沖 中央例会 特選句
令和5年2月
能村 研三選
【特選】
立春大吉水は両翼拡げたり 平松うさぎ
今日は、立春の句が多かったが、この句も立春のこの日に合わせて、意欲的に作られたのだろう。立春はまだまだ寒の延長で寒いが、なんとなく日差しも明るくなり、春への兆しが、感じられる。噴水の水か蛇口の水か具体的な事は分からないが、「水は両翼拡げたり」に寒い中の微妙な春への兆しが捉えられている。
【準特選】
臘梅や日暮は固き風の音 菊地 光子
臘梅は冬の季語だが、一月の終わり頃に咲く花だ。まだ冬の硬さが残っている。特に日中は少し暖かいが、日暮は寒くなり、行ったり来たりの感じがある。「固き風の音」でこの頃の微妙な季節感をうまく表現している。
森岡 正作選
【特選】
赤べこと頷き合うて春を待つ 能美昌二郎
赤べこは、福島の民芸品で私も持っているが、真っ赤なので、何かとよく目につく。その感じから「春を待つ」になるほどと思った。ちょっと嫌なことがあっても、赤べことうなづきあって、自分を励ます。そんな風に赤べこに気持ちがいったので、頂いた。
【準特選】
河馬の尻尾ぷるんと春愁払ひけり 富川 明子
春愁を抱え、動物園を歩いている。その悩みを一瞬にして、笑いに変え、明るさに変えたのが「ぷるん」と言う擬態語だ。河馬の尻尾は巨体の割に、細く短い。面白い所を捉えたと思って頂いた。