【中央例会】沖 中央例会 令和5年7月 特選句 | 航海日誌

航海日誌

創刊53周年「沖俳句会」公式ブログです。
主宰 能村研三 創刊主宰 能村登四郎

 

 

沖 中央例会 特選句

令和五年七月一日  

 

 

能村 研三 選 

 

【特選】

 名刀の刃文に山河梅雨明くる      七種 年男

 

【評】刀匠が丹精を込めて作り上げた刀文が見えてくる。その刃文は美しさも去ることながら、切れ味が鋭くなくてはいけない。じっと刃渡りを眺めているうちに眼の奥に日本山河の景が浮かんできた。山河にも「梅雨明け」が訪れことになった。季語の斡旋がよかった。

 

 

【準特選】

 眼に入る汗は入らせ陶土練る      林 昭太郎

 

【評】中七の「汗は入らせ」という表現、汗が眼に入ってくるのは仕方のないことで、汗を拭っている暇はなく、陶土を練ることに集中しているのである。さぞ立派な陶器の作品が出来上がったことだろう。

 

森岡 正作 選

 

【特選】

滑走路とことん洗ひ梅雨明くる     峰崎 成規

 

【評】梅雨の終わり頃の暴れ具合に被害の出ることも想像されるが、そんなことはここでは一切取り払い、滑走路真っ直ぐで真っ平らな平面を梅雨が洗いきってくれたのである。滑走路の拡がりが心の広がりも連れてきてくれる。とても気持ちの良い句である。

 

 

【準特選】

箱鮨の枠干されあり神楽坂       栗坪 和子

 

【評】神楽坂らしい季語。そんじょそこらを歩いてもこういう季語には出会えない。古風な神楽坂の感覚が出ている。家の前か、店の前かに箱鮨の枠が干されている景をきちっと捉えて、感動のある句である。