なんだ、これは!

大好きな映像作家、藤井亮さんのヒット作品が万博人気に便乗してまさかの劇場版に!ブラウン管時代のローカルテレビをベースにした藤井作品をまさか映画館で見ることになるとは!でも巨大スクリーンになってもやることは全く変わらない。好きなことを手作りでコツコツと積み重ねている姿が目に浮かんだ。すごいことだし、本当に素晴らしい。テレビの時からそうどが、パロディのようで、実はすごく強いメッセージも伝わってくる物語。ちょっと長かったけど、太郎の言葉が次々に心に刺さった。人の顔色なんて見ず、自分のやりたいことを、でたらめに、べらぼうに…オレもやっていこう。

どんな展開が、あっただろう?

昔ニューヨークにあったアンダーグラウンド作品まで扱ったレンタルビデオ店「キムズビデオ」。著作権的にはほぼアウト。でも誰も残してはいないというレアで、膨大なコレクション。それが動画配信時代に閉店後、どうなったかというドキュ?モキュメンタリーだ。そこにあるのはたぶん真実ではなく、映画への情熱の亡霊たち。長い間、映画界を支えてきたそのパワーを具現化したのがこれなのかもしれない。その魅力とか残しておくべき価値はわかってるほうなつもり。でもデジタル化すんの、めんどくさいんだよなあ

なんか文句あるんか?

香港映画全盛期を知る元スタントマンのオヤジが、久しぶりにアクション監督として呼ばれた作品で若者とぶつかるアクション「小林貫太郎一家」レビューを見ると今時あんなオヤジあり得ない的な低評価が多かったけど、昭和オヤジにはささりまくる不適切モード炸裂の物語だった。家族、時に命ですらなげうって熱意を込めた作品に、コンプラとか働き方改革のフィルターの上で安心安全に作られたもんが勝てるわけない。今時ではないのかもしれないけれど、多様化とかいうなら、そういう道を選ぶ自由も認められてええんちゃう?こんなこといってるから、また職場で眉しかめられるんだけど。

加害者の人権て。

もう30年経つけど記憶に強く残る地下鉄サリン事件。その首謀者麻原彰晃の3女アーチャリーの大人になってからのドキュメンタリーだ。事件当時11歳だった彼女もアラフォー。その凄絶な人生に絶句した。学校へも行けず、大学に合格しても入学拒否。海外旅行は渡航制限され、就職はもちろん、銀行口座も作れない。理由はただ一つ「麻原の娘」だからだけだ。もちろん麻原自体が起こした犯罪は戦後最大級だし、今なお苦しむ被害者はいる。でもその親族という理由だけで、国家ぐるみのイジメをするのはどうだ?人権はないのか?被害者か加害者か、2択人を判断し、黒っぽかったら徹底して叩く。日本の風潮についても考えさせられる1本だった。

昔のプロレスラーみたい。

完結したはずなのに、何故かまた始まったジュラシックシリーズの1本目。34年前の原点に戻ったり、人間のエゴで生み出された悪夢の恐竜に襲われたり、金目当ての奴はやっぱり食われたり。娯楽としてのお約束はキッチリ経ているけれど、結局「志村、うしろ!」を楽しむための映画。夏休みの東映まんがまつりみたいなもんやな。

そうチャキチャキいうなや!

可動型の手術車両MERとその中で働く医療従事者のドラマの劇場版2作目。ドラマはもちろん、映画も敬遠していた。だって100%そうなって助かるの見えてるから。ただこういう水戸黄門的な快感ってあるんやなぁ。東京と現場の温度差、拡大する災害、一難去ってまた一難。それをあの鈴木亮平の迷いない指示で切り抜ける気持ち良さ。きっと手術で必要とされるテキパキしたリズムが作品の展開にも繋がってるから、乗せられたし、泣かされた。助けが来るのはわかってたけど、自分を犠牲にして弱いものを守ろうとする島民たち。あの気持ちが都会でもあるんだろうか?

で、結局?

スペインからアメリカに移民する事実婚カップルが、入国審査で疑われ、別室へ。そこで受ける尋問を描いた実体験ベースの作品だそう。自分の場合は言語力の問題が大きいけど、あの審査って不必要にプレッシャーかかるよなぁ。しかも何を怪しまれ、いつ終わるか、どうされるのかわからない不安感。観客も一緒にイリイリさせられる。で散々根掘り葉掘りやられたあと、ハンコガチャン「アメリカへようこそ」はないやろ。かっつり審問ハラスメント、絶対訴えられるわ。権力側の横暴かよくわかる。あの状況を証拠に残させないために、スマホ禁止なんだろうな。

なんなの?この物足りなさ。

ピクサーの新作は、親を亡くして友達も少なく、孤独感を募らせた少年が主人公。宇宙のどこかに自分の居場所があるはず…その願いが叶って宇宙に行くことになり、そこで友達もできてというお話。キャラクター描写が浅いし、お約束の絵本みたいな展開。ピクサーの良作は大人にも響く部分があるけど、これはかなりお子様に寄せた夏休み映画。年齢制限で鬼滅を見れない、しんちゃんは下品だからというちびっこを連れて時間つぶしする作品だなぁ。

どんな面さげてたんだろう。

終戦を知らず2年、逃げ込んだ森のガジュマルの木の上で戦っていた2人の兵士。沖縄での実話を井上ひさしのこまつ座が舞台化。それを堤真一と山田裕貴の主演で戦後80年に映画にした作品だ。米軍に攻め込まれ、怖い上官と2人きりに。圧倒的に不利なのは感じるけど、人数が少ないし情報が何もないから動くに動けない。水、食料、病気に加えて、あの状況での正気を保てるか?自信がない。でも国が10人殺して1人前と公言する時代の正気ってなんだ?演劇ベースの作品だから戦争映画にしては戦闘シーンは少ない。でもサバイバル的な見せ場よりもっと2人の内面の描写に時間を使ったほうがより良かったのでは。ほぼ2人しかでていない映画だけど、この2人の迫力は見事だった。ちょっと前に見た舞台映画とは比較にならんかった。

夢を見つめ直そ。

全くの素人から、弾きたいという情熱だけで「ラ・カンパネラ」をマスターした佐賀ののり漁師の実話。伊原剛志演じる漁師の不器用さや抱える問題に自分を重ねずにいられない。「夢があれば生きていける」「あなたに夢を見せてもらっている」人生に疲れ気味な今の自分にささる言葉。立ち止まって、改めて自分の夢の解像度をあげてみよう。もちろん支えてくれる家族にも感謝しながら。