真っ向からどストレートだ!

クリストファー・ノーラン監督が、築き上げてきた実績を元にビッグマネーを動かし、フルでIMAXカメラで撮ったという話題作。主演はマット・デイモンやし、素材も西洋文学の原点といわれるギリシャの古典冒険もの。いろいろ匂わせはあるけど、小難しいことは言わずにガシャンっと斧を振り下ろした感じの物語。ストーリーはともかく、絵と音の迫力がすごかった。ネットフリックスとかにお金も人も流れて、ちょっと寂しい映画業界。こういう映画館で見ないと価値が20%くらいになっちまう力技の作品も作っていかないとね。

主役は誰なんだろう…

海なき県、埼玉に50年以上前に作られた沼影市民プール(さいたま市)が舞台。市民に愛されながら、老朽化と土地の有効活用のために取り壊しが決まった最後の夏を撮影したドキュメント「風」作品だ。ナナゲイでの予告でNHKの「72時間」的な作品を期待して見に行ったら、ちょっと違った。無くなる、いや亡くなるプールの役割が強すぎて、そこに集う人たちの存在が薄すぎる。もちろんさまざまな人たちを撮影しているのだが、彼らのしゃべる言葉が少なすぎるために気持ちがちっとも伝わってこない。さらになんの説明もなく、マイノリティーのインパクトの強い再現ドラマ?が突然挟み込まれる。ドキュメンタリーが全て真実ではないのはわかる。監督の意図で構成が決まり、編集され、演出も加わっているのは理解している。でもやっぱりサラダに軽いドレッシングをかけたくらいじゃないと。

プールに関わった人たちの声が薄く、逆に監督の演出が濃すぎる。あんまり好きじゃなかった。

すべての元・男子たちへ。

小学校3年からの30年くらい。翼と暁太郎の物語。すぐに相棒になって元気よく遊んでいた2人だったけど、成長するに従って関係は変化していって…一番感じたのはそれぞれのシーンの本当にリアルな感じ。作画とかではなく、それぞれの時代の「あったなぁ」の切り取りの見事さ。もちろん全く同じ体験をしているわけでないけど、ひとつひとつが自分のあの頃を呼び戻していく。途中からは、小4の頃からずっと相棒だったトキオのことばかり思い出した。あんなにおもろかったし、いろいろアホなこともしたのに、自分が違う中学に進み、さらに引っ越したので、あれ以来一切会っていない。今アイツ、どうしてるだろう…「じゃぁねぇ」って叫んでみたいな。

…ダメだこりゃ。

和久さんならぬ、長さんならそう言ったに違いないこの映画。約30年前に始まった頃、飛ぶ鳥を落とす勢いだったフジテレビとテレビ業界。その凋落ぶりを象徴するような作品だった。登場人物は当然ながら年をとり衰え、でも昔の名前や思い出をこすっているだけ。長いシリーズのキャラクターの顔見世のためだけの、中途半端なコメディシーン。もう58歳の織田裕二だけに世代交代をはかるような箇所もたくさんあったけど、若手が小粒だわぁ。

物語ではなく、舞台や音楽で必要以上に盛り上げようとするばかりのこのシリーズの薄さは、次世代にみすかされるような気がするけどなぁ。

加害者か被害者か。

終戦の日前後ということもあり戦争関連作が多い夏。戦争でこんなひどい目にあったので二度と…という被害者ものが多い中、加害者の立場で描かれた物語。ベトナム戦争に参加し、帰国後PTSDに苦しむネルソンさんの実話をベースにした作品だ。子供時代の経験から暴力を憎んでいたネルソンさんが、殺らねば殺られる戦場に送られ、その環境に慣れていく。その異常さと反動からくる激しい後遺症。苦しみながらも体験の語り部となったネルソンさんの姿を通じ、被害者も加害者もないと思った。幸いなことにそんな経験はないが、その状況になった時に巻き込まれずに声を上げられるか。どうして人を殺したかを問われ、仕方ないでは済まされない覚悟が自分にあるのだろうか?

俺にも書けるかな…

中学生、30代OL、子育て終わりの主婦。3人のさとこが自分の人生を小説に書こうとする物語。何がよかったってファーストシーン。お年頃の女子中学生が耳鼻科のネブライザーを鼻に突っ込んだアップから始まる映画なんて見たことない。そこから始まる中3聡子のエピソードにガッツリ心をつかまれ、そのあとの2人のも楽しく見られた。メチャ面白いとかではないけど、大好きな空気感。それぞれが自分の物語では主人公だもんね。小説でなくても、一冊書くのが夢なんだけどなぁ。

うわぁ、撃たれた!

ふぐ調理師免許を目指す女性を軸に、ふぐ食やふぐ料理の歴史、そして「毒」との戦いを描いたドキュメンタリー。テンポや演出もだけど、知らなかったことにたくさん触れられてメッチャ面白かった。毒があるからこその魅力と、そこに命をかける男たちの情熱、積み重ねてきた歴史とそこから生まれた政治。正直今まで食べたフグ料理はあまりうまかった印象はないけど、見終わったら久しぶりに食べてみたくなったのが、この映画の魅力の証拠かも。でも、食べログで調べたら・・・高かった。

これがホンモノ。

今もつづくロシアのウクライナ侵攻。その反撃部隊に同行、兵士のヘルメットカメラの映像も合わせて編集された作品だ。ハリウッドの作る戦争映画と違うのは、ドラマチックな展開がないところと音。普通に喋っていた仲間がパスっという軽い銃声と共に、ノーリアクションで簡単に動かなくなる。もちろんテイク2はありえない。その恐ろしさは感じるけど、迫力も脈略もない映像の連続に眠くなってしまったのも事実だ。彼らが撃ちまくる小銃の音の軽さと、奪還したけど誰も何もなくなってしまった村で生きていた猫の鳴き声だけが、耳に残っている。

せっかく、ちょうどよかったのに…

毒父親のせいで自己肯定感が低く、パッとしない人生を送っている20代女性が主人公。フェイスブックで父親と間違え知り合った同姓同名の男とメッセージのやり取りを続けるうちに…という物語。美男美女でもないし、ここから運命の出会いみたいなことも一切ない。でも自分の言葉や存在をちゃんと受け止め、見守ってくれる存在。たぶん誰もが一番必要としているもののありがたみを感じさせてくれるストーリーが、おっちゃんには刺さりまくった。ネットのおかげでコミュニケーションの手段もスピードも恐ろしい進歩を遂げているけど、その中で「ちょうどいい」を保っていた父親じゃないほうのボブのスタンス。理想だよなぁ。別に若い女友達が欲しいわけじゃないけど、ボブに近い世代の自分としてはマネしたいなと思った。あとこの邦題も、ほんとちょうどいい。

見えすぎちゃって、困る!

BSアンテナのCMでそう言ってたのは、森尾由美だったっけ。

チェンソーマンの作者の傑作短編を読んで感動した、世界の是枝カントクが実写化したこの作品。原作へのリスペクトも、是枝作品ならではでの味もしっかりある。主人公の演技も光る。だけど、アニメ作品があったんだよなぁ。マンガやアニメでは省略され、読者の想像力に託される背景などさまざまな部分。それをこうですと提示されてしまう気持ちよさと違和感。安いデジカメで全部クッキリより、背景ボケてたほうがいい写真みたいな部分ってあるでしょ。あの感じなんだなぁ。