無駄という余裕の削減こそ社会を疲弊させる | ふるさとを守りたい、子供達の未来を守りたい

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日々頭に浮かんだことを語りたいと思います。

  これは、愛媛新聞の投書欄に寄せられた投稿である。投稿者は、「巨額の財政赤字の原因は無駄な公共事業」、「バラマキが社会を疲弊させている」などと主張している。
   昨年の西日本豪雨そして、関東に大きな爪痕を残した台風15、19とその後の集中豪雨など毎年のように大災害が発生するなかこのような考えの方がまだいることには驚きだ。



このグラフを見ればわかるように、近年、公共事業の財源の建設国債の発行残高はほぼ横ばいで推移しており、増えているのは社会保障などの財源不足を補う赤字国債だ。投稿者の主張は明らかなデマである。

 



 次に、「バラマキが社会を疲弊させた」との主張を検証してみたい。
  今、台風15、19号の被災地では大量の災害廃棄物の処理が追いつかず、衛生状態の悪化と復旧の妨げとなっている。これは昨年の西日本豪雨など過去の大規模災害でも度々みられた光景だ。この原因は地方自治体がゴミ処理の能力を平時の需要に合わせて整備するというかたちで、平時の「無駄」という非常時に必要な「余裕」を無くしてしまったことにあるのではないだろうか。大都市の処理能力の大きい施設に広域処理を依頼することも可能ではあるが、輸送に時間がかかるし、災害が広範囲、同時多発的に発生し多くの地域から依頼が来ればすぐには対応は難しくなる。また、大都市の処理施設が被災したり、そうでなくても途中の輸送路が寸断されたら広域処理は不可能だ。
  今後ますます激甚、広域化するであろう災害への備えとして国の全面的な財政支援で自治体のゴミ処理能力の強化を図ることは不可欠である。これをやることは国民にとって何も悪いことは無い。全て自国通貨建てで国債を発行している日本政府の破綻はあり得ないし、ゴミ処理サービスの利便性は向上するからだ。
   人口減少による労働力不足も回収や処理をロボットやAIの活用で徹底的に自動化、省力化すればクリアできるだろう。



  このグラフをご覧いただきたい。これは各都道府県の無電柱化率を示している。これを見ると東京都でさえ5%弱、他の道府県は多くが2%を下るという有り様だ。また、全国の河川堤防の整備率は、首都圏の主要河川の多摩川でさえ、78.6%で未整備区間は28キロもあり、全国に109ある一級河川の平均整備率は67.7%とさらに低い。この整備率はこれまでの雨量想定に基づくものである。地球温暖化の影響による水害の激甚化が想定されるなかそれ以下の基準さえ満たされていない河川が日本にはまだ数多くあるのだ。
 堤防整備や無電柱化は平時には無駄に見えるかもしれないが、台風15、19号の被害を目の当たりにして多くの方がこれらの必要性にお気づきになったはずである。

 また、昨年の西日本豪雨では土砂の撤去や復旧工事の遅れが目立ったが、これも上記のような公共事業への支出をケチったために建設業の供給能力が低下したことが原因だ。残念ながら今回の台風15、19号の被災地でも同じ事態になる恐れがある。そして、今後も公共事業の支出をケチり続ければこれからも災害の度に同じことが繰り返されるだろう。

以上のようなことから、「無駄な公共事業」、「バラマキで社会が疲弊」という投稿者の主張は誤りで、現実には必要な公共事業さえ不十分で、その結果まともに災害に対応できないほどに日本社会が疲弊しているというのが正しいといえる。

 この投稿者様が若者の未来を思う良識ある方なら、もしこのブログを見ていればこれだけ丁寧に説明すれば自らの誤りを素直に認め、今後は投稿内容を改めて下さると思うが、今後も改めない場合は、28歳の若者が71歳の人生の大先輩に対して大変失礼かもしれないが、見識を疑わざるを得ない。

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