河野啓「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」を読了しました。
35歳でエベレストにおいて滑落死した登山家・栗城史多氏。その生前から彼を取材していたテレビディレクターである著者が、彼の実像に迫ったものです。
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-744479-7
「夢の共有」をキャッチコピーに、メディアやインターネットを活用して、共感と支持を広めた異色の登山家。
一方で、登山界を中心に、見栄えを求めて登山への真摯な姿勢や地道な努力を欠いたと批判する声もありました。
著者は、夢を掲げて独自の方法で登山に取り組む栗城氏に魅力を感じ、その後、誠意を欠くような姿勢に疑問を感じ始めます。
そして、エベレストでの滑落死につながっていく行動の不可解。
栗城氏の真意や虚実を見極めるべく、本書は綴られていきます。
本書を読む前、そして、その中盤までは、インフルエンサー登山家の裏の顔を暴くような趣旨だと思っていました。
しかし、そのような単純な話ではありませんでした。
浮かび上がる栗城氏の様々な側面、これらはそれぞれ大きく異なり、一見矛盾するようにも思えますが、そのいずれもが真実ともいえる。虚と実に二分できない、複雑で、混乱した姿。
その末に、著者は最後の真実を見出していきます。
人間が、様々な相反する部分を持ち、矛盾の中で生きている複雑な存在であることを改めて思い起こさせる本でした。
(追伸)
1月には、2回にわたって山梨県に出張。1回目は山中湖、2回目は甲府を訪れました。
昨年、河口湖を訪れた際は悪天候でしたが、今回は晴天で、山中湖に行く途中で見た富士山がとても綺麗でした。