あの日の絆 −憂い− | アスユメ_labo.通信

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みなさん

こんにちは

ご訪問いただきありがとうございます。

 

今回は

ちょっと昔のお話し

 

2011年3月14日

 

あの日の東京は快晴

3日前の地震で、この先どうなっちゃうんだろうと思いながらも

とりあえず出社できる人は出社せよと言う会社からの連絡

電車は動いてるようだし、会社も2駅なので、ふつうに出社してみる

 

まさか生涯忘れることのできない衝撃的な1日になるとは夢にも思わず・・

 

会社に到着するも席はまばら。

それはそうだろう。

みんな遠くから通ってる人ばかりだし

週末のあの地震騒ぎでは出社もなかなか厳しいのだろうと考えながら

週末にやり残していた書類に目を通す。

ここまではまだ日常だった。

 

社用携帯が鳴る。

うちと同じく家電メーカーグループのある総務部長。

直接電話って、いったい何だろう?

 

一瞬不安がよぎるが、とりあえず出てみる。

 

「おい!君は無事だったか?」

 

「ええ、大丈夫でした。それで出社してます。

〇〇さんもご無事だったんですね。よかった。それでどうしました?何かありました?」

 

「そうだ。落ち着いて聞いてほしい。うちの仙台の営業所とテックが被災した。状況はまだよくわからない。車を探している。どこも断られてだめだ。どこかで探せないか?ここにある備蓄品400人分を現地に届けたいのだが・・・」

 

「えっ。救援物資ですか・・・。わかりました、知り合いを当ってみましょう。」

 

電話を切る。

当時は社長直轄の部署にいたので、すぐに社長に報告。

 

もちろん社長もびっくり。

そりゃそうだろう。

救援物資の応援はわかるが、

取引のある大手運送会社が断り続けている救援便に、

うちの規模の会社が対応できるはずもないと考えるのがふつうだろう。

 

社長の回答を待たずに

その場で知り合いの運送会社に片っ端から応援要請の電話をかけまくる。

やはりどこもだめだ。みんな低調に断ってくる。

 

社長室のテレビからは緊急速報が絶え間なく流れている。

福島の原発が爆発を起こしているらしい。

一機だけではなく、ほかの原発ももうすぐ爆発だろうと

レポーターが必死にカメラに向かって話しかけている。

いったいどうなってしまうのだろう・・

 

そんな中で、福島を抜けて仙台に救援物資を届けることができる車などあるはずがない。

電話をかけ続ける私を社長が固唾をのんで見守っている。

30分ぐらいは過ぎただろうか。

 

「やはり無理だろう。ご苦労さん。私から断りの電話を〇〇さんにしておくからもういいよ。」

 

あきらめかけてた私にねぎらいをかける。

 

「あと1件だけ。昔から懇意にしている運送屋さんがあるから聞くだけ聞いてみますよ。」

なんとも後味が悪くて、一度社長室を出ることにした。

 

最初っから心当たりは一つだけ。

はじめから電話しなかったのは、個人事業主でやっている小さな運送屋さんで、

巻き込むにはあまりにもリスクが大きすぎるのではないかと考えていたから。

あえて電話をしなかった。

 

その思いは変わらなかったが、八方ふさがりになってしまったし、

おっちゃんに相談してみて、何か打開策があるかもしれない。

だめならだめで納得が付くかもしれない。そう思った。

 

重い気のまま電話をかけた。

 

「いよぉ久しぶりじゃねーか。元気でやってるかい。こんな朝早くから珍しいじゃねか。

どうせまた大変な仕事なんだろ。」

 

僕が以前運送系の仕事をしていた時に、

全国巡行をずっと一緒にパートナーとして走ってくれていたおっちゃんだ。

 

「お久しぶり。今日は他でもなくってね。仙台でさー・・」

「救援物資持って走れってことだろ。」

「えっ?よくわかりましたねぇ」

「今朝からあちらこちらから話があったが全部断った。そんな危ないことできないね。」

 

当然だろう。やはりこれ以上の話は無用だ。

 

「そうですよね。一応相談はしたから、もう忘れて!また今度電話するね」

 

電話を切ろうと耳から離す

 

「何言ってやがるんだ、ばかやろう。誰が断るって言ったんだ。

お前の頼みが断れるわけないじゃねぇか。俺にやらせろ。俺が走る」

 

「いやでもさ。やっぱりやめておこう。よく考えたらリスクが高すぎるし、何もうちが。。」

 

「いいからお宅の社長に話を通せ。俺が自分で走るから、

総務とも話をして物資を夕方までに用意させろ。」

 

いつものおっちゃんの強気な言葉が、弱気な僕の心を突き動かす。

 

「わかった。やろう。仙台に走らせよう。仲間を助けよう」

 

心は決まった。絶対走らせる。

 

すぐに社長に電話をかける

 

「車取りました。4t車2台。今日の夕方でスタンバイできます。」

 

社長の声は拍子抜けするほど低かった。

 

「そうか。ご苦労さん。すぐ社長室に来い」

 

まだこの時は、自分が大変なスイッチを押してしまったという自覚もなく、

無我夢中でこの後の段取りとシミュレーションを頭の中で描いていた。

 

意気揚々と社長室に入る。

 

「ご苦労さん。そこに座れ。これから臨時役員会議が行われる。

その中で、会社として仙台に救援便を出すかどうかを判断する。すべてはそれからだ。

君はここで待機していなさい。いいね。」

 

諭されるようにソファーに腰掛けた。

すぐに隣の部屋で会議は始まった。

 

だまって天井を見上げ、ゆっくりとこの状況を理解しようとしていた。

 

どれぐらいたったのだろうか。

社長は会議から戻らない。そんなに時間がかかるものなのか。

 

部屋からは怒鳴り声まで聞こえてくる。

 

なぜ・・・?

 

ガチャ

 

社長が戻ってきた

 

「一回休憩を入れようってことになった。この後判断する。やはり問題が大きすぎるな」

 

「やはり反対派が多いんですね。

でも社長、他の会社が動いたところで、今日車出せるのはうちしかないですよ。

仙台も僕らのファミリーですよね。家族が困っているのを見ていて、

うちにはできないって言えるんですか。車はもうスタンバイさせてるんですよ!」

 

「お前の気持ちはわかる。私も思いは一緒だ。」

 

再び立ち上がると社長は会議室へ戻っていった

 

不安は的中していた。

 

同じグループ会社とはいえ

この会社が独断で被災地に物資を運ぶには

あまりにもリスクが大きすぎる

 

一社員の感情ではどうしようもない

会社組織の仕組みってやつが歯がゆいばかりだ

 

しばらくして秘書さんが入ってきた

 

「岡安さん あちらの会議室で社長がお呼びです」

 

なぜ兵隊の僕が呼ばれる必要があるのだろうか?

 

腑に落ちないながらも

社長を待たせるのもまずいと思いながら

会議室のドアを軽くノックした

 

「入りなさい・・・」

 

 

・・・つづきは次回

 

written by Kaz Okayasu


 

Written by Kaz Okayasu



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