【中央例会】沖 東京例会 令和5年6月 特選句 | 航海日誌

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創刊53周年「沖俳句会」公式ブログです。
主宰 能村研三 創刊主宰 能村登四郎

 

 

東京例会

令和五年六月十一日  

 

能村 研三 選

 

【特選】

 鬢付けの歩幅の勁し迎へ梅雨      甲州 千草

 

【評】相撲部屋から力士が出て来たのでしょうか、鬢付け油の香とともにびしっと決めて颯爽と力強く歩いて行く様子が見える。迎へ梅雨の季語を持ってきた上手さに感心しました。

 

【準特選】

 からくりの時つくる街風青し      岩波 博庸

 

【評】人形町のからくり時計、からくり櫓といくつも出てきたが、「時つくる」の表現でその前向きな姿勢が感じられた。風青しの季語がとても良い。今日は吟行で雨でしたが、そのままではなく「風青し」を持ってきたらより良くなるとして作句した感覚が良かったと思います。

 

森岡正作選

 

【特選】

 朝涼や玄冶店とはこの辺り       栗坪 和子

 

【評】朝、人形町に着いたのでしょう。通りに史蹟「玄冶店」との石碑が建っているのを見つけた。芝居などで有名な「玄冶店」とはそうかこの辺りだったのかと、昔に思いを馳せしばし感慨に耽っていたのでしょう

 

【準特選】

 誰ひらふ明治座前の落し文       枇杷木 愛

 

【評】明治座前は緑が多くあり、そこに落し文を見つけたのだ。しかし芝居に向かう人々の華やかな雰囲気の中、落し文など誰も気づかず通り過ぎていく。場所といい物語性もありいろいろと想像させられる良い句になりました。