事休止。ホイールはハブのオーバーホールは当然としても、リムを磨いてそのまま終了と考えていたのですが、スポークの錆が思いのほかひどく、部品価格を見ると1台分で1000円ちょっと、二度と整備されることはないだろうと考えるとこの際スポークの全交換をしてくことにしました。
以上の作業をすべて済ませ、フレームも軽く艶出し磨きをして完成。まあまあオリジナルに近い状態で、そして機能的にはほぼベストな状態に復活することができました。

 

 

「試運転」という名目で、神戸の港町を回ってみることにします。重厚な変速機構を持たない車両ですので坂道は苦手ですが、街中の平坦な道は思ったほどでもなくすいすいと軽快に走ってくれます。転がりがよく進む、というと手前味噌になってしまいますが、タイヤサイズとギヤ比、フレームの剛性/しなりが程よくバランスしているのでしょうか。神戸開港155年ははるか昔でも、神戸が貿易輸出入の拠点として栄えていた時を想い忍びながら、当時に活躍した印刷所自転車であたりを散策してみます。海岸通、税関関連施設、世界各国からの船員でにぎわったであろう元ドヤ街・・・ おそらく当時もこの速度で走るこの自転車が一番しっくりと来ていたはずです。

 


 

 

アクセサリーを含め、チタンの投稿が続きましたので、しつこくもう少しチタンについて書いてみようと思います。



【自転車のフレームとしては ・・・「好み」です】 
フレームの素材と金属としてしてチタンがいかに優れているか、本当に優れているのか、が今一つ正しく理解されていないようにも感じています。金属として(加工コストや量産効果が少ないことによって)アルミや鋼よりも高価であるがゆえに「優れている(に違いない)」ととらえられているのではないでしょうか。
「錆びないから!」カーボン(C-FRPのことです)やアルミ、ステンレスだって錆びません。
「強度がある!」ステンレスを含むスチールの方が(引張)強度は高いものが実現できています。
「軽い!」アルミの方が比重は小さいですし、カーボンはさらに軽いです。
「(重量に対する強度)比強度が高い!」もちろんカーボンの方が優れています。
「希少な価値のある金属なんでしょ!」地中(地殻)には、アルミ、鉄、マグネシウムに次ぐ4番目に多い金属です。
「生体親和性が高い!」ジテンシャのフレームにその点は特に求める必要は無いはずです。
と、何一つ、一番の「優れた点」を持っているわけではありません。このことが、一時はもてはやされたものの、その性質ではなく数値的な物差しで評価する傾向の自転車産業では使用されることが少なくなったのではないかと思います。軽さで言えば「カーボン」、細さの精悍さや撓りで言えば「スチール」、安い価格でいえば「アルミ」と区分され、選択されていった結果、チタンは一部を除いて高く評価されなくなってしまったのではないでしょうか。評価されるとすれば「好み」とでもいうべきでしょうか。
オキにとってはフレーム?素材としてのチタンはかなりの「好み」です。上述のように何一つ飛びぬけた特徴がない代わりに、(オキの好む使用目的の)フレーム素材として理想的な「バランス」を持っているからです。「スチールほど重くはないがアルミほど軽くなくてもいい」、「アルミほど撓りを抑え込む必要は無いがスチールほど撓ってくれなくてもいい」、「環境耐性(錆・腐食)はアルミでも心配ではないが靭性(疲労破壊)を考えるとアルミでは心配」などいくつもの「そこそこいい」を高次元で満たしてくれています。この点に気付いて、気に入った人(達)にとっては「チタンはこの上なく優れたフレーム」と捉えられているのです。もちろんチタンで作られていればどのフレームでも優れているのか、といえば前提として(素材に応じた)ジテンシャのフレーム自体を性能良く作ることができる、技術やノウハウを持った上での、ということになりますが。

【アクセサリー素材として】
チタンフレームの優れた点は、「好みです」という結論に至ったとして次に、アクセサりーなどの素材としてのチタンが優れているのか、あるいはそうでないか、の本題についてお話していきたいと思います。アクセサリー(ここでは装飾品、というよりも身に付ける物という意味でアクセサリーという言葉を使うことにします)

【錆びるの?錆びないの? 実は錆びやすい卑金属です】
まず金属の分類の一つに「貴金属」と「卑金属」という呼び方があります。多くの方が「貴金属は高級(高価)な金属」をイメージすると思います。惜しいのですが正しくは違います。卑金属、貴金属はその金属が「酸素の影響を受けて酸化しやすいか、そうでないか」を表現、分類したものです。金属には「イオン化傾向」という物性特性があります。酸素と反応して酸化、還元しやすい金属を「卑金属」、反応しにくい金属を「貴金属」と呼ぶことにしています。卑金属はイオン化、酸化しやすいということは錆やすく、電気を生じやすい特性になります(バッテリー原料のリチウムは非常にイオン化傾向の強い卑金属です)。一方貴金属はイオン化の低い、酸化しにくい錆びにくい特性になります。金やプラチナがイオン化傾向が小さい金属です。しかし、それほど高価でもない銀や銅も「貴金属」ですので必ずしも高価な金属が貴金属ではない、と理解いただけるとおもいます。酸化しにくく、腐食や変質が起らない→価値が変わらない→貨幣(硬貨)にも使えるなどのことから埋蔵量との関りもあって金やプラチナが高価なもの、として定着したのでしょうか。そしてこのイオン化傾向が小さい、酸化しにくいは人体にとっても影響が少なく、つまり金属アレルギーも起こりにくいようです。金、プラチナ、銀、(銅)などの貴金属がアクセサリー類に多く使われてきたのはこのためでしょう。ところが、チタンはアルミと並んで非常に酸化しやすい「卑金属」です。「錆ないのがチタンだろ!」と考える方が90%以上でしょうか。事実は、「チタン(やアルミ)はイオン化傾向の非常に大きな酸化しやすい金属です」。チタン(やアルミ)は非常に酸化しやすく、鉄などよりもはるかに早く酸化します。が酸化によって表面に形成される「酸化被膜」が「不動態皮膜」を形成して酸素を遮断し、それ以上の酸化を進行させないのです。ステンレレス鋼が錆びないのも同じで、添加されたクロムが酸化して不動態皮膜を形成するからです。アルミの場合には意図的に酸化被膜を形成する技術がアルマイトと呼ばれています。
いずれにしてもチタンには貴金属を上回るほどの強い「不動態皮膜」のお陰で卑金属であってもアレルギーも起こり難く、アクセサリー向きということになります。

【金属の殺菌、抗菌作用 他の金属にはない「光触媒」】
さらに、金属には「殺菌作用」というものがあります。金属による殺菌作用はイオン化の影響があると考えられていますが、イオン化傾向の大小に関わらるものでもないことも知られています。イオン化の小さい「銀」や「銅」にその効果が表れ、古くから活用されてきました。しかし、金やプラチナに顕著な殺菌、抗菌の効果はなく、逆に卑金属のコバルトなどにその作用があり、実はなぜ金属に殺菌作用があるのかは明確に解明されていないようです。「衛生的な」のイメージを持つステンレスですが、ステンレス自体には抗菌や殺菌の作用はなく、その点は鋼であることに変りはないようです。酸化しにくいため躊躇なく水などで洗浄できることで衛生を保つのであって、そういえば流台シンクや排水口など放っておくと黒くぬるぬるした状態になります。サージカルステンレスと呼ばれる医療用にも使われるステンレスが有ります(SUS317/317L)がこれも耐食性を向上させただけにすぎません。腕時計のケースやバンド、最近ではアクセサリー類にもステンレスが使われていますが、これらにも抗菌作用はなく黒い堆積物や臭いの元となってしまっているようです。

一方、チタンではどうでしょうか。このことこそがチタンの最大の特徴といっても良いと思うのですが、チタン(酸化チタン)には「光触媒」という他の金属にはない(タングステンにも)特性があることが判っています。乱暴に説明しますと、酸化チタンに紫外線が照射されると有機物が分解される、というのが「光触媒」です。有機物、ですから油汚れ、タンパク質、そして細菌やウイルスを分解して不活性化させることができるということです。おそらく銀や銅にも同様の触媒効果があるのだろうと考えられていますが、酸化チタンの光触媒に関してはそのメカニズムが解明されていて確実な作用とされてます。「チタンじゃなくて酸化チタン?」ご心配なく、上述のようにチタンは非常に酸化し易い卑金属ですのでその表面は既に酸化チタンによって覆われています。その結果、チタンにはステンレスや金、プラチナにはない、銀や銅よりも明確で効果的な「殺菌・抗菌」の作用があるのです。このことは、チタンを使ったアクセサリー、ネックレスやブレスレット、指輪、時計、めがねなどを身に付けることでその汚れや臭いが発生しないだけでなく、周辺の皮膚、身体を衛生的に、細菌やウイルスから守ることにも効果が期待できます。必ずしも十分な水が確保できないようなアウトドアで使用する食器やカトラリーもチタンで作られたものであればその効果があると思われます。


軽くて強い、そして高いだけだと思っていたチタンですが、実はこうした他の金属にはない優れた特性があったというわけなのです。装飾などの類には全く興味のないオキがチタン製のものを身に付ける理由を、少しご理解いただけたかと思います。

チタン製のネックレス、ブレスレットなどを取り扱いしています。
 

子どもの乗るジテンシャは「おさがり」を活用することで物質的な無駄や環境に対する負担が低減するのではないかと考え、「繋がる「リ」さいくる」として我が子にはおさがりジテンシャの活用を実践してきました。
過去記事:16インチ車
過去記事・20インチ車
主には「使っていないジテンシャを有効に利用したい」という想いからによるものですが、特に我が子に関しては「自分仕様ジテンシャを作り上げていくプロセスの体験」が大きな目的となっています。新しい高性能の新品を買い与えることも大切ですが、ぬりえ感覚で自分だけのジテンシャを作っていく喜びを体験してもらいたいという想いです。幸い、子どもはジテンシャが新品であるかどうかよりも「好きな色」とか「自分でやった」の方に満足を感じてくれた様で、16インチ車に続き20インチ車も同様に親切な車両ご提供者のお陰もあってこの試みが実践できています。

そんな前投稿をご覧になって、共感を頂いたお客様より、同様の体験を子ども(姪)さんにさせてあげたい、というお申し出を頂きました。しかし、再生の元となるジテンシャもなく、それも含めてのご依頼です。
これまでに小店でお買い求めいたお客さまを中心に広くお声掛けしたところ「もう使っていないモノがありますよ 良かったらお使いください」というありがたいお申し出をいただきました。小店から販売されたものではありませんでしたが、そこは問題ではありません。画像でご依頼者の方に確認を頂き、これで、と了解を得て実車が店に運ばれてきました。「使っていただけるのであれば結構ですよ」とのことで金銭のやり取りは無くても良いそうです。実車をご依頼者に確認していただきます。元前持ち主は活発な男の子。黒と赤の精悍なカラーリングのジテンシャです。一方ご依頼者はピアノを習いに行く際にも使う、という女の子です。このまま「おさがり」として使うのではなくやはりフレームの塗り替えを含む組み直しをして再利用するということになります。
フレームは塗り替えて好みの色でお使いいただくことになるのですが、例えば色の塗り替えが困難なリムなどはそのままの前提です。現車は赤いリムで組まれていますのでその塗り替えが不可能(困難)であることと、フレームカラーとの影響をご考慮いただく旨を伝えます。それまでに考えていたカラーリングを変更してしまわなければばならないかもしれません。これらをご了解していただた上で作業へかかります。

まずはフレーム単体とするために全ての部品を取り外していきます。再利用しないプラスチックのカゴや跳ね上がった泥除けは廃棄します。そうしてフレーム単体となったモノをご依頼者にお渡しします。これよりフレームの色付けやデザインはご依頼者の元に持ち帰って行われます。さてどんな色に仕上がってくるのでしょうか。

お預かりしたフレームから取り外された各パーツは再組立てに向けて各部の点検と整備を進めておきます。各種軸受け、ベアリングは状態を確認して給脂や調整を行います。使用の限界に達したものは残念ながら交換を必要としますが、やはり今回もその必要は無さそうです。一方、タイヤやチェーン、ケーブルやハウジングは交換をして新品時かそれ以上の使いやすさを狙います。実はこのプロセスが案外と効果的で、子ども車の多くが新車納車時に大人のスポーツ車並みの納車整備をされていることは少なく、あまり使いやすい状態で使われてきているケースは少ないようです。ベアリングの予圧やレバー類の操作性など、多くは手間暇を掛けることなど無くそのままであることが多いのです。ですのでこうした組直しをした際にこれまでよりも「良い作動」を得ることができることがあります。

さて、幾週間の時間の後に塗りなされたフレームが持ち込まれてきました! 調色を優先して「ハケ塗り」で塗られたサーモンピンクのフレームにピンク、赤、白のカッティングシートから切り出された「シール」がレイアウトされています。刷毛塗りの彩色は初めての体験だったのでしょうか。ところどころに垂れたりムラになっていたりしますがそんなものが全く気にならない出来栄えです。おそらくその過程の時間を存分に楽しんだのだろう、という様子がビシビシと伝わってくるようです。
ではせっかくの綺麗に彩色されたフレームを痛めないように細心の注意を払って部品の組み戻しをしていきましょう。こちらジテンシャ店にできることは極僅かですが、フレーム色にあわせた色使いや体格に合わせた組付け、調整、操作性を目指して仕上げていきます。「カゴが必須」とのことでしたので、実用サイズでありながら大きすぎないサイズのカゴを探して取りつけます。 さあ、完成♪


金額的な価値観は人によって様々です。仮に無償で譲り受けたジテンシャであっても使用して減ってしまった消耗部品を交換して、フレームに色を塗るための材料や準備、そして手間賃などを併せると、新しいジテンシャが買える金額になってしまうかもしれません。あるいはそれを上回ることも。真新しいモノを手に入れる喜びも大切な気持ちですが、「自分だけのジテンシャを作り上げていく体験」は新品新車のジテンシャの購入には付加してこないものです。どちらが大切と考えるかは人ぞれぞれ、そして当の本人である子どもさんがどちらを喜ぶのか、だと思います。
おさがりの活用はそうした選択肢を一つ追加できるチャンスだと考えてています。 ご相談はお気軽にお問合せください。また、使っていないジテンシャの活用のご相談もお気軽にどうぞ。



*フレーム彩色時の写真をお借りしました