大怖!

阿部寛主演のネット炎上コメディ・・・だと思てたらちょっと違った。主人公は普通の50代。ある日自分で作った覚えがないXのアカウントを、さらに乗っ取られて殺人事件の犯人だとされてしまう。無責任な正義感、自分の有用感を満たすだけの集団リンチみたいな炎上。それを笑いをまぶして揶揄するだけと思っていたが、怖かったのは自分と同じ「鈍いおっさん」の自己評価と周りの見る目の落差。炎上は俺じゃないが、理解の差は俺でも十分ありえる、というか俺なんじゃないか。最後はうまくまとめていたけど、「俺大丈夫かな…」そっちばっかり気になって、オロオロ。ゾンビ映画よりよっぽど背筋が寒くなった

やりすぎは、よくないね。

前に見た映画は原作が上下巻で、3時間を超えていた。「チ。」の作者のデビュー作だというこの作品も調べたらコミックは5巻まであったみたい。

子供の頃から足が速くて将来を嘱望された天才スプリンターの人生を主軸にした物語だけど、削りすぎちゃうか?レビューによると原作は「チ。」と同じでやたらと主人公が悩み、モノローグの多い作品だったみたいなので、それを整理してくれたのはありがたい。でもエピソードを組み替えたり、少ない登場人物の描写を必要以上に刈り込んでまで90分にする必要はあったんだろうか?モノローグの分を映画らしく、作画や音楽で表現している部分で頑張っているんだから、せめて2時間くらいは使って丁寧に紡いでほしかった気がする。これも映画をネットで倍速で見る世代への気遣いなんだろうか?だとしたら、残念だ。

うんうん。いいね。

南大東島のサトウキビから作った沖縄産のラム酒を開発した、元契約社員の実話。それを元に原田マハが書いた小説を伊藤沙莉の主演で映画化した作品だ。予告は見かけなかったけど、映画館のポスターの雰囲気だけで見に行ったが正解!若手社員が仲間や家族に支えられ仕事で奮闘するパターンだけど、男目線でないのと、池井戸ものみたいにやたら金の話ばかりではなく、商品への愛とか真摯な姿勢、真心といったアンチビジネスライクな物語でとても染みた。主役がよかったのはもちろん、おばあ、おかん、後輩、そしてバーのマスター・・・みんな温かくて、みていて幸せな気持ちになれた。自分もおかれた環境に文句ばかり言ってないで、その中で動かなきゃ。の第一歩としてそのラム酒をネットで買ってみた。どんな味なんだろう。

 

なんか、暑苦しい。

原作は直木賞受賞の上下巻の分厚い小説。沖縄が熱く、苦しかった1960年代の若者たちの物語だ。戦後、本土に見捨てられ、米軍統治下で我慢して過ごしてきた彼らの想い。実際に起こったコザ騒動に向かう物語なんだけど、キャラクターにしてもエピソードにしても情報量が多すぎる。レビューを見るとだいぶ削ったみたいだけど、それでも多いから展開に余裕がない。重い過去を背負ったキャラクターが緊張感を持ったシーンに登場するばかりだから、見る側のメリハリが作れない。伝えたいこと、制作の熱意はわかるけど詰め込みすぎだわ。長さも含め、濃すぎるなぁ。そこは「なんくるないさ」ではないよね。

実に面白…くもない。

東野圭吾原作、福山主演のミステリーエンターテインメント。それをやりたかっただけだよね?目的と手段が入れ替わっている企画書映画。一定数はあの気味悪い素人探偵をみたいんだろうけど、シリーズ変わったらキャラも変えたらいいのに。主演のカッコいいところを見せるだけのアイドル映画なら、事前にちゃんと提示してほしいわ、R18 みたいな感じで

やっぱり、まぶしい。

20年前、2005年の山下敦弘作品。文化祭でライブするために急遽バンドを組んだ女子高生。選んだのは部室に転がっていた古いカセットに入っていたブルーハーツ。その設定だけで当時32歳の自分は食いつき、記憶に残る1本に(このブログにも記録が残ってた)。それがリバイバルと聞いたら、見に行くしかないやろ。ストーリーはほとんど覚えていなかったけど、王道学生バンド物語。でも、その日自分たちが楽しむだけ、何の利益もないことのため30年以上経った今でも胸の奥をつつかれる。あの思い出を抱えて、おっさんだけど生きていく。そんなフックとして大切な作品だ。

これが今のふつうなん?

好きな監督のひとり呉美保さんが、こどもを主人公に撮った1本だけに期待は高かった。ギャングエイジの小4だけど、普通でパッとしてない主人公。好きになった意識高い系の美少女に好かれたい一心で、環境問題を大人に気づかせるこどもテロに突き進む物語だ。子どもたちの演技もそれを引き出している演出も素晴らしいと思う。でもなんか、見ていてモヤモヤした。だって子どもたちに可愛げがなすぎるのだ。受け売りの正論で論破して得意げだったり、大人の保護欲を計算して行動したり、いたずらではなく軽犯罪に手を出したり…子どもってもう少し「しょうがないなぁ」という部分を残しておいてほしい。でもそんなふつうを作っているのも、温室効果ガスを排出してるのも、我々オトナのせいなのかもしれないけど。

色褪せないね。

細かいことは例によって忘れているけど、アニメ版を見て感動したのは、調べたら15年も前だった。あの当時はアニメでしか表現できなかった飛翔感が、技術の進化で実写というかCGでつくれるようになった。同じ監督がこだわりを持って作ってるし、おっさんは大概覚えていないから、そりゃ感動するわ。いい!

でもできるようになったからといって、ジブリ作品とか水島作品を実写にするのはやめてほしい。あの粗さに夢を見ていたのだから。

ミラノ風ドリア…

インディーズゲームのヒット作を川村元気が、ニノを巻き込んで映画化した企画作品。舞台は何度も同じ場所にループしてしまう地下鉄の通路だ。異変を見つけたら戻り、異変がなければ進め!というルールの元で進む間違い探し。映画にするため、ゲームにはなかった物語やメッセージを加えたりという工夫は見えたし、形にはなっていた。でもなんか手段と目的が逆になってないか。俺の腕とコネがあれば、こんなゲームでも映画化してマネタイズできるんすよ!売れっ子プロデューサーの上から視点が透けて見えて、ちょっと。それに間違い探しばかりしてるとサイゼリアで料理待ちしてる気分になっちゃうわ、


そりゃ、ないぜ!

元々そんなに世代でもないので、存在を知っているくらいだった「ベスト・キッド」シリーズ。まあジャッキーファンなので、リメイクは見ていたけど、特に印象なく。でもネットフリックスで見た「コブラ会」にドはまりして、全話完走。その大ヒットがキッカケになったっぽいこの作品もメチャ楽しみにしていた。・・・が、これはただの強引なマルチバース結合やんか!ゴーヤチャンプルに麻婆豆腐ぶっかけたみたいな雑なチャンポン。カンフーの素質はあったとはいえ、ミヤギ道空手って1週間弱でマスターできるの?ベスト・キッドシリーズは謎の師匠と謎の修行、そして劣等感の克服が黄金パターンなのに、修行が短すぎ。いくら倍速で映画を見る層がいるったって、制作側が飛ばす必要ないやろ。さらにジャッキー主導で話が進んだのか、ほぼカンフーベースで、コブラ会のスルー加減にも腹が立つ。期待が大きすぎたかなぁ…。