みなさん
こんにちは
ご訪問いただきありがとうございます。
前回の続きを
まだご覧になっていない方は
こちらからどうぞ
事務所へ戻る
すぐ電話
上司と社長と総務部長それから・・
みなさんお待ちかねのようだ
順番にビジネスライクにこなしていく
「19:00 定刻で出発しました。
ドライバーの健康状態は良好。
道中の天候晴れ。日本海側も晴れてるようなので、
降雪によるトラブルもないと思われます。
明日の現地の天候晴れ。
天候に関するトラブルはないと思われます。
これから2時間ごとに
私からドライバーへ電話を入れます。
問題は発生しない予定ですので
随時の状況報告は省略します。
明日の9:00以降で一度。
それから現地到着後
荷下ろし前に報告を入れさせてもらいます。」
事務所に戻ると早々の帰宅
2時間毎に連絡を入れなければいけない
簡単に夕食を済ますと再びPCを立ち上げ、
道路情報と天気を開く
今のところ問題がないことを確認
少しホッとするが
こうしている間にも
今まさにトラックは仙台へ向けて疾走している
約束の時間だ
電話をかける
「あいよ。順調だよ。
都内も意外とスムーズに抜けられた。
いま飯食ってるところだから心配はいらいない」
特に問題は無いようだ。
「じゃ。引き続き安全運転でお願いしますね。
2時間後また電話しますから!」
「いやもういいよ!
こっちのペースで行くから電話してくんな!
何も心配はいらない!
どっかでさぼったりしないから大丈夫!」
「あのねー。約束したじゃないですか。
今回はいろんな人が関わってるから
そうもいかないんですよ。
それに
サボってるかのチェックじゃないですよ・・・」
「2時間めどで休憩は入れる。こうしよう!
インター入ったら、ワン切りしてやるよ。
ワン切りなら問題なし!鳴り続けたらトラブルだ。
これでどうだ!」
確かにいい考えだ。
ワン切りなら問題無いって理解できる
「わかりました。そうしましょう。
じゃあ、ワン切り入ったら、
わかったと言うことで僕もワン切りしますね!」
「だからよー!それがうざいって言ってんだよ。
もう好きにしやがれ!じゃあな!」
確かに走り出してしまえば、もう心配はいらいない。
いまさら心配も余計なお世話のような気がしてきた。
それから
きっちり2時間後
ワン切りが入る
なんだかんだ言っていたが、時間は正確
おっちゃんのマメさがよく出ている。
態度とうらはらなマメさに
少しおかしさがこみあげてくる
すかさずこちらからもワン切り!
「なんだようるせーなー!」
ワン切り出るなよ。しかも取るの早いし。
「ワン切りするつもりだったんだけど。。」
「そうだったな。悪い悪い。こちらは問題ないよ。
道もすいてる。
問題はどこで通行止めがかかるかだな。
一応情報はインターで確認しながら走ってるけど
まだ余震が出てるらしいから
こればっかりはわからないな。
まあ何かあったら電話するよ」
「了解。では気を付けてお願いしますね」
そっと電話を切る。
しかし直後にワン切り。
いまさらなんのワン切りなんだよ。。
OKのサインでこちらからもワン切り。
今度は出なかった。
余震はまだ続いている。
少し収まってきてはいるようだが、予断は許さない。
原発も爆発の恐れがあると言い出している
ふとそんなことを考える
忘れかけていた不安がフラッシュバックした
でも今できることは無事を祈るしかない
明け方までワン切り交換は続いた
問題は無かった
朝は通常通りに出社
まずは社長室に行く
「おはようございます。
今のところ問題ないです。
これから電話して状況を確認します。」
「うむ」
早々に席に戻る
9:00 電話入れる。ワン切りではない。
「おはよー!こっちは大丈夫だ。
もう市内に入ってる。」
「あれ?早すぎない?」
「それがよー。
思った通り途中から道路封鎖だったんだけど、
通行手形見せたら待機中の自衛隊車両が
先導してくれたんだよ。
多分連絡入って待っててくれたんだろうな。
他に車いないからスピード出し放題だし
自衛隊のやつら煽りながら走るって
気持ちよかったぜ!」
「先導車ついたの?・・で煽ったの?
そんなことして大丈夫なの?」
「自衛隊のやつらも相当出してたぞ。
でもさすがに高速降りてからは
先導車も安全運転になっていたけどな。
このまま現地まで連れてってくれるらしいぞ」
じゃ。電話切るぞ。着いたら電話する!」
「あ。はいはい。気を付けて」
多少盛ってるだろうけど、すごい話聞いちゃったな。
緊急車両書持ってると自衛隊が先導するなんて
初めて聞いたよ
やはり自衛隊も協力してくれてるんだ・・
そうか。もう少しなんだ。
ここまでくれば大丈夫だろうな。
約束通り関係者に電話
みんなほぼワンコールで出る
待ち構えていたのだろう。
状況を簡単に説明する。
さあ。あと少しだ。
さすがに緊張してきた
現地はどんな状況なんだろう。
ニュースは原発一色で
仙台市内の様子が全く伝わってこない
もちろんネットにも全然正確な情報が出ていない
どこのサイト見ても想像とかデマばかりで
不安ばかり煽られる
「もしもーし。終わったぜ!」
あれから何分もたっていないのに。
「えっ?着いたら電話してって言ったじゃん!
で完了?早くね?」
「それがよー
現地入ってテックに車入れたら、
いきなり社員さんが大勢出てきて
囲まれちまったんだよ。
早く下ろせってよー
こっちの言うことなんか聞きやしない。
しょうがねーからケツ開けてやったら、
勝手にバンバン荷物下ろし始めやがってよ。
あっと言う間に空になったよ。
そしたら今度はスーツ着た偉いさん達が
何人も抱きついてきて離さないんだよ。
やめろ気持ちわりいなっ!
って言ってやろうと思ったんだけど
さすがに俺も声が出なくて立ち尽くしたよ。
みんなにありがとう。ありがとうって
泣かれちまったよ。
俺はただ、
おかちゃんの大事な荷物届けただけなのによ。
大げさなんだよ。どいつもこいつも。
俺にとっちゃー、別にどおってことないぜ
だけどよ。
・・・ちょっとうれしかったな。
で最後にな、
なんか文句あったら岡安に直接言ってくれって
電話番号渡してきたからな。あとよろしくな!
じゃ戻るぜ。」
「え?ちょっと、ちょっと。
とにかく無事下ろせたんだね。
完了で大丈夫なんだね。
完了をみんなに伝えるから
そこでちょっと休んでてね!」
「休憩なんかいらねー!
俺は俺の仕事が済んだら帰る。それだけだ!
じゃな!」
多分そう言ってたんだろう。
最後までカッコつけさせることにした
おっちゃん泣いてるよ
だって涙で声が全然聞き取れないんだもの
ツー・ツー・ツー・ツー
届いたんだ。
あまりの衝撃に
何も考えることができない
どれくらいたったのだろう
時間は止まっていた
続きは次回・・
Written by Kaz Okayasu



