みなさん
こんにちは
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前回の続きです。
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会議室の扉を開けると
男性が二人
こちらに一瞬視線を向けたが、すぐに目をそらした
一人は社長、もう一人は直属の上司の事業部長
この何とも言えない空気感はなんだろう・・
ただただ伝わってくるどうしようもない脱力感
ちょっと前の会議がいかに白熱していたかが
何となくわかった
とりあえず
どうなったのかを聞かなければならない
勇気を振り絞って、二人の視界の真ん中に移動し
二人に話しかけた
「やはり厳しかったですか」
「今回はやはり厳しかったな。
でもちゃんと話をしなければならないな」
「岡安君よく聞きなさい」
社長の眼光が鋭く光る。
一瞬にしていつもの社長の眼光に戻った。
「一つ。この会社として〇〇会社さんに
正式に救援便の依頼をする。」
「えっ?やるんですか・・」
間髪入れずに続ける
「一つ。プロジェクトリーダーは君だ。
早急にプランシートを作成し、
ありとあらゆるリスクを洗い出せ。
そして必要なサポートをすべて書きだせ。
1時間以内にだ。」
「そしてこれだけは絶対に守れ。
お前は現地に行くな。
コントロールタワーとして
24時間体制でここからプロジェクトを見守れ。
誰一人として万が一があってはならない。
完璧なプロジェクトとして
完遂させなければならない。
わかったか!」
そう言うと、
ゆっくり立ち上がり会議室を後にした。
いても立ってもいられない心の内を
すっかり見透かされていたのか
社長の後ろ姿に深々と頭を下げ、
その責務の重さを改めて認識した。
黙ってみていた上司が、優しく話しかける
「役員会は紛糾した。
感情ではなく、この会社が単独で救援便を出すのは、
ふつうはあり得ない。
多数決でも私と社長以外は反対。
それでも社長はあきらめなかった。
仙台はファミリーだ!我々の家族だ!
家族が生死をさまよっているのに我々は黙って見ているわけにはいかない!
我々はファミリーとしてできることを!
最善を尽くすべきではないのか?
私は社長として仙台の命運を岡安にかける。
何かあればすべての責任は私が取る。
だからみんな協力してほしい。
改めて社長として宣言する!
我々は仙台のファミリーを救う!ってさ。」
社長の覚悟だ
このプロジェクトは何としても
完遂しなければならない
「プランニングできるか?」
「もちろん!大丈夫です!」
たぶん涙で声になっていなかったのだろう。
上司は黙ってうなづいた。
リミットは1時間
社長を納得させるプランを
組み立てなければならない。
もう迷っている時間はない。
私はやり遂げなければならない。
仙台のファミリーのために。
そして社長の決意に応えなければならない
我に返る
おっちゃんに電話
「改めて。仙台に400人分の水・乾パン・電池・毛布・簡易トイレの防災備蓄品一式!
明日届けてもらえますか。
正式な依頼書は後で出します。
集荷場所は高輪。時間は夕方。
プロジェクトリーダーは私、受けてもらえますか?」
「何やってんだよ。連絡がおせーんだよ。
うちの若い衆をもう集めてある。
早く高輪に連絡して
すぐにでも取りに行くって伝えろ!」
「さすがだね。ありがとう。
じゃあ頼むよ。また電話する!」
次は高輪だ。
「おかやすー。待ちかねたぞ。行けるのか?」
「はい。連絡が遅くなってすいません。
会社の承認が手間取ってました。
いつもの〇〇会社さんです。
あの社長が自ら走ってくれるとのことなので
大丈夫です。4t車2台用意しています。
今日の夕方積み、明日で仙台に入れられると思います。集荷は16時で大丈夫ですか。
あと、積み込みの作業員が間に合わないので、
社員さんの応援をお願いしたいです。」
「岡安ありがとうな。よしわかった。16時だな。
積み込み要員の社員はこちらで集める。
さっき高輪警察相談して、
災害用の緊急車両通行証もらえたぞ。
これがあれば自衛隊救援車として
どこでも入って行けるんだってさ。
これ後で渡すよ。
本当にありがとう。たのむぞ岡安!」
さあ次だ
もうお昼を回ってしまっている。時間がない。
目の前のタスクを一つずつ片づける。
次は、車両と積み込み作業員の調整。
高輪は道路が狭く4t車を建物の横につけられない。
備蓄品倉庫は地下駐車場の奥なので、
平ボディーのトラック用意させて
ピストンで平和島へ移送。
平和島にて4t車に積み替えが必要。
ワゴン車で対応もできるが、積載量が少なすぎる
時間の短縮を考えたら現実的ではない。
作業員か。
高輪は社員応援もらえるが、
積み込み経験がない人ばかりだから、
うちの社員で積み込み経験のあるメンバー集めて
高輪に飛んでもらった方がいいだろう。
平和島積み替え作業も人が足りないだろうから、
平和島倉庫のメンバーに応援要請が必要だな。
よし。高輪10人、平和島10人応援要請を
各リーダーに連絡。
もちろん快諾。
ただ何人かやりたくないと言いてるメンバーがいるが・・と電話のトーンが低い。
気を使わせて申し訳ないです。
そのメンバーは外してくださいとお願い。
当時、私は会社の男性の中では最年少だったので、
私の指示に不快感を表す年配の方がいることは
実は折り込み済み。
その分人数増しでアサインをしていた。
念のため社長と上司に事後報告。
社員の応援要請したこと、
反対メンバーが出てしまっていたようだが、
みんなの士気が落ちるので、
あえて無視してくださいと状況をメール。
さて
いよいよ本題のルート設定
最短ルートはもちろん常磐道を北上していくルート。
福島の原発が爆発するとかしないとか。
移動中に爆発が起きれば、
自衛隊車両といえども現地にはたどり着けない。
東北道を北上させるか。
いや待て。
原発から東北道は50km以上離れているから大丈夫と
テレビでは言ってたが・・・
そもそも親友のおっちゃんに
死の灰の中を走らせるわけにはいかない。
それはありえない。
だとするとルートは残り一つ。
上信越から日本海に抜け
新潟から磐越で仙台へアクセスさせる!
かなりの遠回りだけどドライバーの安全は
確保できる。
これで決まりだ。
「おっちゃん!俺だけど。
高輪16時でOK。
積み込み作業員は10+アルファで社員キープ。
備蓄倉庫から横並びでバケツリレーで積み込む。
車両は2t平ボディ車3台出せる?
仮積みして平和島で4tに積み替え、
平和島も社員10名キープしてある。できる?
ルートは上信越で日本海抜けて新潟へ。
そこから磐越で仙台に向けて東北縦断!」
「偉そうだな。誰に向かって口きいてやがるんだ!」
電話口から罵声が聞こえてくる
「平車はもう用意してある。
元気な若い衆も集めてある。
おめぇのとこのへっぴり腰の社員じゃ
危なくて積み込みなんかさせられるかい。
ルートだってお前に言われる10年も前から
わかってるぜ!
でもよぉ。
いっちょ前の運送屋らしくなったじゃねえか。
俺が鍛えてやっただけのことはあるな」
絶好調だ。
これで心配はなくなった。
絶対にやり切れる。
「段取りはOKだね。じゃたのむね。
高輪で待ってるから!」
「おうよ!」
他の人がこの会話聞いたらどこの組の人かと思うよ。
こっちはふつうのサラリーマンなんだからさ(笑)
こうしちゃいられない。
大事な詰めをしなくてはならない。
万が一の話。
幸いにして同じグループ会社に
企業保険を扱ってるところがあって、
そこに友人がいた。
事情を説明。
万が一の損害賠償が発生した場合に
カバーできるのかを聞く。
会社として入っている保険で
車両も荷物もカバーされるとのこと。
ただしドライバーに何かあった場合、
相手が社長だけに相手の会社へのカバーの仕方が
難しいかもとのこと。
契約の問題ではなく、心情の問題。
ここはうちの社長に納得してもらうしかない・・
もう約束の時間は過ぎている
今までのことをレポートにまとめ、
ルート表、緊急連絡表、タイムスケジュール、
運行規定、保険の説明資料
すべてを携えて上司に連絡。
同行をお願いし社長室へ
「社長。岡安です。お待たせしました。
すべて準備できました」
「うむ。聞こう。」
席の前で腕を組み目を閉じて
私の説明をひとつひとつうなづきながら聞いている
ちゃんと伝わっているのだろうか・・
ひと通り説明を済ませる
沈黙
「よしわかった。安心した。
私も一緒に24時間待機していればいいのか?」
「いやいや、大丈夫です。
24時間待機は私のみですから。
ちゃんと休んでください。
〇〇さん(おっちゃんの名前)には、
東京を出発してから90分おきに私がコールします。
スケジュール、ルート、休憩、仮眠ポイントまで、
すべて合意済みです。
道路状況、降雪状況、休憩時間すべてを
こちらで把握します。
トラブル、イレギュラーがあればすぐに
お二人に報告しますので、その時はお願いします!」
「ご苦労さん。
ではこれから高輪だっけ?体動くかなぁ」
「いえ。社長はここで待機です。
平和島の積み替えが済んで車両が出発したら、
終了報告入れますので、
それまではしっかり残業しててください(笑)」
「いいぞ!だいぶ余裕が出てきたな」
人ってこんな極限の状態でも
笑うことができるんだな・・・
さあ
いざ高輪へ
・・・続きは次回
written by Kaz Okayasu
Written by Kaz Okayasu



