『にゃんころがり新聞』 -18ページ目

『にゃんころがり新聞』

「にゃんころがりmagazine」https://nyankorogari.net/
に不具合が発生しました。修正するのに時間がかかるため、「にゃんころがり新聞」に一時的に記事をアップロードすることとしました。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

 

 

 

『水場の幽霊』

 

あみあきひこ/作

 

 

 

 

いかがでしたか?

オリジナルの4コママンガ作品『水場の幽霊』でした。

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あみあきひこ

 

ベリー・ベスト・オブ『にゃんころがり新聞』

~2016年の、各部門のベストおすすめ記事はこちらです

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writer/K・Kaz

 


今回、ご紹介したいのは、つい最近、映画館で観た邦画「お父さんと伊藤さん」です。
まずは、ストーリーの紹介をいたします。


STORY


34歳の彩は、書店でアルバイトをしながら暮らしています。
彩の彼氏は、給食センターでアルバイトをしている20歳年上のバツイチ男・伊藤さんです。
ふたりは、ちょっとした流れで付き合うことになります。
お互い、深く詮索しない性格が居心地がいいのか、ふたりは小さなアパートで同棲して、庭で家庭菜園をしたり、慎ましく暮らしていました。
そんなある日、彩のお父さんが、同居していた兄夫婦の家を追い出されます。
そして、何処にも行く当てのない彩のお父さんは、ボストンバッグと謎の小さな箱を持って、突然彩と伊藤さんの部屋に転がりこんできます。
年齢の割には、頼りなさげな伊藤さんの存在を知り、驚くお父さんでしたが、この家に住むといって、頑として譲りません。
彩は、しぶしぶ承諾します。
そして、三人の、ぎこちない共同生活が始まります。
が、お父さんが、いちいち彩と伊藤さんの生活のこまかいところに口をはさんできて、それまで平和だった暮らしにヒビがはいり、彩のイライラは募るばかり……

 

REVIEW


年老いた親の面倒を、誰がどのように見るかは、どこの家庭でもいつかは直面する問題です。
特に、元教師で口の達者なお父さんは扱いづらいです。
お父さん本人も、そこのところはよく分かっていて、成人してすっかり自分をナイガシロにするようになってしまった息子と娘の変化を、寂しく思っているようです。
そして、当てつけをしているようにも見えました。
  また、ホームセンターの電動ドリル売り場で、思いがけず大はしゃぎしたお父さんと伊藤さんとが気が合ってしまった事に驚いたり、旅行に連れてゆくと言いながら、お父さんが、周囲の都合を一切考えずに家を出てしまったり、彩はお父さんの事を何も分かっていなかったと後悔します。


しかし、わがままぶりに閉口し大喧嘩したりもします。年老いた親の面倒を誰がどのように見るかは何処の家庭でもいつかは直面する問題です。
他人事とは思えませんでした。
作品を鑑賞中、幾つか
「どんな意味なんだろう」
と思う事がありました。
しかし結局は最後まで謎解きされなかったものもあり、ちょっとモヤモヤする部分もありました。
なので少し厳しめにつけて、作品の評価は、星3,5とさせて頂きます。

 

お正月に見た映画は、『お父さんと伊藤さん』と、イタリア映画「人間の値打ち」の2本でしたが、お正月だからか、奇しくもどちらも家族や絆について考えさせられる2作品でした。
まだ劇場で公開している所もありますのでDVD化などはまだ先だと思いますが、どちらも見てもらいたいです。

 

 

 

 

K・Kazのこの映画の評価☆☆☆★(3,5)

 

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4,5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆(星3) 69点~82点)

 

 


監督/タナダ ユキ
出演者/上野 樹里
リリー・フランキーほか
公開/2016年10月 
製作国/日本
原作/中澤日菜子の小説「お父さんと伊藤さん」(『第8回小説現代長編新人賞』受賞作)

 

 

 

 

 

 

writer/K・Kaz

 

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   捕縛されるまで

 

 

文:にゃんく
絵:AyamiAmyIchino



 
「旅に出るよ」
 そういう僕に、厳格な父と母は、もちろん猛反対した。
「コウキ、どうして此処にいては駄目なの?」母は懇願するように言った。「此処には食べ物もいくらだってあるし、第一、安全だわ」
 そんなことは僕にもわかっていた。僕はあえて危険を冒すことを選んだのだから。赫かしい果実を手に入れるためには、ときには人生でおおきな別れみちをえらぶことが必要なときだってあるはずだ。
「お前は<死に神>の怖ろしさがわかっていない」
 と父は言った。
 そう言われると反論はできない。何しろ僕はまだ死に神を見たことすらないのだ。
「お前の行為は一族を危険にさらす。お前がのこのこ逃げ帰って来ることで、この住まいも死に神の知るところとなる。やつらが我々のことを生かしておかないことは承知のとおりだ。どうしても家を出ると言うのなら、お前は勘当だ。二度と此処へは戻って来てはならない。そのくらいの覚悟はできているのだろうな?」

 父は目をほそめて僕を睨んだ。僕はいつもの癖で身をちぢこまらせてしまう。父と母は僕のこころに枷をつけ、僕をこの場所に縛りつけようとしている。僕はほんらい自由であるはずなのに。僕は胸をはり、強いまなざしで父を睨みかえす。父がすこし怯んだような顔をする。
「お兄ちゃん、行かないで」

 未来の花嫁となる筈だった妹が言った。この村では兄と妹が夫婦になることは珍しいことではない。現に父と母も、元をただせばいとこ同士だった。

 瞳を潤ませた妹が、僕の頬に口づけしようとした。
 僕はそれを振りほどいた。
 打ちのめされたように、いつまでも僕を見おくる妹の姿があった。
 僕と故郷とのお別れは、そんなふうに塩っぱいものにおわった。


 
  


 今は亡き僕のおじいさんの話。
 宇宙から飛来したエイリアンであるのか、とつぜん変異で派生した生命体であるのか、今となってはやつらの氏素性は皆目わからないけれど、とにかく地球上にとつじょ現れた凶暴極まりない死に神のせいで、僕らの民族の苦難の歴史がはじまった。

 死に神のために僕たちはすべてを奪われた。住む場所も、仕事も、家族も。光ですら。
 死に神に殺された仲間は数しれなかった。

 僕たちもただ手をこまねいていたわけではない。いくたびもレジスタンス組織が結成された。けれど、そのたびに組織は壊滅の憂き目に遭った。まるで見せしめのように、仲間はひとりのこらず残虐きわまりない殺され方をした。僕たちの命がけのこうげきも、すべてが徒労に帰した。誰の目にも死に神は不死身でその力は絶大に見えた。

 地球上から僕たちをひとり残らず抹殺すること。それが死に神の統一された方針らしかった。
 僕たちは散り散りになり、辺境に押しやられ、息をひそめて暮らすようになった。つらい時代だった。なかにはどうせ勝ち目はないさとあきらめる者さえではじめた。家族をころされ、苦しがるすがたを周囲に見せつけるようにすこしずつ嬲り殺されるのを見れば、誰だって嫌になるだろう。けれど、皆が皆あきらめたわけではなかった。

「この戦いは、いずれわしらが勝つ」とおじいさんも言った。「死に神の横暴を神様が許すはずがない。いずれ天罰はやつらの頭上にくだるじゃろう。それまで耐え忍ばなくてはならない。わかったな、コウキ」

 僕が辿り着いたのは、死に神の巨大な要塞だった。
 噂には聞いていたけれど、そのグロテスクなほどの巨大さ、この世のものとは思えない悪臭、ほとんど見る者に吐き気を催させるほどの、無意味で無駄のかたまりのような外観には、腹を抱えて笑い出さずにはいられないほどだった。
 僕は物見遊山きぶんで、ぷらぷらと要塞の周囲をめぐっていたのであるが、そのような僕の姿を見咎めて、誰かが声をかけてきた。
「こんなところで、何をしているんだ? 死に神に見つかったらひとたまりもないぞ」
 僕はそいつに、自分が今日村を出てきたばかりであることを告げた。
「悪いことは言わない」とそいつは僕に言った。「ここは死に神を討伐するレジスタンス組織のアジトしかない。命を落とすまえに、ぼうやは帰った方がいい」
 ぼうやという言葉に、むくむくと成長した僕の自我が敏感に反応した。
「自分もそのレジスタンス運動に身を投じたいのです。仲間に入れてください」
 と僕はほとんど反射的に口走っていた。
 怖い物見たさの興味心もあり、他に行く当てのないさすらいの身分がそんな台詞を口走らせたのかもしれない。そいつは僕の言葉を耳にすると、しばらく僕の姿を上から下まで繰りかえし点検していたけれど、やがて厳しさを内に秘めた声で、「ついて来なさい」とのたまった。
 糞便の臭いが充満する戸の脇をぬけ、そいつと僕は身をかがめ、要塞の通路を這って行った。
「俺のことはサスケと呼んでくれ」
 とそいつは僕を振りかえりながら言った。
「……サスケ」
 と僕は口に出して言ってみた。
「君は?」
 とサスケが訊ねた。僕は息をしずかに吸ったあと、
「……コウキ」
 と言って自分の名を彼にあかした。
 サスケと僕は通路を右に曲がったり左に曲がったりして、最終的に、ある物置部屋のような薄暗い場所に辿り着いた。
 そこでは何人かが車座になって会議をしている最中だった。年長者もいるし、若いのもいるし、僅かながら女性もいた。しばらくすると、僕は簡単な自己紹介をするよう申し向けられた。僕は周囲をぐるっと見まわしながら、
「今日村を出て来たばかりです。名前はコウキと言います……」
 と言った。すると、
「仲間はひとりでも多い方がいい」
 といちばん上座を占めている、褐色の逞しい軀つきをした男性が言った。
 彼がこのレジスタンス組織の隊長だよ、とサスケが耳うちしてくれた。
「だが、死に神と戦うには、団結が重要だ。自分勝手な行動は此処では厳禁だ。コウキ君。あなたにそれが守れるかね?」
 隊長が僕に尋ねた。僕は、「守れます」と力強くそれに答えた。
 隊長は、率先して拍手をしながら、皆にも拍手をうながしつつ、僕の仲間入りを祝福してくれた。
 ときどき物置部屋の戸のむこうから、「ヒヒヒヒ」という死に神特有の薄気味悪い笑い声と、大鎌でも研ぐようなシャッシャッシャという不吉な音が響いてきて、隊長が皆に「シッ」と警告して静かにさせ、死に神の声が通り過ぎるのをやり過ごした。僕ははじめて死に神の存在を間近に感じて、ひどく緊張し昂奮した。
 「死に神にも弱点はある」と隊長は言った。「やつらは闇を恐れている。だから我々は、今は力を温存することだ。外が闇におおわれ、やつらが尻尾をまいて震えているとき、我々は行動を開始する。総攻撃は、明日の夜0時だ。やつらに奇襲攻撃を仕かける」
 会議は解散となった。
 皆、それぞれ思い思いの行動に移っている。僕は何をしたらいいのかわからず、ただ意味もなくウロウロし、壁に頭をぶつけたりした。
「見かけない方ね。どちらからいらっしゃったの?」
 僕に話しかけてくるおんながいた。異国の出自を思わせる、美しい彫りの深い顔だちで、うっすら微笑んでいる。何時間でも見つめていたいほどの可憐さだった。
「北にある、朽ち果てた村からです」と僕は言った。「あなたは……?」
「わたしの名は、レン」
 召し上がる? とレンは僕に良い香りのするパンを差し出した。パンなんて食べるのは何年振りだろう? もちろん、丸々ひとつではない。幾つかに切断された一部分だったが。僕はありがたくそれを頂くことにした。
「あなたはどうしてこの運動に身を投じる決心をしたの?」
 レンにそう尋ねられ、さすがに正直に、まだ一度も死に神を見たことがないです、という言葉は口にできなかった。
「死に神は僕たちの敵です」と僕は裏返った声で言った。「死に神と僕たちは、共存共栄はありえない仲だと思います。このような組織に加入するのは、当然の義務だと考えます」
 回らぬ舌でそのように答える僕の様子に、レンはおどろいたような顔つきをしたあと、目尻をさげて微笑んだ。
 誰かがレンを呼んだ。
 レンは、「ごめん、じゃあまたね」と言って、手をふって僕から離れて行った。
 僕の脳裏には、レンの微笑みの残像がくっきりと焼きついていた。

 僕はその日、はじめて見張りについた。見張りというのは、交代で死に神の攻撃に備え目を光らせ警戒をする役目のことである。
 ぼくは二時間の見張り任務のあいだ、戸のむこうから死に神が攻めよせて来ないかどうか全神経を尖らせていた。
 むかしおじいさんから聞いた、死に神による残酷な殺しのやり口について僕は思いをめぐらせていた。軀をぐしゃぐしゃに踏み潰されたり、猛毒の液体のなかにしずめられたり。飢えた僕たちを食糧をエサにおびきだし生け捕りにし、体力を消耗しすこしずつ死んでいくすがたを鑑賞したり……。死に神がやって来るかもしれない謂わば最前線の立場の見張りに就いていると、否が応でも僕は自分がそのようなやり方で殺されていくシーンのひとつひとつについて想像せずにはいられなかった。
 そして僕のあとにその任務につく交代の者に肩を叩かれたとき、僕はそのような悪夢から目を醒まし、永遠にも感じられる、いつ終わるともしれない二時間というながい時間がようやく過ぎ去ったことを知ったのだ。ほっとすると同時に、危険な任務をやりおえたそのときの晴れやかな達成感は、ことばに言いあらわすことができないほど爽やかなものだった。
 こんどは僕自身の軀を休めるため、すこしは眠らなくてはならなかったけれど、皆が軀を横たえている寝床のいりぐちにさしかかると、僕はくるりと踵をかえし、見張りの者がいるところまでひきかえし、その周辺をうろつき、見張りの者に睨まれては、寝床に向かい、また見張りのほうまで引き返してくるという意味のないことを繰り返していた。要するに僕はなんだか目が冴えて眠れそうになかったのだ。
 そんなところへ、ばったりレンと顔をあわせた。
「こんな時間に何をしてるの?」
 とレンは驚いたように尋ねた。
「何だか、眠れないんです」
 と僕がしどろもどろに答えると、
「こちらで一緒に話しません?」
 とレンが言うので、僕たちは月のあかりも星屑のひかりも差し込まない、殺風景な淀んだ灰色の壁に囲まれた場所で、肩を並べて坐った。僕たちは、しばらく無言だった。此処にこうして坐っていると、自分が非現実の世界にいるかのような不思議な気持ちがした。
「……わたしは、この場所で生まれたの」
 とレンは静かに話しはじめた。
「父も母も、レジスタンス組織の一員だったの。両親とも、死に神に殺されたわ。両親だけじゃないわ。兄も妹も殺された。死に神は、わたしたちを嘲笑いながら、ひとりずつゆっくりと、見せしめのように殺していったわ」
 僕はおもわず眉根にちからをよせた。
「それは酷い」と僕は言った。「――許せないな」
 彼女のこえが途絶えたので、さりげなく横顔を仰ぐと、意外にも彼女は閑かに声もなく、肩を震わせ泣いていた。僕は一瞬逃げだしたいような気持ちに襲われたけれど、それもいっときのことで、次の瞬間、僕は自分の動作ではないように勝手にからだが動きだし、ごく自然な動きで彼女の肩を抱き寄せていた。
「大丈夫だよ」と僕は彼女に囁いた。「――かならず僕がかたきを取ってみせるから」
 彼女の悲しい涙を僕は自分の身に起こった出来事のように感じ、義憤にかられていた。
「ありがとう」
 レンは涙に濡れながらも、無理に笑顔を作ろうとしている様子だった。
「もう寝た方がいいわ。今夜の行動に備えて」
 レンは気丈にそう言うと、僕にキスをした。涙の跡をのこした彼女は、寝床の方向に消えるまえ、いちど振り返り、僕に手をふった。そのうしろ姿を、僕は手を振りかえすこともせず、ただ呆然とうつくしい幻のように見つめていた。妹以外の他人とのはじめてのキスは、甘酸っぱさの余韻をいつまでもあとに残した。



 


 アジトが死に神の奇襲をうけたのは、それから一時間も経たない頃だった。
 あまりにも不意打ちすぎた。
 隊長をはじめ、組織の者たちは、攻撃のことばかり考えて、自分たちの身を守ることをなおざりにしていたと言わざるをえない。
 死に神に先手を衝かれたのだ。
 彼方此方に、隊員たちの遺骸が転がっていた。ある者は軀を真っ二つにされ、ある者はぐちゃぐちゃに潰され軀のなかのものが無惨に飛びちっていた。ぼくは同志のそのような凄惨な姿に釘づけとなり、よろめいた。
 生存者の人員すら把握できない状態のまま、僕は死者を掻きわけ、レンの姿を捜しもとめていた。
「レ―ン!」
 この亡骸もレンではない。この遺骸も。ほっとすると同時に、妙な胸騒ぎが込みあげてくる。
 そのとき上方から声が降ってきた。僕は死に神がまだ此処にいるのかと思い身を固くした。
「おれは柱によじ登ったおかげで、かろうじて助かった」
 見あげると、声の主はサスケだった。さすがだと思った。抜群の身体能力に僕は感心した。長くレジスタンスで活動しているだけのことはある。わずかな希望が湧いてきた。ふかく息をすいこみ、レンを見かけなかったかと僕はありったけの声で柱の上方にしがみついているサスケに訊ねた。サスケは首をふった。
「レンは連れて行かれた!」とサスケは叫んだ。「死に神のアジトに」
 レンが連れ去られるところを、サスケが目撃していたのだ。事態は最悪の方向へとすすんでいるようだった。
「アジトはどっちだ?」
 と僕は震える声でサスケに尋ねた。サスケはゆっくりと左手を伸ばし、その方向を指し示した。
「まさか、お前、レンを取りもどそうなんて考えているんじゃないだろうな?!」
 とサスケの声がきびしいスコールのように突きささってきた。「我々の組織はもう終わりなんだ。隊長も殺された今となっては再起不可能だ。とりあえず今はこの要塞から脱出し身を潜めるんだ。そして力を蓄えることだ。我々が生き残る方法は、それしか残されていない」
「レンが殺されるのを、黙って見ちゃいられないよ!」
 僕はそれだけ言うと、「待て、早まるな」とサスケが呼び止めようとするのもかまわず、無我夢中で駆けだしていた。レンを殺させてはいけない。僕の頭の中にはそのことだけしかなかった。
 迷路のような通路を突きすすんだ。埃だらけになった軀をはらう暇もなかった。
 丘のように現れた小部屋の屋根を攀じのぼった。身をかがめ、不安定に揺れる足場を慎重にすすむ。
 死に神の囁きがごく間ぢかで聞こえるようになった。僕が足取りをゆるめた矢さきだった。下方に軀ひとつ通れるほどの小窓がひらいている。その暗闇のしたに、きらりと光るものが見えた。我が目をうたがった。
「レン!」
 僕の呼びかけに気づき、彼女はすこし蠢いた。まだ生きている! 彼女は狭い小部屋の中で囚われの身となっていた。
「来ちゃ、駄目!」彼女は涙声で訴えた。「逃げて! あなたまで捕まってしまうわ!」
 僕は、彼女に手を差し伸べていた。この手に摑まれ。
摑まるんだ!
 けれど、彼女は生きる希望を失ったかのように、這いつくばったままなのだ。手を伸ばしさえすれば、僕がそこから引き上げてあげられるのに。どうしてその手を伸ばさないのか。
 とつぜん強い光線の照射を軀ぜんたいに感じた。まずい。死に神に見つかったかもしれない。急がねばならない。
「君も逃げるんだ!」僕は叫んだ。「さあ、早くこの手を摑んで!」
 しかし彼女は触角を震わせているだけだった。僕は窓のなかから軀を滑らせ、彼女と同じ地平に降りたった。
 その時になり、ようやく異変に気づいた。囚われていたのは、レンだけではなかった。しかも僕の肢は地面に張りついて、それ以上一歩も身動きできなくなっていた。
 急に狭い小部屋が空中に持ちあがり、世界がぷらんぷらんと揺すぶられた。死に神の血ばしった巨大なめだまが、窓からこちらのなかを覗いている。「このゴキブリ、凄くおっきいわよ、お父さん」
「気持ち悪いから、早くゴミ箱に棄ててしまいなさい」
 兇暴きわまりない死に神のこえがごく直近で聞こえる。
 滅多に使わない茶色の羽を開いて飛ぼうとしたが、時すでに遅かったようだ。
 頭と脚が逆さまになり、落下した。

 ときどき何かが投げこまれる音がし、どんどん空間が窮屈になってゆく。死に神たちは何を投げこんでくるのかわからないが、暗闇のなかは、とてつもなく、臭かった。
 僕は触覚を動かし、ときどきレンの黒びかりする膚に触れてみた。レンの軀はてらてらと湿り気を帯びていた。
「レン」
 僕の呼びかけにも、レンはしまいに反応を示さなくなった。そのことが、僕を無性に哀しい気持ちにさせた。

 果てしのない暗闇だ。
 僕は壁を這いまわりたくてウズウズしはじめている。それなのに、ギザギザの足が粘着性のシートにへばりついて身動きがとれないのだ。



 
  
  



 
(了)

○執筆者紹介
今回『捕縛されるまで』の挿絵を担当していただいたのは、AyamiAmyIchinoさんです。
AyamiAmyIchinoさんは、英語と日本語両方で、詩と文章を書いたり、絵を描いたりされているアーティストです。
ココナラで、AyamiAmyIchinoさんに絵の注文をすることができます。↓

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どすこい!にゃんくぅと私

 

文:nekonooo56

絵:にゃん子

 

家にはハチワレの「にゃんくぅ」という オス猫がいます。
おとなしく、ちょっとおでぶな(汗)にゃんくぅ。
もっちりと、いつも私に乗っかっている甘えん坊なにゃくぅです。
寝る時はいつも私の腕に、足に乗っかかり、一緒に寝るんだけど起きたら手足がしびれています(汗)
そんな事も、もう慣れて逆にそうして側に居ないと落ち着いて寝れない時もあって、そんな時は強制的に抱っこします。
もちもちで、ふわふわ・・・
喉のゴロゴロ音、たまにいびきもかくんですが、それも落ち着くんです。
そんなにゃんくぅは私の大切なパートナーなのです。
「にゃんくぅ、にぼしだよ、おいで!」
ドタドタドタ・・・・
「ドタドタって、あんたほんとに猫なの?」
ニャグッ。カミカミカミ・・・
大好物のにぼしを食べている時が唯一の野生感・・・
後はのったり、無防備な格好で寝ています。
猫じゃらしで誘っても
ドタドタドタ・・・・ゴロリって寝転び手でちょいちょいと遊ぶだけ・・・本当にのんびり、おっとりしたにゃんくぅなのです。

そんな、にゃんくぅとの出会いは、たまたま通りすがった獣医の表に張っていた「里親募集」の張り紙で、元々猫好きだった私はその張り紙を見たんです。
「安楽死をと持ち込まれた仔猫たちがいます」
と書いてありました。
「えっ?どういう事?・・・」と、丁度その時に院長のお母さんであるお婆ちゃんが現われて、
「ほんに、可愛そうな子たちだよ、持ってきた人は動物が嫌いだったのか、自分の家の空き部屋に、どこかの野良猫が勝手に産んでいったんだと、それで親猫も現われず、仔猫も弱ってる様だし、ここで死なれても困るからといって、安楽死でもなんでもいいからと、ここに置いていったんだよ」
私は、なんて酷い、可愛そうな話だと思いました。
そして、つい聞いてしまったのです。
「その仔猫たちは元気になりましたか?里親さん決まりそうですか?」
と・・・すると、
「うんうん、3匹だったんだけど元気になって、2匹は引き取ってくれたよ」
「あと、1匹ですか、早くみつかるといいですね」
すると、お婆ちゃんは
「人の出会いも運命、ペットとの出会いも運命、お姉ちゃん、どうだい?」
「えっ、私は・・・」
「まぁ、一度見ていきなさい」
と、なかば強引に院内に手を引かれ、小さなダンボールの中で、ミャーミャーと鳴く仔猫を見せられました。
「この子は3匹の中で、1番やせっぽちだったせいか、残ってしまって、なかなか里親が見つからずにいるんだよ」
と、私の顔を見るお婆ちゃん・・・
それにくわえて、私に「ここから出して」と言っているように私に向かって鳴く仔猫・・・

運命かぁ・・・

そして、口が勝手に
「もらっていきます!」
と、言ってしまったのです。
「ほーら、きっと今日はって、言っただろう」
と、お婆ちゃんは嬉しそうに仔猫を撫でた。
私は言っておきながら、どうしよう・・・どうしようと、てんぱっていました。
だって、猫は好きだけど、飼ったこともなかったし、こんな小さな仔猫を・・・育てられるのかな・・・と不安でいっぱいになっていました。
すると、お婆ちゃんは私に仔猫が入った箱を渡し
「大丈夫、大丈夫、私が3匹を見た時、1番にこの子には幸運があると思ったんだから」
そういって、大きな紙袋に仔猫用のミルク、
哺乳瓶、離乳食、などなど入れて私に持たせた。
「箱の中のペットシートに1回、おしっこしているから、それを猫トイレにひいて、
その上に猫砂をのせてやれば、トイレもすぐに憶えるよ」
って・・・
「えっと、この子は何ヶ月なんですか?」
「4週間かな、まだミルクだよ」
「あっ。はい」
こんな具合に私はにゃんくぅと出会ったのでした。
それから私はすぐに仔猫の育て方、ミルクのやりかた、などスマフォ片手に奮闘しました。
その努力のかいもあって、にゃんくぅはすくすく・・・すくと育ち・・・すぎちゃったかなと、今のにゃんくぅを見て思うのです。

それは、私がとにかく食べさせないとと、 食べると褒め、食べると褒めてきたからかもしれません。
今では逆に嬉しいと、餌を食べるという癖になってしまいました(汗)
たとえば
「ただいま、にゃんくぅ。なでなで・・・」
と、すると、まだ私は撫でたいのに、にゃんくぅは餌に行き「カリカリカリ・・・」と、喜びを食べることで表現する子になっているのです。そして、このもちもちボディーに(汗)

そんな、ちょっと変わったにゃんくぅですが、これまで7年、私を支えてくれました。
7年の間には失恋があって、にゃんくぅのお腹に顔をうずめて泣いたり、風邪で高熱を出して動けない時にも、いつもどおりに乗っかってきたりして、もらって育てたのは私だけど、にゃんくぅには沢山、支えてもらたり、慰めになったり、癒しになったりと、私のほうが助けてもらって来た感じです。
だから、相棒でありパートナーであり家族なのです。
「にゃんくぅ、にぼしだよ、おいで!」
ドタドタドタ・・・・

おわり。

 

 

nekonooo56

 

冒頭の「どすこい」猫のイラストを示して、にゃんくが何か書いてくださいとお願いしたところ、すぐに上記のストーリーを書いていただけました。ぼくには書けない種類の作品だと思いました。にゃん子さんも高評価。書く才能のある方だと思います。nekonooo56さんに、ココナラで、物語や記事の作成のご依頼をすることができます。↓

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みゅーすとれいらむ2の、本紙第2作めのショートストーリーです
 

 

 

 

 

 

悪魔

 

 


文/みゅーすとれいらむ2

 

 

 

 

 

幸せになりたかった。
だから悪魔と契約した。
初子(ういご)と交換の幸せ。
その日から、私の人生は一変した。
すらりとしたプロポーション。
食べても全然太らないからだ。
私は超人気のモデルになっていた。
個性的と称される容貌。
ほんとは美貌でも何でもないのに、魔法の力だろう、私は美しいとほめそやされ続けている。
どんなパーティーも、どんな美食も私を満たさない。
評価されているのに、心は空っぽだ。
いつもつまらなそうだね。
あるパーティーで声をかけてきたのはイケメンの御曹司。
楽しそうだね、幸せそうだねと言われなれていた私は戸惑い、そいつに瞬時に恋した。

 

玉の輿。
かもしれないけど、私はひたすら不安だった。
心を込めて料理しても、家政婦さんたち指揮して、屋敷じゅうきれいにしてみても、本当の自分じゃない気分は拭えなくて。

そうこうするうちに私妊娠した。
そして思い出した。
初子をあげるって。
悪魔に…

 

悪魔はいる?
悪魔はいない?
私の成功は実力?
魔力?
恋は?
結婚は?

 

この子どもたちは……………

 


たち。

 

そうなのだ。
子どもは双子だった。
最初から一人だったと思えばねえ。
私は気持ちが楽になった。
一人は死産。
しょうがない。

 

極力気楽に考えた。

 

けど、いきんで、いきんで、最後には、お医者が私の上に乗ってまでして押し出された二人は、かわいくてかわいくて、どっちか一人なんて考えられない。
どうしよう。
どうしよう。
逃げよう。
子供たちを抱いて、病院を抜け出した私は、折しも見舞いにくるところだった夫、御曹司様にばったり会ってしまった。

 

どこ行くの?

 

問われた私はその場に崩れ落ちた。

 

夫婦の部屋。
真新しいベビーベッド。
すやすやと二つの命。
夫は私にホットミルクを作ってくれた。
私は夫に秘密を打ち明けた。
悪魔との契約。
成功と代償。
どちらか一人を渡さなきゃだけど出来ない。
逃げたい。
あなたも一緒に逃げて。
親子四人なら、きっとどこででも暮らせる…
と言いかけたとき、私の世界はぐにゃりと曲がった。
歪んだ夫が言う。
約束を守るだけでよかったのに。
そしたらずっと一緒にいられたのに。

 

ああ。
夫こそが。
そうだったのか…

 

 

 

 

 

はっとする。
鏡の中には見映えのしない自分。
誰も見返ってくれない自分。
でも都市伝説で聞いたのだ。
13枚目の合わせ鏡の中にかれがいる。
みつけられたら、どんな願いもかなえてくれる。
ちょっとした、ほんとにちょっとした代償で…

 

鏡の角度を調整する。
13枚目の鏡の中にかれがいる。
知ってるヒトみたいな気がするのはなぜだろう。
続ける?
やめる?
いま、かれがこっちを正視する。
少し悲しげにほほえんで、こちらへ出てくる。
今度はどうかな?
そんな囁きが聞こえた気がしたけど、それはたぶん空耳。
私は幸せになりたい。
幸せになりたいだけなの。

 

 

(おしまい)

 

 

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wtiter/K・Kaz

 

今回紹介したい映画は、邦画『箱入り息子の恋』です。
以下、ストーリーのご紹介をします。

 

 

 

 

STORY


市役所に務める35歳の健太郎はこれまで女性と付き合った経験もなく、いまだに実家で両親と暮らしています。
両親も息子を気遣い、親同士が子どもに代わって相手と対面する「代理見合い」への出席を決めます。
そこで会社を経営する今井夫妻と知り合った健太郎の両親は、目が不自由な彼らの娘奈穂子のことを知り、お見合いをしてみることになります。
実はその数日前、健太郎は雨宿りをしている女性に傘を貸してあげたのですが、それが奈穂美でした。
奈穂美の父は、頼りない印象の健太郎を、金輪際会う必要のない覇気のない男と切り捨ててしまいますが、母親は健太郎に好意を抱いている菜穂子の気持ちを汲み取って、こっそり健太郎に会いに市役所に向かうのでした。

 

REVIEW
 
 盲目であるために、両親の庇護のもとに暮らしてきた菜穂子と、結婚する気配もなく両親と暮らす健太郎は、親に依存している点で、似た者同士だったように思います。
それがお互いに心惹かれる相手に出会い、今まで考えたことの無かった将来を夢見るようになります。
それは、両親の元から二人揃って羽ばたこうとする姿のように思えました。
また、恋愛に慣れていない二人はデートをしていてもぎこちなく、しかしその真っすぐさが微笑ましく、笑える個所もふんだんに盛り込まれていました。
主演の健太郎は2016年に話題になった星野源、菜穂子は夏帆と実力派の二人が演じており、初々しくも自分の気持ちにまっすぐになろうとして、それまでの殻を破ろうとする演技も良かったです。

 本作品の評価は星4つとさせて頂きます。

 

K・Kazのこの映画の評価4


 監督/ 市井 昌秀
 公開日/2013年
出演者/星野源
夏帆
 平泉 成ほか

 

 

他にも、おすすめの映画や、おもしろい映画、泣ける映画や、恋の映画など、続々更新予定です。過去記事はこちら↓

 

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writer/にゃんく

 

この店は、2回めの利用になります。
今回は、前回とは違うケーキにしました。
まずは、にゃん子さんの頼んだ、
 「ベリーのガトーショコラ」510円
のご紹介です。

 


にゃん子さんの感想。
「おいしい!
クリスマスを2日過ぎてから食べました。
クリスマス当日は、注文が多くて、もしや冷凍ケーキなんてあるかも?! と思ったので。
クリスマス過ぎてたほうが、種類もたくさん揃っていますし。
そう考えて、食べたのは、12月27日でした。
今回食べた<ベリーのガトーショコラ>は、ガトーショコラの生地がしっとりしてて、とてもおいしかったです。
上に乗っているフルーツの甘酸っぱさと、ガトーショコラのチョコの味がマッチしてました。
けれど、ここのお店で注文するのは、これからはタルトの方がいいかな? と思いました。
なので、評価は、星4にします。」

 

 

にゃん子の「ベリーのガトーショコラ」の評価

(本ブログでの、レーティング評価の定義)

☆☆☆☆☆(星5) 93点~100点
☆☆☆☆★(星4,5) 92点
☆☆☆☆(星4) 83点~91点
☆☆☆(星3) 69点~82点)

 

 

 

お次は、にゃんくの食べた、
「ホワイトレアチーズモンブラン」630円
です。

 

 

 

にゃんくの感想。
 「1ピースとしては、サイズがおっきくて、食べごたえがあります。
それほど甘くなくて、どんどん食べれてしまいます。

 

 

にゃんくの「ホワイトレアチーズモンブラン」の評価

 

他にも、おすすめラーメン情報、スイーツ情報など、参考になる口コミ情報を続々更新予定です。

過去の記事は↓こちらです。

 

 

 

 

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ここまでのストーリーを読んでいない方は、こちらからお読みください。↓

命泣組曲①~

女子大生・虹乃は、ママから頼まれ、一週間、長生病院に被験者として入院することになった。
ところが退院していい頃を過ぎても、病院から彼女にお声はかからない。
虹乃がママと連絡をとりたいと看護婦に申し出ても、
「あなたにママはいません」
と言われたり、虹乃のことをキチ子お母様と呼ぶ謎の中年女・フチ子が現れたり、孫の赤鬼ちゃん、青鬼ちゃんが出現したり、セックス狂いの先生と看護婦が登場したりなど、病院内はなんだかおかしな雰囲気につつまれはじめる。
……追いつめられた虹乃が、病院を脱出しようとするとき目にしたものとは?!

読者を未体験ゾーンへとつきおとす、爆笑のノン・ストップ・エンタテイメント!

 

 

 

命泣組曲⑨

 

 

 

文:にゃんく

 

 

 

 

当たり前と言われるかもしれないけれど、夢のなかの出来事を、夢人はいっさい覚えていなかった。というか、知らなかった。彼にそのことを話しても、「夢だったんだろ?」の一言で終わってしまう。
ママがあたしにあの病院の被験者として入院するよう頼んできたことは事実だったし、手術前にベッドで寝ていた確実な記憶の手触りが、あたしの側に残っていることも真実であることに間違いなかった。けれど、いくら頭をひねって記憶を絞りだしてみても、何処から何処までが現実で夢なのか、その区別がいつまで経っても判然としないのだった。
玄関の扉をくぐると、あの白の警備員が見張っていて、再びあたしを閉じ込めようとしてくるのではないかと内心ちょっと怖いところもあったけれど、胸のなかのわだかまりが解けそうになかったので、数日後の週末に、思いきってあたしは夢人と連れ立って、あの病院へ足を運んでみた。
気持ちのよい快晴で、絶好のおでかけ日和だった。
あたしと夢人は電車を乗り継ぎ、地下鉄の駅から徒歩五分、都心の一等地に屹立しているあの病院まで手を繋いで歩いて行った。病院の前まで来ると、あたしたちはハタと足をとめた。張りめぐらされた工事中の白い幔幕が、風にバタバタと音を立てていた。
あたしは夢人の手を離すと、幕の裾をくぐって中を覗いてみた。驚いたことにと言うべきなのか、半分予期していたとおりというべきなのか、あの病院は跡形もなく消滅していて、その跡地には、雑草がところどころはびこった荒れ果てた土地に、すみっこに土管がふたつ放置され、小太りの白い猫と黒の猫が寝転がってじゃれ合っているばかりだった。
たしかに十日ほど前には存在した病院が、砂上の楼閣のように忽然と消えてしまっていることに、あたしは何度も首をひねった。夢人のところに戻ってくると、彼は幕に張り出された病院からのお知らせを、腕組みしながら眺めていた。
〈当総合病院は理事長の急逝と経営難により、取り壊されることとなりました。治療中の患者様各位には、大変ご迷惑をおかけ致しますが、何卒ご理解のほど宜しくお願い致します〉
「理事長が亡くなったから、潰れたんだろ」
と夢人は簡単に言った。あたしは夢人の腕に自分の腕をからませた。
ふとあたりを見回すと、病院の跡地の前に、ダンボールハウスがあり、正座して物乞いしている女の姿があった。あたしは夢人と一緒に、女に近づいて行った。女はぼろ切れのなかに赤ん坊を抱いていて、その痩せ細った赤ん坊が、
「デュフ、デュフフフ」
と言ってあたしを指差した。それはまぎれもない赤鬼ちゃんだった。
「どうしたの? おーよしよしよし」
と栗色毛の女は赤鬼ちゃんを揺すりながら言った。
女の隣にいる青鬼ちゃんが、あたしを指さしながら、
「ねえ、お母ちゃん、お婆ちゃんが来たよ、お婆ちゃんに頼んで、食べ物もらおうよ、ぼく、お腹減っちゃったよ」
と言った。女は声をひそめ、
「若い女の人に、お婆ちゃんなんて、言わないの」
と青鬼ちゃんの手をぶって、叱った。
あたしは彼らのやり取りをしばらく見守っていた。そしてお財布のなかから千円札を差しだし、銀色のボウルのなかに入れた。女があたしを見あげた。
「ごめんなさい。手持ちはこれだけしかないの、フチ子さん」
女は目を細めて、怪訝そうな顔つきをしている。
「どうして私の名前を」
「……行きましょ」
あたしは夢人の手を引いて、元来た道を歩いて行く。
通りには、風に散る桜の花びらが舞っている。
「デュフ、デュフ、デュフフ」
姿が見えなくなっても、此方を指差す赤鬼ちゃんの意味不明の呟き声が、いつまでもあたしたちを追ってくるような気がして、落ち着かなかった。

 

 (おしまい)

 

 

 

 

ベリー・ベスト・オブ『にゃんころがり新聞』

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恒例となりました。
2016年12月中の、「にゃんころがり新聞」の、PV数順のランキング発表をおこないます!

ランキング上位に入賞する記事の傾向に変化があらわれているようです。
今回は、10位から発表をおこなっていきますよ♪

 

 

10位

Web上の“こっそり日記”サービスが評判~口コミで広がる「SONOWATA」

 

writer/にゃんく

 

9位

『海賊とよばれた男』CINEMA REVIEW~「日本に勇気を与えた男の奇跡の実話」

 

writer/K・Kaz

 

 
 

 

 

8位

過去の出来事を書きかえられる、魔法の万年筆。~バラ色の未来を、ご堪能ください。

 

(イラスト/gotogoal

文/にゃんく)

 

7位

『階段』(みゅーすとれいらむ2、本紙初登場!)

 

文/みゅーすとれいらむ2

イラスト/よと。

 

 

 

 

 

 

 

6位

『ローグ・ワン』CINEMA REVIEW~「希望は、死なないーー」

 

writer/K・Kaz

 

 
 
 

 

5位

口コミで評判の渋谷の森クリニックのご紹介

 

writer/にゃんく

 

4位

ショートストーリー『セナグラ』~山城 窓 傑作作品集~

 

(writer/山城窓
イラスト/若奈 wakana)

 

 

 

 

3位

 

『この世界の片隅に』CINEMA REVIEW~「わたしは ここで 生きている」

 

writer/K・Kaz

 

 

 

2位

ベリー・ベスト・オブ『にゃんころがり新聞』~2016年の、各部門のベストおすすめ記事の発表

 

1位

 

小説『やすちゃん』

 

文:にゃんく
本文挿絵:ササハラ

 

 

 

 

 

 

12月の結果は、上記のようになりました。

 

ちなみに、1位の小説『やすちゃん』は、①~

⑫までの12記事が掲載されたページへのリンクです。
2位のベリー・ベスト・オブ……も、10記事のランキング記事ですので、1記事での実質1位は、映画レビューの『この世界の片隅に』だと言えると思います。
12月は、映画レビューが10位以内に3本入賞しました。『ローグ・ワン』、『この世界の片隅に』など、興味深い記事をたくさん書いていただいております。
ライターのK・Kaz様、ありがとうございます。

 

他には、ショートストーリー『セナグラ』も、二ヶ月連続で入賞しております。
『セナグラ』人気は、とどまるところを知りません。
『セナグラ』1記事で、100万PVいくかも?! 期待しすぎでしょうか? でも、そのくらいいっても、おかしくない出来の作品だと思っています。


話はかわりますが、みゅーすとれいらむ2様の作品も、良い作品でした。初登場にして、奮戦していただきました。本紙の重要な女性作家として、今後も作品作りをお願いしていくつもりです。


作家・ライター、アーティストの皆様へ、ご声援・応援のほう、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

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ここまでのストーリーを読んでいない方は、こちらからお読みください。↓

命泣組曲①~

女子大生・虹乃は、ママから頼まれ、一週間、長生病院に被験者として入院することになった。
ところが退院していい頃を過ぎても、病院から彼女にお声はかからない。
虹乃がママと連絡をとりたいと看護婦に申し出ても、
「あなたにママはいません」
と言われたり、虹乃のことをキチ子お母様と呼ぶ謎の中年女・フチ子が現れたり、孫の赤鬼ちゃん、青鬼ちゃんが出現したり、セックス狂いの先生と看護婦が登場したりなど、病院内はなんだかおかしな雰囲気につつまれはじめる。
……追いつめられた虹乃が、病院を脱出しようとするとき目にしたものとは?!

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命泣組曲⑧

 

 

 

 

 

文:にゃんく

 

 

 

あたしたちに理事長の居場所を教えてくれたあの用務員さんが、階段の縁に手を引っかけ、両脚を宙空に浮かせ、今にもぽっかり口をあけた奈落の底に吸い込まれようとしていた。夢人が用務員さんを引きあげるため、彼に手を差し伸べたその時、力尽きた用務員さんは、声もなく暗黒の奈落の底に落ち込んで行った。あたしたちは、しばらくその場所に立ち尽くしていた。用務員さんが底に墜落した、べしゃっ、という音が、蛙を地面に叩きつけた音のように聞こえてきて、やりきれない思いの中しばし立ち尽くしていた。
それから再びあたしたちは走りだしていた。ようやくのことで六階まで辿り着くと、コンクリートの壁面には罅が至るところに入っていた。院内は停電になっており、非常灯のあかりが薄暗く、建物の部分部分を照らしだしている。天井から埃や砂がぱらぱら落ちてきた。コンクリートの固まりがすぐ傍に落下し、間一髪であたしたちを押し潰しそうになった。あたしは夢人に手をひかれ、必死に階段をおりた。
一階には高齢の患者さんたちが職員に浴びせる怒号が飛びかっていた。患者さんたち十名ほどが受付の修行僧に詰め寄り、「理事長をだせ」とか、「俺を元の姿に戻せ!」とか口々に訴えている。修行僧の男は髭をしごきながら、狼狽の態で何処かに電話をかけ続けている。
玄関正面では白と黒の警備員が何事か言い争っている。
「なんで開けないんだよ? 僕たちまで死んじゃうじゃないか」
と黒の警備員。
「責任感のないやつだな、お前は。俺たちが逃げてしまったら、誰が病院を守るんだ」
と白の警備員。
「そんなこと言ったって、此処が潰れちゃったら、元も子もないじゃないか」
「潰れないって。この病院が、そう簡単に潰れてたまるものか」
待ち合い座席のところでは、おろおろしながら赤鬼ちゃんを揺さぶっている女がいた。
「デュフフ、デュフ」
赤鬼ちゃんは罅のはいった天井を指差し、何事かを訴えかけようとしている。
「うるっせえんだよ、てめえ」
と口走った青鬼ちゃんは、弟に乱暴な口をきいたかどで、母親からお仕置きを受けている。
あたしたちは正面玄関までやって来たけれど、ガラスの扉は開かないらしく、扉の前はすでに病院から脱出しようとする人でごった返している。事は一刻を争う。余震のような揺れが先程から長く続いていた。何度めかの大揺れが、襲いかかってくる前触れかもしれなかった。
「戻ってください、みなさん」
黒の警備員と、胸の小突き合いをしていた白の警備員が、大声をだして言った。
「この地震は、一時的なものです。此処は危険ですが、外にでるのはなおのこと危険に違いありません。あなたたちは病院に護られています。今までも護られ続けてきました。これからだって、護られ続けるに決まっています。ですから、冷静になって自分の病室に戻ってください。外の世界に出たって、おもしろいことは何一つありゃしませんよ。ここは辛抱が必要です。お願いします」
白の警備員は手元にリモートコントローラー様の装置を握りしめている。おそらくそれを操作して、ガラスの扉をロックしているのだろう。
「嘘つくな!」
と患者のひとりのお爺さんが声をあげた。「この殺人病院! ここに入っちまったが最後、誰ひとり生きて出られないじゃないか!」
「そうよ!」とお爺さんの隣にいたお婆さんが言った。「みんな騙されて死んでいったのよ。自分の過去を奪われて!」
「俺たちがいなくなると、やっていけないから、そう言っているだけなんだろ!ふざけるな!」
「ドア、早く開けてよ!」
老人たちは口々に叫びだし、
「みなさん戻ってください、冷静に行動してください」
と呼びかける警備員ふたりを取り囲み、揉みくちゃにし、老人とは思えない力で叩きのめした。ガラスのドアはこじ開けられ、伸びている白の警備員の傍らで、リモートコントローラーがぺちゃんこに破壊されている。
あたしたちが内扉を通過し、外扉から転ぶように出て十メートルほど進んだところで、後ろからゴゴゴゴゴという地響きがとどろいた。夢人も、あたしも、後ろを振り返る余裕もなかった。走って、走って、走って、脚が縺れながらも走って逃げた。なんとか百メートルほど走り抜けたところで立ち止まり、後ろを振り返ると、病院が土台からひしゃげて崩れ落ちるところだった。何十発も仕掛けられたダイナマイトの爆発により倒壊されるように、病院は足元から土煙をあげ、崩壊した。灰色の煙が立ちのぼり、天にむかって太い狼煙をあげるように、棚引いている。いつまでも、いつまでも、棚引いている。
「だいじょうぶかい?」
夢人があたしを抱きしめた。痛いくらい、あたしを抱きしめている。彼は軀を小刻みに震わせていた。気丈にあたしを護ってくれていた彼だったけれど、内心では恐怖のあまり泣きたかったのかもしれない。あたしが彼の背中を撫でると、夢人はやにわに唇を吸ってきた。舌をあたしの口のなかにさし込んでくる。彼の舌は、土の味がした。というより、土の味はあたしのほうかもしれない。なにしろ、あたしはもうお婆ちゃんなのだから。お婆ちゃんのあたしに、けれども以前と変わらぬキスをしてくれた。そのことが、嬉しくて、ただもう嬉しくて、閉じた瞳から、涙が出てきた。怖かった。苦しかった。孤独だった。このまま、ずっとこうしていたかった。彼を、離したくなかった。
でも、だんだん、痛くなってきた。あまりに夢人の、抱きしめるちからが強くて。そんなにしたら、血がとまっちゃいそう……。身をよじり、目を開いた。脚のうえに夢人の脚が乗っかっている。彼の脚をどかせると、むにゃむにゃという彼の声が聞こえた。彼はこんなときに、眠っていた。あたしの太股に、脚を乗せて。
彼を揺り起こそうとした。
「ねえ、起きて! 逃げないと!」
夢人は寝返りをうった。
此処は何処だろう?
いつの間に辿り着いたのだろう。八畳ほどの広さのフローリングの部屋。部屋の一隅には、白いクローゼットやピンクの小物入れ、見慣れた赤いバッグ、猫のぬいぐるみが立てかけてある。つい一週間前に入院のため出掛けた時と、寸分違わない位置に、それらが並んでいる。締め切られたハートの模様が幾つも彩られたカーテンの隙間から、眩しい光が差し込んでいた。あたしは今、まちがいなく自分の部屋にいるみたいだった。
「ねえ、あたしたち、いったい……」
彼を揺するのをやめて、半身を起こしたあたしは、自分の布団のうえの枕にはたと視線をおとした。長い黒髪が絡んでいる。指先でつまみあげてみる。
「……?」
長さからいって、夢人のものではない……。ふらふらと立ちあがり、壁のボタンを押し、部屋の照明をつけた。鏡にかけてあった、埃がかぶるのを防ぐためのストールを剥がす。……目の下に隈ができている女が鏡のなかに立っていた。隈のことはどうでも良かった。問題なのは、そこにいるのが、歴とした二十一歳の若さだということだった。笑顔が作れないのか。鏡のなかにいる女は、唇を歪めて、渋い表情をうかべている。鼻先をつんと上に向け、何処となく気取った様子の、自分の若さにお高くとまっている女子大生の姿が映し出されていた。久しぶりの、自分の姿に馴染めなかった。でもこれが、正真正銘、本物のあたしなのだ。
「やった! やったわ! きゃっほー!」
あたしは叫び、部屋のなかを駆け回った。ドンドン床を踏み鳴らし、何周も、駆け回った。そうして寝入ろうとしている夢人を容赦なく揺さぶった。
「あたし、元の姿に戻ってる! ねえ、ちょっと起きてよ、ねえったら……」

 

 

(つづく)

 

 

 

 

 

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